あと施工アンカー引張試験の計算(確認試験荷重・ゲージ換算)

許容引張荷重(AIJ 2010)から確認試験荷重を決め、アンカーテスターの圧力計の読み[MPa]に換算する。読みから荷重への逆換算と到達判定つき

上から順に入れると、確認試験荷重[kN] → 圧力計の目標[MPa] → 試験後の読みの判定 がつながって出る

よくある場面(プリセット)

アンカー

アンカーの種類

芯棒打込み式(オールアンカーC 相当)の寸法で計算する。M8〜M20

カタログの埋込み長さ。標準 50 mm(オールアンカーC相当)

あと施工アンカーの認証範囲 18〜36

オールアンカーC の申請値 240。SUS304 なら 205

確認試験荷重

確認試験荷重の決め方

公共建築工事標準仕様書は試験荷重を「設計用引張強度」(H28版)または「品質計画で定めた確認強度」(H31版以降)とし、係数の定めは無い。特記・品質計画の値に合わせる

係数の定めは無いので既定 1.0

試験荷重 = 長期許容引張荷重 × 係数

テスター

取扱説明書・校正証明書の受圧面積。kN 目盛りの圧力計なら空欄でよい

読みを荷重に戻して到達を判定する

荷重[kN] = 読み[MPa] × 断面積[cm²] ÷ 10(目標の読み[MPa] = 荷重[kN] × 10 ÷ 断面積[cm²])

確認試験荷重2.12 kN
短期許容内

試験時のゲージの読み

2.12 MPa

荷重[kN] × 10 ÷ 断面積[cm²]

長期許容引張荷重

2.12 kN

コーン状破壊で決まる

短期許容引張荷重

4.24 kN

鋼材の降伏(長期)

10.22 kN

降伏荷重 15.34 kN × 2/3

コーン状破壊(長期)

2.12 kN

Ac 5,969 mm²・lce 38.0 mm

有効埋込み長さ le

38.0 mm

算定用 lce 38.0 mm

試験荷重 ÷ 降伏荷重

13.8 %

試験荷重 ÷ 短期許容

50.0 %

へりあき・間隔による低減やせん断を含む設計段の耐力はアンカーボルト引抜・せん断強度計算、柱脚の基礎ボルトは基礎ボルト引抜き計算シミュレーター、油圧の「力=圧力×面積」の一般形は油圧シリンダ選定ツールへ。

許容引張荷重は日本建築学会『各種合成構造設計指針・同解説』(2010)の式で、単体・へりあき十分・普通コンクリート・有機系接着剤を前提にした概算。金属拡張はオールアンカーC、接着系はケミカルアンカーRタイプの JCAA 認証値を寸法の初期値にしている。確認試験荷重は特記・施工計画書の品質計画に従い、テスターのラム断面積は取扱説明書・校正証明書の値を使うこと。

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アンカーテスターの圧力計は MPa、書類は kN ― 引き抜き試験の数値で手が止まる

あと施工アンカーの引張試験の日。テスターをアンカーにセットし、ポンプのレバーに手をかけたところで、ふと止まる。圧力計の目盛りは MPa。施工計画書に書いてある確認試験荷重は kN。「で、何 MPa まで上げればいいんだっけ」。

監督職員が横で待っている。電卓を出して、kN を cm² で割って、10 を掛けるのか割るのか……と迷い始めると、自信のないままポンプを押すことになる。上げ足りなければ試験にならないし、上げすぎれば検査のために引いたアンカーを試験そのもので傷める。

たとえばオールアンカーC 相当の M12 を埋込み 50mm で打ち、コンクリートが Fc21 なら、長期許容引張荷重は 2.12kN で、決めているのはボルトではなくコンクリートのコーン状破壊だ。これを確認試験荷重にして、ラム断面積 10cm² のテスターで引くなら、圧力計の目標は 2.12MPa になる。「M12 の引き抜き試験は何 kN、何 MPa か」という問いの答えは、アンカーの種類・埋込み長さ・コンクリート強度・テスターの断面積がそろって初めて1つに決まる。

このツールは、その4つを入れるだけで、長期・短期の許容引張荷重、確認試験荷重、圧力計の目標値までを一度に出す。試験のあとに読んだ値を入れれば、荷重に戻して「届いたか・上げすぎたか」も判定する。許容値は日本建築学会『各種合成構造設計指針・同解説』(2010)の式で計算している。

なぜ作ったのか ― 「×10」を忘れると圧力計は1桁ずれる

あと施工アンカーの計算ツールは、探せばいくつか見つかる。ただ、どれも設計の段で「このアンカーで足りるか」を見るためのもので、引張力と耐力を比べて安全率を出したところで終わる。現場で知りたいのはその先だ。試験荷重をいくつにするか、それを圧力計でいくつまで上げるか、読んだ値で合格と言えるか。この3段を1画面で通せるものが見当たらなかった。

製品カタログや施工要領の PDF には、呼び径ごとの許容荷重表や、テスターの換算表が載っている。ところが許容荷重表は製品ごとの標準の埋込み長さとコンクリート強度で作られていて、穿孔が10mm 浅かった、Fc が 24 だった、というだけで表から外れる。換算表はテスターの機種ごとに別々で、手元の機種のものがすぐ出てこないこともある。

いちばん怖いのが単位の取り違えだ。油圧テスターが出す力は「圧力 × 受圧面積」で、kN と MPa と cm² で書くと次のようになる。

F[kN] = P[MPa] × A[cm²] ÷ 10
P[MPa] = F[kN] × 10 ÷ A[cm²]

1MPa は 1N/mm²、1cm² は 100mm² なので、1MPa × 1cm² = 100N = 0.1kN。この「10」が頭から抜けて、kN を cm² でただ割ってしまうと、目標値は正しい値の10分の1になる。

確認試験荷重 100kN をラム断面積 100cm² のテスターでかけるなら、正しい目標は 100 × 10 ÷ 100 = 10MPa。ところが 100 ÷ 100 = 1MPa で覚えてしまうと、圧力計が 1MPa を指した時点で「到達」と思い込む。そのときアンカーにかかっている力は 1 × 100 ÷ 10 = 10kN、試験荷重の1割でしかない。逆に掛けすぎる方向へ桁を取り違えれば、試験荷重の10倍をかけにいくことになる。どちらの式も見た目は「それっぽい」ので、暗算では気づきにくい。

だからこのツールでは、ゲージの目標値に「荷重[kN] × 10 ÷ 断面積[cm²]」の換算式を添えて表示し、試験のあとに読んだ値も同じ式で荷重に戻して見せるようにした。行きと帰りの換算を並べれば、どこで桁がずれたかが目に見える。

あと施工アンカーの引張試験とは ― 許容引張荷重の求め方

あと施工アンカー 引張試験 とは

あと施工アンカーは、固まったコンクリートにドリルで穴をあけ、あとからボルトを固定する金物だ。打ち込んで先端を広げる「金属拡張アンカー」と、穴の中で樹脂を硬化させてボルトを固める「接着系アンカー」に大きく分かれる。接着系はさらに、樹脂の入ったカプセルを穴に入れてボルトを回し込む「カプセル方式」と、樹脂を注入する「注入方式」に分かれる。

コンクリートの中は見えないので、ちゃんと効いているかは引っ張ってみないと分からない。そこで施工後に、打ったアンカーそのものに引張力をかけて確かめる。国土交通省の『公共建築工事標準仕様書(建築工事編)』(平成28年版 PDF)は、これを「確認試験」と呼び、引張試験機による引張試験で行うとしている。決めた試験荷重まで引いて、過大な変位を起こさずに耐えれば合格。壊れるまで引く試験ではなく、決めた荷重に耐えるかどうかを見る試験だ。

コーン状破壊・付着・鋼材の降伏 ― 3つの壊れ方

アンカーを真上に引っ張ったとき、壊れ方は3つある。

  1. 鋼材の降伏: ボルトそのものが伸びてしまう。コンクリート側が十分強いときに起きる
  2. コーン状破壊: アンカーの周りのコンクリートが円すい(コーン)状に割れ、塊ごと抜けてくる。金属拡張アンカーで決まりやすい
  3. 付着破壊: 接着系で、樹脂とコンクリートやボルトの境目が滑って抜ける

コーン状破壊は、砂場に埋めたスコップを真上に引き抜く場面を思い浮かべると分かりやすい。スコップだけがすっと抜けるのではなく、周りの砂がすり鉢をひっくり返した形に盛り上がり、一緒に持ち上がってくる。コンクリートも同じで、先端の拡張部が引っかかった位置から表面に向かって斜めに割れ、円すいの塊が抜ける。埋込みが深いほど円すいは大きくなり、割れる面積が増えるので、耐える力も大きくなる。

接着系は、瓶の口に差したコルクを接着剤で固めたようなものだ。抜けるときはコルクの側面全体が滑る。だから強さは「付着強度 × 側面の面積」で決まり、側面の面積は呼び径と埋込み長さに比例する。

許容引張荷重 の求め方

日本建築学会の『各種合成構造設計指針・同解説』(2010)は、壊れ方ごとの耐力に低減係数 φ を掛け、小さいほうを許容引張力とする。金属拡張は「鋼材の降伏」と「コーン状破壊」、接着系は「鋼材の降伏」と「付着」の2つを比べる。L は埋込み長さ(金属拡張はカタログの埋込み長さ、接着系は穿孔深さ)だ。

// 鋼材の降伏(共通)
降伏荷重 = σy × 断面積
pa1 = φ1 × 降伏荷重

// 金属拡張: コーン状破壊(D: 外径)
le  = L − D                  // 有効埋込み長さ
lce = min(le, 4D)            // 算定用有効埋込み長さ
Ac  = π × lce × (lce + D)    // コーン状破壊面の有効水平投影面積
pa2 = φ2 × 0.75 × 0.31√Fc × Ac

// 接着系: 付着(da: 呼び径)
le  = L − da
lce = le − 2da
τa  = 10√(Fc/21)   … カプセル方式(有機系)
      7√(Fc/21)    … 注入方式(有機系)
pa3 = φ3 × τa × π × da × lce

許容引張荷重 = min(pa1, pa2)  … 金属拡張
             = min(pa1, pa3)  … 接着系

0.31√Fc はコンクリートの引張強度の目安で、日本建築あと施工アンカー協会(JCAA)の金属系あと施工アンカーの評価認証でも同じ 0.31√σB と Ac = π·le(le + D)、le = L − D が使われている。0.75 は施工のばらつきを見込んだ低減係数で、JCAA の認証範囲に合わせて Fc は 18〜36N/mm² を対象にしている。なお、この式はアンカー1本で、へりあきとアンカー間隔が十分にある状態を前提にしている。

長期と短期 ― φ の意味

φ は「その壊れ方の耐力のうち、どこまで使ってよいか」の割合だ。

壊れ方長期短期
鋼材の降伏 φ12/31.0
コーン状破壊 φ21/32/3
付着 φ31/32/3

長期は設備の重さのように常にかかる荷重、短期は地震のようにまれにかかる荷重に対する値だ。鋼材は降伏点がはっきりしていてばらつきが小さいので大きめに使い、コンクリートの割れや付着は材料と施工のばらつきが大きいので控えめに使う。

この表で覚えておきたいのは、コンクリート側の係数は長期 1/3 から短期 2/3 へちょうど2倍になるのに、鋼材側は 2/3 から 1.0 へ1.5倍にしかならないことだ。短期許容が長期許容の何倍になるかは、どちらの壊れ方で決まっているかで変わる。試験荷重の係数を考えるとき、この差がそのまま効いてくる。

4D の頭打ちと 2da の控除

金属拡張では、有効埋込み長さが外径の4倍(4D)を超えても、計算に使う長さ lce は 4D で止める。M12 なら 48mm なので、埋込み長さが 60mm を超えたところから先は、深く打ってもコーン状破壊の許容は増えない。指針は、埋込みを深くしてもコーンの耐力が際限なく伸びるとは見込まず、上限を設けている。

接着系では、有効埋込み長さから呼び径の2倍を差し引いた長さで付着を計算する。表面に近い部分は付着として見込まない考え方で、M12 なら 24mm 分が付着の計算から外れる。穿孔深さ 100mm の M12 でも、付着に効くのは 64mm だ。

アンカーの確認試験荷重はなぜ大事か ― 低すぎても高すぎても困る

低すぎれば施工不良を見逃す

確認試験は「打ったアンカーがちゃんと効いているか」を見るためのものだ。穿孔が浅い、穴の清掃が足りず樹脂がなじんでいない、拡張が不十分——こうした施工不良は、どれも引張に対する耐力の低下として現れる。試験荷重が低すぎると、効きの悪いアンカーでも耐えてしまい、試験が素通しになる。

高すぎればアンカーを傷める

逆に、試験荷重を上げすぎると、検査のために引いたアンカーがその場で傷む。試験したアンカーは、そのまま本設のアンカーとして使い続けるものだ。阪神高速道路の『あと施工アンカー設計・施工要領』(2025年7月)は、確認試験荷重を「ボルト軸力管理目標値 < 確認試験荷重 < アンカー耐力」となるように決め、試験でアンカーを損傷させないよう求めている。上にも下にも越えてはいけない線がある、ということだ。

このツールが試験荷重を短期許容引張荷重と比べ、超えたら赤字で知らせるのはこのためだ。短期許容はまれな地震などで一時的にかかってよい上限なので、確認のための荷重がそこを超えるなら、決め方を見直したほうがいい。

あと施工アンカー 引張試験 判定基準 ― 1ロット3本と追加の抜取り

公共建築工事標準仕様書の平成28年版は、確認試験の流れをこう定めている。

  • 同一施工条件のアンカーを1ロットとし、1ロットにつき3本以上を試験する
  • 設計用引張強度に等しい荷重を試験荷重とし、過大な変位を起こさずに耐えれば合格
  • 1本でも不合格なら、そのロットの20%を追加で抜き取って試験する。そこでも不合格が出れば全数を試験する
  • 不合格のアンカーは切断などをして打ち直し、再試験する

設計用引張強度は特記で示され、特記が無ければ施工計画書の品質計画で定める。平成31年版では、試験は「確認強度まで引張る」とされ、確認強度を有すれば合格。確認強度は施工計画書の品質計画で定め、1ロットから3本を無作為に抜き取る。軽易な場合は、監督職員の承諾を受けて試験を省略できる。

どちらの版にも「設計荷重の◯倍で引く」といった係数の定めは無い。試験荷重は特記か品質計画の値そのものだ。このツールの係数の初期値を 1.0 にしているのはそのためで、特記で倍率が決まっているときだけ書き換えればいい。

カプセルと注入で許容が 7:10 になる

試験荷重を長期許容引張荷重から決める現場では、許容値の計算を1つ間違えると試験荷重そのものが変わる。見落としやすいのが接着系の方式の違いだ。同じ M12・穿孔深さ100mm・Fc21 でも、付着強度の基本値はカプセル方式が 10N/mm²、注入方式が 7N/mm²。付着で決まる長期許容は、カプセルで 8.04kN、注入で 5.63kN になり、ちょうど 10:7 の比だ。

注入式の現場でカプセルの数字を流用すると、本来の長期許容より約4割高い荷重で引くことになる。逆にカプセルの現場で注入の数字を使えば、試験荷重が3割低くなり、効きの悪いアンカーを見逃しやすくなる。「接着系」とひとくくりにせず、方式まで確かめてから計算に入りたい。

この計算が出番になる現場

空調室外機・設備架台の据付け

屋上やバルコニーに設備架台を据えるとき、床スラブに金属拡張アンカーを打つことが多い。埋込みの浅い金属拡張はコーン状破壊で許容が決まりやすく、M12 でも長期許容は 2kN 前後と、ボルトの太さから想像するよりずっと小さい。試験荷重もその程度なので、圧力計の目標が数 MPa にしかならないことを前もって知っておくと、当日あわてずに済む。

天井スラブからの吊り(配管・ダクト・ケーブルラック)

天井スラブに打ったアンカーから吊りボルトを下ろし、配管やケーブルラックを吊る。アンカーにかかるのはまさに引張だ。同じ呼び径・同じ埋込み・同じ施工者でそろえやすいので、標準仕様書の「同一施工条件で1ロット」の考え方と相性がいい。呼び径や埋込みが混在しているなら、条件ごとに計算し直す。

耐震補強の増設壁・鉄骨ブレース

既存の柱や梁に接着系アンカーを打ち、増設壁や鉄骨ブレースをつなぐ。設計図に1本あたりの設計用引張力が書かれていることが多いので、「設計用引張力 × 係数」で試験荷重を出し、テスターの圧力計の目標値に直す。本数が多く、試験の記録も細かく見られる現場だ。

手すり・外構金物・看板の取付け

階段やバルコニーの手すり、外構のフェンス支柱、看板の取付け金物など。メーカーの施工要領に試験荷重が kN で書いてあれば、それを直接入れて、圧力計の目標値と短期許容に対する余裕だけを見る使い方ができる。

使い方 ― 3ステップで確認試験荷重とゲージの目標値を出す

ステップ1: アンカーの種類と寸法を入れる

アンカーの種類(金属拡張・接着カプセル・接着注入)と呼び径を選ぶと、埋込み長さと鋼材の降伏点に標準値が入る。金属拡張はオールアンカーC 相当で M8〜M20、接着系はケミカルアンカーRタイプ相当で M8〜M24 だ。埋込み長さは施工記録の値に書き換え、コンクリートの設計基準強度 Fc(18〜36N/mm²)を入れる。設備架台の金属拡張、接着カプセル、接着注入、耐震補強の4つの場面は、全項目をまとめて入れる初期値も用意した。

ステップ2: 確認試験荷重の決め方を選ぶ

「長期許容×係数」「設計用引張力×係数」「直接入力」の3つから選ぶ。特記や品質計画に試験荷重が kN で書いてあるなら直接入力、設計用引張力が示されているなら2つ目、長期許容を試験荷重にする取り決めなら1つ目だ。係数は初期値の 1.0 のまま使えばいい。

ステップ3: テスターのラム断面積を入れ、試験後に読みを入れる

テスターの取扱説明書や校正証明書に載っている受圧面積(ラム断面積)を cm² で入れると、圧力計の目標値[MPa]が出る。圧力計に kN の目盛りがある機種なら空欄のままでかまわない。試験が終わったら、読んだ値[MPa]を入れる。荷重に逆換算した値と到達率が表示され、「荷重不足」「到達」「過大」のどれに当たるかが分かる。

結果には、確認試験荷重と、それが短期許容の範囲内かどうか、長期・短期の許容引張荷重と支配的な壊れ方、鋼材側とコンクリート側それぞれの長期の値、有効埋込み長さ、試験荷重が降伏荷重と短期許容の何%に当たるかが並ぶ。結果はテキストでコピーできるので、試験記録の下書きにそのまま貼れる。

アンカー引き抜き試験の数値例 ― 9ケースで読む判定

ここからは、条件を変えたときに数字と判定がどう動くかを9つのケースで見ていく。断りのない限り、鋼材の降伏点は金属拡張で 240N/mm²、接着系で 235N/mm² だ。

ケース1: 金属拡張 M12・埋込み50mm・Fc21(設備架台)

  • 入力: 金属拡張、M12、L = 50mm、Fc21、長期許容 × 1.0、ラム断面積 10cm²
  • 結果: 有効埋込み長さ 38mm(lce も 38mm)。コーン状破壊の長期 2.12kN、鋼材の降伏の長期 10.22kN で、長期許容 2.12kN(コーン状破壊が支配)、短期許容 4.24kN。確認試験荷重 2.12kN、ゲージの目標 2.12MPa。試験荷重は降伏荷重 15.34kN の 13.8%
  • 解釈: ボルトそのものは 15kN 以上もつのに、許容はコンクリートで決まり、降伏荷重の14%足らずに収まる。ラム断面積がちょうど 10cm² のテスターでは「× 10 ÷ 10」で kN と MPa が同じ数字になるので、換算の取り違えが起きにくい

ケース2: 接着カプセル M12・穿孔深さ100mm・Fc21

  • 入力: 接着カプセル、M12、L = 100mm、Fc21、長期許容 × 1.0、ラム断面積 10cm²
  • 結果: le = 88mm、lce = 64mm、付着強度 τa = 10N/mm²。付着の長期 8.04kN、鋼材の降伏の長期 13.21kN で、長期許容 8.04kN(付着が支配)、短期許容 16.08kN。確認試験荷重 8.04kN、ゲージの目標 8.04MPa
  • 解釈: 同じ M12 でも、深く打つ接着系は金属拡張のおよそ4倍の試験荷重になる。2da を控除した 64mm で付着を見ていることは、有効埋込み長さの欄に並べて表示される

ケース3: 接着注入 M12(ケース2と同じ寸法)

  • 入力: 方式だけ接着注入に変え、ほかはケース2と同じ
  • 結果: τa = 7N/mm²。付着の長期 5.63kN で長期許容 5.63kN(付着が支配)、短期許容 11.26kN。確認試験荷重 5.63kN、ゲージの目標 5.63MPa
  • 解釈: 寸法が同じでも、付着の許容はケース2の 7/10 になる。カプセルか注入かの選択ひとつで試験荷重が変わることを、2つのケースを並べると確かめられる

ケース4: 耐震補強 カプセル M16・L130・Fc24・設計用引張力 6kN

  • 入力: 接着カプセル、M16、L = 130mm、Fc24、設計用引張力 6kN × 1.0、ラム断面積 15.5cm²、ゲージの読み 4.0MPa
  • 結果: τa = 10.69N/mm²、長期許容 14.69kN(付着が支配)、短期許容 29.38kN。確認試験荷重 6.00kN、ゲージの目標 3.87MPa。読み 4.0MPa の逆換算は 6.20kN、到達率 103.3%で「到達」
  • 解釈: 試験荷重は短期許容の 20.4% で余裕がある。目標 3.87MPa に対して 4.0MPa で止めれば、試験荷重を少し上回ったところで判定できる。中途半端な目標値を読み取りやすい区切りまで上げて止めるときも、逆換算で何 kN かかったかが記録に残せる

ケース5: 金属拡張 M8・L35・Fc18・ラム5cm²・読み1.5MPa(荷重不足)

  • 入力: 金属拡張、M8、L = 35mm、Fc18、長期許容 × 1.0、ラム断面積 5cm²、ゲージの読み 1.5MPa
  • 結果: 長期許容 0.98kN(コーン状破壊が支配)、短期許容 1.95kN。確認試験荷重 0.98kN、ゲージの目標 1.95MPa。読み 1.5MPa の逆換算は 0.75kN、到達率 76.8% で「荷重不足」
  • 解釈: ラム断面積が 5cm² だと、目標の MPa は荷重の kN の2倍の数字になる。試験荷重 0.98 という数字だけを見て「1.5MPa まで上げれば十分」と考えると、実際には試験荷重の8割弱しかかかっていない。断面積が 10cm² 以外のテスターでは、kN と MPa の数字が一致しないことを頭に置いておきたい

ケース6: ケース1と同じ条件で、読み 6.0MPa(過大)

  • 入力: ケース1の条件に、ゲージの読み 6.0MPa を加える
  • 結果: 逆換算 6.00kN、到達率 283.0%。短期許容 4.24kN を超えるので「過大」
  • 解釈: 隣の接着系アンカーと同じつもりで加圧すると、こういう数字になる。降伏荷重 15.34kN には届いていないので鋼材は無事でも、コンクリート側の短期許容を超えた荷重をかけている。過大な加圧でアンカーを傷めたおそれがあるので、扱いは監督職員と相談したい

ケース7: 金属拡張 M12・L70(4D の頭打ち)

  • 入力: ケース1の埋込み長さだけ 70mm に変える
  • 結果: le = 58mm だが、4D = 48mm を超えるので lce = 48mm に頭打ち。Ac = 9,047.79mm²、長期許容 3.21kN(コーン状破壊が支配)、短期許容 6.43kN、ゲージの目標 3.21MPa。頭打ちになった旨の注記が出る
  • 解釈: 埋込みを 50mm から 70mm にすると、長期許容は 2.12kN から 3.21kN へ約1.5倍に増える。ただしここが上限で、80mm、90mm と深くしても lce は 48mm のままなので、許容は 3.21kN から動かない

ケース8: 金属拡張 M16・L60・長期許容 × 2.0 と × 2.5

  • 入力: 金属拡張、M16、L = 60mm、Fc21、ラム断面積 12cm²。係数を 2.0 と 2.5 で比べる
  • 結果: 長期許容 2.95kN(コーン状破壊が支配)、短期許容 5.89kN。係数 2.0 では確認試験荷重 5.89kN(短期許容の 100%)、ゲージの目標 4.91MPa で「短期許容内」。係数 2.5 では 7.36kN(短期許容の 125%)、ゲージの目標 6.14MPa で「短期許容を超過」
  • 解釈: コンクリート側で決まるアンカーでは、長期 × 2 がちょうど短期許容に一致する。係数 2.0 はぎりぎり許される上限で、2.5 にすると試験でアンカーを傷めるおそれのある領域に入る。特記で倍率を指定されたときは、この境目を必ず確かめたい

ケース9: カプセル M16・L130・Fc21・直接 30kN・ラム4cm²

  • 入力: 接着カプセル、M16、L = 130mm、Fc21、確認試験荷重を直接 30kN、ラム断面積 4cm²
  • 結果: 長期許容 13.74kN(付着が支配)、短期許容 27.48kN。確認試験荷重 30.00kN は短期許容の 109.2% で「超過」。ゲージの目標 75.00MPa で、70MPa を超える注意も出る
  • 解釈: 受圧面積の小さいテスターで大きな荷重をかけようとすると、圧力が手動ポンプや圧力計の定格を超えかねない。この条件では試験荷重そのものも短期許容を超えているので、荷重の決め方とテスターの選び方を両方見直すことになる

9つを並べると、金属拡張は埋込みの浅さゆえにコンクリートで決まりやすく試験荷重が小さいこと、接着系は方式で許容が変わること、そして同じ荷重でもテスターの断面積しだいで圧力計の数字が大きく動くことが見えてくる。

計算の仕組み ― AIJ 2010 の式とゲージ換算

簡略式と AIJ 2010 ― 2つの手法を比べる

あと施工アンカーの引張耐力には、広く出回っている簡略式がある。埋込み長さをそのまま有効埋込み長さとし、コーン状破壊面の面積を π·le² とおき、施工のばらつきによる低減は入れない。鋼材は引張強さで評価して、出てきた耐力を一律に3で割って長期許容とする、というものだ。

上で示した AIJ 2010 の式と並べると、違いは4つある。

  1. 有効埋込み長さ: 簡略式は L をそのまま使い、AIJ 2010(JCAA 認証も同じ)は金属拡張で L − D、接着系で L − da を使う
  2. コーンの面積: π·le² に対し、π·lce(lce + D) で、lce には 4D の上限がある
  3. 低減係数: 簡略式には αc = 0.75 が無い
  4. 鋼材: 引張強さ ÷ 3 に対し、降伏点 × φ1(長期 2/3)で見る

M12 の金属拡張・埋込み 50mm・Fc21 で比べると、簡略式の長期許容は 3.72kN、AIJ 2010 では 2.12kN。簡略式が約1.75倍、つまり危険側に出る。接着系の M12・穿孔深さ 100mm・付着強度 10N/mm² でも、簡略式は 11.24kN、AIJ 2010 は 8.04kN と開く。簡略式は付着面積を穿孔径で取り 2da の控除もしないので付着側が大きく出て、引張強さ ÷ 3 の鋼材側で決まってしまう。

設計の段の目安なら簡略式でも役に立つ。けれど確認試験では、長期許容をそのまま試験荷重にすることが多く、式の違いがそのまま試験荷重の違いになる。そこでこのツールは、建築で拠りどころになる AIJ 2010 の式(接着系は本文、金属拡張は資料5)を採り、アンカーの寸法と断面積は JCAA 認証書の値(金属拡張はオールアンカーC タイプ、接着系はケミカルアンカーRタイプ)を初期値にした。コーンの引張強度の 0.31√Fc と、カプセル方式の付着強度 10√(Fc/21) は、AIJ 2010 と JCAA 認証の両方で同じ値になっていることを確かめている。

実装の流れ

1. 共通の範囲チェック: Fc 18〜36、σy 150〜600、L 20〜600
2. 種類で分岐
   金属拡張: le, lce, Ac → コーン状破壊の終局耐力
             (M22・M24 は対象外、L ≦ D はエラー)
   接着系  : le, lce, τa → 付着の終局耐力
             (L ≦ 3da は lce ≦ 0 になるのでエラー)
3. 長期許容 = min(降伏荷重 × 2/3, コンクリート側 × 1/3)
   短期許容 = min(降伏荷重 × 1.0, コンクリート側 × 2/3)
   支配モード = 長期で小さいほう(同値なら鋼材)
4. 確認試験荷重
   長期許容×係数 / 設計用引張力×係数 / 直接入力
5. 試験荷重 > 短期許容 + 1e-9 なら「短期許容を超過」
6. ゲージの目標 P = 試験荷重 × 10 ÷ ラム断面積(70MPa 超で注意)
7. 読みの逆換算 F = 読み × ラム断面積 ÷ 10
   F > 短期許容      → 過大
   F < 試験荷重      → 荷重不足
   それ以外          → 到達

ラム断面積とゲージの読みは任意入力で、範囲外の値を入れても許容荷重や試験荷重の結果は止めず、該当欄にだけ注意を出す。圧力計に kN の目盛りがあるテスターでも、荷重側の計算はそのまま使える。

計算例: 金属拡張 M12・L50・Fc21

ケース1の数字を、手順どおりに追ってみる。

le  = 50 − 12 = 38 mm
lce = min(38, 4 × 12 = 48) = 38 mm
Ac  = π × 38 × (38 + 12) = 5,969.03 mm²

0.31√21 = 0.31 × 4.5826 = 1.4206 N/mm²
コーン状破壊の終局 = 0.75 × 1.4206 × 5,969.03 ÷ 1000 = 6.3597 kN
  長期 = 6.3597 × 1/3 = 2.1199 kN
  短期 = 6.3597 × 2/3 = 4.2398 kN

降伏荷重 = 240 × 63.9 ÷ 1000 = 15.336 kN
  長期 = 15.336 × 2/3 = 10.224 kN
  短期 = 15.336 × 1.0 = 15.336 kN

長期許容 = min(10.224, 2.1199) = 2.1199 kN(コーン状破壊)
短期許容 = min(15.336, 4.2398) = 4.2398 kN
確認試験荷重 = 2.1199 × 1.0 = 2.1199 kN
ゲージの目標 = 2.1199 × 10 ÷ 10 = 2.1199 MPa

63.9mm² は JCAA 認証書に載っているオールアンカーC の M12 の最小断面積で、接着系で使う全ねじボルトの有効断面積(M12 で 84.3mm²)より小さい。金属拡張はアンカー本体のいちばん細い断面で降伏を見るので、同じ M12 でも鋼材側の値は接着系より低く出る。

境界の扱いと判定の順番

ケース8の係数 2.0 では、試験荷重と短期許容は数式の上ではまったく同じ値になる。計算機の小数は 1/3 や 2/3 を正確には表せないので、掛け算の順番しだいでは末尾の桁がずれ、境界ちょうどの入力で判定が入れ替わりうる。正当な「長期 × 2.0」が「短期許容を超過」に転ばないよう、比較には 1e-9 の許容誤差を入れている。

判定の順番にも意味がある。逆換算した荷重は、まず短期許容と比べ、次に試験荷重と比べる。たとえば鋼材の降伏で決まる M24 カプセル(L300・Fc21、短期許容 82.95kN)に直接 100kN を指定し、ラム断面積 100cm² のテスターで 10MPa まで上げると、逆換算は 100kN で到達率はちょうど 100% だ。それでも短期許容を超えているので、判定は「到達」ではなく「過大」になる。試験荷重の決め方がそもそも短期許容を超えているときは、どこまで上げても「到達」にはならない。荷重を上げきったことより、アンカーを傷めていないかのほうを優先して知らせる設計にしている。

アンカーテスターの換算で、ほかの資料・ツールと違うところ

冒頭の「なぜ作ったのか」で触れたとおり、確認試験の段取りを通して扱える道具は見当たらなかった。あらためて「アンカー 引き抜き試験」「アンカーテスター 換算」で検索して出てくるものを分けると、メーカーの製品資料PDF、研究論文や講習会資料のPDF、個人の施工ブログ、Q&Aサイトの回答の4種類になる。どれも読み物としては役に立つ。ただ、数値を入れれば答えが返ってくるものではない。試験荷重からゲージの目標値を出す向きと、読んだゲージの値から荷重へ戻す向き。この2つを同じ画面で行き来できる無料のツールは、確認した範囲では1本も無かった。

このツールで足したのは次の4点だ。

  1. 試験荷重の決め方を3通りから選べる。長期許容引張荷重×係数、設計用引張力×係数、荷重の直接入力の3つ。特記仕様書に荷重の数字がそのまま書いてある現場も、施工計画書で倍率を決める現場も、同じ入力欄で扱える
  2. 往復できる。ゲージの目標値を出したあと、試験で読んだ値を入れると、荷重への逆換算・到達率・判定(到達/荷重不足/過大)がまとめて出る
  3. 上限側の注意も出る。確認試験荷重が短期許容引張荷重を超えたときと、ゲージの目標値が 70MPa を超えたときに注意が表示される。試験荷重を「下回っていないか」だけでなく「上げすぎていないか」も同じ画面で確かめられる
  4. ラム断面積は直接入力にしている。テスターの機種ごとの受圧面積の公表値を確かめられなかったので、機種の一覧は持たせていない。手元のテスターの取扱説明書か校正証明書の値を入れる前提にした

設計の計算と、試験の計算を分けている

同じアンカーでも、計算する時期によって知りたいことが変わる。そこで関連ツールとは担当を分けた。

  • アンカーボルト引抜・せん断強度計算は設計の段階を受け持つ。へりあきによる低減やせん断も含めて安全率を出し、「この径・この本数で持つか」を決める
  • 基礎ボルト引抜き計算シミュレーターは、基礎に埋めるボルトの引張とせん断の組合せ検定を受け持つ
  • このツールは、施工が終わった後に「打ったアンカーが所定の荷重に耐えるか」を確かめる段階だけを受け持つ。設計で決まった値を試験荷重の起点として受け取り、それをゲージの読みに置き換える。単体・へりあき十分を前提にしているので、群効果やせん断は扱わない
  • 油圧シリンダ選定ツールは「力=圧力×面積」の一般形を扱う。アンカーテスターも中身は小さな油圧ジャッキなので、根っこの関係は同じだ

設計のツールに試験の機能を足すと、入力欄が増えて設計の画面が重くなる。逆も同じだ。担当を分けておけば、どちらの画面も目的に合った入力欄だけで済む。

あと施工アンカーのまわりの小ネタ

「あと施工」は、先に埋めるアンカーとの対比で付いた名前

コンクリートを打つ前に、型枠の中へボルトを据えて一緒に固めるのが先付けのアンカー(埋込みアンカー)だ。それに対して、固まったコンクリートに穴をあけて後から据えるので「あと施工」と呼ぶ。英語でも post-installed anchor と呼ばれていて、ほぼ直訳になっている。現場では「オールアンカー」「ケミカルアンカー」が種類の名前のように使われるが、どちらももとは特定のメーカーの製品名だ(オールアンカーはサンコーテクノ、ケミカルアンカーは日本デコラックスの製品)。打合せで「ケミカルで」と言われたら、カプセル方式なのか注入方式なのかを一度確かめておくと、話の行き違いを防げる。

製品を認証する仕組みと、人を認定する仕組み

日本建築あと施工アンカー協会(JCAA)は、金属系と接着系のアンカーの評価認証を行っている。認証書には製品ごとに寸法・断面積・降伏点と、使ってよい母材のコンクリート強度の範囲(18〜36N/mm²)が載る(金属系の評価認証・接着系の評価認証)。協会は製品だけでなく、施工する人の資格試験や、登録あと施工アンカー基幹技能者の講習も手がけている。あと施工アンカーは、同じ製品でも穿孔の深さや孔内の清掃のしかたで性能が変わる。だから品質を「製品の認証」と「施工者の技量」の両方で押さえる考え方になっている。

打音検査と非破壊引張試験は、見ているものが違う

ハンマーでアンカーをたたき、音や手応えで緩みや異常を探るのが打音検査だ。たくさんの本数を短い時間で見て回れるが、荷重の数値は出てこない。非破壊引張試験は、決めた試験荷重まで実際に引いて、耐えるかどうかを見る。壊れるまでは引かないので「非破壊」と呼ぶ。壊れるまで引く試験は耐力そのものを確かめるためのもので、本番のアンカーでやれば、そのアンカーは当然もう使えない。

抜き取りの頻度は、発注者の要領によっても変わる。阪神高速の『あと施工アンカー設計・施工要領』では、吊構造は全数を引張試験する。取付構造は1ロットの1/200か1構造につき1本のどちらか多いほうで、監督員と協議して決める。落ちたら困るものほど多く引く、という分かりやすい線引きだ。

接着系が設計指針の本文に入ったのは2010年

日本建築学会の『各種合成構造設計指針・同解説』は、1985年12月の版から25年ぶりに、2010年11月に改定された。大きく変わったのは、接着系アンカーボルトの設計が本文(4.5)に入ったことだ。金属系アンカーボルトは資料5の扱いで、耐震補強や設備機器の固定に使うアンカーが対象になっている(JCI四国支部 講習資料)。接着系は耐震補強の現場で大量に使われるようになったので、指針の付録扱いでは済まなくなった。そういう流れの改定だった。

試験当日に効く小技

校正証明書は「組」で見る

アンカーテスターは、ポンプ・圧力計・ラム(荷重検出器)の組で1台だ。校正証明書を開いたら、まず記載の機器番号が手元の機器と全部一致するかを見る。圧力計だけ別の機体のものに替わっていると、証明書に書かれた換算は成り立たない。そのうえで受圧面積の記載をラム断面積の欄に写し、校正日が社内や発注者の決めた周期に収まっているかを確かめる。ここまで済ませてから、ゲージの目標値を出す。

目標値が圧力計の何目盛りぶんかを数えておく

ゲージの目標値が出たら、それが圧力計の最小目盛の何目盛りぶんかを数えておく。目標が数目盛りしかないと、針を1目盛り読み違えただけで、試験荷重に対して大きな割合の差になる。そういうときは受圧面積の小さいテスターに替えると、同じ荷重でも針が大きく振れて読みやすくなる。逆に目標値が圧力計の上限に近いときは、受圧面積の大きいテスターに替える。試験の前日に一度ツールで目標値を出しておけば、どちらのテスターを持っていくかを先に決められる。

試験の前にねじ山と当たり面を見る

テスターのカプラー(ねじ込み継手)がかかるねじ山が潰れていたり、モルタルや接着剤がこびり付いていたりすると、ねじのかかりが浅くなる。荷重が斜めに入ったり、継手のほうが先に外れたりする。反力脚が当たるコンクリートの面も、凹凸があればテスターが傾く。ワイヤブラシで掃除してから据えるだけで、試験のやり直しはかなり減る。試験のために取付物のナットを外したアンカーは、試験が終わったら所定のトルクで締め直すことも段取りに入れておく。

記録には MPa と kN を並べて書く

試験記録には、ゲージの目標値と読みを MPa で、確認試験荷重と逆換算した荷重を kN で、同じ行に並べて書いておく。後から見返す検査の担当者が、どちらの単位の数字かで迷わずに済む。到達率もあわせて残しておけば、荷重不足だったアンカーがどれか、一覧を見ただけで分かる。

あと施工アンカー引張試験の判定で、よく聞かれること

テスターのラム断面積(受圧面積)が分からない

まず取扱説明書の仕様欄を見て、無ければ校正証明書を見る。どちらにも無いときは、機番を伝えてメーカーに問い合わせるのが確実だ。ラムの外径を測って円の面積を出すのはやめておいたほうがいい。受圧面積は内側のピストンの径で決まり、外から見える筒の径とは違う。しかもボルトを中に通すセンターホール形では、穴のぶんだけ面積が減る。ここを外すと、換算した荷重がまるごとずれる。

圧力計に kN の目盛りも付いている。ツールは要る?

圧力計には MPa だけのものと、MPa と kN を併記したものがある(今野製作所『圧力計の見方』)。併記の kN 目盛りは、組み合わせる特定のラムの受圧面積で換算して刷られたものだ。その組み合わせのままなら kN 目盛りを直接読めばいい。ラムを別のものに替えたら、kN 目盛りはもう使えない。迷ったときは MPa の読みをツールに入れて逆換算し、kN 目盛りの値と見比べると、組み合わせが合っているかを確かめられる。

係数の初期値が1.0なのはなぜ? 現場で倍率が決まっているときは?

初期値の考え方は、上の「アンカーの確認試験荷重はなぜ大事か」の節で説明したとおりだ。特記仕様書や施工計画書の品質計画で倍率が決まっていれば、その値を係数の欄に入れる。荷重そのものが kN で指定されているなら、試験荷重の決め方を直接入力に切り替えて、その数字を入れればいい。設計用引張力が分かっていて、それを基準にする指定なら、設計用引張力×係数を選ぶ。係数を上げて試験荷重が短期許容引張荷重を超えると注意が表示されるので、倍率の指定がアンカーを傷めない範囲に収まっているかも同時に確かめられる。

ゲージの読みが試験荷重を少し超えた。「過大」になる?

少し超えた程度なら「到達」のままだ。判定は3段階で、逆換算した荷重が確認試験荷重に届かなければ「荷重不足」、確認試験荷重以上で短期許容引張荷重以下なら「到達」、短期許容引張荷重を超えたら「過大」になる。読みが試験荷重とちょうど同じでも、浮動小数点の誤差で荷重不足と判定されないように許容誤差を入れてあるので「到達」になる。「過大」が出たときは、アンカーを傷めたおそれがある。そのアンカーをどう扱うかは、監督職員や設計者に相談して決めてほしい。

埋込み長さの欄には、どの値を入れればいい?

種類と呼び径を選ぶと、認証書の標準値が初期値として入る。実際に施工したアンカーを試験するなら、施工記録に残っている埋込み長さ(穿孔深さ)に書き換えてほしい。標準より短い値を入れると注意が表示されるので、記録の段階で浅く施工されたアンカーに気づくきっかけにもなる。逆に深く入れた値を入れても、金属拡張アンカーではコンクリート側の許容が途中で頭打ちになる。その理由は「許容引張荷重の求め方」の節に書いた。

入力した値や結果は、どこかに送られる?

送られない。計算はすべてブラウザの中で行っていて、入力値も結果もサーバーには届かない。物件名や部位の番号を入れる欄も設けていない。結果はテキストでコピーできるので、施工記録や報告書に貼るときは、物件の情報を手元の書類の側で書き足してほしい。ページを閉じれば入力は消えるので、続きを後でやるときは、コピーしたテキストを保存しておくと楽だ。

まとめ

確認試験は、試験荷重を決める、ゲージの目標値に置き換える、読んだ値で判定する、の3段でできている。このツールはその3段を1画面でつなぎ、MPa と kN の行き来で迷う場面をなくすためのものだ。出てくる許容引張荷重は単体・へりあき十分を前提にした概算なので、試験荷重は特記と施工計画書に、ラム断面積はテスターの書類に従ってほしい。

設計の段階で径と本数を決めるならアンカーボルト引抜・せん断強度計算、基礎ボルトで引張とせん断を組み合わせて検定するなら基礎ボルト引抜き計算シミュレーターが受け持つ。油圧の「力=圧力×面積」をもう少し広く扱うなら油圧シリンダ選定ツール、試験後にナットを締め直すときのトルクはボルト締付トルク計算、母材のコンクリートの配合や数量はコンクリート配合・必要量計算で確かめられる。住宅の壁に棚やテレビを掛けるくらいの話なら壁掛け耐荷重チェッカーのほうが手軽だ。

使ってみて換算が合わない、この製品の標準寸法も入れてほしい、といった要望があればお問い合わせページから知らせてほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。試験の段取り表を作るたびに「÷10 だったか ÷100 だったか」を電卓の前で確かめ直していたので、行きと帰りの換算を同じ画面に並べるところから作り始めた。

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