仮囲い・フェンスの風荷重計算(支柱の曲げ・控えの力)

仮設の指針と建築基準法の風圧力を並べて、支柱の曲げの安全率・控えの軸力・根元の力・支柱間隔の上限を出す

仮囲い(仮設の指針)とフェンス(建築基準法)の風圧力から、支柱の曲げの安全率・控えの力・支柱間隔の上限を出す

よくある場面(プリセット)

対象と寸法

対象

切り替えると風力係数・高さ・間隔・控えの高さを対象の既定値に戻す

0.6〜4 m

0.9〜3 m

板の種類

すき間なし=鋼板・パネル・波板。ルーバー・メッシュは充実率を入れる

風

国交省の要領は強風時25・常時15

国交省要領の1.3

速度圧 q = V² ÷ 16 × 9.80665 [N/m²](仮設工業会の風荷重指針の式。高さ15m以下で補正係数 K=1.00)、風圧力 P = q × C × 充実率

支柱と控え

支柱

Z=3.83 cm³。許容曲げは仮囲いで235.4 N/mm²(仮設の指針値)、フェンスで355 N/mm²(STK500 の短期許容 F)

控え

斜め控えは支柱ごとに1本、根元はピン(回転自由)として計算する

高さ H 以下

15〜75 度

支柱の安全率2.01
OK
風控え 45°2.00 mH 3.00 m

支柱の色は安全率の判定に応じて変わる(板の破線はすき間のある板)

風圧力 P

498 N/m²

q 383 × C 1.3 × φ 1.00

速度圧 q

383 N/m²

25²÷16×9.80665

支柱1本の風荷重

2.69 kN

896 N/m × H

支柱の最大曲げ

0.45 kN·m

σ 117.0 / 許容 235.4 N/mm²(仮設の指針値)

支柱間隔の上限(安全率1.0)

3.62 m

入力できる上限3.0mを超えている=間隔は支柱の曲げで決まらない

控えの軸力

2.85 kN

控え杭・アンカーはこの力以上で引き抜けないこと

控え位置の水平反力

2.02 kN

軸力 × cos(角度)

根元の水平力

0.67 kN

根元はピンなので曲げは0

フェンスの基準なら

994 N/m²

いまの基準の ×2.00・区分III・V0=34・C=1.2で計算

足場の壁つなぎ・建枠は足場荷重・強度検討ツール、単管を梁として使うスパンは単管パイプ耐荷重・スパン計算、控え・柱脚のアンカーはアンカーボルト引抜・せん断強度計算へ。

風圧力は、仮囲いは仮設工業会の風荷重指針(国交省要領の転記)、フェンスは建築基準法施行令87条・告示1454号の式による概算。すき間のある板は受風面積を充実率ぶん減らす近似で、フェンスの風力係数1.2は慣用値。基礎・控え杭の耐力、控えの座屈、クランプの耐力、地形による風速の割増し、控えの鉛直分力が支柱に入れる軸力(控えが立つほど大きい)は含まない。実際の設置では特記・メーカーの施工説明書に従うこと。

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台風の前の晩、仮囲いの単管とフェンスの柱が気になったら ― 仮囲い 風荷重計算 と フェンス 支柱 間隔

台風の予報円が近づいてきた日の夕方。現場の外周に立てた鋼板の仮囲いの裏に回って、単管の支柱と斜めの控えを1本ずつ見ていく。支柱は1.8mおき、高さは3m。「この間隔で、本当に持つのか」。頭の中で計算しようとしても、風速を何m/sで見ればいいのか、板1枚にどれだけ力がかかるのかが出てこない。

家でも同じ不安は起きる。去年、隣の家との境に立てた高さ1.8mの目隠しフェンス。すき間のない板で、柱は2mおき。窓の外で風が鳴るたびに、隣の車の側へ倒れたらどうしようと考えてしまう。

この2つの問いは、実は同じ形をしている。板に当たった風の力が支柱に集まり、支柱の根元を曲げ、控えや基礎に流れていく。だから「何m/sの風で、板1m²あたり何Nか」「支柱1本が受け持つ力はいくつか」「その曲げに支柱が耐えるか」を順に追えば、答えが数字で出る。

たとえば高さ3.0mの鋼板の仮囲いを、単管φ48.6×2.4の支柱で1.8mおきに立て、地上2.0mの位置に45°の斜め控えを付けたとする。風速25m/sで見ると、支柱の曲げの安全率は2.01、曲げで決まる支柱間隔の上限は3.62m、控えにかかる軸力は2.85kNになる。同じ仮囲いから控えを外して自立させると、安全率は0.22まで落ちる。目隠しフェンスのほうは、同じ単管を2.0mおきに立てると安全率0.42で、単管で持たせるなら間隔は0.84mまでという答えになる。

このツールは、工事現場の仮囲いを国土交通省の要領が引く仮設工業会の風荷重指針の式で、外構のフェンスを建築基準法施行令87条と告示1454号の式で計算する。風圧力から支柱1本の荷重、最大曲げ、安全率、控えの軸力、根元に伝わる力、支柱間隔の上限までを一度に出し、もう一方の基準で計算した風圧力も並べて表示する。

なぜ作ったのか ― 同じ板に当たる風なのに、仮設と恒久で2倍違った

最初のきっかけは仮囲いのほうだった。現場では「控えを入れておけば大丈夫」「うちはいつもこの間隔」で話が終わることが多い。それで実際に困ったことがなくても、台風が来るたびに同じ不安が戻ってくる。根拠を探すと、仮囲いの風荷重は仮設工業会の『改訂 風荷重に対する足場の安全技術指針』の考え方で見るのが通例で、国土交通省 北陸地方整備局の『雪寒仮囲い設計施工要領』(冬期施工の防雪・防寒用の仮囲いが対象)にもその式が転記されている。速度圧は風速の2乗を16で割る、kgf 時代から続く形の式だ。

ところが自宅のフェンスを調べ始めると、出てくるのは建築基準法施行令87条の q = 0.6·E·V0² で、基準風速は地域ごとに告示で決まっている。同じ「すき間のない板に横から当たる風」なのに、仮設と恒久で見る基準がまったく別だった。

両方の式で同じ条件を計算してみて驚いた。すき間のない板、風力係数は仮囲い1.3・フェンス1.2という両者の初期値で、仮囲いの式(風速25m/s)だと風圧力は498N/m²、フェンスの式(地表面粗度区分III・基準風速34m/s)だと994N/m²。ほぼ2.0倍違う。

どちらかが間違っているわけではない。仮設の式は、使う期間が短く、強風の予報が出れば作業を止めて点検・補強する前提で、設計に使う風速を決めている。恒久の建物や塀は、その土地で数十年に一度吹くような強風に、誰も見ていない夜でも耐え続けなければならない。前提が違えば数字も違う。ただ、その差が「2倍」という大きさだと知っているかどうかで、判断はかなり変わる。仮囲いの感覚のまま自宅のフェンスの柱を選べば足りなくなるし、逆にフェンスの基準で仮囲いを組めば材料が過大になる。

調べた範囲では、要領や指針は式を示していても計算は手でやることになり、フェンスはメーカーの施工説明書にある基礎寸法の表を読む形がほとんどだった。表は標準の高さ・柱間隔・板で作られているので、柱間隔を広げたい、ルーバーにしたい、海沿いに建てたい、といった条件の変更があると読めなくなる。仮設と恒久の2つの基準を同じ画面に並べ、自分の条件で支柱の曲げまで追える計算ツールは見当たらなかった。

だからこのツールでは、対象を仮囲いとフェンスで切り替えるだけで式が入れ替わるようにし、さらに「もう一方の基準で計算したら風圧力はいくつか」を結果に常に並べることにした。2倍の差を、毎回目で確かめられるように。

風荷重 とは何か ― 速度圧 と 風力係数 の求め方

風荷重 とは:動いている空気が板を押す力

走っている車の窓から手のひらを外に出したことがあるだろうか。手のひらを進行方向に向けると、ぐっと後ろに押される。速度を倍にすると、押される力は倍ではなく4倍くらいになる。風荷重の正体はこれだ。

動いている空気は質量を持っているので、板にぶつかって止められると、その運動の勢いが圧力に変わる。この圧力を動圧といい、空気の密度 ρ と風速 V を使って次のように書ける。

動圧 = ½·ρ·V²   [N/m²]
ρ ≒ 1.225 kg/m³(標準的な空気の密度)
V = 25 m/s のとき ½ × 1.225 × 25² ≒ 383 N/m²

風速の2乗で効くのがポイントで、25m/sが30m/sになると、風速は1.2倍でも圧力は1.44倍になる。383N/m²は、1m²の板に約39kgの重りを横から押し付けているのと同じ大きさだ。

速度圧 求め方(仮設):q = V²/16 の「16」はどこから来たか

構造計算では、この動圧に相当する量を速度圧 q と呼ぶ。仮囲いの風荷重で使われる仮設工業会の指針の式は、国交省の雪寒仮囲い設計施工要領に次の形で転記されている。

q = 1/16 · (K·V)² × 9.80665   [N/m²]
K:地上高さによる補正(15m以下 1.00、15〜35m 1.06、35〜50m 1.09、50m超 1.12)
V:設計用の風速(要領では通常15m/s、最大25m/s)

16という半端な数は、重力単位系(kgf)の名残だ。空気の密度 1.225kg/m³ を重力加速度 9.80665 で割ると、kgf・s²/m⁴ という単位で約0.125、つまりほぼ1/8になる。その半分が1/16。だから V²/16 は「½ρV² を kgf/m² で書いたもの」で、最後の×9.80665は kgf を N に直すための換算にすぎない。V=25m/s を入れると 25²/16 = 39.06kgf/m² = 383N/m² で、上の動圧の計算とほぼ一致する。

労働安全衛生総合研究所の特別研究報告 SRR-81-1-3 に載っている旧指針案では、q = Vh²/16 [kgf/m²]、Vh = K·E·V(E は近くに高層建築物があるときの影響係数)と書かれていて、この形が長く使われてきたことが分かる。仮囲いやフェンスは高さ4m以下なので、K は1.00のままでよい。

速度圧 求め方(建築基準法):q = 0.6·E·V0²

恒久の建物や塀の風圧力は、建築基準法施行令 第87条で「速度圧 × 風力係数」と決められ、速度圧は次の式で出す。

q = 0.6 · E · V0²   [N/m²]
V0:基準風速(地域ごとに告示で 30〜46 m/s)
E = Er² · Gf
Er = 1.7 · (Zb / ZG)^α   (高さ H ≦ Zb のとき)

0.6は ½ρ の ρ を1.2kg/m³ と置いた値で、考え方は仮設の式と同じだ。違うのは E の中身にある。

Er は「その高さで風速が基準の何割になるか」を表す。地面の近くは建物や木が風を引きずって遅くするので、街なかほど地表付近の風は弱い。その「地面のざらつき」の度合いが地表面粗度区分で、平成12年建設省告示1454号は I〜IV の4つに分けて、区分ごとに Zb・ZG・α を決めている。

区分Zb(m)ZG(m)αGf(H≦10m)Er(H≦Zb)
I52500.102.01.1496
II53500.152.20.8988
III54500.202.50.6912
IV105500.273.10.5762

フェンスは高さが Zb(5m または10m)より低いので、Er は高さによらず一定になる。Gf はガスト影響係数で、風の息(突風)で瞬間的に強まる分を見込む係数だ。街なかほど風は弱いが乱れが大きいので、Er が小さくなるかわりに Gf が大きくなる。I と IV は特定行政庁が規則で定める区域で、ふつうの市街地・住宅地は III になることが多い。粗度区分の規定は令和2年12月公布・令和4年1月施行で改正されているので、自分の土地の区分は特定行政庁のページで確かめてほしい(愛媛県の解説ページが区分と値を整理している)。

区分III なら Er = 0.6912、E = 0.6912² × 2.5 = 1.1944。基準風速34m/s を入れると q = 0.6 × 1.1944 × 34² = 828N/m² になる。½ρV² の形に戻して風速に直すと約37m/s 相当で、仮設の25m/s との差が、そのまま2乗で速度圧の差になっている。

風力係数 と 充実率:板の形と、すき間の割合

速度圧は「止められた空気の圧力」の目安で、実際に板が受ける力は形によって変わる。その倍率が風力係数 C だ。風上側で押され、風下側では渦で引っ張られるので、1枚の板が単独で立っていると C は1を超える。国交省の要領は仮囲いに「従来から標準的な値とされてきた」C = 1.3 を使う。塀については、補強コンクリートブロック造の塀の平成12年建設省告示1355号が「令87条2項に準じた速度圧に、同条4項に準じて定めた風力係数を乗じた風圧力」で確かめるとしているが、塀の風力係数の値そのものは告示に表として載っていない。このツールがフェンスの初期値に、独立した壁に慣用される1.2を置き、入力欄で変えられるようにしたのはそのためだ。

ルーバーやメッシュシートのように、すき間のある板は風の一部が抜ける。板の面積 ÷ 全体の面積を充実率 φ と呼び、このツールでは受風面積を φ ぶん減らす近似で、風圧力を P = q·C·φ とした。すき間のない鋼板やパネルは φ = 1 だ。厳密には、すき間のある板の風力係数は目の形や細かさで変わるので、ここは近似として割り切っている。

支柱の曲げ:片持ち梁 として考える

板が受けた風は、左右の支柱にそれぞれ半スパンずつ流れ込む。支柱1本から見ると、両隣との中間までの幅、つまり支柱の間隔ぶんの板が受けた風を、高さ方向に均等に受け持つことになる。

机の端から定規を半分出して、出ている部分を指で押してみると、定規は机の角の位置でいちばん大きく曲がろうとする。自立した支柱はこれと同じ片持ち梁で、根元に最大の曲げモーメントがかかる。

w = P × 支柱の間隔        [N/m](支柱1本が受ける線荷重)
F = w × H                [N]  (支柱1本の風荷重の合計)
M = F × H / 2            [N·m](根元の曲げ。合力 F が高さの中央に作用)
σ = M / Z                [N/mm²]

Z は**断面係数**で、同じ曲げに対して断面がどれだけ応力を小さく抑えられるかを表す。仮設でおなじみの単管 φ48.6×2.4 は JIS G 3444 の表値で Z = 3.83cm³。この σ が支柱の材料の許容曲げ応力度に収まっていれば曲げには耐える、と判断する。単管を梁として横に渡したときの曲げは単管パイプ耐荷重・スパン計算で見られるが、ここでは支柱を縦に立て、風で横から押される向きで同じ考え方を使っている。

支柱の間隔 と 控え が大事な理由 ― 曲げは9倍、間隔は比例で効く

控えを外すと、支柱の曲げは9倍になる

高さ3.0mの鋼板の仮囲い、単管を1.8mおき、風速25m/s。控えを地上2.0mに付けた状態での最大曲げは0.45kN·mで、安全率は2.01。同じ仮囲いから控えを外して自立させると、根元の曲げは4.03kN·m、安全率は0.22になる。曲げはちょうど9倍だ。

9倍になる理由は単純で、自立だと曲げの「腕」が高さ3.0mまるごとになるのに対し、控えがあると控えから上に突き出た1.0mだけが片持ちとして効くからだ。片持ちの曲げは長さの2乗に比例するので、(3.0 / 1.0)² = 9。控えは、支柱の曲げに効く長さを短く切る部材だと考えると分かりやすい。

控えは「高いほどよい」わけではない

直感に反するのが、控えの取付け高さだ。控えを支柱の頂部(地上3.0m)に付けると、張出しはなくなるが、根元と頂部の間が単純梁になって、中ほどが大きく曲がる。最大曲げは1.01kN·mで、2.0mに付けたときの2.25倍、安全率は0.89で1を切る。

逆に控えを低く、地上1.2mに60°で付けると、控えより上の張出しが1.8mに伸びて最大曲げは1.45kN·m(3.24倍)、安全率0.62。そのうえ控えの軸力は6.72kNと、2.0m・45°のときの2.36倍になる。控えが低く角度が立つほど、同じ風に対して控えが受け持つ力は大きくなり、控えの下端の杭やアンカーにもその力がかかる。控えを付ける位置は、支柱の曲げと控えの力の両方を変える設計の選択肢なのだ。

高さを下げても、自立ではまだ足りない

「控えが付けられない場所なので、仮囲いを2.0mに下げて自立させよう」という判断もありうる。曲げは高さの2乗で効くので、3.0mから2.0mに下げると根元の曲げは (2/3)² = 0.44倍になる。それでも単管・1.8mおき・風速25m/s では安全率0.50で、まだ半分しかない。高さを下げる手は効くが、単管の自立を成立させるほどではない。

支柱間隔の上限は「いまの間隔 × 安全率」

支柱1本が受ける風は支柱の間隔に比例するので、曲げも間隔に比例する。だから安全率がちょうど1.0になる間隔は、いまの間隔に安全率を掛けるだけで求まる。控えありの例なら 1.8 × 2.01 = 3.62m、自立なら 1.8 × 0.22 = 0.40m だ。40cmおきに単管を立てるのは現実的ではないので、単管の仮囲いは控えがあって初めて成り立つ、ということがこの数字から読める。

倒れたときに被害を受けるのは、たいてい第三者だ

仮囲いは工事現場と道路・歩道の境目に立つ。建築基準法施行令136条の2の20は、木造で高さ13mまたは軒高9mを超える建築物、木造以外で2階以上の建築物の工事では、原則として高さ1.8m以上の板塀その他の仮囲いを設けるよう求めている(同等以上の囲いがある場合や、危害防止上支障がない場合を除く)。周囲の人を守るための囲いが、強風で歩道側へ倒れれば、守るはずの通行人や車に直接当たることになる。自宅のフェンスも同じで、倒れる先は隣家の敷地や道路であることが多い。

もう1つ大事なのが基礎の見方だ。埋込み式の基礎は、周りの土が押し返す抵抗で持っている。これを重さだけで判断すると、実態と大きく食い違う。たとえば目隠しフェンス H1.8 の根元の曲げを、60kgの基礎ブロックの重さだけで受けると考えると、安全率は0.02という、どう見ても実態と合わない値になる。現に建っているフェンスの多くはそんな状態で倒れていない。このツールが基礎の転倒判定を出さず、根元に伝わる水平力と曲げを出してメーカーの基礎仕様と比べる形にしたのはこのためだ。

活躍する場面 ― 現場の外周から、自宅の境界まで

工事着手前の仮囲い計画

施工計画書に仮囲いの仕様を書く段階で、支柱の間隔と控えの位置を決めるときに使える。風速を25m/sで見るか、台風の通り道で30m/sまで見ておくかを入れ替えれば、控えの軸力がどれだけ増えるかも同時に分かるので、控え杭やアンカーの選定までつながる。

メッシュシートで囲う現場

解体や外壁改修でメッシュシートを張る場合、すき間があるぶん風圧力は小さくなる。充実率を入れれば、鋼板の仮囲いとの差がすぐ出る。逆に、メッシュの上から防音シートを重ねると充実率は1に近づくので、張り替えのときに支柱が足りるかの確認にもなる。

自宅の目隠しフェンスを選ぶとき

施主の立場で、すき間のない板にするかルーバーにするか、柱を何mおきに立てるかを考えるとき。高さを1.8mから1.5mに下げたら、ルーバーにしたら、柱の間隔をどこまで広げられるかが数字で比べられる。外構業者の提案を受ける前に、自分の土地の基準風速と粗度区分で一度見ておくと話が早い。

外構業者が施主に説明するとき、台風の前に点検するとき

「なぜこの柱の間隔なのか」「なぜこの太さの柱なのか」を施主に説明する材料として、また台風の前に既存の仮囲いやフェンスを点検するときの目安として使える。安全率が1.5を下回る結果なら、錆やクランプのゆるみで足りなくなりうる、という見当がつく。

基本の使い方 ― 対象・風・支柱の3ステップ

ステップ1:対象と寸法を入れる。 まず仮囲い(仮設)かフェンス(恒久)かを選ぶ。切り替えると、風力係数と高さ・支柱の間隔・控えの高さが対象の初期値に戻る。続けて高さ H と支柱の間隔、板の種類(すき間なし/ルーバー/メッシュ)を選ぶ。ルーバーとメッシュを選んだときは充実率の欄が出るので、初期値(ルーバー0.7・メッシュ0.3)のままか、実物の値を入れる。鋼板の仮囲い、メッシュシートの仮囲い、目隠しフェンス、ルーバーフェンスの4つの典型条件は、ひと押しでまとめて入れられる。

ステップ2:風を決める。 仮囲いは設計風速 V(初期値25m/s)を入れる。フェンスは基準風速 V0(30〜46m/s)と地表面粗度区分(I〜IV)を選ぶ。風力係数 C は仮囲い1.3・フェンス1.2が初期値で、根拠のある値があれば書き換えられる。

ステップ3:支柱と控えを選んで、結果を読む。 支柱は単管 φ48.6×2.4 か、断面係数と許容曲げ応力度を直接入れるかを選ぶ。控えは「なし(自立)」か「斜め控え」で、斜め控えなら取付け高さと水平からの角度を入れる。

結果には、まず支柱の安全率が判定(OK/余裕が少ない/曲げで不足)とともに出る。その下に、板・支柱・控えを横から見た側面図が、風の矢印と高さ・控え位置の寸法線つきで描かれる。数値は、風圧力と速度圧と支柱1本の風荷重、支柱の最大曲げと支柱間隔の上限、控えの軸力と根元の水平力(自立なら根元の曲げと水平力)、もう一方の基準で計算した風圧力、とまとまって並ぶ。結果はテキストでコピーでき、施工計画書や見積もりのメモにそのまま貼れる。

具体的な使用例・検証データ ― 9ケースで仮囲いとフェンスを比べる

ここからは9つのケースを、入力 → 結果 → 解釈の順に見ていく。数値はツールに同じ値を入れたときの出力だ。

ケース1:鋼板の仮囲い H3.0m、控えあり(基準のケース)

  • 入力:仮囲い、高さ3.0m、支柱の間隔1.8m、すき間なし、設計風速25m/s、C = 1.3、単管、斜め控え(地上2.0m・45°)
  • 結果:速度圧383N/m²、風圧力498N/m²、支柱1本の風荷重2.69kN、最大曲げ0.45kN·m(σ 117.0 / 許容235.4N/mm²)、安全率2.01(OK)、支柱間隔の上限3.62m、控えの軸力2.85kN、根元の水平力0.67kN、フェンスの基準なら994N/m²
  • 解釈:曲げには倍の余裕がある。間隔の上限3.62mは入力できる上限3.0mを超えているので、この条件では支柱の間隔は曲げで決まらない。むしろ見るべきは控えの軸力2.85kNで、控えの下端の杭やアンカーがこの力で抜けないかが次の確認項目になる。

ケース2:同じ仮囲いを、控えなしで自立させる

  • 入力:ケース1から控えを「なし(自立)」に変更
  • 結果:最大曲げ4.03kN·m(σ 1,053N/mm²)、安全率0.22(曲げで不足)、支柱間隔の上限0.40m、根元の水平力2.69kN、根元の曲げ4.03kN·m
  • 解釈:曲げはケース1の9倍。根元の水平力も0.67kNから2.69kNに増え、その全部と4.03kN·mの曲げを基礎が受け持つことになる。単管の自立で持たせるには支柱を40cmおきに立てる必要があり、仮囲いでは現実的でない。

ケース3:控えを支柱の頂部に付ける

  • 入力:ケース1の控えの取付け高さを3.0m(= H)に変更
  • 結果:最大曲げ1.01kN·m、安全率0.89(曲げで不足)、支柱間隔の上限1.61m、控えの軸力1.90kN、根元の水平力1.34kN
  • 解釈:控えの軸力はケース1より小さくなるが、支柱が根元と頂部で支えられた単純梁になり、中ほどの曲げが増えて安全率が1を切る。「控えはできるだけ高く」と考えがちだが、頂部より少し下に付けたほうが支柱にはやさしい。

ケース4:控えを低く、角度を立てて付ける

  • 入力:ケース1の控えを地上1.2m・60°に変更
  • 結果:最大曲げ1.45kN·m、安全率0.62(曲げで不足)、支柱間隔の上限1.12m、控えの軸力6.72kN、控え位置の水平反力3.36kN、根元の水平力0.67kN
  • 解釈:控えより上の張出しが1.8mに伸びて曲げが増え、控えの軸力はケース1の2.36倍になる。根元の水平力はケース1と同じ0.67kNだが、向きが逆になっている。控え位置の反力(3.36kN)が支柱1本の風荷重(2.69kN)を上回るので、根元は支柱を風下側へ押さえる向きに力を出すことになる。通路を空けたくて控えを低く・急にすると、支柱と控えの両方が苦しくなる。

ケース5:台風の通り道で、風速を30m/sに上げる

  • 入力:ケース1の設計風速を30m/sに変更
  • 結果:速度圧552N/m²、風圧力717N/m²、安全率1.40(余裕が少ない)、支柱間隔の上限2.51m、控えの軸力4.11kN
  • 解釈:風速1.2倍で速度圧は1.44倍、安全率は2.01から1.40に下がる。まだ1を超えているが、錆びた単管やゆるんだクランプがあれば足りなくなりうる水準だ。控えの軸力も4.11kNに増えるので、杭の打ち増しを検討する材料になる。

ケース6:メッシュシートの仮囲い(充実率0.3)

  • 入力:ケース1の板をメッシュ・充実率0.3に変更
  • 結果:風圧力149N/m²、安全率6.71(OK)、支柱間隔の上限12.07m、控えの軸力0.86kN
  • 解釈:風圧力は鋼板の0.3倍になり、支柱の曲げにはかなり余裕がある。ただしこれは風がメッシュを抜ける前提の値だ。防音シートを重ねたり、メッシュに埃や雪が詰まったりして目がふさがれば、充実率は1に近づき、ケース1の条件に戻る。

ケース7:目隠しフェンス H1.8m を単管で立てる

  • 入力:フェンス、高さ1.8m、支柱の間隔2.0m、すき間なし、地表面粗度区分III、基準風速34m/s、C = 1.2、単管、控えなし
  • 結果:Er 0.6912・Gf 2.5・E 1.1944、速度圧828N/m²、風圧力994N/m²、支柱1本の風荷重3.58kN、最大曲げ3.22kN·m(σ 841 / 許容355N/mm²)、安全率0.42(曲げで不足)、支柱間隔の上限0.84m、根元の水平力3.58kN、仮囲いの基準なら498N/m²
  • 解釈:高さは仮囲いより1.2m低いのに、風圧力は2倍で、自立なので曲げも大きい。単管で持たせるなら柱を0.84mおきに立てる必要がある。2.0mおきのまま持たせるには、許容曲げ応力度355N/mm²の鋼管で断面係数がおよそ9.1cm³以上の柱が要る計算になる。メーカーの目隠しフェンスの柱が単管より太いのは、恒久の基準で風を見ているからだ。

ケース8:同じフェンスをルーバー(充実率0.7)にする

  • 入力:ケース7の板をルーバー・充実率0.7に変更
  • 結果:風圧力696N/m²、最大曲げ2.25kN·m、安全率0.60(曲げで不足)、支柱間隔の上限1.21m
  • 解釈:ルーバーにすると風圧力と曲げはすき間なしの0.7倍になり、間隔の上限は0.84mから1.21mに広がる。目隠しとしての効きと、柱の負担の軽さのどちらを取るかを数字で比べられる。

ケース9:海沿いの区分IIと、市街地の区分IV

  • 入力:ケース7の地表面粗度区分をII、基準風速を38m/sに変更(海沿いの想定)
  • 結果:Er 0.8988・Gf 2.2・E 1.7774、速度圧1,540N/m²、風圧力1,848N/m²、安全率0.23(曲げで不足)、支柱間隔の上限0.45m
  • 解釈:粗度区分がIIIからIIになると、地表付近の風を弱める障害物が少ない分 Er が大きくなり、基準風速の差も重なって速度圧はケース7の約1.86倍になる。対照として、市街地の区分IV・基準風速30m/sで計算すると速度圧556N/m²、風圧力667N/m²、安全率0.63で、同じフェンスでも建てる場所で柱の負担が大きく変わる。区分は自分で選ぶのではなく、特定行政庁の指定で決まる点に注意したい。

9ケースを通して見ると、支柱の安全率を大きく動かすのは、控えの有無と位置、対象の基準(仮設か恒久か)、そして建てる場所の風の3つだと分かる。

計算の仕組み ― 2つの風の式と、根元ピン+控えのモデル

風圧力の式をどう選ぶか:仮設工業会の式 と 施行令87条の式

候補は2つあった。1つは、仮囲いもフェンスも施行令87条の式で揃える方法。もう1つは、対象ごとに実務で使われている式を使い分ける方法だ。

揃える方法は式が1本で済むが、仮囲いの風圧力が約2倍に出て、現場で使われている計算と合わなくなる。仮設の計画で施行令の基準を当てはめれば、控えも支柱も過大になり、ツールの答えが実務の判断材料にならない。そこで、仮囲いは国交省の要領が引く仮設工業会の指針の式、フェンスは施行令87条と告示1454号の式という使い分けを採った。代わりに、もう一方の基準で計算した風圧力を常に結果に並べて、2つの式の差を隠さないようにしている。

仮設工業会の指針の本文は入手できなかったため、国交省の要領に転記された式と係数を、一次資料に最も近いものとして使った。高さ補正 K は、仮囲いもフェンスも高さ4m以下なので1.00に固定している。

支柱の支え方をどうモデル化するか

自立の支柱は、根元を固定した片持ち梁で迷いはない。悩んだのは斜め控えがある場合で、候補は3つあった。

  1. 根元固定+控え位置で支持:根元が回転しないと見るモデル。不静定になり、結果が根元の固定度(地盤の硬さ・ベース金具の種類)に強く左右される。その値は現場ごとに違い、利用者が入力できない
  2. 根元ピン+控え位置で支持:根元は回転自由、水平にだけ支えると見るモデル。つり合いの式だけで解けて、入力が少ない
  3. 控えを無視して片持ち:最も安全側だが、ケース2のように単管の仮囲いがすべて不足になり、控えを付ける意味が読めない

採ったのは2の根元ピンだ。根元が曲げを受け持たないと見るぶん、控えの反力は大きめに出るので、控えと控え杭には安全側に働く。控えより上の張出しの曲げは根元の条件によらず決まるので、支柱の最大曲げがこの張出しで決まるケース(ケース1など)では、どのモデルでも同じ値になる。単管の根元はベース金具や敷板の上に載ることが多く、回転を拘束できる納まりは少ないので、実態にも近い。

計算フロー

// 1. 速度圧 q [N/m²](式の意味は上の基礎解説のとおり)
仮囲い:   q = (K·V)² / 16 × 9.80665        K = 1.00
フェンス: q = 0.6 · Er² · Gf · V0²

// 2. 風圧力と支柱1本の荷重
P = q · C · φ          [N/m²](すき間なしは φ = 1)
w = P · s              [N/m] (s = 支柱の間隔)
F = w · H              [N]

// 3. 支柱の最大曲げ
控えなし:  M = F · H / 2
           根元の水平力 = F、根元の曲げ = M
斜め控え(根元ピン、控えの取付け高さ hb、角度 θ は水平から):
           R  = w · H² / (2 · hb)        控え位置の水平反力(根元まわりのつり合い)
           Rb = w · H − R                根元の水平反力
           M_張出し = w · (H − hb)² / 2
           M_スパン = Rb² / (2w)          (0 < Rb/w < hb のとき。それ以外は 0)
           M  = max(M_張出し, M_スパン)
           控えの軸力 N = R / cos θ
           根元の水平力 = |Rb|、根元の曲げ = 0

// 4. 判定
σ = M[N·m] / Z[cm³]          [N/mm²]
安全率 = 許容曲げ応力度 / σ
支柱間隔の上限 = s × 安全率
判定: 安全率 < 1.0 → 曲げで不足、< 1.5 → 余裕が少ない、それ以上 → OK

σ の式で単位換算が消えているのは、1N·m = 1,000N·mm、1cm³ = 1,000mm³ で、分子と分母の1,000が打ち消し合うからだ。N·m と cm³ のまま割れば N/mm² が出る。

支柱間隔の上限が掛け算1回で出るのも、w・F・M・σ がすべて支柱の間隔 s に比例するからだ。安全率は s に反比例するので、安全率が1.0になる間隔は「いまの間隔 × 安全率」になる。

計算例:ケース1(鋼板の仮囲い H3.0m・控え2.0m・45°)

q  = 25² / 16 × 9.80665           = 383.07 N/m²
P  = 383.07 × 1.3 × 1.0           = 497.99 N/m²
w  = 497.99 × 1.8                 = 896.39 N/m
F  = 896.39 × 3.0                 = 2,689.2 N  = 2.69 kN

R  = 896.39 × 3.0² / (2 × 2.0)    = 2,016.9 N  = 2.02 kN
Rb = 2,689.2 − 2,016.9            = 672.3 N    = 0.67 kN(根元の水平力)

M_張出し = 896.39 × (3.0 − 2.0)² / 2 = 448.2 N·m
M_スパン: Rb/w = 672.3 / 896.39 = 0.75 m(0 < 0.75 < 2.0 なので有効)
         = 672.3² / (2 × 896.39)    = 252.1 N·m
M  = max(448.2, 252.1)            = 448.2 N·m = 0.45 kN·m

σ  = 448.2 / 3.83                 = 117.02 N/mm²
安全率 = 235.4 / 117.02            = 2.01
支柱間隔の上限 = 1.8 × 2.0116       = 3.62 m
控えの軸力 N = 2,016.9 / cos45°    = 2,852.3 N = 2.85 kN

この例では、控えより上の張出しの曲げ(448.2N·m)が、控えと根元の間の曲げ(252.1N·m)より大きいので、張出しで決まっている。

式から分かること:控えの高さには「ちょうどよい位置」がある

上のフローを眺めると、控えを上げれば張出しの曲げは減り、スパンの曲げは増える。2つが等しくなる高さを解くと hb = H / √2、つまり高さの約7割の位置で最大曲げが最小になる。H = 3.0m なら hb = 2.12m で、ケース1と同じ条件だと最大曲げは0.35kN·m、安全率は2.61。2.0mに付けたケース1(0.45kN·m)より曲げが約2割小さい。頂部に付けたケース3、1.2mに付けたケース4が苦しくなったのは、この位置から上下に外れていたからだ。ただし控えの軸力は付ける位置で変わるので、曲げだけでなく控えの軸力の欄も一緒に見て決めたい。

許容曲げ応力度の置き方

単管の許容曲げ応力度は、仮囲いで235.4N/mm²、フェンスで355N/mm²と、同じ管でも値を変えている。仮囲いの235.4は国交省の要領の表にある単管 STK500 φ48.6×2.4 の許容曲げ応力度(σ = 235,400kN/m²、出典は改訂風荷重指針)で、ちょうど2,400kgf/cm²をSIに直した値に一致する。仮設材は短期許容応力度で見るというのが要領の扱いだ。フェンスは恒久の構造物として施行令の体系で見るので、鋼材の短期許容応力度として STK500 の F値355を置いた。支柱を直接入力に切り替えれば、アルミ柱や角パイプでも、カタログの断面係数と許容値で同じ計算ができる。

あえて入れなかったもの

基礎・控え杭の転倒と引抜きの判定は入れていない。実務の節で触れたとおり、埋込み基礎は周りの土の抵抗で持っていて、重さだけの式では実態とかけ離れた答えになる。土の抵抗を計算するには地盤の値が要り、利用者がそれを持っていることは少ない。そこで、根元に伝わる水平力と曲げ、控えの軸力を出し、メーカーの基礎仕様や杭・アンカーの耐力と比べてもらう形にした。

ほかに、控えの座屈、クランプの耐力、地形による風速の割増し(丘の上や谷筋)も含んでいない。風圧力は告示・要領の式による概算で、実際の設置では特記仕様やメーカーの施工説明書に従うことが前提だ。

「仮囲い 風荷重計算」「フェンス 基礎計算」で見つかるものと、このツールの違い

検索で見つかるのが指針の解説とメーカーの基礎寸法表だという事情は、前半の「なぜ作ったのか」で触れたとおりだ。ここでは、それぞれと比べたときに何が違うのかと、関連ツールとの分担を書く。

指針の解説・メーカーの表と比べて

指針の解説は式と係数を教えてくれるが、支柱の間隔や控えの高さを変えたらどうなるかは自分で計算し直すしかない。しかも、よく引かれる北陸地方整備局の要領は雪寒仮囲いのためのもので、工事現場の外周の仮囲いの基準そのものではない。メーカーの基礎寸法表はその製品をカタログどおりに建てる場合の答えなので、間隔を広げる、支柱を替える、控えを足すといった変更には使えない。

このツールは、間隔・高さ・板の種類・支柱・控えを入れると、支柱の曲げの安全率、安全率1.0になる間隔の上限、控えの軸力、根元に伝わる水平力と曲げを一度に返す。冒頭の「なぜ作ったのか」で触れた仮設と恒久の比較も、同じ画面のもう一方の基準の風圧力として出る。逆に、基礎の寸法そのものは出さない。カタログどおりに建てるなら、基礎寸法はメーカーの表がいちばん確かだ。

関連ツールとの役割分担

  • 足場荷重・強度検討ツールは、足場の建枠と壁つなぎを受け持つ。足場に張るシートの風もそちらで扱う
  • 単管パイプ耐荷重・スパン計算は、単管を梁として横に渡し、上から荷重を載せる使い方を受け持つ。棚やパーゴラはそちら
  • ウッドフェンス材料計算は、柱・板・ビスの数量と費用を出す。強度はこのツールで確かめ、材料の拾いはそちらで行う
  • ブロック塀の材料計算は、ブロックの個数・鉄筋・基礎量と、高さや控壁の法適合を受け持つ
  • アンカーボルトの強度計算は、控えや柱脚を留めるあと施工アンカーの引抜き・せん断の耐力を出す。このツールの控えの軸力や根元の水平力と突き合わせる相手になる
  • 風圧荷重シミュレーターは、窓ガラスに当たる風圧の目安を出す。こちらは塀状のものと、それを支える支柱が対象だ

仮囲いはいつから必要か、呼び名と告示の話

仮囲いの設置義務(建築基準法施行令136条の2の20)

工事現場の仮囲いは、気をきかせて置いているものではなく、建築基準法施行令の136条の2の20が定める義務だ。対象になる建築物と1.8m以上という高さは前半の実務の節で書いたとおりで、ここでは条文の読み方に絞る。

ふつうの木造2階建ては高さ13m・軒高9mに届かないので、この条文の対象から外れる。住宅の建替えで囲いを見かけることがあっても、それはこの条文の義務とは別の判断だ。逆に、木造以外なら2階建てから対象になる。条文が決めているのは1.8m以上という高さの下限で、支柱の間隔や控えの付け方までは書かれていない。風に耐えるかどうかを確かめるのは、施工する側の仕事になる。

「万能板」「パネル」「メッシュ」 — 呼び名より、すき間の有無

現場では、波形の鋼板を「万能板」と呼んだり、平らな鋼板を「パネル」と呼んだり、メッシュシートを単管に張っただけのものも仮囲いと呼んだりする。呼び名は会社やメーカーによってばらばらで、同じものに別の名前がついていることも珍しくない。風の側から見ると、効いてくるのは名前ではなく、板にどれだけすき間があるかだ。このツールが板の種類を「すき間なし・ルーバー・メッシュ」の3つに分け、呼び名で分けていないのはこのためだ。

ブロック塀の告示は「準じて」で書かれている

補強コンクリートブロック造の塀を扱う平成12年建設省告示第1355号は、風に対しては「令87条2項に準じた速度圧」と「同条4項に準じた風力係数」で確かめる、という書き方をしている。つまり、建物の風圧力の式を塀に借りてくる形だ。ところが、塀に使う風力係数の値そのものは告示に書かれていない。どの値を使うかは計算する側が決めることになる。このツールのフェンス側で風力係数を入力欄で変えられるようにしてあるのは、この事情があるからだ。

仮囲い・フェンスの計算を早く正確にする小技

  • 基準風速と粗度区分は、特定行政庁のページで市町村ごとに引く。告示1454号の基準風速は地域ごとに決まっていて、例えば愛媛県のページのように都道府県や特定行政庁が一覧を出している。地表面粗度区分のIとIVは特定行政庁が規則で定める区域で、定めていない県もある。前半の基礎解説で触れた改正があるので、古い設計資料の区分を写さず、改正後のページで確かめたい
  • 充実率は正面から見た「板が占める割合」で測る。ルーバーなら、板の幅とすき間を定規で測って「板幅 ÷(板幅+すき間)」を出す。羽根が斜めのルーバーは真正面から見るとすき間がほとんど見えないことがあり、そう見えるならすき間なしで入れたほうが安全側だ。メッシュシートはカタログの開口率から「1 − 開口率」で充実率になる
  • 断面係数は、風で曲がる向きの値をカタログから拾う。角パイプや長方形のアルミ柱は、向きによって断面係数が2つ載っている。風はフェンスの面に直角に当たるので、その向きに曲がるときの値を選ぶ。どちらか迷ったら小さいほうを入れる。単位がmm³で載っていたら1000で割ってcm³に直す
  • 控えの軸力は、引抜きの力として読む。風は逆向きにも吹くので、斜め控えは押される日もあれば引っ張られる日もある。引っ張られるときは、控え杭やアンカーを地面から抜こうとする力になる。出てきた軸力は、杭やアンカーの引抜きの耐力と比べておきたい

仮囲い・フェンスの風荷重でよく聞かれること

メーカーのフェンスにある「風速◯m/s対応」の表示とは、どう付き合えばいい?

メーカーの表示は、その製品をカタログどおりの柱・間隔・基礎で建てたときの性能だ。表示の風速が基準風速なのか瞬間風速なのかで数字の意味が変わるので、まず施工説明書で条件を確かめてほしい。カタログどおりに建てるなら、メーカーの表示と基礎仕様に従うのがいちばん確かだ。このツールが役に立つのは、そこから外れるとき。支柱の間隔を広げたい、板を高くしたい、別の支柱を使いたいといった場合に、断面係数と許容曲げ応力度を入れて、安全率がどこまで下がるかを確かめられる。

アルミのフェンス柱の断面係数が分からない

まずメーカーのカタログや技術資料に断面性能の表がないか探してほしい。見つからなければ、メーカーに問い合わせるのが確実だ。外寸と肉厚から計算することもできるが、押出し材は角に丸みがあったり、内側にリブがあったりするので、計算した値と実際の値がずれる。このツールが角パイプやアルミ柱を選択肢として持たず、断面係数を直接入れる形にしているのもそのためだ。許容曲げ応力度もアルミ合金の種類で変わるので、メーカーの値を入れる。

基礎の大きさは出せないのか

出していない。理由は上の「計算の仕組み」の節で説明したとおりだ。代わりに使ってほしいのが、結果に出る根元の力だ。控えなしなら、根元の水平力と根元の曲げを、メーカーの基礎仕様が耐えられる値と比べる。控えありなら根元はピンとして計算しているので根元の曲げは0になる。その代わり、控えの軸力を控え杭やアンカーの引抜き耐力と比べることになる。アンカーで留めるなら、アンカーボルトの強度計算で耐力を出して並べるとよい。

ルーバーやメッシュの計算は、どこまで信用していい?

すき間のある板は、受風面積を充実率のぶんだけ減らす近似で計算している。実際は、すき間を抜ける風の流れで風力係数そのものも変わるので、この近似は目安だ。余裕を持たせたいなら、充実率を少し大きめに入れるか、ほかの条件はそのまま、すき間なしに切り替えて計算し、結果を並べておくとよい。すき間なしの結果が上限になる。メッシュシートの仮囲いの数字は、使用例のメッシュシートのケースを見てほしい。

高さ4mを超える仮囲いや防音パネルは計算できる?

高さの入力は4mまでにしてある。仮囲いの式には、地上からの高さに応じて風速を割り増す補正係数 K があり、地上15m以下では1.00だ。このツールは地面に立つ塀状のものを対象にして高さを4mまでに絞り、K を1.00で固定している。それより高い囲いは、支柱1本を根元と控えで支えるこのツールのモデルから外れることがある。その場合は、仮設工業会の指針やメーカーの技術資料で確かめてほしい。

入力した寸法や現場の条件は、どこかに送られる?

送られない。風圧力・曲げ・控えの軸力の計算は、すべて開いているブラウザの中で行っていて、入力した高さ・間隔・風速・断面係数などをサーバーへ送る仕組みはない。現場名も住所も入力欄がなく、計算に使うのは数字だけだ。結果をコピーしたときも、クリップボードに入るだけで外には出ない。施主に見せる前の検討や、まだ公表していない現場の計画でも気にせず使ってほしい。

まとめ

仮囲いもフェンスも、風圧力・支柱の曲げ・控えの軸力・間隔の上限はこのツールで一度に出せる。前後の検討は次のツールと組み合わせると漏れがない。

足してほしい支柱や板の種類があれば、お問い合わせページから気軽に知らせてほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。単管の仮囲いを自立で組むと支柱を40cmおきに立てる計算になると知り、控え1本が曲げに効く長さを3mから1mに切っていたのだと腑に落ちた。

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