不静定梁計算ツール

両端固定・一端固定他端支持・2スパン連続梁の反力・固定端モーメント・たわみを閉形式公式で一括計算

両端固定・一端固定他端支持(プロップド)・2スパン連続の不静定梁3タイプについて、反力・固定端モーメント・最大たわみを閉形式公式で即計算。単純梁との比較%で固定化・連続化の効果が分かる。

梁タイプ
荷重タイプ
H形鋼プリセット(E=205GPa・JIS G 3192 の Ix をセット)

鋼205・SUS193・アルミ70

任意断面は断面性能ツールで算出

計算結果

最大たわみ2.28 mm= L/2628・左端から3.00m
L/300以内

固定端モーメント(両端・負曲げ)

30.00 kN·m

最大正曲げモーメント

15.00 kN·m

左端から3.00m

左端反力 R_A

30.00 kN

右端反力 R_B

30.00 kN

単純梁との比較

単純梁の最大M

45.00 kN·m

最大|M|比(単純梁比)

66.7 %

単純梁の最大たわみ

11.42 mm

たわみ比(単純梁比)

20.0 %

等断面・線形弾性・小変形理論(曲げ変形のみ)の閉形式公式による概算。梁の自重は荷重に含まれないため必要に応じてwに加算のこと。実際の固定端は完全剛ではなく、実物のたわみ・端部モーメントは本計算と単純梁の中間になる。最終確認は構造計算書・構造設計者の検証によること。

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梁の両端を固定すると、たわみはどこまで減るのか

単純梁の最大曲げモーメントは wL²/8、最大たわみは 5wL⁴/(384EI)。材料力学を学んだ人なら反射的に出てくる公式だ。ところが「両端を固定したら?」「支点を1本増やして連続梁にしたら?」と聞かれた瞬間、手が止まる。固定端モーメントの係数は wL²/12 だったか wL²/8 だったか、プロップド梁の最大たわみ位置はどこだったか——公式集をめくりながら自信が持てなくなる経験、あるよね。

不静定梁計算ツールは、両端固定梁・一端固定他端支持梁(プロップド梁)・2スパン連続梁の3タイプについて、等分布荷重と中央集中荷重の支点反力・固定端モーメント・最大正曲げモーメント・最大たわみを閉形式公式で一括計算する。さらに同じ荷重・同じ断面の単純梁と比較した「最大|M|比」「たわみ比」を%で表示。「両端を固定するとたわみが1/5になる」という教科書の記述を、自分の梁の数値でそのまま体感できる。H形鋼代表5断面のプリセット付きで、E と I の入力も1タップだ。

なぜ作ったのか — 静定梁で止まっていたツール群の空白

このサイトには梁の計算ツールがすでに2本ある。/beam-strength は単純梁・片持ち梁の曲げ応力度と安全率、/beam-sfd-bmd は静定梁のSFD/BMD図。どちらも力のつり合いだけで解ける「静定梁」の世界で完結していた。

ところが実務の梁は静定ばかりではない。建築の小梁は継手位置しだいで連続梁になるし、機械フレームの横架材は両端溶接なら固定端に近い。架台の設計検算で「この端部モーメント、wL²/12 で合ってるか?」と確かめたくなったとき、頼れる無料ツールが見当たらない。国内の構造計算ソフトは体験版のライセンス登録が必要で、検索でヒットするのは英語の海外サイトばかり。単位系を読み替えながら使うのは、5分で終わらせたい検算には重すぎる。

もうひとつの動機は「単純梁との比較」を並べて見せたかったことだ。不静定の効果は「たわみが1/5」「曲げが2/3」という比率でこそ腹落ちする。既存の計算サイトは不静定梁の値を単体で出すだけで、同条件の単純梁と横並びにしてくれない。固定化・連続化にどれだけの価値があるかを数値で示せれば、接合部にコストをかける判断も、逆に単純梁で割り切る判断も速くなる。

なお本ツールは、材料力学の続編として執筆を進めている書籍で扱う不静定・エネルギー法の章と連動するアプリでもある。書籍で導出を追い、ツールで数値を確かめる——その往復を想定して、教科書の代表6パターン(梁3タイプ×荷重2タイプ)を正確に押さえた。

不静定梁とは何か — 反力・固定端モーメントの基礎

不静定梁 とは — 力のつり合いだけでは解けない梁

平面内の梁に使えるつり合い式は3つしかない。水平方向の力のつり合い、鉛直方向の力のつり合い、モーメントのつり合いだ。単純梁(ピン支点+ローラー支点)の未知反力は3成分だから、3式で全部解ける。これが「静定」だ。

ところが両端を固定すると、各端に鉛直反力・水平反力・固定端モーメントが生じ、未知数は6つに増える。式は3つのまま。差し引き3つの未知数が「つり合いだけでは決まらない」。この余分な拘束を余剰拘束、その数を不静定次数と呼ぶ。両端固定梁は3次(軸力を無視すれば2次)、一端固定・他端支持のプロップド梁と2スパン連続梁は1次の不静定だ(参考: Wikipedia: 不静定)。

たとえ話で考えてみて。長い棒を2人で両端から担げば、各人の負担は荷物の位置から一意に決まる。ところが3人目が真ん中に入った瞬間、力のつり合いだけでは3人の分担が決まらなくなる。真ん中の人が背が高ければ多めに背負うし、少し屈めば両端に荷が逃げる。つまり分担は「棒がどうたわむか」という変形まで考えないと決まらない。これが不静定の本質だ。2スパン連続梁の中間支点反力が単純梁2本分より大きくなるのも、まったく同じ理屈で「真ん中の人が背負い込む」からだ。

不静定梁を解くには、つり合い式に「変形の適合条件」を追加する。両端固定梁なら「固定端の回転角はゼロ」、連続梁なら「中間支点でたわみはゼロ・たわみ角は連続」。この条件式を足すことで、未知数と方程式の数が一致し、はじめて反力とモーメントが決まる。

固定端モーメント 公式 — 両端固定・プロップド・連続梁の一覧

適合条件を解いた結果は、定番の荷重条件なら閉形式の公式にまとまっている。本ツールが実装する6ブランチの主要公式は次のとおりだ。

梁タイプ荷重固定端(中間支点)M最大正曲げM最大たわみ
両端固定等分布 wwL²/12(両端)wL²/24(中央)wL⁴/(384EI)
両端固定中央集中 PPL/8(両端)PL/8(中央)PL³/(192EI)
プロップド等分布 wwL²/8(固定端)9wL²/128(支持端から3L/8)約wL⁴/(185EI)
プロップド中央集中 P3PL/16(固定端)5PL/32(荷重点)PL³/(48√5·EI)
2スパン連続等分布 wwL²/8(中間支点)9wL²/128プロップドと同値
2スパン連続各スパン中央 P3PL/16(中間支点)5PL/32プロップドと同値

比較のベースになる単純梁は、等分布で M=wL²/8・δ=5wL⁴/(384EI)、中央集中で M=PL/4・δ=PL³/(48EI)。両端固定+等分布のたわみ係数が 1/384 で、単純梁の 5/384 のちょうど1/5になっている点に注目してほしい。「固定するとたわみ1/5」はこの係数比そのものだ。

力法・変位法・三モーメント法 — 不静定を解く3つの道具

適合条件の立て方には流派がある。力法(余剰拘束を外して仮想の力で変形を戻す)、変位法(節点の回転角・変位を未知数に取る。たわみ角法やマトリクス法の源流)、そして連続梁に特化したクラペイロンの三モーメント法だ。どれで解いても答えは同じで、上の表の公式はその到達点にあたる。現代の構造解析ソフトは変位法を一般化したマトリクス法(FEM)で任意の構造を解くが、定番ケースの検算なら閉形式公式のほうが速くて確実——本ツールはその立場を取っている。

固定端の負曲げとたわみ制限 — 実務でこの数値が効く理由

不静定梁の計算を省略すると、事故は端部で起きる。両端固定梁の最大曲げは中央ではなく固定端の wL²/12 で、中央 wL²/24 の2倍だ。単純梁の感覚で「曲げは中央が最大」と思い込むと、端部の溶接部や鉄筋コンクリートの上端筋がいちばん厳しい断面を無検討で通してしまう。連続梁も同じで、中間支点には wL²/8 の負曲げが発生する。「支点の上だからモーメントはゼロ」という単純梁の直感は、連続梁では真逆に外れる。

逆方向のメリットも大きい。両端固定+等分布ならたわみは単純梁の20%、曲げは66.7%。たわみで断面が決まっている梁なら、固定度を活かすだけでワンサイズ小さいH形鋼が選べる可能性がある。鋼材単価が上がっている今、接合部のディテールに手間をかけてでも連続化する価値があるか——その損益分岐を判断する材料が、単純梁比の%表示だ。

もうひとつ、直感に反する結果として覚えておきたいのがプロップド梁+等分布の挙動だ。固定端の負曲げ wL²/8 は単純梁の最大曲げと同値、つまり最大|M|比は100%で曲げはまったく減らない。それでもたわみは41.6%に落ちる。「片側だけ固定しても曲げ的には得しないが、たわみ対策としては十分効く」——この使い分けを知っているかどうかで、補強方針の議論が変わる。

たわみの評価基準としては、建築の梁で慣用される L/300 を目安に採用した(建築基準法施行令第82条系の変形制限の慣用値。参考: e-Gov 建築基準法施行令)。本ツールは δmax を L/n に換算し、L/300以内なら良好、超えたら注意、L/100超なら断面見直し推奨の3段階で判定する。

両端固定梁・連続梁の計算が必要になる場面

小梁を連続化するか、単純梁で割り切るか。 建築の床組みで、小梁を継手で切って単純梁扱いにするか、連続させて中間支点の負曲げを許容するか。連続化でたわみが41.6%に落ちる一方、中間支点反力は1.25倍になる。両案を同じ画面で数値比較できる。

機械フレーム・架台の横架材。 両端を柱に溶接した横架材は固定端に近い。装置の載る梁のたわみが公差に効く場面で、両端固定として計算した δmax と L/n 換算をすぐ確認できる。

配管サポート架台の検討。 サポート間隔を飛ばした鋼材梁に配管荷重を等分布で載せ、プロップドや連続条件でのたわみを概算する。自重+流体重量を w に足し込めば実務レベルの検算になる。

構造計算書の検算と材料力学の学習。 計算書の固定端モーメントが wL²/12 になっているか、係数の取り違えがないかの照合。学習中なら、梁タイプを切り替えるだけで係数の違い(1/8→1/12、5/384→1/384)が体感できる。

基本の使い方 — 3ステップで反力・たわみまで

ステップ1: 梁タイプと荷重タイプを選ぶ。 両端固定・一端固定他端支持・2スパン連続の3つから梁を、等分布荷重・中央集中荷重から荷重を選ぶ。2スパン連続は等スパン・対称載荷(全スパン等分布、または各スパン中央に同じP)に対応する。

ステップ2: スパン・荷重・断面を入力する。 スパンL[m]、荷重(w[kN/m] または P[kN])、ヤング率E[GPa]、断面二次モーメントI[cm⁴]を入力。H-100×100からH-400×200までのH形鋼代表5断面プリセットを押せば、E=205GPa(鋼)とJIS G 3192の公称Ixが一括でセットされる。任意断面のIは /section-weight で算出して転記すればいい。

ステップ3: 結果と単純梁比を確認する。 支点反力・固定端(中間支点)モーメント・最大正曲げモーメントと位置・最大たわみと L/n 判定が一覧表示される。最下段の「単純梁との比較」で最大|M|比とたわみ比の%を見れば、固定化・連続化の効果が一目で分かる。

具体的な使用例 — 検証済み8ケースで見る不静定の効果

以下の8ケースはすべて、開発時にpython製FEM(4000要素の梁要素モデル)と照合したテストベクトルそのままだ。ツールに同じ値を入れれば同じ結果が出る。

ケース1: 両端固定+等分布 — H-300×150・L=6m・w=10kN/m

入力: 両端固定、等分布 10kN/m、L=6m、E=205GPa、I=7210cm⁴(H-300×150プリセット)。 結果: 反力は両端30kN。固定端M=30.00kN·m、中央M=15.00kN·m、δmax=2.28mm(中央、L/2628相当)。単純梁は M=45kN·m・δ=11.42mm で、最大|M|比66.7%・たわみ比20.0%。 解釈: 教科書どおり「たわみ1/5」がそのまま出る。ただし最大曲げは中央でなく固定端の30kN·m。端部接合の設計を忘れずに。

ケース2: 両端固定+中央集中 — H-250×125・L=4m・P=50kN

入力: 両端固定、中央集中 50kN、L=4m、I=4050cm⁴。 結果: 反力25kN×2。固定端M=中央M=25.00kN·m、δmax=2.01mm。単純梁 M=50kN·m・δ=8.03mm → M比50.0%・たわみ比25.0%。 解釈: 集中荷重では固定端と中央のモーメントがともに PL/8 で同値になる。曲げは半減、たわみは1/4——等分布(1/5)より低減効果はやや小さい。

ケース3: プロップド+等分布 — ケース1と同条件で梁タイプだけ変更

入力: 一端固定・他端支持、他はケース1と同じ(6m・10kN/m・H-300×150)。 結果: 反力は支持端22.5kN・固定端37.5kN。固定端M=45.00kN·m、最大正曲げ25.31kN·m(支持端から2.25m)、δmax=4.75mm(支持端から2.53m)。M比100.0%・たわみ比41.6%。 解釈: 固定端の負曲げ wL²/8=45kN·m は単純梁の最大曲げと同値で、曲げ的な得はゼロ。それでもたわみは42%に落ちる。「片持ち固定+先端支持」の補強がたわみ対策として有効な理由がこれだ。

ケース4: プロップド+中央集中 — H-400×200・L=5m・P=100kN

入力: プロップド、中央集中 100kN、L=5m、I=23700cm⁴。 結果: 反力は支持端31.25kN・固定端68.75kN。固定端M=93.75kN·m、最大正曲げ78.13kN·m(荷重点)、δmax=2.40mm(支持端から2.24m)、荷重点たわみ2.35mm。M比75.0%・たわみ比44.7%。 解釈: 最大たわみは荷重点ではなく支持端から L/√5≒0.447L の位置に出る。反力は固定端側が支持端側の2.2倍で、5P/16と11P/16の非対称分担がそのまま表れる。

ケース5: 2スパン連続+等分布 — H-400×200・L=8m/スパン・w=15kN/m

入力: 2スパン連続(1スパン8m・全長16m)、等分布 15kN/m、I=23700cm⁴。 結果: 端支点反力45kN×2、中間支点反力150kN。中間支点M=120.00kN·m、最大正曲げ67.5kN·m(各端支点から3m)、δmax=6.85mm(各端支点から3.37m、L/1168相当)。M比100.0%・たわみ比41.6%。 解釈: 全荷重240kNのうち150kN(62.5%)が中間支点1点に集中する。単純梁2本を並べた場合の中間柱負担(120kN)の1.25倍——連続化するなら中間支点・柱の設計を必ず見直すこと。

ケース6: 2スパン連続+各スパン中央集中 — H-200×100・L=3m・P=20kN

入力: 2スパン連続、各スパン中央に20kNずつの対称載荷、L=3m/スパン、I=1840cm⁴。 結果: 端支点反力6.25kN×2、中間支点反力27.5kN。中間支点M=11.25kN·m、最大正曲げ9.38kN·m(各スパン中央)、δmax=1.33mm、荷重点たわみ1.30mm。M比75.0%・たわみ比44.7%。 解釈: 比率がケース4(プロップド+集中)と完全に一致している。対称載荷の2スパン連続梁は各スパンがプロップド梁と等価——§8で導出するこの性質が、数値でそのまま確認できる。

ケース7: たわみ過大の警告例 — H-100×100・プロップド・L=10m・w=20kN/m

入力: プロップド、等分布 20kN/m、L=10m、I=383cm⁴(H-100×100)。 結果: δmax=1379.64mm=L/7.2。固定端M=250kN·m。StatusCardは「たわみ過大。断面見直しを推奨」の警告表示。 解釈: 10mスパンにH-100は桁違いの断面不足で、たわみが1.4mという非現実的な値になる。閉形式公式は常に有限値を返すので、L/n 判定を必ず併読して物理的な妥当性を確かめること。

ケース8: アルミ材 E=70GPa — プロップド・L=3m・w=5kN/m

入力: プロップド、等分布 5kN/m、L=3m、E=70GPa(アルミ)、I=1840cm⁴。 結果: δmax=1.70mm=L/1762(良好)。固定端M=5.63kN·m、反力は支持端5.625kN・固定端9.375kN。 解釈: ヤング率は反力・モーメントには一切効かず、たわみだけに反比例で効く。材質をアルミに変えても M や R は鋼と同じ——「剛性は変形の問題、強度は応力の問題」という材料力学の基本が読み取れるケースだ。

仕組み・アルゴリズム — 閉形式公式とFEM照合

3つの解法候補と閉形式を選んだ理由

不静定梁をWebツールで解く方法は大きく3つある。

手法対応範囲精度実装
閉形式公式(採用)定番6ケース限定厳密解軽量・即時・依存ゼロ
三モーメント法の逐次解任意スパン数・不等スパン厳密解連立一次方程式ソルバーが必要
FEM(マトリクス法)任意形状・任意荷重分割数に依存Webの単機能ツールには過剰

実務検算の大半は「両端固定・プロップド・等スパン2連続×等分布か中央集中」の定番に収まる。ならば教科書の閉形式公式(変位法・三モーメント法の解)をそのまま実装するのが、誤差ゼロ・最軽量で最善だ。開発時には全6ブランチをpython製FEM(4000要素)と突き合わせ、たわみ係数レベルで0.01%未満の一致を確認している。不等スパンや任意位置荷重は割り切って対象外とした。

2スパン連続梁がプロップド梁と等価になる理由

等スパン・対称載荷の2スパン連続梁では、荷重も構造も中間支点に対して左右対称だ。すると中間支点のたわみ角は左右で符号が逆かつ連続でなければならず、成り立つのは回転角ゼロのときだけ。回転もたわみもゼロの点は固定端と同じ境界条件だから、各スパンは「一端固定・他端支持のプロップド梁」と完全に等価になる。この等価性のおかげで、6ブランチのうち2スパン連続の2ブランチは、プロップドの公式(モーメント・たわみ・位置)をそのまま共有できる。中間支点反力だけは左右スパンの固定端反力の合計(等分布なら 5wL/8×2=5wL/4)になる。

プロップド+等分布の最大たわみ位置 — wL⁴/185EI の正体

プロップド梁+等分布のたわみ曲線(支持端を x=0、固定端を x=L)から、最大たわみ位置を導出する。

// たわみ曲線
EIy = wLx³/16 − wx⁴/24 − wL³x/48

// 傾きゼロ EIy' = 0 を ξ = x/L で無次元化すると
8ξ³ − 9ξ² + 1 = 0
// 因数分解
(ξ − 1)(8ξ² − ξ − 1) = 0
// 0 < ξ < 1 の根
ξ = (1 + √33)/16 ≒ 0.4215

ξ=1(固定端。たわみゼロなので極値だが最大ではない)を除くと、支持端から0.4215Lの位置が最大たわみ点。ここを上式に戻すと係数は |ξ³/16 − ξ⁴/24 − ξ/48| = 1/184.63 となる。教科書によく載る「δmax≒wL⁴/185EI」の185は、この 184.63 を丸めた値だ。本ツールはハードコードせず √33 から毎回算出しているので、丸め誤差なしの厳密値が出る。

単位変換とステップバイステップ計算例

内部の単位系は N・mm に統一している。

Lmm = L × 1000     // m → mm
E_  = E × 1000     // GPa → N/mm²
I_  = I × 10⁴      // cm⁴ → mm⁴
w_  = w            // kN/m → N/mm(数値は同一)
P_  = P × 1000     // kN → N
// モーメントは N·mm で計算し ÷10⁶ で kN·m に戻す

ケース1(両端固定・H-300×150・L=6m・w=10kN/m・E=205GPa・I=7210cm⁴)を手で追うとこうなる。

// 1) モーメント・反力(単位変換前の kN・m 系でOK)
M_end = wL²/12 = 10 × 36 / 12 = 30 kN·m
M_ctr = wL²/24 = 15 kN·m
R     = wL/2   = 30 kN(両端)

// 2) たわみ(N・mm 系に変換して計算)
δ = w_·Lmm⁴ / (384·E_·I_)
  = 10 × 6000⁴ / (384 × 205000 × 7210×10⁴)
  = 2.28 mm

// 3) 単純梁比較
M_s = wL²/8 = 45 kN·m、δ_s = 5w_·Lmm⁴/(384·E_·I_) = 11.42 mm
→ 最大|M|比 30/45 = 66.7%、たわみ比 2.28/11.42 = 20.0%

たわみ比が係数比 (1/384)÷(5/384)=1/5 と一致することも確かめられる。ツールはこの計算を全ブランチで即時に行い、L/n 換算(この例では L/2628)まで表示する。

梁計算ツール4本の使い分け — 静定・不静定・断面性能の分業

Mahiro Appsの梁まわりツールは本ツールを含めて4本。守備範囲がはっきり分かれているので、迷ったらこの表で選んでほしい。

ツール対象出力
本ツール不静定梁(両端固定・一端固定他端支持・2スパン連続)反力・固定端モーメント・最大たわみ・単純梁比
/beam-strength静定梁(単純梁・片持ち梁)曲げ応力度・たわみ・安全率
/beam-sfd-bmd静定梁SFD/BMD(せん断力図・曲げモーメント図)の描画
/section-weight鋼材断面断面性能(I・Z)・単位重量

使い分けの流れはシンプルだ。支持条件が単純梁・片持ち梁なら /beam-strength で応力度・安全率まで評価し、力の流れを図で追いたければ /beam-sfd-bmd。両端固定・プロップド・連続梁という不静定の支持条件が出てきた瞬間、本ツールの出番になる。

覚えておきたいのが /section-weight との連携。本ツールのH形鋼プリセットは代表5断面だけなので、角形鋼管・溝形鋼などプリセット外の断面を使うときは、section-weight で断面二次モーメント I を計算し、その値を本ツールの I 欄に転記すればいい。単位はどちらも cm⁴ で揃えてあるから換算は不要。

本ツール自体の武器は「単純梁比の常時表示」だ。不静定梁を解けるサイトは海外にもあるが、同じ荷重・断面の単純梁と並べて「Mは何%・たわみは何%」と即答するツールは見当たらない。固定化・連続化の効果を数値で説得するための道具として設計した。

豆知識 — たわみ1/5の種明かしと、鉄道橋が生んだ三モーメント法

両端固定でたわみが1/5になる理由

魔法ではなく、重ね合わせで説明できる。単純梁の中央たわみは 5wL⁴/(384EI)。ここに両端固定で生まれる固定端モーメント wL²/12 を単純梁の両端に加えると、上に凸の逆向きたわみ ML²/(8EI) = 4wL⁴/(384EI) が発生する。差し引き 1wL⁴/(384EI) —— 端部モーメントが元のたわみの8割をきれいに打ち消す構図だ。梁を強くしたのではなく、端部の「踏ん張り」がたわみを食っている。

「完全固定」は理想化 — 実物は半剛接

現実のボルト接合や柱梁接合は有限の回転剛性しか持たない、いわゆる半剛接。実物のたわみ・端部モーメントは単純梁と両端固定の中間に落ちる。だから本ツールの単純梁比較は「上下限を一度に掴む」読み方ができる。両端固定でδ2.3mm・単純梁で11.4mmなら、実物はその間のどこか、という具合だ。

固定端モーメントはRCラーメン配筋の出発点

固定モーメント法(モーメント分配法)では、各部材の固定端モーメントを出発点に節点の不釣合いモーメントを分配していく。wL²/12 という値は、鉄筋コンクリートラーメンの梁端部上端筋を決める計算の第一歩でもある。手計算時代の構造設計者が暗記していた公式が、本ツールの中でも現役で動いている。

三モーメント法は鉄道橋から生まれた

連続梁の解法として教科書に載る三モーメント法(Theorem of three moments)は、1857年にクラペイロンがフランスの鉄道橋設計のために整理した手法。鉄道網の急拡大で長大な連続桁橋が必要になったのが背景だ。そしてこのクラペイロン、熱力学で習うクラウジウス・クラペイロンの式と同一人物。蒸気機関から橋梁まで、19世紀の技術者の守備範囲の広さには驚かされる。

実務で効くTips

  • 自重は等分布荷重に足し込む。本ツールの計算に梁の自重は含まれない。単位質量 kg/m × 9.8 ÷ 1000 で kN/m に換算して w に加算する。H-300×150 なら 36.7kg/m → 0.36kN/m。長スパンほど無視できない
  • 単純梁比%で効果を定量化してから接合部詳細に進む。たわみが20%になるなら剛接合のコスト増に見合う、41.6%止まりなら単純梁で割り切る——数字で先に判断すると手戻りがない
  • 2スパン連続の中間支点反力は単純梁2本分の1.25倍(5wL/4)。8mスパン×15kN/mなら単純梁2本で120kNのところ連続化で150kN。中間の柱・基礎・束は連続化した瞬間に負担が跳ね上がるので要注意
  • ヤング率Eはプリセット推奨。鋼205・ステンレス193・アルミ70・木材7〜12GPaと材質で桁まで変わる。GPa単位の入力ミスはたわみが3桁ずれるので、H形鋼ならプリセットでE・Iを一括セットするのが安全

よくある質問(FAQ)

Q. 不等スパンの連続梁は計算できる?

対応していない。本ツールの2スパン連続は等スパン・対称載荷が前提で、この条件のとき「中間支点で回転角ゼロ→各スパンがプロップド梁と等価」という関係が成り立ち、閉形式で解ける。スパン長が異なる場合や片スパンのみの載荷ではこの等価性が崩れ、三モーメント法の一般解が必要になるため対象外。不等スパンは構造計算ソフトか手計算での検討を。

Q. 完全固定とみなせる条件は?

端部の回転を実質的に拘束できていること——具体的には全断面を溶接した剛接合、剛な躯体への十分な埋込みなどだ。高力ボルトのウェブ接合だけならピン接合(単純梁)に近く、多くの実接合はその中間の半剛接になる。判断に迷う場合は、本ツールの結果(両端固定)と単純梁の値の両方を確認し、実物はその間に落ちると考えて安全側の値で設計するのが実務的だ。

Q. 梁の自重は計算に含まれる?

含まれない。入力した w または P だけで計算する。自重を見込むなら、単位質量 kg/m × 9.8 ÷ 1000 で kN/m に換算して等分布荷重 w に加算する。中央集中荷重モードには自重を足し込む欄がないので、自重が無視できない長スパンでは等分布モードでの別途確認も併用してほしい。

Q. 入力したデータはどこかに保存される?

保存されない。計算はすべてブラウザ内(クライアントサイド)で完結し、入力値や計算結果がサーバーに送信されることはない。ページを離れれば入力値は消えるので、残したい結果は「結果をコピー」ボタンでテキスト化して控えておくといい。

まとめ — 不静定梁は「諦める」から「即答する」へ

両端固定・プロップド・2スパン連続。手計算を諦めがちだった不静定梁の反力・固定端モーメント・たわみを、本ツールなら数秒で出せる。単純梁比の%表示で、固定化・連続化の効果まで数値で語れるのが強みだ。曲げ応力度と安全率の評価は /beam-strength、せん断力図・曲げモーメント図の確認は /beam-sfd-bmd、プリセット外断面のIの算出は /section-weight と組み合わせて、梁の検討を一気通貫で進めてほしい。

ツールへの質問や改善要望があれば、お問い合わせから気軽に送ってほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。架台横架材の端部モーメントが wL²/12 か wL²/8 か、毎回公式集をめくっていた自分のために、単純梁比まで一気に出る形にまとめた。

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