防振設計計算

固有振動数・振動伝達率・防振効果を即計算。防振マウント選定をブラウザで完結。

機器の質量・ばね定数・加振周波数を入力するだけで、固有振動数・振動伝達率・防振効果(dB)を自動算出。防振ゴム・コイルスプリング・空気ばねの特性を切替可能。

防振材条件

1個あたりの値を入力

ゴム≈0.05 / スプリング≈0.01 / 空気ばね≈0.03

プリセットから選択:

機器条件

目安: 回転機器=回転数÷60 Hz / 空調室外機=25-50 Hz / プレス機=1-10 Hz

計算結果

条件を入力すると結果が表示される

本ツールは1自由度振動モデルによる簡易計算です。実際の防振設計では、多自由度系の解析・防振メーカーのカタログデータ・設置条件(床剛性等)を考慮してください。

不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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階下からの苦情で始まった、防振計算との格闘

マンション最上階に設置された空調室外機。夜中に低周波の「ブーン」が響き、階下から苦情が入った——そんな経験をした設備設計者は少なくないだろう。振動は目に見えないからこそ厄介だ。「防振ゴムを入れればいい」と安易に考えると、かえって共振で振動が増幅されることすらある。

このツールは、防振設計の基礎となる固有振動数・振動伝達率・防振効果(dB)を、ブラウザ上で即座に計算するために作った。質量とばね定数を入力すれば、「その防振材で本当に効くのか」がグラフで一目でわかる。

防振計算ツールを作った理由——Excelでは見えなかった共振の落とし穴

防振設計の教科書を開けば、振動伝達率の式は必ず載っている。だが「式がある」ことと「現場で使える」ことには大きな隔たりがある。

筆者自身、設備の防振検討をExcelで組んでいた時期がある。数値は出る。でも周波数比を変えたときに伝達率がどう変化するか——カーブの全体像が見えない。「この防振ゴムで周波数比はいくつ?」「共振点から十分離れてる?」を感覚的に掴めないのが最大の課題だった。

既存のオンラインツールを探しても、防振計算に特化したものはほぼ皆無。あっても英語圏のもので、ばね定数の単位がlbf/inだったりして、日本のN/mm文化と噛み合わない。

だから自分で作った。入力はN/mm。グラフは対数スケールで共振域と防振域を色分け。現在の動作点をプロットして、「あなたの設計はここにいる」を一目で伝える。

防振・振動絶縁とは何か——振動が伝わるメカニズムを第一原理から理解する

固有振動数 とは

あらゆる物体には「揺さぶられたときに最も大きく揺れる周波数」がある。これが固有振動数(natural frequency)だ。

ブランコを想像してほしい。ブランコには「ちょうどいいタイミング」で押すと大きく揺れる周期がある。それ以外のタイミングで押しても、振れ幅は大きくならない。この「ちょうどいいタイミング」に対応する周波数が固有振動数だ。

1自由度系のばね-質量モデルでは、固有振動数fnは以下で求まる:

fn = (1 / 2π) × √(k / m)  [Hz]
  k: ばね定数 [N/m]
  m: 質量 [kg]

固有振動数はばね定数と質量の比で決まる。つまり「硬いばね+軽い質量」なら固有振動数は高く、「柔らかいばね+重い質量」なら低くなる。防振設計では固有振動数をできるだけ低く設定して、加振周波数から離すのが基本戦略だ。

振動伝達率 とは

振動伝達率T(transmissibility)は、振動源から支持構造に伝わる力の比率。加振力をF₀、伝達力をFtとすると、T = Ft / F₀ だ。T < 1なら防振効果あり、T = 1なら振動がそのまま伝わっている、T > 1なら振動が増幅されている。

減衰を考慮した振動伝達率の式は:

T = √[(1 + (2ζr)²) / ((1-r²)² + (2ζr)²)]
  r: 周波数比 (fe/fn)
  ζ: 減衰比

この式のポイントはr = √2 ≈ 1.414が分岐点ということ。r < √2ではT > 1(増幅領域)、r > √2ではT < 1(防振領域)。減衰比ζの大小に関わらず、この分岐点は変わらない。日常の感覚で言えば、「振動源のテンポに対して、ばねが十分にゆっくり揺れる設定にする」のが防振の本質だ。

固有振動数 求め方のバリエーション

実務では固有振動数を直接計算する以外に、静的たわみから求める方法もよく使われる:

fn = (1 / 2π) × √(g / δ) ≈ 15.76 / √δ  [Hz]
  δ: 静的たわみ [mm]
  g: 重力加速度 (9806.65 mm/s²)

防振材のカタログに静的たわみが記載されていれば、ばね定数を調べなくても固有振動数を概算できる。たとえばたわみ5mmなら fn ≈ 15.76 / √5 ≈ 7.0Hz、たわみ25mmなら fn ≈ 3.2Hz。たわみが大きいほど固有振動数が低い——つまり防振効果が高い。

防振材 種類 比較 — ゴム・スプリング・空気ばね

防振に使われる材料は大きく3種類に分けられる。それぞれ得意な周波数帯や環境条件が異なるため、用途に応じた使い分けが重要だ。

特性防振ゴムコイルスプリング空気ばね
固有振動数8〜15 Hz2〜5 Hz1〜3 Hz
減衰比 ζ0.03〜0.100.005〜0.020.01〜0.05
耐荷重〜数トン〜数十トン〜数百トン
高周波減衰◎ ゴム自体が吸収× スプリングが伝達
経年劣化△ 硬化・ひび割れ◎ 半永久的○ 気密部品の劣化
コスト安価中程度高価
メンテナンス不要不要給気源の維持が必要

防振ゴムは取り扱いが簡単で安価だが、固有振動数を低くしにくい。コイルスプリングは低い固有振動数を実現できるが、高周波振動をそのまま伝達してしまうため、ゴムパッドとの併用が一般的。空気ばねは最も低い固有振動数を達成でき、精密機器の除振に最適だが、コンプレッサー等の給気設備が必要になる。

防振と除振の違い

  • 防振(vibration isolation): 振動源から周囲への振動伝達を抑える(例: 空調機の架台に防振ゴムを入れる)
  • 除振(vibration isolation): 外部からの振動が精密機器に伝わるのを抑える(例: 電子顕微鏡の除振台)

物理的には同じ現象の裏表だが、設計の視点が異なる。防振では「振動源の質量」と「防振材のばね定数」が主要パラメータ。除振では「保護対象の質量」と「除振台のばね定数」になる。本ツールはどちらのケースにも使える。

共振 とは——なぜ避けなければならないか

周波数比 r = 1、つまり加振周波数と固有振動数が一致すると共振が起きる。理論上、減衰がゼロなら振幅は無限大。現実には減衰があるため無限にはならないが、それでも入力の数倍〜数十倍に振動が増幅される。

共振の危険域は r = 0.7〜1.4 程度。この範囲では伝達率が1を大きく超えるため、「防振材を入れたのにかえって揺れが大きくなった」という逆効果が発生する。防振設計で最も避けるべき状態だ。

参考: 振動絶縁 - Wikipedia

なぜ防振設計が重要なのか——振動放置のリスクと法令の要求

振動による実害

振動を放置すると何が起きるか:

  • 機器故障: 配管の疲労破壊、ボルトの緩み、軸受の摩耗促進
  • 騒音苦情: 固体伝搬音として離れた部屋に伝わり、特に低周波は壁を透過しやすい
  • 精密機器の誤作動: 半導体製造装置、電子顕微鏡、精密測定器は微振動でも影響を受ける
  • 人体への影響: 長時間の全身振動は腰痛などの健康被害を引き起こす(振動障害)

法令・規格の要求

建築基準法施行令では、建築設備が建物の構造に著しい影響を与えないことが求められる。また、環境省の「振動規制法」では工場・建設作業の振動に基準値が定められている。

JIS C 1510(振動レベル計)で測定された振動加速度レベルが基準値を超えると、行政指導の対象になる。防振設計は法令遵守の面からも欠かせない。

周波数比√2の意味

防振の世界で最も重要な数字は√2(≈1.414)。周波数比 r = fe/fn がこの値を超えると、振動伝達率 T が1を下回り、防振効果が発生し始める。r < √2の領域では、防振材がかえって振動を増幅させてしまう。これは減衰比の値に関わらず成り立つ普遍的な法則だ。

ここで活躍する——防振計算が必要な4つの現場

  • 空調設備設置: 屋上の室外機・チラーの防振架台設計。階下への固体伝搬音を防ぐ
  • 工場の機械基礎: プレス機・コンプレッサーの振動が周囲の精密加工ラインに影響しないよう隔離する
  • 精密機器の除振台: 電子顕微鏡や三次元測定機を床振動から守る。固有振動数を極力低くする設計
  • 建築音響設計: 浮き床・二重天井の振動絶縁性能を検証し、遮音等級を確保する

使い方——3ステップで防振効果がわかる

  1. 防振材タイプを選ぶ: 防振ゴム・コイルスプリング・空気ばねから選択。減衰比の初期値が自動設定される
  2. 質量・ばね定数・加振周波数を入力: 機器の質量、防振材1個あたりのばね定数、振動源の主要周波数を入力
  3. グラフで確認: 振動伝達率カーブ上に動作点が表示される。緑色の防振領域に入っていればOK

具体的な使用例——6ケースで検証

ケース1: 空調室外機(500kg、ゴムマウント4個)

  • 入力: m=500kg, k=50 N/mm×4個, fe=30Hz, ζ=0.05
  • 結果: fn≈3.18Hz, r≈9.43, T≈0.012, 防振効果=-38.7dB
  • 解釈: 周波数比が十分大きく、振動の99%以上を遮断。理想的な防振設計
  • 注意: ゴムは経年硬化でばね定数が上昇する。5年後にk=60 N/mmになってもr≈8.1で十分な余裕がある

ケース2: ポンプ(200kg、スプリングマウント4個)

  • 入力: m=200kg, k=20 N/mm×4個, fe=25Hz, ζ=0.01
  • 結果: fn≈3.18Hz, r≈7.86, T≈0.017, 防振効果=-35.6dB
  • 解釈: スプリングの低減衰により共振時のピークは高いが、動作点では十分な防振効果
  • 注意: ポンプ起動・停止時に加振周波数が共振点を通過する。起動時の過渡振動に注意

ケース3: プレス機(2000kg、ゴムマウント6個)——共振の失敗例

  • 入力: m=2000kg, k=200 N/mm×6個, fe=5Hz, ζ=0.05
  • 結果: fn≈6.17Hz, r≈0.81, T≈2.35, 防振効果=+7.4dB
  • 解釈: 共振域!振動が2.35倍に増幅される。ばね定数を下げるか、マウント数を減らして固有振動数を下げる必要がある
  • 対策: k=50 N/mm×6個に変更すると fn≈3.09Hz, r≈1.62, T≈0.62で防振領域に入る。さらにk=30 N/mm×6個なら r≈2.09, T≈0.30で-10.5dBの効果

ケース4: 精密測定室(除振台 50kg、空気ばね)

  • 入力: m=50kg, k=2 N/mm×4個, fe=15Hz, ζ=0.03
  • 結果: fn≈2.01Hz, r≈7.47, T≈0.019, 防振効果=-34.5dB
  • 解釈: 空気ばねで固有振動数を極めて低く設定。床振動からの除振に成功
  • 注意: 空気ばねは給気源の安定性が必要。コンプレッサー停止時は除振効果がなくなる

ケース5: 送風機(300kg、ゴムマウント4個、インバータ運転)

  • 入力: m=300kg, k=80 N/mm×4個, fe=20Hz(定格60Hz運転時), ζ=0.05
  • 結果: fn≈5.19Hz, r≈3.85, T≈0.074, 防振効果=-22.6dB
  • 解釈: 定格運転時は十分な防振効果。しかしインバータで低速運転(20Hz→10Hz、加振fe≈3.3Hz)にすると r≈0.64で共振域に突入
  • よくある間違い: インバータ機器では「最低回転数時の加振周波数」でも共振しないか確認が必要。定格だけで判断すると低速運転時にトラブルになる

ケース6: ディーゼル発電機(3000kg、スプリング6個)

  • 入力: m=3000kg, k=40 N/mm×6個, fe=25Hz(1500rpm 4気筒 2次加振), ζ=0.01
  • 結果: fn≈1.78Hz, r≈14.0, T≈0.005, 防振効果=-45.8dB
  • 解釈: 非常に大きな周波数比。防振効果は極めて高い。スプリングマウントの低減衰を活かした設計
  • 注意: 静的たわみが δ = 3000×9.81/(240,000) ≈ 12.3mmとやや大きい。排気管・燃料配管の接続部にフレキシブルジョイントが必須

仕組みとアルゴリズム——1自由度減衰振動系の伝達関数

候補手法の比較

防振性能の評価には複数の手法がある:

手法メリットデメリット
1自由度モデル(本ツール)計算が簡単、直感的回転モード等を無視
6自由度モデル並進+回転の全モードを評価入力パラメータが多い
FEM解析任意形状に対応専門ソフトが必要

本ツールは「まず概算で防振の可否を判断する」ユースケースに最適化し、1自由度モデルを採用した。

計算フロー

1. 合計ばね定数: k_total = k_per_mount × 個数 × 1000 [N/m]
2. 固有振動数:   fn = (1/2π) × √(k_total / m)  [Hz]
3. 周波数比:     r = fe / fn
4. 振動伝達率:   T = √[(1 + (2ζr)²) / ((1-r²)² + (2ζr)²)]
5. 防振効果:     dB = 20 × log₁₀(T)
6. 静的たわみ:   δ = m × g / k_total × 1000 [mm]

計算例(ケース1を手計算で検証)

k_total = 50 × 4 × 1000 = 200,000 N/m
fn = (1/6.2832) × √(200000/500) = 0.1592 × 20 = 3.18 Hz
r = 30 / 3.18 = 9.43
2ζr = 2 × 0.05 × 9.43 = 0.943
T = √[(1 + 0.889) / ((1 - 88.92)² + 0.889)]
  = √[1.889 / (7729.5 + 0.889)]
  = √[0.000244] = 0.0156
dB = 20 × log₁₀(0.0156) = -36.1 dB

他の防振計算ツールとの違い

比較項目本ツールExcel自作CAEソフト
即時性◎ リアルタイム△ セル参照を追う× 前処理が必要
グラフ◎ SVG対数グラフ○ Excelチャート◎ 高精度
コスト無料無料(自作工数)年間数十万円〜
単位N/mm(日本標準)自由自由
多自由度× 非対応△ 自分で拡張◎ 対応

概算レベルでの防振マウント選定にはこのツールが最も手軽だ。CAEが必要なのは、複雑な形状や多自由度系の精密解析が求められるケースに限られる。

防振にまつわる豆知識

タコマナローズ橋の教訓

1940年、アメリカのタコマナローズ橋が風による共振で崩壊した。風速約19m/sで橋桁がねじれ振動を起こし、わずか4ヶ月で壊滅的な破壊に至った。これは構造物の共振がいかに危険かを示す歴史的事例として、振動工学の教科書に必ず登場する。

参考: タコマナローズ橋 - Wikipedia

楽器と防振

グランドピアノの設置には「インシュレーター」と呼ばれる防振材が使われる。階下への振動伝達を防ぐだけでなく、ピアノ自体の響きにも影響するため、音楽ホールでは材質選定に細心の注意が払われる。

地震と防振(免震)

建築の免震構造は、まさにこのツールで扱う「防振」の大規模版だ。免震ゴムで建物の固有周期を長くし(固有振動数を下げ)、地震動の卓越周期(0.1〜1秒)から遠ざける。周波数比を大きくするという原理は同じだ。

防振設計のTips

  • 周波数比は3以上を目標にする: √2で防振領域に入るが、実用上はr≥3で十分な効果が得られる。r≥5なら非常に良好
  • 防振ゴムは経年劣化する: ゴムは紫外線・オゾン・温度で硬化し、ばね定数が上昇する。設計時に余裕を見込むこと
  • 設置面の剛性を確認する: 防振材の下の床が柔らかいと、系全体の固有振動数が変わる。防振マウントの効果が設計値と異なる場合、多くは床剛性の問題
  • 静的たわみも確認する: たわみが大きすぎると配管接続部にストレスがかかる。一般に5〜15mm程度が適正範囲

よくある質問

防振ゴムとスプリングマウント、どちらを選ぶべき?

低周波振動(10Hz以下)の防振にはスプリングが有利。固有振動数を低く設定でき、大きな周波数比を稼げる。ただし高周波の振動はスプリング自体が伝達するため、ゴムパッドとの併用が一般的だ。一方、防振ゴムは取り扱いが簡単で、高周波成分の減衰にも効果がある。

ばね定数がわからない場合はどうすれば?

防振材メーカーのカタログに荷重-たわみ特性が記載されている。たわみ量δ[mm]と荷重F[N]から k = F/δ で求まる。またはメーカーの技術窓口に問い合わせれば、使用条件に応じたばね定数を教えてもらえる。

計算結果と実測値が合わない原因は?

主な原因は3つ: (1) 実際の系が多自由度系であり、回転モードや上下-水平の連成が生じている (2) 設置面(床)の剛性が有限で、系全体の固有振動数が変化している (3) 防振材のばね定数が荷重や周波数に依存している(非線形性)。本ツールは理想的な1自由度線形モデルなので、これらの効果は含まれない。

計算データはどこに保存される?

すべてのデータはブラウザ上で処理され、サーバーへの送信は一切行わない。入力値はブラウザのメモリ上にのみ存在し、ページを閉じれば消去される。

まとめ

防振設計の第一歩は「固有振動数と加振周波数の関係を把握する」こと。このツールで周波数比を確認し、防振領域に入っているかをグラフで視覚的に判断できる。

関連ツール: ばね設計シミュレーター ではばね定数の詳細計算が可能。騒音レベル距離減衰シミュレーター では防振後の残留振動が騒音としてどの程度伝わるかを検証できる。

ご意見・ご要望は X (@MahiroMemo) からお気軽にどうぞ。

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