PCB配線幅・許容電流計算機

IPC-2221規格に基づき、プリント基板のパターン幅と許容電流を双方向計算。内層・外層の切り替え、温度上昇の安全判定付き。

IPC-2221規格に基づき、プリント基板のパターン幅と許容電流を双方向計算。内層・外層の切り替え、銅箔厚プリセット、温度上昇の安全判定付き。

基板条件

配線に流れる電流値(0.01〜100 A)

周囲温度からの上昇許容値(一般的に10℃)

基板周囲の環境温度(-40〜125℃)

計算結果

必要配線幅0.300 mm
必要配線幅11.8 mil
断面積16.3 mil²
安全:温度上昇が許容範囲内

最高到達温度: 35.0℃ (周囲 25℃ + 上昇 10.0℃)

⚠ 本ツールはIPC-2221規格の近似計算です。実際の設計では基板メーカーの仕様・環境条件・近接パターンの影響を考慮し、専門家の判断のもとで使用してください。

不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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📘 基板設計の参考書・工具

基板が焦げた日のこと

「設計通りに作ったのに、なぜか基板が焦げた」——電子工作をやっている人なら、一度はヒヤッとした経験があるはず。LEDを光らせるだけの回路で配線が変色していたり、モータドライバのパターンがいつの間にか黒ずんでいたり。原因をたどると、だいたい「配線幅が足りなかった」に行きつく。

このツールは、IPC-2221規格に基づいてプリント基板のパターン幅と許容電流を双方向で計算できる。電流から必要な配線幅を求めることも、配線幅からどれだけの電流を流せるかを逆算することもできる。外層・内層の切り替え、銅箔厚のプリセット、温度上昇の安全判定まで、基板設計に必要な要素をひとまとめにした。

なぜこの計算機を作ったのか

開発のきっかけ

大学の卒業研究でモータ制御基板を設計したとき、配線幅の計算をExcelでやっていた。IPC-2221の計算式をセルに打ち込んで、mil単位とmm単位を行ったり来たり。内層と外層でk値が違うことに気づかず、内層のGNDプレーンを外層の係数で計算してしまい、試作基板が過熱するトラブルに見舞われた。

既存のオンライン計算ツールはほとんどが英語UIで、mil/oz単位に慣れていない初心者には敷居が高い。日本語で、直感的に使える計算機が欲しかった。

こだわった設計判断

「電流→配線幅」と「配線幅→電流」の双方向計算に対応した。既存ツールの多くは片方向だけで、逆方向の計算には別のツールを探す必要があった。温度上昇の判定は3段階(安全/注意/危険)にカラーコード表示し、一目で安全性を把握できるようにした。銅箔厚は18μm〜105μmの4プリセットを用意し、いちいちoz-to-μm換算する手間を省いた。

PCB配線幅設計とは — IPC-2221規格の基礎

プリント基板 配線幅と電流の関係

プリント基板の配線(パターン、トレース)は、銅箔をエッチングして作られた「銅の帯」だ。この銅の帯に電流を流すと、銅の電気抵抗によってジュール熱が発生し、温度が上昇する。

身近なたとえで考えると、水道管と同じだ。細いホースに大量の水を流そうとすると水圧が上がって破裂するリスクがあるように、細い配線に大電流を流すと発熱して基板が焦げる。逆に、必要以上に太い配線を引くと基板面積を無駄に消費し、部品配置の自由度が下がる。

IPC-2221 計算式の仕組み

IPC-2221は、プリント基板設計の国際規格だ。配線幅と許容電流の関係は以下の近似式で表される:

I = k × ΔT^b × A^c

I : 許容電流 (A)
k : 係数(外層 0.048 / 内層 0.024)
ΔT: 温度上昇 (℃)
b : 温度指数 0.44
c : 断面積指数 0.725
A : 配線断面積 (mil²)

外層(基板表面)は空気に触れるため放熱効果が高く、内層(多層基板の中間層)は周囲をFR-4樹脂に囲まれるため放熱が悪い。そのため、外層のk値は内層の2倍(0.048 vs 0.024)になっている。同じ断面積でも、外層なら内層の約1.4倍の電流を流せる計算になる。

断面積と配線幅の換算

配線の断面積は「配線幅 × 銅箔厚」で決まる。IPC-2221では伝統的にmil単位(1mil = 0.0254mm)を使用する:

断面積 [mil²] = 配線幅 [mil] × 銅箔厚 [mil]

銅箔厚の換算:
1oz/ft² = 1.378 mil = 35μm

つまり、1oz銅箔で配線幅10milなら断面積は13.78mil²。この値を上の式に代入すれば許容電流が求まる。

配線幅の計算を怠ると何が起きるか

基板焼損と発火リスク

配線幅が不足した状態で大電流を流し続けると、パターンの温度が上昇し続ける。FR-4基板のガラス転移温度(Tg)は一般的に130〜180℃で、これを超えると基板が変形・変色し、最悪の場合は炭化して発火する。実際に、NITE(製品評価技術基盤機構)の事故情報にはプリント基板のパターン焼損による発煙事故が報告されている。

EMCへの影響

配線幅が中途半端だと、パターンのインピーダンスが設計値からずれ、高周波信号の反射やクロストークの原因になる。特にデジタル回路では、パターン幅がEMC(電磁両立性)試験の合否を分けることがある。

はんだ付け不良

配線幅が極端に狭いと、はんだフィレットの形成が不十分になり、接合信頼性が低下する。IPC-A-610(電子組立品の受入基準)では、はんだ接合部の幅についても基準を設けている。

規格に従った配線幅設計は、安全性だけでなく品質と信頼性の基盤だ。

この計算機が役立つ場面

電子工作で自作基板を発注するとき

KiCadやEagleで基板を設計し、JLCPCBやPCBWayに発注する前に、電源ラインの配線幅が十分か確認できる。「1A流すなら何mm必要?」をその場で即答してくれる。

既存基板の設計レビュー

他の人が設計した基板を受け取って「この配線幅で大丈夫?」と聞かれたとき、配線幅を入力すれば許容電流が分かる。レビュー根拠をコピーして設計ドキュメントに貼り付けることもできる。

学校の課題・卒業研究

電気電子系の学生が基板設計の課題に取り組むとき、IPC-2221の計算を手計算でやると単位換算でミスしやすい。このツールなら入力するだけで正確な結果が出る。

基本の使い方

IPC-2221の計算式を知らなくても、3ステップで使える。

Step 1: 計算モードを選ぶ

「電流→配線幅」か「配線幅→電流」を選択する。電源ラインの設計なら前者、既存パターンの検証なら後者が便利。

Step 2: 基板条件を入力する

配線層(外層/内層)、銅箔厚(プリセットから選択)、電流値または配線幅、許容温度上昇を入力する。温度上昇は10℃が一般的な目安。

Step 3: 結果と安全判定を確認する

計算結果が即座に表示される。温度上昇が許容範囲内かどうかは、カラーコード付きのステータスカードで一目瞭然。

具体的な使用例 — 6パターンの検証

ケース1: LED回路(低電流)

入力値:

  • モード: 電流→配線幅
  • 配線層: 外層
  • 銅箔厚: 35μm (1oz)
  • 電流: 0.02 A
  • 温度上昇: 10℃

計算結果:

  • 必要配線幅: 0.006 mm (0.2 mil)

解釈: 理論上は極細でも足りるが、PCB製造の最小幅(通常0.15mm〜)を下回るため、実際は製造限界の配線幅を使う。LEDの信号線は電流より製造精度が制約になる典型例。

ケース2: Arduino電源ライン(中電流)

入力値:

  • モード: 電流→配線幅
  • 配線層: 外層
  • 銅箔厚: 35μm (1oz)
  • 電流: 1 A
  • 温度上昇: 10℃

計算結果:

  • 必要配線幅: 0.620 mm (24.4 mil)

解釈: 1oz銅箔で1Aなら約0.6mm。KiCadのデフォルト配線幅(0.25mm)では不足する。電源ラインは手動で幅を広げる必要がある。

ケース3: モータドライバ(大電流・外層)

入力値:

  • モード: 電流→配線幅
  • 配線層: 外層
  • 銅箔厚: 70μm (2oz)
  • 電流: 5 A
  • 温度上昇: 10℃

計算結果:

  • 必要配線幅: 1.317 mm (51.8 mil)

解釈: 2oz銅箔にすると、1oz時の半分程度の幅で済む。モータドライバ周辺は銅箔厚を上げるのが定石。

ケース4: USB電源(5V/3A)

入力値:

  • モード: 電流→配線幅
  • 配線層: 外層
  • 銅箔厚: 35μm (1oz)
  • 電流: 3 A
  • 温度上昇: 10℃

計算結果:

  • 必要配線幅: 1.536 mm (60.5 mil)

解釈: USB PD対応基板では電源ラインに1.5mm以上の幅が必要。信号線と電源線で配線幅を分けるのが重要。

ケース5: 内層GNDプレーン検証

入力値:

  • モード: 配線幅→電流
  • 配線層: 内層
  • 銅箔厚: 35μm (1oz)
  • 配線幅: 5 mm
  • 温度上昇: 10℃

計算結果:

  • 許容電流: 3.43 A

解釈: 内層5mm幅で約3.4A。外層なら同じ幅で約4.9A流せる。内層は放熱が悪い分、許容電流が低い。

ケース6: 大電流パワー基板(30A)

入力値:

  • モード: 電流→配線幅
  • 配線層: 外層
  • 銅箔厚: 105μm (3oz)
  • 電流: 30 A
  • 温度上昇: 20℃

計算結果:

  • 必要配線幅: 7.246 mm (285.3 mil)

解釈: 3oz銅箔でも30Aには7mm超の幅が必要。温度上昇を20℃に緩和しても、この幅は基板設計上かなりの制約になる。バスバーの併用を検討すべき。

IPC-2221の計算アルゴリズム — 手法比較と実装

IPC-2221 vs IPC-2152

配線幅の計算規格には、IPC-2221(1998年策定、2003年改訂)とIPC-2152(2009年策定)の2つがある。

比較項目IPC-2221IPC-2152
計算方式近似式(解析的)チャート + 補正係数
内層/外層k値で区別個別チャート
基板厚の考慮なしあり
銅箔面積の影響なしあり
実装の容易さ高い低い(チャート読み取りが必要)

本ツールではIPC-2221を採用した。理由は3つ:

  1. 計算式が解析的で、プログラムに実装しやすい
  2. 業界で広く使われており、多くのエンジニアが結果を検証できる
  3. IPC-2152はチャートベースのため、正確なデジタル化が困難

IPC-2221の式は保守的(安全側)に振る傾向があり、実用上は十分な精度を持つ。

ステップバイステップ計算例

外層、1oz銅箔、電流2A、温度上昇10℃のケースを手計算で追う:

Step 1: パラメータ設定
  k = 0.048(外層)
  b = 0.44
  c = 0.725
  I = 2 A
  ΔT = 10℃

Step 2: 断面積を求める
  I = k × ΔT^b × A^c
  2 = 0.048 × 10^0.44 × A^0.725
  2 = 0.048 × 2.754 × A^0.725
  2 = 0.1322 × A^0.725
  A^0.725 = 15.13
  A = 15.13^(1/0.725) = 36.06 mil²

Step 3: 配線幅を求める
  銅箔厚 = 1oz × 1.378 mil/oz = 1.378 mil
  配線幅 = 36.06 / 1.378 = 26.17 mil

Step 4: mm換算
  26.17 mil × 0.0254 mm/mil = 0.665 mm

ツールの出力と一致することが確認できる。

既存ツールとの差別化

日本語UIで直感的

DigiKeyやPCBWayが提供する配線幅計算ツールは英語UIが基本で、mil/oz/in単位に慣れていないと使いにくい。本ツールは日本語で、mm/μm表示も併記している。

双方向計算

多くの計算ツールは「電流→配線幅」の片方向のみ。本ツールは逆方向(配線幅→許容電流)にも対応し、既存基板の検証にも使える。

結果の安全判定付き

数値を出すだけでなく、温度上昇が安全範囲か(10℃以下/20℃以下/それ以上)をカラーコードで即座に判定。設計レビューの根拠資料としてコピーもできる。

「oz」と「mil」— PCB業界の単位事情

1ozの銅箔が35μmになる理由

「oz(オンス)」は重さの単位だが、PCB業界では銅箔の厚さを表す。1平方フィート(約929cm²)あたり1オンス(約28.35g)の銅を均一に敷き詰めたときの厚さが約35μm(1.378mil)になる。1880年代のアメリカで銅箔が重量で取引されていた名残りだ。

日本のJIS規格では厚さをμmで表記するが、海外メーカーとやりとりするときはoz表記が標準。この換算が面倒なので、本ツールでは両方を併記している。

mil(ミル)の由来

1mil = 1/1000インチ = 0.0254mm。「thou(サウ)」とも呼ばれる。PCB設計では配線幅やパッドサイズをmil単位で指定することが多く、KiCadでもmil/mmの切り替えが用意されている。日本の基板メーカーに発注するときはmm指定だが、部品のデータシートはmil表記が多い。

設計で差がつく3つの実践テクニック

安全マージンは1.5〜2倍を推奨

IPC-2221の計算値はあくまで理論値。実環境では周囲の部品からの放射熱、密集配置による相互加熱、はんだ付け時の熱ストレスなどが加わる。計算で得た配線幅の1.5〜2倍を実装値にするのが実務のセオリー。

基板メーカーの最小配線幅を事前確認

JLCPCBなら最小0.127mm(5mil)、PCBWayなら0.1mm(3.94mil)が標準仕様。計算結果がこの値を下回ったら、銅箔厚を上げるか温度上昇の許容値を見直す。

熱伝導ビアで放熱を強化

大電流パターンの下にサーマルビアを配置すると、熱が基板裏面に逃げる。0.3mmビアを1mm間隔で並べると、パターンの温度上昇を20〜30%低減できるという報告がある。

PCB配線幅の気になる疑問

Q: IPC-2221とIPC-2152、どちらを使うべき?

一般的な基板設計ではIPC-2221で十分。IPC-2221は保守的(安全側)な結果を出すため、マージンが確保される。IPC-2152はより精度が高いが、チャートの読み取りが必要で自動計算には向かない。高精度が必要な場合はIPC-2152のチャートを参照しつつ、IPC-2221でクロスチェックするのがベストプラクティス。

Q: 温度上昇10℃と20℃、どちらを使えばいい?

民生品では10℃が一般的な目安。車載や産業機器など周囲温度が高い環境では、温度上昇を抑えるために10℃以下に設定するのが安全。逆に、冷却ファンや放熱器が確保できる環境なら20℃でも許容される場合がある。用途と環境に応じて判断しよう。

Q: 計算結果のデータはサーバーに送信される?

一切送信されない。すべての計算はブラウザ内のJavaScriptで完了する。入力値も計算結果もサーバーに送信されず、ブラウザを閉じれば消える。安心して業務の設計検証にも使ってほしい。

Q: 高周波回路のインピーダンス制御にも使える?

本ツールはDC(直流)の許容電流計算に特化している。高周波回路のインピーダンス制御には、基板の誘電率やパターン-GND間距離を考慮したマイクロストリップ/ストリップラインのインピーダンス計算が必要で、別の専用ツールを使う必要がある。

Q: フレキシブル基板(FPC)にも適用できる?

IPC-2221はリジッド基板(FR-4)を前提とした規格で、フレキシブル基板には直接適用できない。FPCはポリイミド基材で熱伝導率が異なるため、別途FPCメーカーの設計ガイドラインを参照する必要がある。

まとめ

PCB配線幅の設計は、基板の安全性と信頼性を左右する重要な工程だ。IPC-2221の計算式を使えば、必要な配線幅を定量的に決定できる。

このツールなら、外層/内層の切り替え、銅箔厚のプリセット選択、温度上昇の安全判定まで、設計に必要な一連の検証がワンストップで完結する。

電気設計に興味がある人は電線管サイズ判定シミュレーターケーブル許容電流計算機も試してみて。


不具合や要望があれば、X (@MahiroMemo)から気軽に教えて。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。大学時代にモータ制御基板の配線幅ミスで基板を焦がした経験から、IPC-2221計算ツールの開発を決意。

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