28gのジグが、ルアーだけ飛んでいった日
シーバスロッドでショアジギングを始めた最初のシーズン。適合ルアーウェイト7-35gのロッドに40gのメタルジグを結んで、思い切りフルキャストした瞬間、「パンッ」という乾いた音とともにジグだけが海の彼方へ消えた。いわゆるキャスト切れだ。ラインの結束が悪かったのかと思ってノットを組み直し、また投げて、また切れた。1個1,000円のジグを1日で3個失って、ようやく気づいた。原因はノットじゃない。ロッドの適合範囲を超えた重さを、フルキャストで投げていたことだった。
ロッドには「7-35g」「PE 0.8-2号」のような適合範囲が必ず書いてある。でも、この数字を「だいたいの目安でしょ」と流している人は多い。実際は、範囲を超えれば切れるし、範囲の下のほうでは飛ばない。さらに言えば、範囲内でも「どのあたりの位置にいるか」で飛距離も操作感もまるで変わる。
このタックルバランス診断ツールは、ロッドの適合範囲に対して、いま使おうとしているルアーとラインが範囲内の何%の位置にあるかを数値で可視化する。キャスト切れ・ロッド破損のリスク判定から、ロッドの反発を最大に使える「スイートスポット」の判定まで、入力は6つの数字だけ。投げる前の10秒で、あの日の僕みたいな失敗を防げる。
なぜ作ったのか — 「範囲内なら全部同じ」だと思っていた
正直に書くと、僕は長いあいだ「適合ルアーウェイトの範囲内なら、どの重さでも同じように投げられる」と思っていた。7-35gのロッドなら、10gでも35gでも快適に投げられるはずだ、と。
実際は全然違った。同じロッドで10gのミノーを投げると、ロッドに重みが乗らずキャストがスカスカで飛距離が出ない。逆に35gぴったりのジグをフルキャストすると、振り抜きの瞬間にロッドが「詰まる」感覚があって、何投かに一度ヒヤッとする。一番気持ちよく飛ぶのは、25g前後。つまり適合範囲の真ん中よりやや上だった。
あとから調べて知ったのは、メーカー自身が「適合上限付近のルアーはソフトキャスト(7〜8割の力)を推奨」という注意書きを出していること。適合範囲は「投げられる範囲」であって「フルキャストできる範囲」ではない。この区別を知らないまま上限ギリギリをフルスイングしていたのが、冒頭のキャスト切れの正体だった。
ここで困ったのが、この「範囲内のどのへんか」を確認する手段がないことだ。メーカーの適合表は範囲の両端しか教えてくれない。釣具店で聞けば経験則で答えてくれるけど、家でルアーをポチる前に知りたい。電卓で (28−7)÷(35−7) を毎回叩くのも現実的じゃない。
だったら、ロッドの適合範囲とルアー・ラインを入れるだけで、ポジション%とキャスト可否と総合判定が一発で出るツールを作ればいい。釣法プリセット(アジング〜オフショアジギング)も入れて、ロッド流用の検討が10秒でできるようにした。それがこのツールだ。
ロッド 適合ルアーウェイト・適合ラインとは何か — タックルバランスの物理
ロッドは「ばね」である — 適合ルアーウェイトの第一原理
ルアーロッドの本質は、カーボンやグラスでできたばねだ。キャストの動作を分解すると、(1) 振りかぶりでルアーの慣性がロッドを曲げ、エネルギーをばねに蓄える → (2) 振り抜きでロッドが復元し、蓄えたエネルギーをルアーの運動エネルギーとして解放する、という2段階になっている。ばねの基本則であるフックの法則が示すとおり、ばねが蓄えられるエネルギーには「ちょうどよく曲がる荷重の範囲」がある。
- ルアーが軽すぎる: ロッドがほとんど曲がらず、エネルギーが蓄えられない。腕の力だけで投げることになり、飛距離も出ないしキャストの精度も落ちる。「重みが乗らない」というやつだ
- ルアーが重すぎる: ロッドが曲がりきって、それ以上エネルギーを吸収できない。荷重の逃げ場がなくなり、振り抜きの衝撃がライン1本に集中する。これがキャスト切れと、最悪の場合のロッド破損につながる
つまり釣り竿に表記される適合ルアーウェイト(例: 7-35g)は、「このばねが安全かつ効率的に仕事をできる荷重範囲」をメーカーが宣言したものだ。トランポリンにたとえると分かりやすい。子ども用トランポリンに大人が乗れば底づきして布が破れるし、逆に軽すぎる人形を置いても跳ねない。ロッドもまったく同じで、設計荷重の範囲内で初めて性能を発揮する。
範囲内にも「位置」がある — スイートスポットの考え方
適合範囲はあくまで「使える範囲」で、範囲内のどこでも同じ性能というわけではない。一般に、ロッドの反発を最大限に使えてフルキャストにも余裕があるのは、範囲内ポジションの50〜80%あたり。本ツールではここをスイートスポットと呼んでいる。
ポジション%の定義はシンプルで、適合範囲を0〜100%の物差しに見立てた線形位置だ。
ポジション% = (ルアー重量 − 適合下限) ÷ (適合上限 − 適合下限) × 100
7-35gのロッドに28gなら (28−7)÷(35−7)×100 = 75%。スイートスポットのど真ん中で、ロッドがいちばん気持ちよく曲がって戻る帯域にいる、ということが数字で分かる。
もうひとつ重要なのがフルキャスト可否の目安。適合上限の80%を超える重さは、メーカーの注意書きどおりソフトキャスト推奨域に入る。7-35gのロッドなら 0.8×35 = 28g が境界で、28gまではフルキャスト可、28gを超えて35gまでは「投げられるが力は7〜8割に抑える」帯域になる。
ロッド 適合ライン 号数の意味 — 細すぎは高切れ、太すぎは飛距離低下
適合ラインの表記(例: PE 0.8-2号)にも明確な意味がある。
- 細すぎるライン: ラインの強度がロッドのパワーに負ける。フルキャストの負荷や魚とのやり取りでロッドが本来吸収するはずの力をラインが受けきれず、高切れ(キャスト切れ)のリスクが跳ね上がる。PEラインは伸びがほぼゼロなので、衝撃がそのまま結束部に届くことも効いてくる(釣り糸の素材特性も参照)
- 太すぎるライン: ロッドのガイド径はラインの太さを想定して設計されている。太すぎるとガイド抜けが悪くなって飛距離が落ち、ノット部分がガイドに当たるライントラブルも増える。風や潮の抵抗を受けやすくなるデメリットもある
ロッド・ルアー・ラインの3点が適合範囲に収まって初めて「タックルバランスが取れた」状態になる。本ツールがルアーとラインの両方を診断するのはこのためだ。
キャスト切れ 原因の大半はタックルバランス — 実釣での重要性
タックルバランスの崩れは、単に「釣りにくい」では済まない実害を生む。
キャスト切れは物理的に危険だ。 40gのジグが時速100km超で予期しない方向に飛ぶ。堤防やサーフでは隣に人がいる。ルアーのロストが財布に痛いのはもちろんだが、本質的なリスクは人に当たることだ。適合上限を超えたフルキャストは、この事故の確率を自分で引き上げる行為になる。
ロッド破損は保証対象外になりがち。 適合範囲を大きく超えた使用での破損は、メーカー保証の免責事項に該当することが多い。3〜5万円のロッドのティップが折れて、免責で実費修理2万円——という話は釣り場で珍しくない。上限の2倍近い重さを背負わせれば、キャストだけでなくぶっこ抜き(魚を抜き上げる動作)でも折れる。
「飛距離が伸びない」の原因が下限未満のことも多い。 飛ばないとリールやラインのせいにしがちだが、ルアーが適合下限を下回っていればロッドに重みが乗らず、何をしても飛ばない。7-35gのシーバスロッドで5gのジグヘッドを投げて「飛距離が出ない」と悩むのは、原因の診断を間違えている。この場合の正解はタックルの変更であって、キャストの練習ではない。
数字の感覚としては、**上限超過は1gでも「危険側への一歩」、下限未満は「性能をドブに捨てている状態」**と覚えておくといい。範囲内でも80%超の位置ならフルキャストを控える——この3段階の判断を投げる前にできるかどうかで、ルアーの生存率もロッドの寿命も変わる。
このツールが活躍する場面
新しいルアーを買う前: 「40gのジグ、いまのロッドで投げられる?」をポチる前に確認。上限超過28.6%という数字を見れば、ジグではなくロッドを買うべきだと分かる。
ロッドを流用して別の釣りを始めるとき: シーバスロッドでライトショアジギング、エギングロッドでちょい投げ——流用の可否は適合範囲の重なり方で決まる。ポジション%で見れば「ギリギリ使える」のか「スイートスポットで使える」のかまで分かる。
タックル新調の検討: 投げたいルアーの重量帯を決めてから、その重さがスイートスポット(50〜80%)に入るロッドを逆算して選べる。
中古ロッド選び: スペック表の適合範囲と手持ちのルアー・ラインを突き合わせて、買う前に相性を診断。現物を振れない通販・フリマでの判断材料になる。
基本の使い方 — 3ステップ
- ロッドの適合範囲を入力する。ロッドのブランクス(バット付近)に表記されている適合ルアーウェイト(例: 7-35g)と適合ライン(例: PE 0.8-2号)をそのまま入れる。アジング・エギング・シーバス・ショアジギングなど釣法プリセットを押せば代表的なスペックが一括入力される
- 使うタックルを入力する。投げたいルアー・仕掛けの総重量(g)と、使用ラインの号数またはlbを入れる。ラインの単位はロッド表記と揃えること(PE表記なら号数、lb表記ならlb)
- 診断結果を読む。総合バランス判定(バランス良好/要注意/危険)、ルアー・ラインそれぞれの適合ポジション%、フルキャスト可否が表示される。範囲ゲージのマーカー位置とスイートスポット帯で、直感的にも確認できる
具体的な使用例 — シーバスロッド流用から7ケースで検証
実際の数値で7パターンを診断してみた。すべて本ツールと同じ計算式による結果だ。
ケース1: シーバスロッド7-35gに28gジグ・PE1.5号
- 入力: 適合ルアー7-35g、ルアー28g、適合ラインPE0.8-2号、PE1.5号
- 結果: ルアーポジション75.0%(スイートスポット内)、ラインポジション58.3%、フルキャスト可、総合バランス良好
- 解釈: 教科書どおりの組み合わせ。フルキャスト境界が 0.8×35 = 28g なので、28gはちょうどフルキャストできる上限。これより重くするなら力加減が必要になる
ケース2: 同じロッドに45gジグ・PE1.2号
- 入力: 適合ルアー7-35g、ルアー45g、PE1.2号
- 結果: ルアーポジション135.7%、上限超過28.6%、キャスト不可、総合危険
- 解釈: 冒頭の僕の失敗そのもの。ライン自体は範囲内(33.3%)でも、ルアーの上限超過がある時点でキャスト切れ・破損リスク直結。「ラインは合ってるから大丈夫」は通用しない
ケース3: 同じロッドに5gジグヘッド・PE2.5号
- 入力: 適合ルアー7-35g、ルアー5g、PE2.5号
- 結果: ルアーポジション−7.1%(下限未満)、ラインポジション141.7%(太すぎ)、総合要注意
- 解釈: シーバスロッドでアジングを兼ねようとするとこうなる。危険ではないが、重みが乗らず飛ばない・アタリが取れない・太いラインで余計に飛ばない、の三重苦。ライトゲームは専用ロッドを使うべき理由が数字で見える
ケース4: ショアジギングロッド20-60gに40gジグ・PE2号
- 入力: 適合ルアー20-60g、ルアー40g、適合ラインPE1.5-3号、PE2号
- 結果: ルアーポジション50.0%(スイートスポット下端)、ラインポジション33.3%、フルキャスト可、総合バランス良好
- 解釈: フルキャスト境界は 0.8×60 = 48g。40gなら余裕を持ってフルスイングでき、50gへのステップアップ余地も残る。ジグのローテ幅を確保したいショアジギの基準構成として優秀
ケース5: アジングロッド0.5-8gに7gメタルジグ・PE0.3号
- 入力: 適合ルアー0.5-8g、ルアー7g、適合ラインPE0.1-0.4号、PE0.3号
- 結果: ルアーポジション86.7%、ラインポジション66.7%、ソフトキャスト推奨、総合バランス良好
- 解釈: アジングロッドでのマイクロショアジギ。範囲内だがフルキャスト境界 0.8×8 = 6.4g を超えているので、フルスイングは禁物。「範囲内=何も気にしなくていい」ではないことを示す好例で、繊細なティップを守るためにも7〜8割の力で投げたい
ケース6: オフショアジギングロッド80-180gに150gジグ・PE1.0号
- 入力: 適合ルアー80-180g、ルアー150g、適合ラインPE1.5-3号、PE1.0号
- 結果: ルアーポジション70.0%(スイートスポット内)、ラインポジション**−33.3%(細すぎ)、総合要注意**
- 解釈: ジグの重さは理想的なのに、飛距離欲しさにラインを細くしすぎた構成。ロッドのパワーにラインが負けて、しゃくり上げや高負荷時の高切れリスクが高い。150gのジグを深場でロストする損失を考えれば、適合範囲内のPE1.5〜2号に戻すのが正解。ドラグを緩めて逃がす手もあるが、設定値はドラグ設定計算ツールで確認したい
ケース7: バスロッド7-21gに18gスピナーベイト・14lb
- 入力: 適合ルアー7-21g、ルアー18g、適合ライン10-16lb、14lb
- 結果: ルアーポジション78.6%、ラインポジション66.7%、ソフトキャスト推奨、総合バランス良好
- 解釈: フルキャスト境界は 0.8×21 = 16.8g。18gはこれを超えるので、遠投したい場面でも8割スイングで。バスのlb表記ロッドでも、単位を揃えて入力すれば同じ物差しで診断できる
7ケースを並べると、総合判定が「危険」になるのはルアーの上限超過だけで、それ以外の範囲外は「要注意」止まりという設計が見えてくる。リスクの質が違うからだ——上限超過は事故、それ以外は性能低下。この区別が次のセクションのアルゴリズムに反映されている。
仕組み・アルゴリズム — 線形ポジション%とフルキャスト80%則
手法の比較: なぜ線形ポジション%なのか
タックルの適合度を数値化する方法はいくつか考えられる。
| 手法 | 内容 | 採用 |
|---|---|---|
| 二値判定 | 範囲内/範囲外のみを返す | ✗ 範囲内の位置情報が消える。メーカー適合表と同じで付加価値がない |
| たわみ量の物理シミュレーション | ロッドの曲げ剛性からたわみを計算 | ✗ ブランクスのテーパー・素材・調子のデータが必要で、ユーザーは入力できない |
| ロッドDB照合 | メーカー別スペックDBで照合 | ✗ 網羅は不可能で、DBにないロッドで使えなくなる |
| 線形ポジション% | 適合範囲を0〜100%の物差しとして位置を返す | ○ 入力はロッド表記の2つの数字だけ。範囲内の位置・超過率まで定量化できる |
線形ポジション%を選んだ理由は、メーカー表記という信頼できる入力だけで完結することに尽きる。適合範囲はメーカーが実際のブランクス設計から決めた値なので、その範囲内を線形の物差しで測るのは、第三者ができる定量化として最も誠実な方法だ。
実装の中身
計算エンジンの骨格はこうなっている。
// ルアー側: 適合範囲内の線形ポジション
const lurePosPercent = (lure - rodLureMin) / (rodLureMax - rodLureMin) * 100;
const lureStatus = lurePosPercent < 0 ? "under"
: lurePosPercent > 100 ? "over" : "in";
// 上限超過率(超過時のみ)
const lureOverloadPercent =
lure > rodLureMax ? (lure - rodLureMax) / rodLureMax * 100 : null;
// フルキャスト可否: 上限の80%が境界
const castClass = lure > rodLureMax ? "ng"
: lure <= rodLureMax * 0.8 ? "full" : "soft";
// スイートスポット: ポジション50〜80%
const isSweetSpot = 50 <= lurePosPercent && lurePosPercent <= 80;
// ライン側も同じ線形ポジションで判定
const linePosPercent = (lineValue - rodLineMin) / (rodLineMax - rodLineMin) * 100;
// 総合判定: ルアー超過だけは事故リスクなので danger
const overallLevel = lureStatus === "over" ? "danger"
: (lureStatus === "under" || lineStatus !== "in") ? "caution"
: "excellent";
しきい値の根拠は次のとおり。
- フルキャスト80%則: 複数のロッドメーカーが取扱説明・カタログで「適合上限付近のルアーはソフトキャスト推奨」と注意書きしている。本ツールはこの「上限付近」を上限の80%超と定義した。0.8×上限 を境にフルキャスト可/ソフトキャスト推奨を切り替える
- スイートスポット50〜80%: ロッドに十分な重みが乗り(50%以上)、かつフルキャスト境界(上限の80%相当)に収まる帯域。下限寄りの「乗らない」と上限寄りの「詰まる」の両方を避けた、反発を最大に使える位置として設定している
- 総合判定の非対称性: 上限超過はキャスト切れ・破損という安全側の問題なので一発で danger。下限未満やラインの範囲外は性能低下にとどまるので caution。リスクの質で重み付けを変えている
計算例: ケース1を手で追う
シーバスロッド7-35gに28gジグ・PE0.8-2号にPE1.5号の場合。
1. ルアーポジション = (28 − 7) ÷ (35 − 7) × 100
= 21 ÷ 28 × 100 = 75.0%
2. 0 ≦ 75.0 ≦ 100 → 範囲内(in)
3. スイートスポット判定: 50 ≦ 75.0 ≦ 80 → スイートスポット内
4. フルキャスト境界 = 35 × 0.8 = 28g → 28 ≦ 28 → フルキャスト可
5. ラインポジション = (1.5 − 0.8) ÷ (2 − 0.8) × 100
= 0.7 ÷ 1.2 × 100 = 58.3% → 範囲内
6. 総合判定: ルアーin かつ ラインin → バランス良好
入力6つから判定までが純粋な四則演算で、ブラウザ内で即座に完結する。サーバーへの送信もない。電卓で同じ計算をしてもいいが、超過率・キャスト可否・スイートスポット・ライン側まで毎回手で追うのは現実的ではない——その手間を10秒に圧縮するのがこのツールだ。
メーカー適合表・スペック検索サイトとの違い
ロッドの適合範囲を調べる手段は既にいくつかある。それでもこのツールを作ったのは、既存の情報源が「範囲」までしか教えてくれないからだ。
メーカーの適合表記との違い。ロッドのブランクスやカタログには「LURE 7-35g」「PE 0.8-2号」と書いてある。これは嘘ではないが、7gと35gが同じ快適さで扱えるわけではない。28gのジグが範囲内なのは表記を見れば分かるが、それが範囲の75%地点でスイートスポット帯にいることや、フルキャスト可否の境界である上限80%(この例なら28g)ちょうどに乗っていることまでは、表記からは読み取れない。本ツールは範囲内のポジション%・スイートスポット判定・フルキャスト可否、範囲外なら超過率まで数値で返す。「入っているか」ではなく「どこにいるか」を診断するのが違いだ。
ロッドスペック検索サイトとの違い。メーカー横断でスペックを閲覧できるサイトは便利だが、あくまでロッド単体のスペック表示で終わる。手持ちのルアーとラインを当てはめたとき総合バランスがどうなるか、という「マッチング診断」は自分の頭でやるしかない。本ツールは入力した瞬間にルアー・ライン両方の適合を同時判定し、危険/要注意/良好の総合評価まで出す。
汎用の電卓・スプレッドシートとの違い。線形補間自体は電卓でもできる。ただ釣り場で「(28 − 7) ÷ (35 − 7) × 100」を毎回計算する人はいない。釣法プリセット8種から1タップで代表的なスペックを呼び出し、数値を1つ変えるだけで再診断できる即時性が、現場ツールとしての存在意義だ。
豆知識 — 適合表記はどう決まるのか、そして「調子」の話
適合ルアーウェイトに統一規格はない
実は、ロッドの適合ルアーウェイト表記に業界統一の試験規格は存在しない。各メーカーが自社の設計基準・実釣テストに基づいて決めており、同じ「MAX 35g」でも余裕を持たせたメーカーと、限界値に近い数字を書くメーカーがある。だから本ツールの診断も「表記を信頼した上での線形評価」という位置づけになる。同じ判定でも、余裕設計のロッドなら上限付近でも平気なことがあるし、逆もある。複数メーカーのロッドを使い比べると、この「表記の性格」の違いが体感できて面白い。
調子(テーパー)で快適域は変わる
同じ適合範囲でも、ファストテーパー(先調子)のロッドは穂先側で曲がりが止まるため軽量側の操作感に優れ、スローテーパー(胴調子)は全体が曲がって重量側のキャストでルアーの重みを乗せやすい。つまりスイートスポットの「実際の位置」は調子によって前後する。ロッドの構造や歴史についてはWikipediaの釣り竿の項が参考になる。
「ぶっこ抜き」とバットパワーは別の話
魚を抜き上げる「ぶっこ抜き」で問われるのはバット(根元)の強度で、適合ルアーウェイトとは直接の対応関係がない。適合上限が大きいロッドはバットも強い傾向はあるが、キャスト時の負荷は穂先〜ベリーに、抜き上げの負荷はバットに集中する。素材面では、現代のロッドの主流であるカーボン(炭素繊維強化プラスチック)は高弾性ほど反発が鋭い反面、瞬間的な過負荷に弱い。適合上限超過のフルキャストで折れるのは、たいてい高弾性ロッドの方だ。
Tips — タックルバランスを実戦で活かす
- ルアーローテは「ポジション%」で組む。同じロッドで使うルアー群を本ツールに順に入力し、全部が20〜90%に収まるよう構成すると、1日の釣りでローテーション全体が快適になる。1つだけ110%のジグが混ざっていると、それを結んだ瞬間だけ事故リスクが跳ね上がる。
- 1本で広くカバーしたいなら「主力ルアーが60〜75%に来るロッド」を選ぶ。買い替え・新調の検討時、いちばん投げる重量を入力して各候補ロッドの適合範囲を試すと、スイートスポットに主力が乗る1本が見つかる。上にも下にも余白が残るので応用が利く。
- 上限80%超のルアーはタラシを長めに。ソフトキャスト推奨域では、タラシ(ロッドティップから垂らすラインの長さ)を50cm〜1m程度と長めに取ると、振り抜き時の初期負荷がなだらかになりキャスト切れしにくい。
- ジグヘッド+ワームは「総重量」で入力する。ジグヘッド単体の表記重量にワームの自重(2インチで1g前後、大型シャッドテールなら10g超)が加わる。上限付近で使うときはこの差が判定を変える。
- lb表記と号表記を混ぜない。バスロッドのlb表記とPEの号数は別の尺度だ。ロッド側と使用ライン側を必ず同じ単位で入力する。換算が必要ならライン強度換算ツールを使う。
FAQ — タックルバランス診断でよくある質問
適合上限を1gでも超えたら投げてはいけないのか?
1g超で即破損ということはない。本ツールでは上限超過を超過率%で表示しており、数%の超過なら「ソフトキャスト+振り抜かない」で実用している人も多い。ただしメーカー表記の範囲外である以上、破損しても保証対象外になり得るし、フルキャストは明確にキャスト切れのリスク域だ。超過率が大きいほど危険は加速度的に増え、超過100%以上(上限の2倍超)はキャスト自体を避けるべき領域として警告している。エギの号数はグラム換算でいくつを入力すればいい?
エギの号数はオモリの号数(1号=3.75g)とは別の体系で、エギ3.5号で約19〜22g、3号で約15g、2.5号で約10〜11gが目安だ(メーカー・タイプで差がある)。ディープタイプやTRエギはさらに重い。パッケージの実測重量があればそれを入力するのが確実で、オモリ・スナップ等の号数→g換算は[オモリ重量換算ツール](/sinker-weight-calc)が使える。ベイトロッドとスピニングロッドで判定の考え方は変わる?
ポジション%の計算自体は同じだ。ただしベイトはキャスト時にラインがスプール直結で放出されるためキャスト切れ時の挙動が異なり、またバックラッシュ回避のため適合下限未満の軽量ルアーがそもそも投げにくいという実用上の違いがある。スピニングは下限未満でも「飛ばないだけ」で済むことが多いが、ベイトでは下限割れの不利がより大きく出る。判定が under のときはベイトの方がシビアに受け止めてほしい。リールの番手や自重は診断に入っていないの?
現バージョンはロッドの適合表記(ルアーウェイト・ライン)に対するマッチング診断に絞っており、リール自重を含めた持ち重り・重心バランスは対象外だ。リール選びの観点では、適合ラインの号数×必要糸巻量からスプールサイズを逆算するのが実用的で、ラインの太さ・強度の検討には[ライン強度換算ツール](/fishing-line-calc)、リーダーとの組み合わせは[ライン×リーダー適合チェッカー](/line-leader-match)が補完になる。入力したタックルのデータはどこかに送信される?
されない。計算はすべてブラウザ内(クライアントサイド)で完結しており、入力したロッドスペックやルアー重量がサーバーに送信・保存されることはない。ページを閉じれば入力値は消えるので、何度でも気軽に試せる。まとめ — 「範囲内」から「ベストポジション」へ
ロッドの適合表記は守るべき枠であると同時に、その中のどこを使うかで飛距離も安全性も変わる。本ツールでポジション%とフルキャスト可否を確認すれば、「なんとなく範囲内」のタックルを「狙ってスイートスポットに置いた」タックルに変えられる。仕掛けの号数→g換算はオモリ重量換算ツール、ラインの太さ・強度の検討はライン強度換算ツール、組んだタックルを実釣で守るドラグ設定はドラグ設定計算ツールと組み合わせると、タックル構成の数値管理が一通り完結する。
ツールへの要望や「このプリセットも欲しい」といったリクエストがあれば、お問い合わせから気軽に送ってほしい。実際の釣りで使われてこそのツールなので、現場の声はとてもありがたい。