「30mAでいいんでしょ?」で済ませていないか
「漏電ブレーカーは30mAの高速型を付けておけば大丈夫」——電気工事の現場で、こんな思考停止が起きていないだろうか。
たしかに住宅のコンセント回路なら30mA高速型で問題ない。だが、インバータ機器が並ぶ工場の分電盤ではどうか。常時漏洩電流が数十mAに達し、30mAでは不要動作(ニューサンストリップ)を繰り返して生産ラインが止まる。かといって感度電流を上げすぎれば、人体保護の要件を満たせなくなる。
漏電遮断器選定ツールは、回路の用途・電圧系統・負荷特性を入力するだけで、感度電流・動作時間・極数・遮断容量を自動選定するツール。主幹⇔分岐の保護協調判定まで一画面で完結する。
なぜ漏電遮断器選定ツールを作ったのか
開発のきっかけ
工場の増設案件で、インバータ回路のELCB選定を任されたときのこと。30mA高速型を指定したら、試運転初日に漏電トリップが頻発して大問題になった。インバータのPWM制御は高周波のリーク電流を生む。それが複数台分合算されると、30mAでは不要動作を起こしてしまう。
結局、感度電流を100mAに上げ、別途人体保護用の回路を分割する設計変更が必要になった。あのとき、インバータ台数から必要な感度電流を即座に算出できるツールがあれば、設計段階で問題を防げたはず。
さらに厄介なのが保護協調。主幹ELCBと分岐ELCBの感度電流比が3倍以上なければ、地絡事故で両方同時にトリップし、被害が不必要に広がる。この計算を毎回手でやるのは面倒だし、見落としやすい。
「用途を選んで条件を入れるだけで、感度電流から保護協調まで一発で判定できるツールが欲しい」——それが開発の動機だ。
こだわった設計判断
- インバータリーク電流の自動考慮: 台数を入力するだけで、常時漏洩電流の3倍以上に感度電流を自動調整。不要動作を防ぐ
- 保護協調の一画面判定: 主幹の感度電流を選ぶだけで、感度電流比≧3倍と時延差のチェックが即座に完了
- 電圧系統別の遮断容量デフォルト: 短絡電流が不明でも、系統電圧に応じた推奨値で仮選定できる
- 外部送信なし: 全計算をブラウザ内で完結。社内ネットワークからも安心して使える
漏電遮断器(ELCB)とは何か — 漏電ブレーカー 仕組みと原理
漏電遮断器 とは
漏電遮断器(Earth Leakage Circuit Breaker = ELCB)は、回路に漏電が発生したときに電路を自動遮断する保護装置。一般にはELBとも呼ばれ、住宅では「漏電ブレーカー」という名前でおなじみだ。
仕組みの核心は**零相変流器(ZCT: Zero-phase Current Transformer)**にある。正常な回路では、行き(L相)と帰り(N相)の電流が等しいため、ZCTに巻かれたコイルの磁束はゼロになる。ところが漏電が発生すると、漏洩電流の分だけ行きと帰りに差が生じ、ZCTに電圧が誘起される。この電圧が設定値(感度電流)を超えると、トリップコイルが動作して回路を遮断する。
たとえるなら、水道の蛇口と排水口の水量を常時比較するセンサーのようなもの。蛇口から10L/分出ているのに排水が9.97L/分しかなければ、どこかで0.03L/分漏れている——その差を検知して元栓を閉める仕組み。
ZCTの動作原理 — 零相変流器の詳細
ZCTの内部構造をもう少し深掘りしてみよう。ZCTはトロイダル(ドーナツ状)の鉄心に二次巻線を施したもので、一次側には電路の往復導体(L相とN相)がそのまま貫通する。
正常時は L相電流 = N相電流 なので、鉄心中の磁束は互いに打ち消し合い、二次巻線に誘起される電圧はゼロ。漏電が発生すると I_L - I_N = I_leak となり、この差分電流に比例した磁束が鉄心に生じ、二次巻線に電圧が誘起される。
二次誘起電圧 V₂ = N₂ × dΦ/dt
Φ = μ × N₁ × I_leak / l (鉄心の磁路長 l)
この電圧がトリップ回路の動作レベルを超えると、ソレノイドが作動して遮断器が開放される。ZCTの感度は鉄心材料(パーマロイ等の高透磁率材)と二次巻数で決まる。高感度型(5〜30mA)ほど巻数が多く、鉄心も大きくなる傾向がある。
漏電遮断器の種類比較 — ELB・ELCB・GFCI・RCD
世界各地で使われている漏電保護装置は、名称も規格も異なる。混同しやすいので整理しておこう。
| 名称 | 正式名 | 準拠規格 | 感度電流 | 過電流保護 | 主な使用地域 |
|---|---|---|---|---|---|
| ELB | Earth Leakage Breaker | JIS C 8201-2-2 | 15〜1000mA | なし(漏電のみ) | 日本 |
| ELCB | Earth Leakage Circuit Breaker | JIS C 8201-2-2 | 15〜1000mA | あり(過電流+漏電) | 日本 |
| GFCI | Ground Fault Circuit Interrupter | UL 943 / NEC | 5mA(人体保護) | 製品による | 北米 |
| RCD | Residual Current Device | IEC 61008/61009 | 10〜500mA | Type別 | 欧州・国際 |
| RCCB | Residual Current Circuit Breaker | IEC 61008 | 10〜500mA | なし | 欧州 |
| RCBO | Residual Current Breaker with Overcurrent | IEC 61009 | 10〜500mA | あり | 欧州 |
日本で「漏電ブレーカー」と呼ばれる製品はほぼELCB(過電流保護付き)。北米のGFCIは感度電流5mAと極めて高感度で、NEC(National Electrical Code)がバスルームやキッチンのコンセント回路に義務付けている。欧州のRCDはIEC規格に準拠し、Type AC(交流のみ検出)/Type A(交流+脈流直流)/Type B(全電流)の区分がある。
JIS C 8201-2-2 の感度電流分類 — 漏電遮断器 感度電流 一覧
感度電流は「どのくらいの漏洩電流で動作するか」を定める閾値。JIS C 8201-2-2では以下のように分類される:
| 分類 | 感度電流 | 動作確認電流 | 用途例 | 選定の考え方 |
|---|---|---|---|---|
| 高感度 | 15mA | 15mA | 水中・医療施設 | 電技解釈第36条の接地省略条件 |
| 高感度 | 30mA | 30mA | 住宅コンセント・人体保護 | 心室細動限界(50mA)以下 |
| 中感度 | 50mA | 50mA | 水回り機器 | 常時漏洩が少ない回路 |
| 中感度 | 100mA | 100mA | 一般動力回路 | インバータ1〜3台程度 |
| 中感度 | 200mA | 200mA | インバータ多数 | リーク合計×3倍で選定 |
| 低感度 | 500mA | 500mA | 幹線保護 | 保護協調の主幹側 |
| 低感度 | 1000mA | 1000mA | 高圧受電設備 | 地絡検出・火災防止 |
人体保護の場合、30mA × 0.1秒(高感度高速型)が必須要件。これは人体の心室細動限界(約50mA)を下回り、かつ通電時間を最小化するための基準だ。国際的にはIEC 60479-1(人体への電流の影響)で通電時間と電流値の危険域が定義されている。
動作時間 — 高速型と時延型
動作時間にも2種類ある:
- 高速型(instantaneous): 定格感度電流で0.1秒以内に動作。人体保護に使用
- 時延型(time-delay): 0.1〜2秒の遅延を持つ。主幹側に使い、分岐のELCBが先に動作するよう保護協調を取る
漏電遮断器の選定がなぜ重要か — 感電事故防止と不要動作の両立
法令要件
労働安全衛生規則第333条では、対地電圧150V超の移動式・可搬式電気機器には感電防止用漏電遮断装置の設置が義務付けられている。電気設備技術基準の解釈第36条でも、金属製外箱を有する機器の接地工事省略条件として、定格感度電流15mA以下かつ動作時間0.1秒以下の漏電遮断器設置が規定されている。
不要動作のコスト
感度電流を必要以上に低く設定すると、正常な漏洩電流でトリップする「不要動作」が起きる。工場のライン停止、商業施設の全館停電、データセンターのサーバーダウン——不要動作の被害額は、漏電事故そのものに匹敵する場合もある。
特にインバータ駆動のモーターやLED照明は、PWMスイッチングによる高周波漏洩電流を発生させる。1台あたり5〜15mA程度の漏洩電流があり、10台あれば合計100mA前後に達する。30mAの漏電遮断器では確実に誤動作する。
保護協調を怠ると何が起きるか
主幹と分岐の漏電遮断器の感度電流比が不十分だと、1つの分岐回路で漏電が起きたときに主幹側も同時にトリップする。すると、問題のない他の回路まで全停電してしまう。感度電流比を3倍以上確保し、主幹を時延型にすることで「分岐が先に切れる」という選択性を実現できる。
こんな場面で活躍する — 漏電遮断器 選定が必要なシーン
- 工場の分電盤設計: インバータ駆動のモーター、溶接機、クレーンなど大容量負荷の回路で、感度電流と遮断容量を同時に検討したいとき
- 商業施設の厨房回路: 水回り+三相200V機器が混在する環境で、人体保護と不要動作防止を両立させたいとき
- ビルの幹線リニューアル: 主幹⇔分岐の保護協調を見直し、全館停電リスクを低減したいとき
- 住宅のリフォーム: コンセント増設時に、既存の漏電ブレーカーのAF/ATが十分か確認したいとき
基本の使い方 — 3ステップで選定完了
- 回路用途を選択: 人体保護・機器保護・地絡保護・幹線保護の4つから選ぶ。感度電流の基本値が自動設定される
- 回路条件を入力: 電圧・相線式(極数が自動決定)、負荷電流(AF/ATが自動選定)、短絡電流(遮断容量が決定)を入力。インバータ有無と台数も設定
- 結果を確認: 推奨の感度電流・動作時間・極数・AF/AT・遮断容量が一覧表示される。保護協調チェックをONにすれば、主幹との協調判定もワンクリック
選定例ウォークスルー — 6つの実務ケース
ケース1: 住宅のコンセント回路
- 入力: 人体保護 / 1P2W 100V / 負荷電流 20A / インバータなし
- 結果: 30mA 高速型 / 2P / 30AF 20AT / 遮断容量 2.5kA
- 解釈: 住宅のコンセント回路は電技解釈の要件通り、30mA高速型で問題ない。20A負荷に対して30AF 20ATが最適
注意点: 住宅でもIHクッキングヒーターやエコキュートのような大容量機器は200V回路になる。200V回路は対地電圧が高いため、30mA高速型の設置がより重要だ。
ケース2: 工場のインバータ回路
- 入力: 機器保護 / 3P3W 200V / 負荷電流 50A / インバータあり × 5台
- 結果: 200mA 高速型 / 3P / 50AF 50AT / 遮断容量 5kA
- 解釈: インバータ5台の漏洩電流合計50mA × 3倍 = 150mA以上が必要。100mAでは不要動作の恐れがあるため、200mAに繰り上げ。人体保護が必要な場合は回路分割を検討
注意点: インバータのリーク電流は機種や配線長で大きく変わる。本ツールの「1台10mA」は概算値であり、長配線(50m以上)や高周波PWMキャリアのインバータではリーク電流が20〜30mA/台に達することもある。可能であればメーカーの実測値を入手して計算すべきだ。
ケース3: ビルの幹線保護
- 入力: 幹線保護 / 3P3W 200V / 負荷電流 300A / インバータなし
- 結果: 500mA 時延型 / 3P / 400AF 300AT / 遮断容量 5kA
- 解釈: 幹線保護は500mA時延型が基本。分岐ELCBとの感度電流比3倍以上を確保するための設定
注意点: 幹線の遮断容量は受電点の短絡電流に依存する。電力会社からの短絡電流通知書を確認し、遮断容量が短絡電流を上回っていることを必ず確認すること。5kAでは足りない場合も珍しくない。
ケース4: 保護協調チェック
- 入力: ケース1の結果(分岐30mA高速型)に対し、保護協調チェックON / 主幹200mA
- 結果: 感度電流比 6.7倍 → OK / 時延差 → OK / 総合判定: 協調OK
- 解釈: 200mA / 30mA = 6.7倍 ≧ 3倍で感度電流比OK。主幹が時延型想定のため時延差もOK。分岐の漏電が主幹に波及しない
注意点: 保護協調が取れていても、地絡電流が非常に大きい場合(例: 金属配管と活線の直接接触)は主幹・分岐ともに瞬時トリップすることがある。保護協調はあくまで「通常の漏電事故」に対する選択性の確保であり、大地絡には別の対策(接地抵抗の低減など)が必要だ。
ケース5: データセンターの電源回路
- 入力: 機器保護 / 3P3W 200V / 負荷電流 100A / インバータあり × 10台(UPS・サーバー電源)
- 結果: 500mA 高速型 / 3P / 100AF 100AT / 遮断容量 10kA
- 解釈: UPSやサーバー電源のスイッチング回路は高周波リーク電流を発生させる。10台 × 10mA × 3 = 300mA以上が必要。標準値で500mAに繰り上げ
注意点: データセンターではELCBの不要動作=サーバーダウン=膨大な損害額になるため、感度電流の設定には特に慎重さが求められる。また、UPSの出力側には直流成分を含むリーク電流が発生するため、汎用のAC専用ELCBでは検出できない場合がある。IEC Type B(全電流感応型)の採用を検討すべきだ。さらに、冗長化された電源系統では、片系の漏電で両系が落ちない回路設計(A系/B系の独立保護)が必須になる。
ケース6: 医療施設の手術室
- 入力: 人体保護 / 1P2W 100V / 負荷電流 15A / インバータなし
- 結果: 15mA 高速型 / 2P / 30AF 15AT / 遮断容量 2.5kA
- 解釈: 手術室では患者の体内にカテーテルやプローブが挿入されており、微小電流でも心室細動を引き起こす危険がある(マイクロショック)。通常の30mAではなく15mA以下が必要
注意点: 医療施設の電気設備はJIS T 1022(病院電気設備の安全基準)に準拠する必要がある。手術室やICUなどの「医用室」では、非接地配線方式(IT系統)と絶縁監視装置の併用が求められ、ELCBだけでは保護が完結しない。絶縁トランス+絶縁監視装置+ELCBの三重保護が標準構成だ。本ツールの選定結果はELCBの仕様決定に使えるが、医療施設の場合は必ず医用電気設備に精通した設計者のレビューを受けること。
選定アルゴリズムの仕組み — 漏電遮断器 選定ロジック
候補手法の比較
漏電遮断器の選定には大きく2つのアプローチがある:
- メーカーカタログベース: 各メーカー(三菱、富士電機、パナソニック等)のカタログから型番を直接選ぶ方法。正確だがメーカーに依存し、比較が面倒
- パラメータベース: 感度電流・動作時間・極数・AF/AT・遮断容量の5要素を回路条件から算出し、どのメーカーでも適用可能な仕様を決める方法
本ツールは後者を採用。メーカー非依存で、あらゆる設計場面に対応できる汎用性を重視した。
計算フロー
1. 回路用途 → 感度電流・動作時間の基本値を決定
人体保護 → 30mA / 高速型
機器保護 → 100mA / 高速型
地絡保護 → 200mA / 時延型
幹線保護 → 500mA / 時延型
2. インバータ補正
リーク電流合計 = 台数 × 10mA
必要感度電流 = リーク電流合計 × 3(不要動作防止)
→ 基本値と比較して大きい方を採用
→ 標準値(15/30/50/100/200/500/1000mA)に繰り上げ
3. AF/AT選定
負荷電流 ≦ AT となる最小のAF/ATを選択
AF: 30/50/100/225/400/630
例: 75A → 100AF 75AT
4. 極数
電圧・相線式から一意に決定
1P2W → 2P, 1P3W → 3P, 3P3W → 3P, 3P3W 400V → 4P
5. 遮断容量
短絡電流 ≦ 遮断容量 となる最小値を選択
短絡電流不明時は電圧系統別デフォルト値を使用
計算例: インバータ3台の200V回路
用途: 機器保護 → 基本 100mA / 高速型
インバータ: 3台 × 10mA = 30mA
必要感度: 30mA × 3 = 90mA
基本値(100mA) > 90mA → 100mAを維持
→ 結果: 100mA 高速型(中感度高速型)
保護協調の判定ロジック
条件1: 主幹感度電流 / 分岐感度電流 ≧ 3
条件2: 主幹 = 時延型 かつ 分岐 = 高速型
→ 両方満たせば「協調OK」
既存ツールとの違い — 保護協調チェック内蔵が差別化
| 比較項目 | 本ツール | メーカー選定ツール | Excel計算シート |
|---|---|---|---|
| メーカー依存 | なし | メーカー固有 | 自作次第 |
| インバータ考慮 | 自動計算 | 手動確認 | 自作次第 |
| 保護協調判定 | ワンクリック | 別ツール | 自作次第 |
| スマホ対応 | 完全対応 | 一部のみ | 非対応 |
| オフライン | 対応 | 要通信 | 対応 |
最大の差別化は、ELCB選定と保護協調チェックを1画面で完結させている点。多くのメーカーツールは型番選定と保護協調を別画面・別ツールで扱うため、設計者が自分で数値を転記する必要がある。
漏電遮断器の豆知識 — テストボタンから漏電火災警報器まで
テストボタンの仕組み
漏電遮断器の前面にある「テスト」ボタン。押すと内部で意図的に漏洩電流を流し、ZCTが正常に検出してトリップするかを確認する。定期点検(月1回推奨)で必ず実施すべき動作確認手段だ。ただし、テストボタンは「動作するかどうか」を見るだけで、感度電流や動作時間の精度検証はできない。精密な試験には漏電遮断器テスター(リークトリップテスター)が必要。
ELBとELCBの違い
厳密にはELB(Earth Leakage Breaker)は漏電保護のみ、ELCB(Earth Leakage Circuit Breaker)は漏電保護+過電流保護の機能を兼備。現在市場に出回っている製品のほとんどはELCBだが、現場では区別せず「ELB」「漏電ブレーカー」と呼ばれることが多い。
GFCIとの違い
北米で使われるGFCI(Ground Fault Circuit Interrupter)は、日本のELCBと原理は同じだが感度電流が5mAと極めて高感度。これはNEC(National Electrical Code)の要件による違いで、日本の30mAとは設計思想が異なる。
漏電火災警報器との役割分担
漏電火災警報器は感度電流200〜400mA・動作時間0.2〜1秒で「火災の原因となる漏電」を検出する装置。ELCBが回路を遮断するのに対し、漏電火災警報器は警報を発するだけで回路は遮断しない。両者は補完関係にあり、共存させることで重層的な保護が実現する。
Tips — 実務で役立つ選定のコツ
- インバータ回路ではリーク電流の3倍以上: 不要動作防止の鉄則。インバータ1台あたり10mA(概算)で計算し、合計の3倍以上の感度電流を選定する。メーカーの実測値があればそちらを優先
- 時延型の使いどころ: 主幹側に使用し、分岐のELCBが先にトリップする「選択性」を確保する。分岐側に時延型を使うのは人体保護の観点からNG
- 接地抵抗との関係: 接地抵抗値 × 感度電流 = 接触電圧。D種接地(500Ω以下)+30mA ELCBなら接触電圧は15V以下で安全。接地抵抗が高い場合は、より低い感度電流の選定が必要
- 耐サージ性能: 雷サージや開閉サージで誤動作する場合は、耐サージ型のELCBを選定する。特に郊外の架空線引き込み回路で有効
- 直流成分混入への注意: インバータやスイッチング電源は直流成分を含むリーク電流を生む。汎用の交流専用ELCBでは検出できない場合があり、AC/DC感応型(Type B)の検討も必要
よくある質問 — 漏電遮断器選定のFAQ
ELBとELCBの違いは何?どちらを選べばいい?
ELBは漏電保護機能のみ、ELCBは漏電保護+過電流保護の機能を兼備した遮断器。現在はほとんどの製品がELCB(過電流保護付き)で、ELB単体の製品は少ない。特段の理由がなければELCBを選定すれば問題ない。本ツールはELCBの選定を前提としている。
感度電流15mAと30mAの使い分けは?
電技解釈第36条では、接地工事省略の条件として「定格感度電流15mA以下かつ動作時間0.1秒以下」を規定している。医療施設や水中照明など、より高い安全性が求められる場所では15mAを選定する。一般住宅のコンセント回路は30mAで法令要件を満たすため、15mAまで下げる必要はない。
インバータ回路で30mA ELCBが使えないのはなぜ?
インバータはPWMスイッチングにより高周波の漏洩電流を発生させる。1台あたり5〜15mA程度の常時漏洩電流があり、複数台接続すると合計が30mAを容易に超える。30mA ELCBでは正常動作中に不要トリップが頻発するため、リーク電流合計の3倍以上の感度電流を選定する必要がある。
計算データは外部に送信される?
一切送信されない。すべての計算はブラウザ内のJavaScriptで完結しており、サーバー通信は発生しない。入力データはページを閉じると消えるため、セキュリティ上の懸念なく使用できる。
まとめ
漏電遮断器の選定は「30mA高速型」で思考停止せず、回路用途・インバータの有無・保護協調まで考慮して初めて適切な仕様が決まる。本ツールを使えば、これらの判断を数秒で完了できる。
関連ツールも合わせて活用してほしい:
- 電線管サイズ判定シミュレーター — 電線の占有率計算と管サイズ推奨
- ケーブル許容電流 早見・計算ツール — ケーブル種類・布設方法から許容電流を表示
不具合や改善要望はX (@MahiroMemo)からどうぞ。
筆者は工場の増設案件でインバータ回路のELCB選定に苦労した経験から、このツールを開発した。あの日の「全回路トリップ → ライン全停止 → 工場長の怒声」は二度と味わいたくない。