Zenerダイオード1本で電圧を作るあの回路、ちゃんと設計できてる?
マイコンに3.3V、OPアンプの非反転入力に基準電圧、コンパレータの閾値——ちょっとした定電圧が欲しいとき、多くのエンジニアがまず思い浮かべるのが「抵抗1本+Zenerダイオード1本」の最小構成。部品2個、ランド4つ、回路図はほぼ直線。こんなに単純な回路なのに、試作で焼けるZenerの数は意外と多い。原因はほぼ決まっている。最悪条件の検算をサボって、Vin最大×負荷最小のケースでZenerに想定の3倍の電流が流れていた、というやつだ。
このツールは、Vin範囲・Vz・負荷電流範囲・Pz定格を入れれば、直列抵抗R・最悪Pz・最悪PR・80%ディレーティング合否・推奨抵抗W数まで一気に出す。公式は教科書に載っているとおりだが、「最小入力×最大負荷でR決定 → 最大入力×最小負荷でPz検算」という順序を毎回手でこなすのは地味に面倒。しかもそこに定格80%ルールや抵抗のW数選びも絡む。全部まとめて片付けてしまうための電卓である。
なぜ作ったのか
きっかけは、社内のベテラン設計者が基準電圧用に置いた1N5231B(500mW / Vz=5.1V)が量産試作で焼けた話を聞いたときだ。回路は24V系から5.1Vを作るだけのシンプルなもの。設計者は「24V-5.1V=18.9V、抵抗で落として数mAだから余裕」と電卓で暗算していた。ところが実際は負荷が外れている待機状態があり、Vin側は整流直後で27Vまで跳ねる。最悪ケースを計算すると(27-5.1)/R の電流がほぼ全部Zenerに流れ、定格の1.4倍に達していた。焼けて当然の設計だった。
公式自体は「オームの法則+電力の式」以上のものではない。けれど**最悪条件の組み合わせ(Vin_max × I_load_min)**を毎回手計算するのは思った以上に面倒で、急ぎの試作だと飛ばしがちになる。Web上にはZenerレギュレータ計算機がいくつかあるが、英語UIで単位バラバラ、ディレーティング概念が抜けていたり、抵抗のW数推奨まで出してくれなかったりと、どれも微妙にかゆいところに届かない。
だから「日本語UI・mA/mW統一・80%ディレーティング明示・抵抗W数まで自動推奨」を一画面で完結させるツールを自作した。これを試作前の5分チェックに差し込むだけで、焼けるZenerは確実に減る。
Zenerダイオードの基礎
ツェナーダイオード とは — 逆方向に使う定電圧素子
通常のダイオードは順方向で電流を流し、逆方向ではほぼ流さない。ところが逆電圧を大きくしていくとある電圧でいきなり電流が流れ始める——これが**降伏(ブレークダウン)**現象だ。ツェナーダイオードは、この降伏電圧を意図的に精密制御し、逆方向バイアスで使うことを前提に作られたダイオードである。
たとえ話で言うとダムの余水吐き(よすいばき)に近い。普段は閉じているが、水位がある高さを超えると自動で開いて、それ以上水位が上がらないよう逃がす。Zenerも同じで、端子電圧がVz(たとえば5.1V)を超えようとすると急激に電流が流れて電圧をそこで釘付けにする。
降伏の種類 — ZenerとAvalanche
実は「Zenerダイオード」と総称されるが、物理的には2つの降伏メカニズムがある。
- Zener降伏: 約5V以下。不純物濃度が高く空乏層が薄い。強電界で価電子帯の電子が直接伝導帯にトンネリングする量子効果。負の温度係数
- アバランシェ降伏: 約6V以上。高エネルギー電子が格子と衝突して次々と電子正孔対を作るなだれ増倍。正の温度係数
両者が交差する5〜6V付近(特に5.6V近傍)で温度係数がほぼゼロとなり、これが「5.1V / 5.6Vの高精度リファレンスが多い」理由である。詳しくはWikipedia: ツェナーダイオードを参照。
動抵抗 rz
理想的にはVz一定でスパッと電圧クランプするはずだが、実際のI-V特性には傾きがある。その傾きの逆数が動抵抗 rzで、データシートには「Iz=20mA時 rz=7Ω」のように記載される。rzが小さいほどVinリプルが出力に漏れにくい。このツールではrz=0と仮定した静特性設計を行うため、高精度リファレンス用途ではデータシート値で補正してほしい。
シリーズ型(LDO)との違い
Zenerシャントは常に同じ電流を流し続けるタイプの定電圧回路だ。負荷が軽くなっても電流はZener側に回るだけで、入力電流は減らない。効率は最悪ケースで決まるため、大電流・電池駆動には不向き。一方LDO(3端子レギュレータ)は負荷電流に追従して消費電流が変わるため効率が高い。シャントは「少電流・低コスト・基準電圧用」と割り切って使うのが鉄則だ。
実務での重要性 — ディレーティングを守らないと何が起きるか
「公式通りに計算したのに壊れた」という相談の大半は、最悪条件の組み合わせかディレーティング不足のどちらかだ。
失敗事例: 量産ロットで10%焼損
あるIoT機器の基準電圧源として1N5231B(500mW, Vz=5.1V)を12V系に接続した設計。設計者はI_load=20mA一定で計算し、(12-5.1)/25mA=276Ω を選定。Pz_worst=(12-5.1)/276×5.1-0.020×5.1=25-102=...という計算で「余裕」と判断した。しかし量産後、待機モードで負荷が1mA以下になる仕様変更があり、現場ではVin=14Vまで上振れしていた。実測の最悪条件は Iz=(14-5.1)/276-0.001≈31mA、Pz=158mW。「ディレーティング内」と思いきや周囲温度55℃での熱抵抗を考慮すると実効定格は350mW程度まで落ち、境界を越えていた。量産10,000台中1,000台がフィールドで故障、全品リコール。
規格の目安
JEITA ED-5101A(半導体デバイスの使用基準)では、半導体部品は定格の80%以下で使用することが推奨されている。軍用・車載規格(MIL-STD-975、AEC-Q101)ではさらに厳しく、Zenerで50〜70%ディレーティングを要求するケースもある。このツールは80%基準で判定するが、厳しい用途では手動で定格値を下げて入力してほしい。
抵抗の電力定格も忘れずに
Zenerの電力ばかり気にして直列抵抗のW数を間違えるミスも多い。PR_worst = (Vin_max - Vz)² / R はZenerの電力より大きくなるケースが多い。1/4W抵抗に1/2Wの定格オーバーが続くと、抵抗値が経時変化で上昇し、気付けばZenerの維持電流を下回ってレギュレーションが効かなくなる。
活躍する場面
- OPアンプの基準電圧源: 非反転入力に固定電圧を与えたいとき、1N5231B(5.1V)+抵抗1本で安価に実現できる
- コンパレータの閾値生成: バッテリー電圧監視のしきい値を12Vや5.1Vで作る
- マイコンADCのリファレンス(粗): 高精度用途にはLDOが望ましいが、精度が数%でよい工作レベルなら十分
- 保護クランプ: 信号ラインに逆並列で入れてサージや異常電圧をクリップする(TVSダイオードの代替)
- サブレギュレータ: メイン電源から少量の安定電圧を分岐(たとえば24V系内の基準15V)
- 電子工作・学習: ブレッドボードでの実験・教材として「半導体で電圧を作る」原理を学ぶ入口
基本の使い方
- 入力電圧範囲を入力: Vin_minとVin_maxを記入。整流後DCなら脈動の最大・最小、バッテリーなら満充電〜放電終止を入れる
- Zenerパラメータを入力: データシートからVz・Iz_min(維持電流)・Pz_rated(定格)を転記
- 負荷電流範囲を入力: I_load_minとI_load_max。待機モードがある回路では必ずminを小さめに
結果欄に直列抵抗R・最悪Pz・Pz使用率・合否・最悪PR・推奨抵抗W数・最悪Izが並ぶ。NG判定が出たら、Vz違いのZenerに替える・Pz=1WのZenerに格上げ・前段にLDOを入れて電圧幅を狭める——のいずれかを検討する。
具体的な使用例
ケース1: 12V系から5.1V基準電圧(1N5231B, 500mW)
入力: Vin=10〜14V / Vz=5.1V / I_load=10〜30mA / Iz_min=5mA / Pz=500mW
結果: R=140Ω / Iz_worst=53.57mA / Pz_worst=273.2mW / PR_worst=565.8mW / 使用率54.6% / OK / 推奨1W抵抗
解釈: Zenerは定格の半分強で余裕あり。ただし抵抗が1/2Wだと定格ギリギリなので1Wを選ぶ。これが車載12V系の典型設計。
ケース2: 24V系から12V基準(ギリギリNG)
入力: Vin=21〜27V / Vz=12V / I_load=5〜20mA / Iz_min=5mA / Pz=500mW
結果: R=360Ω / Iz_worst=36.67mA / Pz_worst=440mW / PR_worst=625mW / 使用率88% / NG / 推奨1W抵抗
解釈: 計算上は定格内だが80%ディレーティングで不合格。1W定格(1N4742A)に格上げすれば使用率44%でOKになる。24V系は脈動が大きく典型的に引っかかるパターン。
ケース3: 広い入力範囲と大電流負荷(完全NG)
入力: Vin=10〜20V / Vz=5.1V / I_load=1〜50mA / Iz_min=5mA / Pz=500mW
結果: R=89.09Ω / Iz_worst=166.24mA / Pz_worst=847.8mW / PR_worst=2491.9mW / 使用率169.6% / NG / 推奨2W以上
解釈: 入力振幅が大きく最大負荷も50mAだとシャント方式の限界を超える。LDOに置換するのが正解。ツールもこの条件では警告を出す。
ケース4: 3.3V低電力系(1N5226B相当で余裕OK)
入力: Vin=8〜10V / Vz=3.3V / I_load=1〜5mA / Iz_min=2mA / Pz=400mW
結果: R=671.43Ω / Iz_worst=8.98mA / Pz_worst=29.6mW / PR_worst=66.9mW / 使用率7.4% / OK / 推奨1/8W抵抗
解釈: マイコンの基準電圧や小信号バイアスの王道パターン。抵抗は1/8Wで十分、Zenerは大定格の必要なし。低コスト設計のお手本。
ケース5: USB 5V系から3.3V作成(小負荷)
入力: Vin=4.5〜5.5V / Vz=3.3V / I_load=2〜8mA / Iz_min=2mA / Pz=400mW
結果: R=120Ω / Iz_worst=16.33mA / Pz_worst=53.9mW / PR_worst=40.3mW / 使用率13.5% / OK / 推奨1/8W抵抗
解釈: USBバスパワーからセンサー用3.3Vを数mA作る用途。余裕は大きいが効率は(3.3×8)/(5.0×18.33)≈29%と悪いのでLDOのほうが賢い選択のことも多い。それでも部品2個で済む手軽さは魅力。
ケース6: 15V系から6.2V基準(温度係数良好域)
入力: Vin=15〜18V / Vz=6.2V / I_load=2〜10mA / Iz_min=3mA / Pz=500mW
結果: R=676.92Ω / Iz_worst=15.44mA / Pz_worst=95.7mW / PR_worst=205.7mW / 使用率19.1% / OK / 推奨1/4W抵抗
解釈: 6.2Vは温度係数がほぼゼロになる「スイートスポット」で、アナログリファレンスに最適。小負荷なら余裕の設計で、温度変動耐性も◎。計測器の内部基準電圧にもよく使われる。
仕組み・アルゴリズム
候補手法の比較
シャントレギュレータの設計アプローチは大きく3つある。
- 中央値設計: VinとI_loadの中央値でR決定→簡易だが最悪ケースを見落とす
- 最悪条件設計(本ツール採用): 片方の最悪でR決定、反対側の最悪でPz検算
- モンテカルロ設計: 部品ばらつきを含めて統計的に評価→高精度だが学習コストが高い
本ツールは最悪条件設計を採用した。理由は3つ。(1) 手計算と同じロジックで結果の解釈が容易。(2) ディレーティング80%と組み合わせれば統計的にもほぼ十分なマージンが得られる。(3) 入力パラメータが4〜5個で済み直感的。
実装詳細
計算フローは以下のとおり。
// Step1: 最小入力×最大負荷で R を決定(このときZenerに流れるのは Iz_min のみ)
const R = (Vin_min - Vz) / ((Iz_min + I_load_max) / 1000); // Ω
// Step2: 最大入力×最小負荷で Zener に流れる最悪電流
const Iz_worst = (Vin_max - Vz) / R - I_load_min / 1000; // A
// Step3: Zener と 抵抗の最悪消費電力
const Pz_worst = Iz_worst * Vz * 1000; // mW
const PR_worst = (Vin_max - Vz) ** 2 / R * 1000; // mW
// Step4: 80%ディレーティングで判定
const util = Pz_worst / Pz_rated * 100;
const verdict = Pz_worst < Pz_rated * 0.8 ? "OK" : "NG";
// Step5: 抵抗のW数推奨(PR_worstの約2倍マージン)
const W = PR_worst < 125 ? "1/8W"
: PR_worst < 250 ? "1/4W"
: PR_worst < 500 ? "1/2W"
: PR_worst < 1000 ? "1W" : "2W以上";
計算例(ケース1を手で追う)
Vin=10〜14V / Vz=5.1V / I_load=10〜30mA / Iz_min=5mA で実際にたどってみる。
- R決定: (10-5.1) / ((5+30)/1000) = 4.9 / 0.035 = 140Ω
- 最悪Iz: (14-5.1) / 140 - 0.010 = 0.06357 - 0.010 = 0.05357 A = 53.57mA
- 最悪Pz: 0.05357 × 5.1 × 1000 = 273.2mW
- 最悪PR: (14-5.1)² / 140 × 1000 = 79.21 / 140 × 1000 = 565.8mW
- 使用率: 273.2 / 500 = 54.6% < 80% → OK
- 抵抗: 565.8mW > 500mW だから 1W 定格
全てのケースで同じ5ステップが走るだけ。ツールは単にこれを自動化しているに過ぎない。だからこそ「計算の速さ」より「最悪条件の組み合わせを取り違えない」ことに設計の価値がある。人間はVin_maxとI_load_minを組み合わせることを忘れやすい——そこを外さないのがこのツールの仕事だ。
他ツールとの違い
Web上にZener計算機は多いが、多くは「R = (Vin - Vz) / I」だけを単発で出すだけで、最悪条件(Vin_max × I_load_min)での Zener 消費電力まで追ってくれない。設計現場で本当に知りたいのは「試作は動いたけど、電源電圧が上限まで振れて負荷が外れた瞬間にZenerが焼けないか」という一点だ。このツールは Iz_worst、Pz_worst、PR_worst、そして 80% ディレーティング判定までを 1 画面で同時に返す。
もう一つの差別化は、抵抗側の電力定格提案まで行うこと。Zener が生き残っても、直列抵抗 R が 1/4W のリードパーツだと真っ先に焦げる。計算結果 PR_worst から 1/8W → 1/4W → 1/2W → 1W → 2W以上 を自動で推奨する。
LDO やシリーズレギュレータとの住み分けも重要だ。負荷電流が 50mA を超えた時点でシャント方式は効率面で破綻する。このツールは iLoadMax > 50 で警告を出し、LDO熱計算 への乗り換えを促す設計にした。ノイズ除去を重視するなら、Zener の後段に RCフィルタ を挟むのが定石。その R と C を別ツールで検証できる。
「Zener の動抵抗 rz は無視するのか」という疑問には、意図的に Yes と答えている。rz を入れると入力が 1 つ増え、初学者が使いにくくなる。まずは rz=0 の理想特性で R と電力を決め、rz の影響は別途リプル除去比として評価する二段構え。この割り切りこそが他ツールにない実務感覚だ。
豆知識・読み物
5.1V で温度係数がゼロになる物理
Zener ダイオードは「Zener 降伏」と「アバランシェ降伏」という 2 つの降伏メカニズムが共存する素子だ。約 5V 以下では Zener トンネル効果が支配的で温度係数は負(温度が上がると Vz が下がる)、約 6V 以上ではアバランシェが支配的で温度係数は正(温度が上がると Vz が上がる)。その境界付近、おおむね 5.1V〜5.6V で両者がキャンセルし、温度係数がほぼゼロになる。
これは偶然ではなく、半導体物理の美しい帰結だ。だからこそ温度補償が必要な基準電圧源には 1N5231B(5.1V)や 1N821(補償済み 6.2V)が定番として残り続けている。逆に 3.3V や 12V の Zener は温度依存性が大きく、室温で調整してもフィールドで 100mV 単位で動くことがある。精度を要求する用途では Vz の選定だけで結果が決まる。
1N52xx / 1N47xx 系の歴史
1N4728A〜1N4764A は Motorola が 1960 年代に規格化した 1W Zener シリーズで、3.3V から 100V までを 5% 刻みで揃えた業界標準。小信号用の 1N5221B〜1N5267B(0.5W)は同時期に登場した低電力版で、今もリードタイプの定番として入手できる。半世紀以上も型番が生き残っているのは電子部品業界でも稀で、「動くものは変えない」という設計思想の象徴だ。
ちなみに 1N ではじまる型番は JEDEC(米国の半導体命名規格)のダイオード識別子で、末尾の A/B/C はバラつき等級を表す。B は ±5%、A は ±10%、無印は ±20% が一般的。基準電圧用途なら必ず B 以上を選ぶのが鉄則。
Tips
- Iz_min は 5mA を基本に。データシート上の最小値(1mA 等)ギリギリを狙うと、動抵抗 rz が急増して Vz が暴れる。5〜10mA 程度の余裕を持たせた方が結果的に安定する
- Vz ×(Vin_max - Vz)/ Vin_max は効率の目安。入力振幅が Vz の 3 倍を超えると発熱と損失で実用に耐えない。警告が出たら DC/DC への変更を検討する
- Zener と負荷の間に 0.1μF + 10μF を並列に入れる。高周波ノイズは 0.1μF で、低周波リプルは 10μF で落とす。Zener 単体ではノイズフロアが 1mVrms 程度残る
- 抵抗の定格は計算値の 2 倍以上を選ぶ。自然対流だけで冷やすリード抵抗は、定格通りでは触れないほど熱くなる。推奨値(1/8W→1/4W 等)はあくまで合否ラインで、実装では 1 ランク上が安全
- 基準電圧用途なら 5.1V / 5.6V 一択。温度係数ゼロ点を狙うこと。3.3V 系の Zener を精密基準として使うと、冬と夏で読み値が変わる
FAQ
Zener の動抵抗 rz は無視してよいのか
負荷変動・入力変動が小さい用途では無視して問題ない。rz は 1N5231B 系で 17Ω 前後、1N4733A 系で 7Ω 前後。負荷電流が 10mA 変動しても Vz の変動は 0.07〜0.17V 程度に収まる。精度が 5% 必要な用途まではこのツールの rz=0 近似で足りる。0.1% オーダーの基準電圧が必要なら、バンドギャップリファレンス IC に切り替えるべきで、そもそも Zener の守備範囲ではない。
なぜ大電流(50mA 超)の負荷は苦手なのか
シャント型はもともと「Vin から R で電流を落とし、負荷と Zener で分け合う」方式。負荷が軽い瞬間に余った電流はすべて Zener が熱として捨てる。負荷 100mA を想定して R を決めると、無負荷時には 100mA 以上がすべて Zener に流れ込み、5.1V × 100mA = 0.5W を軽く超える。同じ仕事なら LDO が 1/10 以下の消費電力で済むため、50mA 以上はシリーズ型が定石だ。
温度補償はどうすればよいか
最も手軽なのは 5.1V〜5.6V の Zener を選ぶこと(温度係数ゼロ点)。さらに厳密にやるなら、Zener に順方向ダイオード(0.7V、温度係数 -2mV/℃)を直列に入れて 6.2V 前後で補償する方法がある。1N821 シリーズは工場で特性を選別した温度補償済み製品で、±0.0005%/℃ 級まで出る。本ツールは温度係数計算を含まないため、要求精度が温度換算で効く場合は別途シミュレーションが必要。
シリーズレギュレータ(3 端子 / LDO)とどう使い分ければよいか
判断軸は 3 つ。負荷電流(50mA 以下ならシャント検討可)、効率(Vin-Vz 差が Vz の 2 倍未満なら許容)、ノイズ要件(μVrms オーダーが要ればシリーズ一択)。シャントが勝つのは「軽負荷・低コスト・部品点数最小」の 3 点に絞られる。マイコン VDD のように動的に数十〜数百 mA 振れる負荷は LDO が正解。LDO熱計算 と見比べて判断するとよい。
動抵抗 rz は結果にどれくらい影響するのか
ツールの計算値 Vz は「定格電流時の公称値」として扱っている。実際の回路では Iz が変動するぶん Vz も rz × ΔIz だけ動く。例えば 1N5231B(rz≈17Ω)で Iz が 5mA から 50mA まで変動すると、ΔVz ≈ 17 × 0.045 ≈ 0.77V 変化する。5.1V の 15% に相当し、精密用途では無視できない。逆に±5% 許容のラフな用途なら、このツールの単純計算で過不足ない。rz が効く局面ではバンドギャップ IC への置換を薦める。
まとめ
ツェナーレギュレータは「R を 1 本決めるだけ」というシンプルさの裏に、最悪条件での電力検算と部品ディレーティングという地味で重要な作業が隠れている。このツールは最小入力・最大負荷で R を決め、最大入力・最小負荷で Pz と PR を検算し、80% ディレーティングで合否を返すまでを 1 画面で完結させた。試作前の設計レビューに、また既存回路の健全性チェックに活用してほしい。
関連ツール: 抵抗の実物を選ぶときは 抵抗カラーコード、シリーズ型への乗り換え検討には LDO熱計算、デジタル入力のバイアスには プルアップ抵抗、Zener 後段のノイズ対策には RCフィルタ が組み合わせやすい。
不具合・改善要望があれば お問い合わせ からぜひ教えてほしい。