土壌pH調整量計算

現在のpHと目標pHから苦土石灰・硫黄華の必要量を算出。土質・面積に対応

現在のpHと目標pHを入力すると、苦土石灰・消石灰・硫黄華の必要量を自動計算。作物プリセットで目標pHを簡単設定。

シナリオ

pH設定

土壌条件

必要量

pH差+1.0
アルカリ化(石灰)

苦土石灰

4,000 g

4.0 kg

消石灰(代替)

2,800 g

2.8 kg

石灰・硫黄の効果は土質・有機物量・気温により変動します。実際の散布量は土壌検査結果に基づいて判断してください。

不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

PR

📘 家庭菜園の土づくりに役立つアイテム

肥料をあげても野菜が育たない、その原因は「土の酸度」かもしれない

家庭菜園を始めて最初の年。肥料もたっぷりやったのに、トマトの実が全然大きくならなかった。葉が黄色くなって、下のほうから枯れていく。「肥料が足りないのかな」と追肥を重ねたけれど、状況は変わらず。あるとき土壌pH測定器を買って調べてみたら、pHが4.8。完全に酸性に傾きすぎていた。

肥料をいくら投入しても、土壌pHが適正範囲から外れていると養分が植物に吸収されない。窒素やリン酸が土の中にあっても、酸性が強すぎるとアルミニウムイオンがリン酸を固定してしまい、根が吸い上げられなくなる。この「見えない壁」の正体が土壌pHだ。

じゃあ石灰を撒けばいい――そこまではわかる。問題は「何グラム撒ればいいのか」。袋の裏を見ても「1m²あたり100〜300g」としか書いていない。土質も深さも現在のpHも考慮していない大雑把な数字。撒きすぎてアルカリに振れすぎたら、今度は鉄やマンガンが吸えなくなる。このツールは、現在のpHと目標pH、土質・面積・耕起深さを入力するだけで、苦土石灰・消石灰・硫黄華の必要量をグラム単位で算出する。

石灰の袋に「適量」としか書いてなかった不満が出発点

家庭菜園をやっていると、「石灰を撒いてpHを調整しましょう」という情報にはすぐたどり着く。ホームセンターの園芸コーナーにも、苦土石灰の袋が山積みで並んでいる。でも、実際にどれだけ撒けばいいかの情報が驚くほど少ない。

袋の裏には「1m²あたり100〜300g」という幅のある目安が書いてあるだけ。今のpHがいくつで、目標がいくつで、土が砂っぽいのか粘土っぽいのか——そういう条件を入れて計算できるツールが欲しかった。

最初はExcelで自作した。農業試験場の資料をもとに、土質別の緩衝能(石灰の効きやすさ)を調べて、pHの差分から必要量を計算する式を組んだ。これが意外と便利で、知人にも共有していた。ただ、スマホで使えない、入力が面倒、消石灰への換算を毎回手計算している——という不満が積もっていった。

既存のWeb計算ツールも探してみたが、土質の違いを反映しないもの、面積を入力できないもの、あるいは英語圏の単位系(ポンド/平方ヤード)で書かれたものばかり。日本の家庭菜園で使いやすい、メートル法ベースのpH調整量計算ツールが見つからなかった。

ならば自分で作ろう、と思った。Excel時代に検証した計算式を整理し直し、作物別の目標pHプリセット(トマト、ほうれん草、ブルーベリーなど8種)も組み込んだ。耕起深さの補正も入れることで、浅耕の花壇から深耕の畑まで対応できるようにした。

土壌pHとは何か——酸性・中性・アルカリ性の正体

土壌 酸度 とは

pH(ペーハー/ピーエッチ)は、水素イオン濃度の指標。0から14までのスケールで、7が中性、7未満が酸性、7超がアルカリ性を示す。土壌pHとは、土に水を加えて抽出した液のpHを測定した値で、土がどれだけ酸性またはアルカリ性に傾いているかを数値化したもの。

日常でたとえるなら、レモン汁がpH2前後、水道水がpH7前後、石鹸水がpH10前後。土壌pHは通常3.5〜8.5の範囲に収まるが、多くの野菜が好むのはpH5.5〜7.0あたりの弱酸性〜中性だ。

pHスケールの対数的な性質

pHは対数スケールである点が重要。pH5とpH6の差は、水素イオン濃度で10倍の違いがある。つまり、pH4.5の土とpH6.5の土では、水素イオン濃度が100倍も違う。「たった2の差」と思いがちだが、化学的にはまったく別世界。だからこそ、pH調整には正確な量の計算が不可欠になる。

pH = -log10([H+])

pH 4.0 → [H+] = 0.0001 mol/L
pH 5.0 → [H+] = 0.00001 mol/L  (10倍の差)
pH 6.0 → [H+] = 0.000001 mol/L (100倍の差)

土壌 pH 調整 の基本原理

土壌pHを上げる(酸性を和らげる)には、石灰質資材を土に混ぜる。苦土石灰(炭酸カルシウム・マグネシウム)や消石灰(水酸化カルシウム)が代表的。これらが土中の水素イオンを中和し、pHを上昇させる。

逆に、pHを下げる(アルカリ性を酸性化する)場合は、硫黄華(元素硫黄)を使う。土壌中の微生物が硫黄を酸化して硫酸にし、その硫酸がpHを下げる。

【pH上昇】CaCO3 + 2H+ → Ca2+ + H2O + CO2↑
【pH低下】S + 3/2 O2 + H2O → H2SO4 → 2H+ + SO4^2-

土質と緩衝能——同じ石灰量でもpHの上がり方が違う

ここが計算を複雑にするポイント。土壌には「緩衝能(buffer capacity)」がある。粘土やフミン酸(腐植)が多い土ほど、pHの変化に対する抵抗力が大きい。

砂質土は粘土鉱物が少ないため、少量の石灰でpHが大きく動く。一方、粘土質土は陽イオン交換容量(CEC)が高く、石灰を吸い込む「余力」が大きい。だから同じpH1.0の変化でも、粘土質は砂質の2倍の石灰が必要になる。

このツールでは、土質を「砂質」「壌土」「粘土質」の3段階に分け、それぞれの緩衝能に応じた基準投入量を設定している。

参考: 土壌酸度 - Wikipedia

苦土石灰 量 の目安

苦土石灰の「pH 0.5上昇あたりの基準投入量」は土質ごとに異なる(深さ20cm基準)。

土質苦土石灰 基準量消石灰 換算
砂質150 g/m²105 g/m²
壌土200 g/m²140 g/m²
粘土質300 g/m²210 g/m²

消石灰は苦土石灰の約0.7倍の量で同等の中和効果がある。ただし消石灰は反応が急激なので、植え付け2週間以上前に施すのが原則。苦土石灰はマグネシウム補給もできるため、家庭菜園では苦土石灰のほうが使いやすい。

pHが作物に与える影響——養分が「あるのに吸えない」落とし穴

養分の可給性とpHの関係

土壌pHが適正範囲から外れると、肥料が土中にあっても植物が吸収できなくなる。これは養分の「可給性(availability)」がpHに強く依存するため。

  • pH 4.5以下: アルミニウムや鉄が過剰に溶出し、リン酸を不溶化する。根の伸長も阻害される
  • pH 5.0〜5.5: カルシウム・マグネシウムの不足が顕在化。トマトの尻腐れ病はカルシウム不足が一因
  • pH 7.5以上: 鉄・マンガン・亜鉛・ホウ素が不溶化する。葉脈間の黄変(クロロシス)が典型的な症状

農林水産省の「土壌診断に基づく適正施肥の推進」資料でも、土壌pHは最初にチェックすべき項目とされている。肥料設計の前にpH調整を行うのが基本中の基本だ。

pH調整を怠った場合の実害

実害は思いのほか大きい。あるブルーベリー農園の事例では、石灰過剰でpHが7.0を超え、鉄欠乏クロロシスで一区画の苗木が全滅した。植え替えと土壌改良で数十万円の損失になったという。

家庭菜園でも、毎年「なんとなく」石灰を撒き続けてpHが8近くまで上がった——という失敗談は多い。石灰の袋裏の「100〜300g/m²」を鵜呑みにして、現在のpHを測らずに投入し続けた結果だ。

逆もある。酸性雨が降る日本では、何も施さなければ土壌は年々酸性に傾く。3〜5年放置した庭の土がpH4台になっていることも珍しくない。この状態では大半の野菜が健全に育たない。

ほうれん草は特にpHに敏感で、pH5.5以下ではまともに発芽すらしないことがある。一方、ブルーベリーやツツジのような酸性を好む植物は、pH6.5以上になると鉄不足で衰弱する。作物ごとの適正pHを把握し、過不足なく調整するのが収穫量を左右する。

石灰の量を「勘」で決めていた人に使ってほしい場面

家庭菜園の春準備——植え付け前のpH調整

春の植え付け2〜4週間前は、pH調整のベストタイミング。土壌pH測定器で現在値を測り、このツールで必要量を算出して苦土石灰を散布する。「とりあえず一握り」ではなく、グラム単位で計算するから撒きすぎを防げる。

ブルーベリー・ツツジの酸性土壌づくり

ブルーベリーの適正pHは4.5〜5.0。一般的な庭土(pH6〜7)をここまで下げるには、硫黄華をかなりの量必要とする。このツールは硫黄華の必要量も自動計算するので、「ピートモスをどれくらい混ぜればいいか分からない」という悩みの参考値になる。

連作障害の予防チェック

同じ場所で同じ科の野菜を作り続けると、土壌pHが偏りやすい。トマトやナスを毎年植えている区画は、カルシウムの消耗で酸性に傾きがち。シーズンの終わりにpHを測り、次の作付け前に必要な調整量を事前把握しておくと、翌年の準備がスムーズになる。

芝生の管理——均一な生育のために

芝生はpH6.0〜7.0で最もよく育つ。広い面積だと石灰の総量が数kgになることもあり、「面積 × 必要量」の計算が不可欠。このツールは面積と深さを入力するだけで総量が出るので、ホームセンターで何袋買えばいいかもすぐわかる。

土壌pH調整量の計算方法——3ステップで完了

ステップ1: pHを入力する

現在のpH値を入力し、作物プリセット(一般的な野菜・トマト・ほうれん草・ブルーベリーなど8種)を選ぶと目標pHが自動設定される。もちろん手動で目標pHを変更してもOK。

ステップ2: 土壌条件を設定する

土質を「砂質」「壌土」「粘土質」から選び、面積(m²)と耕起深さ(cm)を入力する。土質がわからない場合は、土を握って離したときに崩れるなら砂質、形が残るなら粘土質、その中間が壌土——と判断すれば大丈夫。

ステップ3: 結果を確認する

pH差・苦土石灰量・消石灰量(代替)・硫黄華量がグラム単位で表示される。pH差が2.0を超える場合は「複数回に分けてください」という警告も表示されるので安心。

土壌pH調整量の計算シミュレーション——6つの実践ケース

ケース1: 壌土の菜園をpH5.5→6.5に引き上げ(一般的な野菜向き)

  • 入力: 現在pH 5.5 / 目標pH 6.5 / 壌土 / 10 m² / 深さ 20 cm
  • 結果: pH差 +1.0 → 苦土石灰 4,000 g(4 kg) / 消石灰なら 2,800 g
  • 解釈: 10 m²の菜園に苦土石灰4 kg。20 kgの袋の1/5に相当。植え付け2週間前に全面に均一に撒き、耕起して混ぜ込む。1 m²あたり400 gという計算になり、袋裏の「100〜300 g」よりやや多い。壌土でpH 1.0上げるにはこれだけ必要だということ。

ケース2: 砂質の庭をpH7.0→5.0に酸性化(ブルーベリー用)

  • 入力: 現在pH 7.0 / 目標pH 5.0 / 砂質 / 5 m² / 深さ 20 cm
  • 結果: pH差 -2.0 → 硫黄華 600 g
  • 解釈: ブルーベリー区画に硫黄華600 g。pH差が2.0と大きいため、「一度に2.0以上の変更は避け、複数回に分けてください」の警告が表示される。まず300 gを施して数週間待ち、再度pHを測定してから残りを投入するのが安全。

ケース3: 粘土質の畑をpH4.5→6.5に大幅引き上げ(ほうれん草用)

  • 入力: 現在pH 4.5 / 目標pH 6.5 / 粘土質 / 8 m² / 深さ 30 cm
  • 結果: pH差 +2.0 → 苦土石灰 14,400 g(14.4 kg) / 消石灰なら 10,080 g
  • 解釈: 粘土質は緩衝能が高いため、大量の石灰が必要になる。さらに深さ30 cmへの補正(20 cm基準の1.5倍)も加わり、14 kg超という結果に。20 kgの袋をほぼ1袋使う計算。pH差が2.0なので、やはり2回に分けて施用するのが望ましい。1回目に7 kgを撒き、2〜3週間後に再測定してから残りを調整する。

ケース4: 砂質のプランター畑をpH5.0→6.0に微調整(トマト用)

  • 入力: 現在pH 5.0 / 目標pH 6.0 / 砂質 / 3 m² / 深さ 20 cm
  • 結果: pH差 +1.0 → 苦土石灰 900 g / 消石灰なら 630 g
  • 解釈: 砂質は石灰の効きが良いため、壌土の同条件(ケース1の面積3/10相当で1,200 g)より少ない。1 m²あたり300 gで、袋裏の目安レンジの上限付近。砂質は排水性が高く石灰が流亡しやすいので、一度に撒くより年2回に分けて施すほうが効果が持続する。

ケース5: 壌土の庭をpH7.5→5.0に酸性化(ツツジ・シャクナゲ用)

  • 入力: 現在pH 7.5 / 目標pH 5.0 / 壌土 / 6 m² / 深さ 20 cm
  • 結果: pH差 -2.5 → 硫黄華 1,500 g
  • 解釈: pH差2.5は一度に変えるには大きすぎる。硫黄華は微生物の酸化作用で徐々にpHを下げるため、即効性がない(効果発現まで数週間〜数ヶ月)。500 gずつ3回に分けて、毎回pHを測定しながら追加していくのが実践的。

ケース6: 粘土質の花壇をpH6.0→4.5に酸性化(ブルーベリー用)

  • 入力: 現在pH 6.0 / 目標pH 4.5 / 粘土質 / 4 m² / 深さ 25 cm
  • 結果: pH差 -1.5 → 硫黄華 1,050 g
  • 解釈: 粘土質は緩衝能が高いため、砂質より多くの硫黄華が必要。さらに深さ25 cmの補正(1.25倍)も加わる。粘土質で硫黄華の酸化速度が遅い場合があるため、ピートモスの併用も検討するとよい。硫黄華を500 gと550 gの2回に分けて施し、間隔は1ヶ月以上空けるのが安全。

計算の仕組み——緩衝能ベースの石灰量算出アルゴリズム

候補手法の比較

土壌pH調整量の計算には、主に2つのアプローチがある。

1. SMP緩衝液法(実験室法): 土壌サンプルにSMP緩衝液を加え、その平衡pHから必要石灰量を算出する。精度は高いが、実験設備が必要で家庭菜園向きではない。農業試験場や専門機関で使われる手法。

2. 土質別基準量法(簡易法): 土質カテゴリ(砂質・壌土・粘土質)ごとに「pH 0.5上昇あたりの石灰基準量」を定め、pH差と面積から必要量を比例計算する。精度はSMP法に劣るが、土質の分類さえできれば実用的な目安が得られる。

このツールでは土質別基準量法を採用した。家庭菜園のユーザーがSMP試験を行うのは現実的でなく、砂質・壌土・粘土質の3分類は手触りで判断できるため、実用性と精度のバランスが最も良い。

参考: Soil pH - Wikipedia(英語)

実装詳細——計算フロー

入力:
  currentPh  = 現在のpH(3.0〜9.0)
  targetPh   = 目標pH(3.0〜9.0)
  soilType   = sandy | loam | clay
  area       = 面積(m²)
  depth      = 耕起深さ(cm)

1. pH差を算出
   phDiff = targetPh - currentPh

2. 深さ補正係数を算出(基準20cm)
   depthFactor = depth / 20

3. 方向判定
   direction = phDiff > 0 ? "raise" : "lower"

4-A. pH上昇の場合(direction = "raise")
   基準量 RATE = { sandy: 150, loam: 200, clay: 300 } g/m²/0.5pH
   苦土石灰量 = RATE[soilType] × (|phDiff| / 0.5) × area × depthFactor
   消石灰量   = 苦土石灰量 × 0.7

4-B. pH低下の場合(direction = "lower")
   基準量 SULFUR_RATE = { sandy: 30, loam: 50, clay: 70 } g/m²/0.5pH
   硫黄華量 = SULFUR_RATE[soilType] × (|phDiff| / 0.5) × area × depthFactor

計算例——ケース1をステップバイステップで

入力: 現在pH 5.5、目標pH 6.5、壌土、10 m²、深さ 20 cm

1. phDiff = 6.5 - 5.5 = 1.0(上昇方向)
2. depthFactor = 20 / 20 = 1.0
3. direction = "raise"
4. RATE[loam] = 200 g/m²/0.5pH
5. 苦土石灰量 = 200 × (1.0 / 0.5) × 10 × 1.0
              = 200 × 2 × 10 × 1
              = 4,000 g
6. 消石灰量 = 4,000 × 0.7 = 2,800 g

深さ補正の意味

基準量はすべて「耕起深さ20 cm」を前提としている。耕起を30 cmまで行うなら、中和すべき土量が1.5倍になるので石灰量も1.5倍。花壇のように10 cmしか耕さないなら、0.5倍で済む。この線形補正は土壌化学の実務でも広く使われている簡便な近似。

消石灰換算係数0.7の根拠

消石灰(Ca(OH)2)は苦土石灰(CaCO3 + MgCO3)よりも中和力が強い。化学的には、消石灰の中和当量が74 g/molに対し、炭酸カルシウムは100 g/mol。単純な当量比は0.74だが、苦土石灰にはMgCO3も含まれるため、実用的な換算係数として0.7を採用している。農業技術資料でもこの係数はよく使われる値。

参考: 農林水産省 土壌診断の手引き

既存の土壌pH計算サイトと何が違うのか

「石灰 何グラム」で検索すると、情報の出どころはだいたい3パターンに分かれる。

1つ目は農協や自治体のPDF資料。「1aあたり苦土石灰100kg」のような目安が載っているが、家庭菜園の3m²にどう換算するかは自分で計算しなければならない。面積換算と深さ補正を暗算でやると、桁を間違えるリスクが高い。

2つ目はExcelの計算シート。土壌分析機関が配布しているものがあるが、CEC(陽イオン交換容量)や塩基飽和度といった専門値の入力が前提で、pH測定器しか持っていない家庭菜園ユーザーには敷居が高い。

3つ目は園芸ブログの経験則。「ひと握りで大丈夫」「1m²に200gくらい」といった記述が多く、土質の違いによる緩衝能の差が考慮されていない。砂質と粘土質では同じpH差を動かすのに必要な石灰量が2倍近く違うのに、一律の数字が独り歩きしている。

このツールは、pH測定値・土質・面積・深さの4項目だけで苦土石灰・消石灰・硫黄華の必要グラム数を即座に算出する。作物別プリセットで目標pHも自動設定されるから、ブルーベリーのような酸性土壌が必要な作物にも迷わず対応できる。専門知識がなくても、pH測定器さえあれば使える設計にした。

土壌pHにまつわる豆知識 ── 日本の土はなぜ酸性になるのか

雨が土を酸性にするメカニズム

日本の年間降水量は約1,700mmで、世界平均の約2倍。この雨水のpHは平均4.7~5.0程度で、弱酸性だ(気象庁の酸性雨観測によるデータ)。雨が土壌に染み込むたびに、土の中のカルシウムやマグネシウムといった塩基性ミネラルが溶け出して流亡する。これが「塩基の溶脱」で、日本の畑が放置すると酸性化する最大の原因になっている。

関東ローム層のような火山灰土壌はもともとpH5.0~5.5程度。何も手を加えなければ、多くの野菜が好むpH6.0~6.5には届かない。だから日本の家庭菜園では「植え付け前に石灰を撒く」が基本手順になっているわけだ。

pHスケールは対数 ── 1.0の差は10倍の意味

pH6.0とpH5.0では水素イオン濃度が10倍違う。pH7.0とpH5.0なら100倍だ。「たった1.0の差」と甘く見ると、必要な石灰量を大幅に過小評価してしまう。逆に言えば、pH6.0→6.5の0.5上昇とpH5.0→5.5の0.5上昇では、対数スケール上は同じ0.5でも土壌の緩衝能が異なるため、実際に必要な石灰量は一定ではない。このツールでは0.5pH刻みの線形近似を採用しているが、実用上はこの近似で十分な精度が得られる。

世界の土壌pH事情

ヨーロッパの石灰岩地帯ではpH7.5~8.0のアルカリ性土壌が珍しくない。こうした土壌ではブルーベリーやツツジを育てるために硫黄華で酸性化する必要がある。「石灰を撒くのが当たり前」なのは酸性土壌が多い日本やアジアの特徴で、地域が変われば逆の悩みが生じるという点も面白い。

土壌pH調整を成功させるTips

  • 石灰は植え付けの2~3週間前に撒く ── 石灰を撒いた直後は土壌のpHが急激に変動し、根焼けのリスクがある。特に消石灰は反応が速いため、必ず余裕をもって施用し、その間に1~2回耕起して土と馴染ませておくこと

  • 一度にpH1.0以上動かさない ── 大量の石灰を一度に投入すると、土壌微生物のバランスが崩れて有機物の分解が停滞する。pH差が大きい場合は、0.5~1.0ずつ数週間間隔で段階的に調整するのが鉄則。このツールでもpH差2.0以上で警告が出る設計にしている

  • 苦土石灰と消石灰の使い分け ── 苦土石灰(ドロマイト)はマグネシウムを含むため、土壌のMg補給も兼ねられる。反応が穏やかで家庭菜園向き。消石灰は即効性が高いが、肥料(特に窒素系)と混ぜるとアンモニアガスが発生するため、同時施用は厳禁

  • pH測定は複数箇所で ── 畑の端と中央でpHが0.5以上違うことは珍しくない。最低3箇所で測定して平均値を使うと、ムラのない調整ができる。安価な土壌pH測定器でも、校正液で定期的に精度を確認しておけば実用上は十分だ

よくある質問

苦土石灰と消石灰、どちらを使うべき?

家庭菜園なら苦土石灰(ドロマイト石灰)がおすすめ。反応が穏やかで撒きすぎのリスクが低く、マグネシウム補給にもなる。消石灰は即効性があるが、量の加減が難しく、肥料と同時に撒くとアンモニアが揮散して窒素が無駄になる。このツールでは両方の必要量を同時に表示するので、手持ちの資材に合わせて選べる。

pH測定器がないと使えない?

正確な調整にはpH測定値が必要だ。ホームセンターで1,000~3,000円程度の土壌pH測定器が手に入る。リトマス試験紙でも大まかな値はわかるが、0.5刻みの精度が欲しいなら電極式の測定器を推奨する。測定器がない場合は、地域の農業改良普及センターや自治体の土壌分析サービスを利用する方法もある。

計算結果と実際に必要な量がずれることはある?

ある。土壌の緩衝能は有機物含有量やCEC(陽イオン交換容量)によっても変わるため、本ツールの「砂質/壌土/粘土質」の3区分は実用的な近似値だ。堆肥を大量に投入している畑や、火山灰土壌のような特殊な土質では、計算値より多く石灰が必要になることがある。まずは計算値の8割程度を施用し、2週間後に再測定して追加するのが確実な方法だ。

入力したデータはどこかに送信される?

されない。すべての計算はブラウザ上のJavaScriptで完結しており、サーバーへのデータ送信は一切行っていない。入力値がネットワークを経由することはないので、圃場の情報が外部に漏れる心配は不要だ。

硫黄華でpHを下げるのにどのくらい時間がかかる?

硫黄華は土壌中の微生物によって酸化されて初めてpH低下効果を発揮するため、石灰より反応が遅い。気温や土壌微生物の活性にもよるが、効果が安定するまで1~3ヶ月かかることが多い。ブルーベリーなど酸性土壌が必要な作物の植え付けは、前シーズンのうちに硫黄華を施用しておくのが理想だ。

まとめ ── 測って、入力して、撒くだけ

土壌pH調整の難しさは「何をどれだけ撒けばいいか」の数量化にある。土質と面積と深さを入力すれば、苦土石灰・消石灰・硫黄華の必要グラム数が瞬時にわかる。もう「ひと握りで適当に」と悩む必要はない。

pH調整が終わったら、次は施肥の設計だ。肥料配合計算機(/fertilizer-calc)で作物ごとのN-P-K必要量を算出すれば、土づくりから施肥まで一気通貫で管理できる。

不具合や改善要望があれば、お問い合わせからぜひ送ってほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。酸性に傾いた畑でトマトが全滅した年に、pH測定器と石灰の計算式にのめり込んだ

運営者情報を見る

© 2026 土壌pH調整量計算