油圧ホースサイズ選定ツール

流量・圧力・管路種別から油圧ホース内径を選定し、流速と圧力損失を算出するシミュレーター

管路種別と流量を入力するだけで、JIS B 8360準拠の油圧ホースサイズを自動選定。流速判定と圧力損失も同時に算出。

シナリオプリセット

入力条件

管路種別

VG32:860 / VG46:870 / VG68:880

選定結果

推奨ホースサイズ

12.7 mm

ダッシュサイズ

-08

最小必要内径

11.9 mm

圧力損失

0.0667 MPa

推奨流速範囲

3 〜 6 m/s

実流速3.95 m/s推奨: 3 〜 6 m/s
推奨範囲内

概算値です。メーカーカタログで必ず確認してください。

不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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油圧ホースが破裂する前に――サイズ選定の「勘」を数値に変える

現場で油圧ホースが弾けた経験はあるだろうか。高圧の作動油が霧状に噴き出し、周囲の機器を油まみれにする。運が悪ければ火災や人身事故にもつながる。破裂の原因は耐圧不足だけではない。ホース内径が小さすぎて流速が上がり、異常発熱と脈動で寿命が激減するケースが意外なほど多い。

逆に安全マージンを取りすぎて太いホースを選ぶと、流速が落ちて管内に気泡が滞留し、シリンダの動きがギクシャクする。油圧ホースのサイズ選定は「大は小を兼ねる」が通用しない世界だ。

このツールは、流量と管路種別を入力するだけで JIS B 8360 準拠の標準サイズを推奨し、実流速と圧力損失を即座に算出する。ノモグラフを目で追う時代はもう終わり。選定根拠を数値で残せるから、設計レビューでも一発で説明がつく。

なぜ油圧ホースサイズ選定ツールを作ったのか

油圧回路を設計するたびに感じていた不満がある。ホースメーカーのカタログを開くと、流量と内径の関係を示す**ノモグラフ(線図)**がPDFに載っている。定規を当てて交点を読み取り、推奨サイズを割り出す――1970年代から変わらないやり方だ。

問題はいくつもある。まず読み取り精度。ノモグラフの目盛りは対数スケールで、交点が線の間に落ちると「だいたいこのあたり」という曖昧な判断になる。次に管路種別の考慮。圧力管・戻り管・吸込管で推奨流速が異なるのに、ノモグラフ1枚では1つの流速帯しかカバーしていないことが多い。結局、設計者の経験則で「戻り管だからワンサイズ上げておこう」と調整する。その「ワンサイズ」の根拠を後から説明できるだろうか。

既存のWeb計算ツールを探してみたが、油圧ホース専用のものはほぼ見つからなかった。配管の圧力損失計算ツールはあるが、ダッシュサイズ列からの自動選定管路種別ごとの流速判定を一括でやってくれるものがない。Excelで自作する手もあるが、共有しにくいし、スマホで現場確認ができない。

だから作った。流量と管路種別を入れれば、JIS標準サイズの中から最適径を選び、実流速が推奨範囲に収まっているかを即座に判定する。圧力損失もDarcy-Weisbach式で概算。設計根拠をそのままコピーしてレポートに貼れる。ノモグラフに定規を当てる手間を、ブラウザのワンクリックに置き換えたかった。

油圧ホースの基礎知識――JIS B 8360とダッシュサイズを理解する

油圧ホース 内径 計算の前提知識

油圧ホースとは、油圧ポンプからシリンダやモーターへ作動油を送るための可撓性配管だ。金属の鋼管と違い、曲げやすく振動を吸収するため、可動部や狭い取り回しが必要な箇所で使われる。

身近なたとえで言えば、庭の散水ホースを想像してみてほしい。蛇口を全開にしたとき、細いホースだと先端で水が勢いよく噴き出すが、ホース自体がパンパンに膨らんで熱を持つ。太いホースに替えると水はゆっくり流れ、圧力も落ち着く。油圧ホースでも原理は同じで、内径が小さいほど流速が上がり、圧力損失と発熱が増大する

ダッシュサイズとは

油圧業界では、ホースの内径を「ダッシュサイズ」と呼ばれる番号で表記する。ダッシュサイズは内径を1/16インチ単位で表した番号だ。たとえば -08 は 8/16 = 1/2インチ = 12.7 mm、-16 は 16/16 = 1インチ = 25.4 mm となる。

主な対応表は以下のとおり。

ダッシュサイズ内径 (mm)内径 (inch)
-046.31/4
-069.53/8
-0812.71/2
-1016.05/8
-1219.03/4
-1625.41
-2031.81-1/4
-2438.11-1/2
-3250.82

この番号体系は JIS B 8360(油圧用鋼線補強ゴムホース) で規定されており、国内外のメーカーで共通して使われている。ホースを発注するときに「-08のホースを3m」と言えば、世界中どのメーカーでも内径12.7 mmのホースが届く。

管路種別と推奨流速

油圧回路のホースは用途によって3種類に分けられる。

圧力管(Pressure Line): ポンプからアクチュエータへ高圧の作動油を送る管路。推奨流速は 3.0 - 6.0 m/s。高圧に耐える必要があるため、多層ワイヤーブレード構造のホースを選ぶ。

戻り管(Return Line): アクチュエータからタンクへ戻る管路。圧力は低いが流量は圧力管と同等かそれ以上になることもある。推奨流速は 2.0 - 4.0 m/s

吸込管(Suction Line): タンクからポンプへ作動油を吸い上げる管路。ポンプ入口が負圧になるため、潰れにくい構造(スパイラルワイヤー入り)が必要。推奨流速は 0.6 - 1.5 m/s と最も低い。流速が速すぎるとキャビテーション(気泡の発生と崩壊)を起こし、ポンプを損傷する。

この推奨流速の違いを無視してホースを選ぶと、圧力管では問題なくても吸込管では流速超過になる、という事態が起きる。管路種別ごとに計算し直す必要がある。

ホースサイズ選定を誤ると何が起きるか

流速超過の実害

ホースの内径が小さすぎて流速が推奨上限を超えると、以下の問題が連鎖的に発生する。

  1. 圧力損失の増大: 流速の2乗に比例して圧力損失が増える。ポンプの吐出圧が損失で食われ、シリンダの推力が不足する
  2. 発熱: 圧力損失はそのまま熱エネルギーに変換される。作動油の温度が上がると粘度が下がり、内部漏れが増加する悪循環
  3. 脈動と騒音: 流速が上がるとホース内の圧力脈動が大きくなり、「ヒュー」という高周波騒音や配管の振動を引き起こす
  4. ホース寿命の低下: 内圧の繰り返し変動はゴム層の疲労を加速し、カタログ寿命の半分以下で破損することもある

流速不足の実害

逆にホースが太すぎると流速が低下し、別の問題が出る。

  • 気泡の停滞: 作動油に溶け込んだ空気が低流速域で分離し、管内に気泡として残る。これがシリンダに流入するとスポンジ動作(スティックスリップ)の原因になる
  • サージ圧の発生: 気泡が圧縮・膨張を繰り返すことで異常な圧力サージが発生し、シールやバルブを傷める

規格の観点

JIS B 8360 はホースの耐圧性能(最小破裂圧力は最高使用圧力の4倍以上)を規定しているが、流速の上限は規定していない。流速管理は設計者の責任だ。油圧機器メーカーの技術資料やボッシュレックスロス、パーカー・ハネフィンなどの設計ガイドラインに推奨流速が記載されており、これを守ることが事実上の業界標準になっている。

圧力管で6 m/sを超える設計は、保険会社の設備リスク審査で指摘されることもある。ホースサイズの選定根拠を数値で残しておくことは、設計者の自己防衛でもある。

油圧ホースサイズ選定が活躍する場面

新規油圧装置の設計

油圧シリンダの必要流量からホースサイズを決める、最も基本的なシーン。圧力管・戻り管・吸込管それぞれで推奨流速が異なるため、3回の計算が必要になる。このツールなら管路種別を切り替えるだけで瞬時に比較できる。

既設ホースの交換・流量変更

工場の油圧プレスやクレーンで、シリンダを大型化して流量が増えたとき。既存のホース径で流速が推奨範囲に収まるか即座にチェックできる。「今の -08 ホースで大丈夫か?」という現場の問いに、数値で答えられる。

油圧ユニットの仕様策定

油圧ユニット(パワーパック)メーカーが、ユニットからアクチュエータまでのホース推奨サイズを仕様書に記載する場面。流量と配管長から圧力損失も含めて提示すれば、客先との認識合わせがスムーズになる。

教育・新人研修

油圧回路の基礎を学ぶとき、「なぜ吸込管は太くするのか」を流速の数値で体感できる。管路種別を切り替えて推奨流速範囲の違いを見せれば、座学より遥かに理解が早い。

基本の使い方 ―― 3ステップで油圧ホースを選定

ステップ1: 管路種別を選択

画面上部のセグメントボタンから「圧力管」「戻り管」「吸込管」のいずれかを選ぶ。管路種別によって推奨流速範囲が自動で切り替わる。

ステップ2: 流量とホース長を入力

油圧回路の流量(L/min)とホースの長さ(m)を入力する。作動油の密度は VG46 相当の 870 kg/m³ がデフォルト設定。VG32 や VG68 を使う場合は手動で変更する。

ステップ3: 選定結果を確認

入力と同時に以下が自動計算される。

  • 推奨ホースサイズ: JIS B 8360 標準サイズ列から最適な内径とダッシュサイズ
  • 実流速: 選定径での実際の流速と、推奨範囲内かどうかの判定
  • 圧力損失: Darcy-Weisbach 式による概算値(MPa)

結果はコピーボタンでクリップボードに保存し、設計レポートにそのまま貼り付けられる。

油圧ホース サイズ選定の具体例 ―― 6パターンで検証

ケース1: 圧力管 30 L/min(標準的な小型シリンダ)

  • 入力: 管路種別 = 圧力管、流量 = 30 L/min、ホース長 = 5 m、密度 = 870 kg/m³
  • 結果: 最小必要内径 = 11.89 mm → 推奨サイズ 12.7 mm(-08)、実流速 = 3.95 m/s、圧力損失 = 0.0667 MPa
  • 解釈: 実流速 3.95 m/s は推奨範囲(3.0 - 6.0 m/s)のほぼ中央。理想的な選定だ。圧力損失も 0.07 MPa 未満で、21 MPa 系統なら無視できるレベル。

ケース2: 戻り管 60 L/min(中型プレスの戻り回路)

  • 入力: 管路種別 = 戻り管、流量 = 60 L/min、ホース長 = 5 m、密度 = 870 kg/m³
  • 結果: 最小必要内径 = 20.60 mm → 推奨サイズ 25.4 mm(-16)、実流速 = 1.97 m/s、圧力損失 = 0.0083 MPa
  • 解釈: 戻り管の推奨範囲(2.0 - 4.0 m/s)の下限付近。余裕をもった選定。もし -12(19.0 mm)にすると内径が最小必要径を下回るため不可。

ケース3: 吸込管 20 L/min(小型ユニットのポンプ吸込)

  • 入力: 管路種別 = 吸込管、流量 = 20 L/min、ホース長 = 5 m、密度 = 870 kg/m³
  • 結果: 最小必要内径 = 18.81 mm → 推奨サイズ 19.0 mm(-12)、実流速 = 1.18 m/s、圧力損失 = 0.0040 MPa
  • 解釈: 吸込管は推奨流速が 0.6 - 1.5 m/s と低いため、同じ 20 L/min でも圧力管より太いホースが必要。実流速 1.18 m/s は範囲内で、キャビテーションのリスクも低い。

ケース4: 圧力管 100 L/min・短配管(大型シリンダ直結)

  • 入力: 管路種別 = 圧力管、流量 = 100 L/min、ホース長 = 3 m、密度 = 870 kg/m³
  • 結果: 最小必要内径 = 21.71 mm → 推奨サイズ 25.4 mm(-16)、実流速 = 3.29 m/s、圧力損失 = 0.0139 MPa
  • 解釈: 100 L/min の大流量でも -16 ホースで流速 3.29 m/s に収まる。配管長が短い(3 m)ため圧力損失も 0.014 MPa と小さい。長距離配管なら損失が比例して増えるため注意。

ケース5: 戻り管 15 L/min・長配管(遠隔シリンダの戻り)

  • 入力: 管路種別 = 戻り管、流量 = 15 L/min、ホース長 = 8 m、密度 = 870 kg/m³
  • 結果: 最小必要内径 = 10.30 mm → 推奨サイズ 12.7 mm(-08)、実流速 = 1.97 m/s、圧力損失 = 0.0266 MPa
  • 解釈: 少流量でもホース長が 8 m あるため、圧力損失が 0.027 MPa まで積み上がる。戻り管の背圧が高くなるとシリンダの速度低下につながるので、長距離の場合は 1 サイズ上の -10(16 mm)も検討に値する。

ケース6: 吸込管 80 L/min(大型ユニットのポンプ吸込)

  • 入力: 管路種別 = 吸込管、流量 = 80 L/min、ホース長 = 2 m、密度 = 870 kg/m³
  • 結果: 最小必要内径 = 37.62 mm → 推奨サイズ 38.1 mm(-24)、実流速 = 1.17 m/s、圧力損失 = 0.0008 MPa
  • 解釈: 80 L/min の吸込管には -24 という大口径が必要になる。吸込管は流速制限が厳しいため、圧力管(同流量なら -16 程度)と比べて 2 サイズ以上太くなるのが普通だ。圧力損失は 0.001 MPa 未満で、ポンプ吸込性能への影響は無視できる。

仕組みとアルゴリズム ―― 流速基準選定法と Darcy-Weisbach 式

2つの選定アプローチ

油圧ホースのサイズ選定には、大きく分けて2つの手法がある。

流速基準選定法: 管路種別ごとの推奨流速からホース内径を逆算する方法。計算が単純で、設計初期段階の概算に適している。本ツールはこの手法を採用。

圧力損失基準選定法: 回路全体の許容圧力損失を決め、そこから各配管区間の内径を最適化する方法。継手やエルボの等価長さも加味するため精度は高いが、回路全体の情報が必要になり、単独の配管選定には向かない。

本ツールでは、設計者が最初に知りたい「この流量ならどのサイズか」に最速で答えるため、流速基準選定法を採用した。圧力損失は Darcy-Weisbach 式で補助的に算出し、選定の妥当性確認に使う。

計算フローの詳細

1. 流量変換: Q [m³/s] = Q [L/min] / 60000
2. 最小必要内径: d_min [mm] = sqrt(4 * Q / (π * v_target)) * 1000
3. サイズ選定: JIS B 8360 標準サイズ列から d_min 以上の最小値を選択
4. 実流速: v [m/s] = Q / (π * (d / 2000)²)
5. 圧力損失: ΔP [MPa] = f * (L / d_m) * (ρ * v² / 2) / 1e6

ここで、v_target は管路種別ごとの目標流速(圧力管: 4.5 m/s、戻り管: 3.0 m/s、吸込管: 1.2 m/s)、f は Darcy-Weisbach の摩擦係数(ゴムホース代表値 0.025 固定)、L はホース長 [m]、d_m は選定ホース径 [m]、ρ は作動油密度 [kg/m³] だ。

摩擦係数 0.025 はレイノルズ数 Re = 1000 - 5000 程度の層流~遷移域でのゴムホースの実測値に基づく代表値。厳密にはムーディ線図やコールブルックの式で Re と管壁粗さから求めるが、概算段階では固定値で十分な精度が得られる。

計算例: 圧力管 30 L/min の場合

Q = 30 / 60000 = 0.0005 m³/s

d_min = sqrt(4 * 0.0005 / (π * 4.5)) * 1000
      = sqrt(0.00003537) * 1000
      = 0.005947 * 1000 ... ではなく正確に計算すると
      = sqrt(4 * 0.0005 / 14.137) * 1000
      = sqrt(0.0001415) * 1000
      = 11.89 mm

JIS 標準サイズ: 6.3, 9.5, 12.7, 16, 19, 25.4, ...
→ 11.89 mm 以上の最小値 = 12.7 mm(-08)を選定

v = 0.0005 / (π * (0.00635)²)
  = 0.0005 / 0.0001267
  = 3.95 m/s ← 推奨範囲 3.0-6.0 内

ΔP = 0.025 * (5 / 0.0127) * (870 * 3.95² / 2) / 1e6
   = 0.025 * 393.7 * 6789 / 1e6 ... ではなく
   = 0.025 * 393.7 * (870 * 15.60 / 2) / 1e6
   = 9.843 * 6786 / 1e6
   = 0.0668 MPa

推奨範囲内の 3.95 m/s で選定完了。圧力損失 0.067 MPa は一般的な 21 MPa 系統では 0.3% 程度の損失であり、実用上問題ない。

Darcy-Weisbach 式の詳細は Wikipedia: ダルシー・ワイスバッハの式 を参照してほしい。また、JIS B 8360 の規格概要は 日本産業標準調査会(JISC) で確認できる。

メーカーPDFノモグラフとの決定的な違い

油圧ホースのサイズ選定には、大きく3つの方法がある。

1. メーカーカタログのノモグラフ(線図)

各ホースメーカーが技術資料として提供している、流量と内径の関係を示す線図。紙やPDF上で定規を当てて読み取る方式で、読み取り精度はユーザーの目分量に依存する。圧力管・戻り管・吸込管で推奨流速が異なることは注釈に小さく書いてあるだけで、管路種別を意識せずに選定ミスするケースが後を絶たない。

2. Excelの自作計算シート

Darcy-Weisbach式を自分で組んだExcelファイル。計算精度は高いが、JIS B 8360の標準サイズ列を手動で管理する必要があり、サイズ追加や計算式の修正が属人化しやすい。部署異動でファイルが行方不明になるのもよくある話。

3. 本ツール

管路種別をワンタップで切り替えるだけで推奨流速範囲が自動変更され、JIS B 8360の9サイズから最適径を即座に選定する。流速判定(推奨範囲内 / 上限付近 / 超過)もカラーで一目瞭然。ノモグラフの読み取り誤差もExcelの属人化も発生しない。

メーカーPDFが悪いわけではない。ただ、「流量30 L/minで圧力管なら何mmか」をパッと確認したいだけの場面で、PDF内の該当ページを探してズームして定規を当てる……という手間は、正直もう令和にはそぐわない。


油圧ホースの豆知識 --- ダッシュサイズの由来と寿命の話

ダッシュサイズ(-04, -06, -08...)の正体

油圧ホースのカタログを見ると、内径の代わりに「-04」「-06」「-08」といったダッシュサイズ表記が目に入る。この数字の正体は、ホース内径を1/16インチ単位で表したもの。-04なら4/16 = 1/4インチ = 6.35 mm、-08なら8/16 = 1/2インチ = 12.7 mmという具合だ。

もともとアメリカのSAE規格(SAE J517)から始まった表記法で、日本のJIS B 8360もこのダッシュサイズ体系を踏襲している。インチとミリが混在する現場では「-12のホース持ってきて」と言えば内径19 mmだと誰でも分かるので、いまだに根強く使われている。

ホースの寿命はベンド半径で決まる

油圧ホースの寿命を左右する最大の要因は、意外にも「曲げ半径」だ。メーカーが指定する最小曲げ半径(ベンド半径)を下回る取り回しをすると、補強層のワイヤーブレードに局所的な応力集中が発生し、寿命が激減する。

一般的な目安として、内径の6〜8倍以上のベンド半径を確保するのがセオリー。内径19 mm(-12)のホースなら、最低でも半径114〜152 mmの曲げ空間が必要になる。設計段階でホースの取り回しルートを3D-CADで検証し、最小曲げ半径を下回る箇所がないかチェックするのが、トラブル防止の第一歩だ。

圧力管と吸込管で推奨流速が4倍違う理由

圧力管の推奨流速上限が6 m/sなのに対し、吸込管は1.5 m/sと4倍の開きがある。これは吸込管側ではポンプの吸引力で油が引っ張られるため、流速が上がるとキャビテーション(油中の気泡生成)が発生しやすくなるから。キャビテーションはポンプのインペラーやギヤを侵食し、騒音・振動・寿命低下の三重苦を引き起こす。だから吸込管は圧力管より太い径を選ぶのが鉄則になっている。


油圧ホース選定を失敗しないための5つのTips

1. 管路種別の選択を最初に確認する

圧力管のつもりで選定したホースを吸込管に使うと、流速が推奨範囲を大幅に超えてキャビテーションの原因になる。選定画面で管路種別を間違えていないか、最初に確認する癖をつけよう。

2. 作動油の粘度グレードで密度を補正する

デフォルトのVG46(870 kg/m3)で問題ないケースが大半だが、VG32(約860 kg/m3)やVG68(約880 kg/m3)を使っている場合は密度を変更しておくと圧力損失の精度が上がる。特に長配管(10 m超)では差が無視できなくなる。

3. 流速判定が「上限付近」なら1サイズ上を検討する

「推奨範囲内」と表示されていても、上限ギリギリで運用すると油温上昇時に粘度が下がり、実質的な流速がさらに上がる。余裕を持って1サイズ上を選んでおくと、夏場の高温環境でもトラブルを回避しやすい。

4. 圧力損失が大きい場合はホース長の短縮を検討する

ホース径を上げる以外にも、ホースの取り回しを見直して長さを短縮するアプローチがある。圧力損失はホース長に比例するため、1 m短くするだけでも効果は大きい。

5. 選定結果はコピー機能で設計書に転記する

「結果をコピー」ボタンで推奨サイズ・流速・圧力損失をまとめてクリップボードに取得できる。設計書やメールへの転記ミスを防げる。


よくある質問

Q: 摩擦係数f=0.025は固定だが、実際のホースと乖離しないか?

f=0.025はゴム製油圧ホースの代表値として広く使われている値で、一般的な作動油(VG32〜VG68)・常温運転の条件ではおおむね妥当だ。厳密にはレイノルズ数やホース内面の粗さによって変動するが、ホース選定の初期段階では十分な精度。最終的な圧力損失の検証はメーカーの圧力損失線図と照合することを推奨する。

Q: JIS B 8360にないサイズ(例えばφ20やφ30)は選定できないのか?

本ツールはJIS B 8360の標準サイズ列(6.3〜50.8 mm、9サイズ)を基準にしている。メーカー独自サイズ(φ20, φ22.2等)は規格外のため対象外だ。ただし、最小必要内径の数値は表示されるので、その値を参考にメーカーカタログから独自サイズを選ぶことは可能。

Q: 最大サイズ(50.8 mm)を超える流量にはどう対応すればよい?

必要内径が50.8 mmを超える場合、ツールは警告を表示する。対処法としては、配管を2系統に分岐して流量を分散させるのが一般的。例えば200 L/minの圧力管なら、100 L/min×2系統に分けてそれぞれ選定し直せばよい。

Q: 継手やエルボの圧力損失は含まれているのか?

現在のバージョンでは、直管部分の圧力損失のみを算出している。継手・エルボ・バルブ等の局所損失は含まれていない。実務では局所損失を等価管長(継手を直管何mに換算するか)として加算するのが一般的で、ホース長の入力にその等価長さを上乗せすることで近似的に対応できる。90度エルボ1個あたり内径の20〜30倍を等価管長として加算するのが目安だ。

Q: 入力した条件や計算結果が外部に送信されることはあるか?

一切ない。すべての計算はブラウザ内のJavaScriptで完結しており、入力データがサーバーに送信されることはない。安心して社内の設計データを入力してほしい。


まとめ --- 油圧ホース選定を数値で裏付ける

油圧ホースの選定は、管路種別ごとの推奨流速を守ることが最重要ポイント。本ツールなら流量を入力するだけで、JIS B 8360標準サイズから最適径を選び、実流速と圧力損失まで一発で確認できる。

油圧回路の設計をさらに深掘りしたい場合は、油圧シリンダ計算ツールでシリンダの推力・速度を算出したり、油圧ユニット選定ツールでポンプ・モーターの組み合わせを検討したりしてみてほしい。配管全体の流量バランスを見たいなら配管流量計算ツールも役立つ。

不具合の報告や機能追加のリクエストは、お問い合わせページから気軽にどうぞ。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。油圧配管の取り回しを設計するたび、ノモグラフに定規を当てていた日々をこのツールで終わらせた

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