CT変流比選定シミュレーター

負荷電流・用途から最適なCT変流比・確度階級・過電流強度を自動判定

負荷電流と接続機器から、最適なCT変流比・確度階級・二次負担の適合性を自動判定。

シナリオプリセット

回路情報

受電電圧を選択

回路の最大負荷電流(契約電力から算出)

CT条件

計量用は確度0.5級、保護用は5P級を自動設定

接続機器を選択してください(配線負担のみで計算中)

m

CT二次側配線の片道距離(1〜200m)

選定結果

推奨変流比余裕あり

200/5

確度階級0.5
二次負担合計4.4VA
定格負担10VA
負担余裕率55.8%
過電流強度5

※ 本ツールの計算結果は参考値です。実際のCT選定は、回路条件・メーカー仕様・関連規格(JIS C 1731等)を確認の上、有資格者の判断で行ってください。

不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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カタログと電卓を行ったり来たりする時代は終わった

受変電設備の設計で避けて通れない作業、それがCT(計器用変流器)の変流比選定だ。負荷電流を確認して、メーカーカタログの一覧表を開いて、確度階級を調べて、接続機器のVAを足し算して、定格負担と比較して……。たった一つのCTを選ぶだけなのに、毎回これだけの手順を踏まなければならない。

しかも厄介なのは、計量用と保護用で確度階級が異なり、過電流強度の考え方も変わるという点。兼用CTともなれば、さらに条件が複雑になる。設計の度にJIS C 1731を引っ張り出し、メーカーごとに微妙に異なるカタログ仕様と突き合わせるのは、正直なところ効率的とは言えない。

このツールは、負荷電流・CT用途・接続機器を入力するだけで、最適な変流比から二次負担の適合判定まで一画面で完結させる。メーカー非依存の汎用選定ツールとして、設計初期のアタリ付けから最終チェックまで使える。

「表引き作業」を自動化したかった — 開発の動機

CT選定は、本質的には「表引き+足し算+比較」の組み合わせに過ぎない。にもかかわらず、手作業で行うと意外にミスが起きやすい。

筆者自身、過去に保護用CTの二次負担を計算する際、配線長を片道で計算すべきところを往復距離で二重に加算してしまったことがある。結果的に「定格負担を超えている」と誤判定し、不要にCTの定格を上げてしまった。逆のパターン — 負担の見落としで定格内ギリギリだと思っていたら実は超過していた — はもっと危険だ。

メーカー提供の選定ソフトは存在するが、各社のCT製品に特化しており、メーカー横断で「そもそもどの変流比が必要か」を純粋に判定するツールは意外と少ない。特に設計初期段階では、メーカーを決める前に必要な変流比・確度階級のアタリを付けたいケースが多い。

そこで、JIS規格の標準変流比一覧をベースに、用途別の確度階級と過電流強度を自動判定し、接続機器の二次負担も一画面でチェックできるツールを作った。

CT(計器用変流器)とは何か — 大電流を「計測可能」にする装置

変流器の基本原理

CT(Current Transformer)は、電力系統の大電流を計器や保護装置が扱える小電流(通常5A)に変換するための装置だ。原理は一般的な変圧器と同じ電磁誘導を利用している。

日常的なたとえで言えば、CTは「電流の通訳」のようなもの。200Aの電流が流れている回路があるとして、電流計を直接200Aの回路に接続するのは危険だし、計器のコストも跳ね上がる。そこでCTを使い、200Aの電流を5Aに「翻訳」して計器に渡す。計器側は5Aスケールの安価なものが使えるというわけだ。

一次側(大電流側)の導体が鉄心の中を貫通し、二次側(小電流側)に巻線が巻かれている。一次側に電流が流れると、鉄心に磁束が発生し、二次巻線に誘導電流が流れる。巻数比によって電流の大きさが変換される仕組みだ。

変流比 とは

変流比は、一次側電流と二次側電流の比率を示す。例えば200/5のCTなら、一次側に200A流れたとき二次側に5Aが流れる。

変流比 = 一次定格電流 / 二次定格電流
例: 200/5 → 変流比 = 40

JIS C 1731では標準変流比が規定されており、10/5から2000/5まで24段階が定められている。この標準値以外のCTは特注品となり、コストと納期に大きく影響する。

変流比の選び方で最も重要なのは、通常運転時の負荷電流がCT定格一次電流の40〜80%程度になるようにすること。小さすぎると計器の精度が悪化し、大きすぎると過負荷時のマージンが足りなくなる。

変流比 求め方の実務的手順

実務でCT変流比を決めるには、以下の手順で進める:

1. 負荷容量[kVA]と回路電圧[V]から負荷電流を算出
   I = P / (√3 × V)  ※三相の場合
2. 将来の負荷増設を見込み、マージン係数(1.25〜1.5)を乗じる
3. JIS標準変流比から、マージン込み電流以上の最小値を選定
4. 選定した変流比で通常時の負荷率を確認(40〜80%が理想)

たとえば三相6.6kV受電で契約電力300kWの場合、負荷電流 = 300 / (1.732 × 6.6) ≈ 26.2A。マージン込みで32.8A。標準変流比から40/5を選定。通常時の負荷率は26.2/40 = 65.5%で理想的な範囲に入る。

確度階級 とは

確度階級はCTの測定精度を示す指標。数字が小さいほど高精度だ。

確度階級許容誤差主な用途
0.2級±0.2%精密計量、電力取引
0.5級±0.5%一般的な取引計量
1.0級±1.0%自家消費の参考計量
5P級±5%(過電流時)保護継電器用
10P級±10%(過電流時)補助保護用

計量用と保護用では「何を保証するか」が根本的に違う。計量用は定格電流付近の精度を、保護用は過電流(短絡)時の動作確実性を重視する。

過電流強度 とは

過電流強度は、短絡事故時にCTが耐えられる電流の倍率。計量用CTでは定格の5倍、保護用では20倍が標準的な値になる。

計量用CTの過電流強度が5倍と低いのは、短絡時にあえて飽和させることで二次側の電流を制限し、接続された繊細な計量器を保護するため。一方、保護用CTは短絡時こそ正確に変流しなければならないから、20倍でも飽和しない大きな鉄心が必要になる。

参考: JIS C 1731-1 計器用変成器(標準用)

CT変流比の選定が設計品質を左右する理由

不適切な変流比がもたらすリスク

変流比を大きすぎる値で選定すると、通常時の二次電流が小さくなりすぎ、計器の精度が悪化する。例えば負荷電流50Aの回路に400/5のCTを選ぶと、通常運転時の二次電流はわずか0.625A。多くの計器は定格の10%以下では精度保証外となる。

逆に変流比が小さすぎると、過負荷時にCTが飽和し、保護継電器が正常に動作しない危険がある。

二次負担の適合不良

二次負担(接続機器のVA合計 + 配線損失)がCTの定格負担を超えると、CTの精度が規格値を満たさなくなる。これは計量用CTでは電力量計の誤差増大、保護用CTでは継電器の不動作に直結する。

内線規程やJIS C 1731では、CT二次側に接続する機器の合計負担がCTの定格負担以下であることを求めている。実務では配線長による損失も忘れずに加算する必要がある。

計量用と保護用の使い分け

電力会社への売電や受電計量に使うCTは確度0.5級が必須。一方、短絡保護用のOCR(過電流継電器)に接続するCTは5P級で、過電流強度20倍以上が求められる。計量と保護を兼用するCT(デュアルパーパス)は、両方の条件を同時に満たす必要があるため、選定が最も難しい。

受変電設計のこの場面で重宝する

  • 新築の受変電設備設計 — 負荷容量から算出した負荷電流をもとに、CT変流比の初期選定を行う。メーカー未決定でも変流比・確度のアタリが付けられる
  • 増設・設備更新時のCT容量確認 — 負荷増設で既設CTの変流比が不足しないか、二次負担が定格内に収まるかを素早くチェック
  • 計器更新時の負担確認 — 電力量計をスマートメーターに更新する際、新計器のVA負担が既設CTの定格内かどうかの確認
  • 電気主任技術者の月次点検 — CT回路の設計妥当性を改めて確認する際の参考値算出

3ステップで選定完了 — 基本の使い方

ステップ1: 回路電圧を選び、負荷電流(A)を入力する。契約電力から逆算した最大電流で入力するのが基本。

ステップ2: CT用途を「計量用」「保護用」「兼用」から選択し、CT二次側に接続する機器にチェックを入れる。配線長も入力する。

ステップ3: 選定結果セクションに推奨変流比・確度階級・二次負担の判定が表示される。「結果をコピー」ボタンで設計メモに貼り付けられる。

具体的なケースで検証 — CT変流比の使用例6選

ケース1: 小規模事務所ビル(受電75A)

  • 入力: 負荷電流 75A / 計量用 / 電力量計(5VA) + 多機能計器(1VA) / 配線長 10m
  • 結果: 推奨変流比 100/5、確度 0.5級、二次負担合計 10.4VA
  • 解釈: 100/5のCTで定格一次電流に対して負荷率75%、二次側の精度も良好な動作域。ただし接続機器を増やすと負担超過の可能性がある
  • 注意: 配線長10mでも配線負担は4.4VA。機器負担(6VA)に対して無視できない割合を占めている

ケース2: 工場動力盤(受電350A)

  • 入力: 負荷電流 350A / 計量用 / 電力量計(5VA) + 電力計(5VA) + トランスデューサ(3VA) / 配線長 15m
  • 結果: 推奨変流比 500/5、確度 0.5級、二次負担合計 19.6VA
  • 解釈: 500/5の定格負担10VAに対して超過の場合は750/5への変更を検討。配線長が長いため配線負担が支配的
  • よくある間違い: 配線長を「盤間距離」で入力してしまうケース。CT回路の配線長はCTから最遠端の機器までの距離で、CTと計器盤が別の場所にある場合は注意

ケース3: 保護用CT(OCR接続)

  • 入力: 負荷電流 200A / 保護用 / OCR(5VA) / 配線長 5m
  • 結果: 推奨変流比 250/5、確度 5P級、過電流強度 20倍、二次負担合計 7.2VA
  • 解釈: 保護用は過電流強度20倍が必要。短絡電流250×20=5000Aに対してCTが飽和しない設計
  • 注意: 実際の短絡電流が20倍を超える場合は、過電流強度をさらに高い値で指定する必要がある

ケース4: 計量+保護 兼用CT

  • 入力: 負荷電流 150A / 兼用 / 電力量計(5VA) + OCR(5VA) + 電流計(2.5VA) / 配線長 8m
  • 結果: 推奨変流比 200/5、確度 0.5級、過電流強度 20倍、二次負担合計 16.0VA
  • 解釈: 兼用CTは確度0.5級かつ過電流強度20倍を同時に満たす必要があり、選定条件が厳しい。負担余裕も確認必須
  • 注意: 兼用CTは計量用・保護用それぞれ別々のCTを設置するより割高になることが多い。コストメリットが出るのは盤スペースに制約がある場合

ケース5: 高圧受電設備(6.6kV、契約500kW)

  • 入力: 負荷電流 ≈ 43.7A(500÷(√3×6.6)) / 計量用 / 電力量計(5VA) + 無効電力計(5VA) / 配線長 20m
  • 結果: 推奨変流比 60/5、確度 0.5級、二次負担合計 18.9VA
  • 解釈: 配線長20mで配線負担が8.9VAと大きい。定格負担内に収まらない場合は1A二次CTの検討が有効(配線負担が1/25に減少)
  • 注意: 高圧CTは低圧CTと異なり、絶縁レベルの選定も必要。6.6kV系統では通常36kVクラスの絶縁を持つCTを選定する

ケース6: 負荷増設で既設CTの容量確認

  • 入力: 既設CT 200/5、元の負荷電流130A→増設後180A / 計量用 / 電力量計(5VA) + 電流計(2.5VA) + 追加トランスデューサ(3VA) / 配線長 12m
  • 結果: 負荷率 180/200 = 90%(推奨範囲80%を超過)、二次負担合計 16.8VA
  • 解釈: 負荷率90%は定格に近すぎる。将来のマージンを考えると250/5へのCT交換を推奨。機器追加で二次負担も増えているため、負担の適合も同時に再確認が必要
  • よくある間違い: 「定格200Aだから180Aは大丈夫」と負荷率だけで判断し、二次負担の増加を見落とすケース

選定アルゴリズムの仕組み — マージン係数法による自動判定

候補手法の比較

CT変流比の選定手法には、大きく分けて2つのアプローチがある。

  1. マージン係数法: 負荷電流に一定のマージン係数(1.25〜1.5倍)を乗じ、その値以上の最小標準変流比を選ぶ
  2. 負荷率指定法: 目標とする負荷率(例えば定格の60〜80%)から逆算して変流比を決定する

本ツールではマージン係数法を採用した。理由は、(1) 計算が直感的で設計者が結果を検証しやすい、(2) JIS C 1731の標準変流比ステップと相性が良い、(3) 実務で広く使われている方法であること。

計算フロー

1. 目標一次電流 = 負荷電流 × 1.25(マージン係数)
2. 標準変流比から、目標一次電流以上の最小比を選定
3. CT用途から確度階級と過電流強度を決定
   計量用 → 0.5級 / 5倍
   保護用 → 5P級 / 20倍
   兼用   → 0.5級 / 20倍
4. 二次負担 = Σ(接続機器のVA) + 配線負担
5. 配線負担 = 配線長(m) × 2(往復) × 0.00885(Ω/m) × 5²(A²)
6. 定格負担はCT一次電流により決定(5〜40VA)
7. 負担余裕率 = (定格負担 − 二次負担合計) / 定格負担 × 100

計算例: 負荷電流150Aの場合

目標一次電流 = 150 × 1.25 = 187.5A
→ 標準変流比から 200/5 を選定(187.5A以上の最小値)
接続機器: 電力量計(5VA) + 電流計(2.5VA) = 7.5VA
配線負担: 10m × 2 × 0.00885 × 25 = 4.43VA
二次負担合計 = 7.5 + 4.43 = 11.93VA
定格負担(200A級)= 10VA → 超過 → CT定格の見直しが必要

参考: Wikipedia — 変流器

既存の選定ツールとここが違う

メーカー提供の選定ソフト(三菱電機・富士電機など)は、自社製品のカタログ型番に直結した結果を出すのが特徴。しかし「そもそもどの変流比が必要か」を判定する前段階では、メーカーを限定したくないケースが多い。

本ツールの差別化ポイントは以下の3つ。

  • メーカー非依存: JIS標準変流比ベースで、特定製品に縛られない汎用選定
  • 用途別の自動判定: 計量用/保護用/兼用の切り替えで確度階級・過電流強度が自動設定される
  • 二次負担の一画面チェック: 接続機器の選択と配線長入力だけで負担の適合・余裕率まで即判定

Excel自作シートと比べても、チェックボックスで機器を選ぶだけで負担合計が出るのは、入力ミスの削減につながる。

CT選定にまつわる豆知識

二次側開放は絶対NG

CTの二次側を開放(何も接続しない状態)にすると、二次側に高電圧が発生し、絶縁破壊や感電事故の原因となる。これはCTの鉄心が過飽和を起こし、磁気エネルギーが電圧として放出されるためだ。CTを使用しないときは必ず二次側を短絡しておく。電気主任技術者試験でも頻出のテーマ。

参考: 電気技術者試験センター

CTとVT(PT)の違い

CT(変流器)は電流を変換、VT/PT(計器用変圧器)は電圧を変換する装置。どちらも計器用変成器(Instrument Transformer)の一種だが、CTは二次側短絡が正常、VTは二次側開放が正常という点が真逆。接続を間違えると事故に直結するため、回路図の確認は必須。

鉄心の飽和とは

保護用CTでは短絡電流(定格の数十倍)でも正確に変流する必要があるが、鉄心が磁気飽和すると変流比が崩れる。5P20のCTは定格の20倍まで5%以内の精度を保証するという意味。計量用の5倍と保護用の20倍では鉄心の設計が根本的に異なる。

参考: Wikipedia — 電磁誘導

CT選定のTips

  • 計量用CTの計器定数との関係: 電力量計の計器定数(pulse/kWh)はCTの変流比を前提に設定されている。CT変更時は計器定数の再設定が必要
  • 配線長と負担の関係: 配線長10mと30mでは負担が約3倍異なる。盤間距離が長い場合は配線負担が支配的になることも
  • 兼用CTの注意点: 計量精度と保護性能を両立するため、接続機器の負担を極力抑える必要がある。不要な計器は接続しないのが原則
  • 1A二次CTの使い分け: 配線長が長い場合、5A二次より1A二次のCTが有利。二次電流が小さい分、配線損失がI²に比例して大幅に減る

よくある質問

確度階級0.5と1.0の違いは?

確度階級0.5は定格電流時の誤差が±0.5%以内、1.0は±1.0%以内であることを示す。電力会社との取引計量(売電・受電)では0.5級が必要。自家消費の参考計量であれば1.0級でも実用上は問題ない。

5P級と10P級はどう使い分ける?

5Pは定格の過電流倍率における誤差が5%以内、10Pは10%以内。一般的なOCR(過電流継電器)は5P級で十分だが、差動継電器のように高精度が必要な保護方式では5P級を推奨。10P級はコスト重視の補助的な保護に使われることがある。

1A二次のCTはいつ使う?

配線長が長い(おおむね30m以上)場合に有効。二次電流が1Aの場合、配線負担は5A二次の1/25になる。ただし接続する計器も1A入力対応が必要で、一般的な5A用計器は使えない。特高受変電設備やプラントで主に採用される。

入力したデータはサーバーに送信される?

いいえ。すべての計算はブラウザ上(JavaScript)で完結しており、入力データが外部サーバーに送信されることは一切ない。安心して業務データを入力できる。

マージン係数1.25は変更できる?

現在のバージョンでは1.25倍で固定している。実務では1.25〜1.5倍の範囲で設計者が判断するケースが多い。将来的にカスタマイズ機能の追加を検討している。

まとめ — CT選定の第一歩をこのツールから

CT変流比の選定は、受変電設備設計の基本でありながら、手作業では意外とミスが起きやすい工程。このツールで変流比のアタリを素早く付け、二次負担の適合を確認してから、メーカー選定に進むのが効率的なワークフローだ。

電圧降下が気になる回路は電圧降下チェッカー、短絡電流の計算は短絡電流計算ツール、変圧器の容量選定は変圧器容量選定ツールも併せてチェックしてみて。

不具合の報告や機能の要望があれば、X (@MahiroMemo)から気軽に連絡してほしい。

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