「1000Whで電気毛布は何時間?」——単純な割り算は4割ズレる
「1000Whのポータブル電源で、電気毛布は何時間使える?」——カタログの数字で割り算すると 1000Wh ÷ 40W = 25時間。でも実際の答えは約35.4時間だ。単純な割り算より4割も長い。カラクリは2つある。ひとつは実効率。定格容量1000Whのうち実際に取り出せるのは85%程度で、ここだけ見ると割り算より短くなる。もうひとつが間欠運転率。電気毛布はサーモスタットが効いていて、「中」設定なら通電しているのは時間の6割ほど。この2つを両方織り込むと、答えは25時間ではなく35.4時間になる。逆に扇風機のような連続運転の機器なら、実効率の分だけカタログの割り算より短くなる。つまり機器によってズレの方向すら変わる。
このツールは、定格容量と機器の消費電力から稼働時間を実効率・間欠運転率込みで計算する。それだけじゃない。「使いたい時間」から必要容量と推奨クラス(240〜2000Wh)を逆算するモード、AC・ソーラーの充電時間モードを1画面で切り替えられる。電気毛布・車載冷蔵庫など機器プリセット10種は間欠運転率まで連動し、結果には防災日数換算とスマホ充電回数の体感値が付く。メーカー非依存の汎用計算機だ。
なぜ作ったのか — メーカーの稼働時間表では「うちの機器」が計算できない
ポータブル電源の購入を検討したとき、各メーカーのサイトには「この製品でスマホ約50回、電気毛布約10時間」といった稼働時間表が必ず載っている。ただ、あれは自社製品×代表機器の組み合わせ表でしかない。手持ちの電気毛布が40Wではなく55Wだったら? 車載冷蔵庫を24時間つけっぱなしにしたら? 表のマスから一歩外れた瞬間、自分で計算し直すしかなくなる。
じゃあ検索すればいいかというと、出てくるブログ記事の大半は 容量Wh ÷ 消費電力W の単純割り算だ。実効率を無視すれば1〜2割の過大評価になるし、電気毛布や冷蔵庫の間欠運転を無視すれば逆に大幅な過小評価になる。「1000Whで電気毛布25時間」と「1000Whで電気毛布35時間」では、冬キャンプの計画がまるで変わる。どちらの誤差も、容量選びを間違える方向に効いてしまう。
もうひとつの不満は、計算の「行き来」ができないことだった。購入検討では「この容量で何時間使える?」(稼働時間)と「この時間使いたいなら何Wh必要?」(必要容量)と「ソーラーで運用できる?」(充電時間)を何度も往復する。この3つを1画面のモード切替で行き来できて、間欠運転率まで面倒を見てくれる汎用計算機が見当たらなかった。だから作った。
ポータブル電源の容量と稼働時間の基礎 — WhとWの関係から
ポータブル電源 稼働時間 計算の基本 — 水槽とホースで考える
Wh(ワット時)とW(ワット)の関係は、水槽とホースにたとえると一発で掴める。定格容量1000Whのポータブル電源は「1000リットルの水槽」、消費電力30Wの扇風機は「毎時30リットル吸い出すホース」だ。水槽が空になるまでの時間は 1000 ÷ 30 ≒ 33時間。これが稼働時間計算の骨格で、Whという単位自体が「1Wの電力を1時間使い続けたときのエネルギー量」を意味している(定義は Wikipedia: ワット時 が詳しい)。
ただし、現実のポータブル電源はこの骨格どおりには動かない。水槽の底のほうの水は吸い出せないし、ホースの途中で漏れもある。それを補正するのが次の2つのパラメータだ。
定格容量と実効容量 — カタログの数字は全部使えない
定格容量1000Whと書いてあっても、実際に機器へ届くのは850Wh前後。理由は2つある。ひとつは放電深度(DoD)。リチウムイオン電池は保護のため完全な空までは放電させない設計になっている。もうひとつはインバーター効率。電池の直流をAC100Vに変換するインバーターで1割前後のロスが出る。この2つを掛け合わせた「実際に使える割合」が実効率で、AC出力なら85%が目安だ。本ツールのデフォルト値もここに置いてある。
なお実効率は固定値ではない。USB出力はインバーターを通らない分やや高く、冬の低温環境では電池の性能自体が落ちてさらに下がる。だから本ツールでは50〜100%の範囲で自由に変えられるようにした。迷ったら85%のままでいい。
間欠運転率とは — 電気毛布は「ずっと通電していない」
もうひとつの補正が間欠運転率だ。電気毛布・車載冷蔵庫・こたつのようなサーモスタット付きの機器は、設定温度に達すると通電を止め、下がるとまた通電する、を繰り返す。つまり「消費電力40W」と書いてあっても、40Wを消費し続けているわけではない。電気毛布の「中」設定なら通電時間はおよそ6割、車載冷蔵庫のコンプレッサーは庫内が冷えてしまえばおよそ5割。実効的な消費電力は 40W × 60% = 24W まで下がる。
ここを無視して定格Wで計算すると、稼働時間を実態より4〜5割短く見積もることになる。その結果「1000Whじゃ足りない、1500Whにしよう」と一段上のクラスを買ってしまう。数万円と数kgの差だ。間欠運転率の補正は、このツールの差別化の核でもある。機器プリセットをタップすると、電気毛布なら60%、車載冷蔵庫なら50%が消費電力とセットで自動入力される。
ポータブル電源 何時間使える? — 計算式まとめ
ここまでを1本の式にするとこうなる。
稼働時間[h] = (定格容量[Wh] × 実効率/100) ÷ (機器の消費電力[W] × 間欠運転率/100)
デフォルト値で確かめると、1000Wh × 85% = 850Wh を扇風機30W(連続運転なので運転率100%)で使って 850 ÷ 30 = 28.3時間。1日8時間使うなら3.5日分。この「1日の使用時間で割った防災日数換算」と「実効容量 ÷ 15Whのスマホ充電回数換算」を添えて、時間の数字を体感に翻訳するのが本ツールの出力だ。
容量選びを外すと何が起きるか
容量が足りない側の失敗は、現場で突然やってくる。夏のキャンプ2日目の朝、車載冷蔵庫が止まって食材が全損。停電3日目、スマホ充電を家族で回したら初日で使い切った。どちらも「割り算では足りるはずだった」ケースで起きる。実効率を忘れると1000Whが850Whしかないことに現場で気づくことになる。
逆に過大容量も立派な失敗だ。2000Wh級は本体20kg超・価格は1000Wh級より数万円高い。電気毛布一晩+スマホ充電程度の用途に2000Whを買うと、重くて持ち出さなくなり、防災用のはずが物置の肥やしになる。適正クラスを数字で決めることには、お金と機動力の両方が懸かっている。
そして容量とは別に「定格出力の壁」がある。容量1000Whが満タンでも、定格出力1000Wの機種で1200Wの電気ケトルは動かない。インバーターの保護回路が働いて出力が停止するからだ。容量(Wh)は「どれだけ長く」、定格出力(W)は「どれだけ大きい機器を」の上限で、両方満たして初めて使える。本ツールの稼働時間モードには定格出力の超過チェックを付けてあり、容量の計算結果と一緒に「そもそも動くか」を確認できる。
防災の文脈では、政府は最低3日分、できれば1週間分の備えを推奨している(首相官邸: 災害に対するご家庭での備え)。電源も同じ発想で見積もりたい。本ツールの防災日数換算は「1日◯時間使うなら何日分か」を直接返すので、この推奨日数と突き合わせるだけで備えの過不足が見える。
使いどころ — 買う前・出かける前・備える前
購入前の容量クラス選び。必要容量モードに「使いたい機器×時間」を入れると、240/500/1000/1500/2000Whの推奨クラスが出る。店頭やECで機種を眺める前に、まず自分の用途が何Whクラスなのかを確定させておくと迷走しない。
冬キャンプ・車中泊の電源計画。電気毛布プリセットをタップして、手持ちの容量で何晩持つかを確認する。間欠運転率込みなので「一晩8時間×何泊」が現実的な数字で出る。夏なら扇風機と車載冷蔵庫で同じことをやる。
防災備蓄の日数見積もり。停電時に照明・スマホ・扇風機をどれだけ賄えるか、防災日数換算で確認する。食料・水の備蓄計算は /emergency-stock が担当なので、電源と合わせて「うちは何日耐えられるか」を揃えられる。
ソーラーパネル運用の現実性チェック。「パネルがあれば無限に使える」は晴天日数を計算してみると案外厳しい。充電時間モードで晴天何日かかるかを見て、パネル増設かAC併用かを決められる。
使い方は3ステップ
ステップ1、計算モードを選ぶ。手持ち(購入予定)の電源で何時間使えるかなら「稼働時間」、購入前の容量選びなら「必要容量」、充電の所要時間なら「充電時間」。
ステップ2、機器プリセットをタップする。スマホ充電・LEDランタン・扇風機・電気毛布・車載冷蔵庫・ノートPC・プロジェクター・炊飯器・電気ケトル・ドライヤーの10種から選ぶと、消費電力と間欠運転率が一括入力される。手持ちの機器のラベル表記に合わせて数字を直接編集してもいい。
ステップ3、結果を見る。稼働時間・防災日数・スマホ換算が即座に出る。実効率は迷ったら85%のままでいい。定格出力欄に機種の出力Wを入れておくと、消費電力オーバーで「そもそも動かない」機器も警告してくれる。
具体的な使用例 — 8ケースで検証
入力→結果→解釈の3点セットで8ケース。数値はすべて本ツールの計算そのままだ。
ケース1: 扇風機30Wを1000Whで — 28.3時間
- 入力: 稼働時間モード、定格容量1000Wh・実効率85%・扇風機30W・運転率100%・1日8h使用
- 結果: 稼働時間28.3h、防災換算3.5日分、スマホ換算56回
- 解釈: 実効850Whを
850 ÷ 30 = 28.3h。夏の車中泊で夜8時間回すなら2〜3晩は余裕。単純割り算の33.3hより5時間短く、この差が実効率の正体だ。
ケース2: 電気毛布40W(運転率60%)を1000Whで — 35.4時間
- 入力: 稼働時間モード、1000Wh・85%・電気毛布プリセット(40W・運転率60%)・1日8h
- 結果: 稼働時間35.4h、防災換算4.4日分
- 解釈: 実効消費は
40 × 0.6 = 24Wで850 ÷ 24 = 35.4h。一晩8時間なら4晩強。「1000Whで電気毛布は何晩?」の定番疑問に即答できる。もし運転率100%で計算すると21.3hと4割短い。間欠運転補正の有無が2晩分の差になる。
ケース3: 車載冷蔵庫45W(運転率50%)を1000Whで — 37.8時間
- 入力: 稼働時間モード、1000Wh・85%・車載冷蔵庫プリセット(45W・運転率50%)・連続運転なので1日24h
- 結果: 稼働時間37.8h、防災換算1.6日分
- 解釈: 冷蔵庫は24時間連続が前提だから、37.8hは「1.6日」でしかない。1泊2日キャンプならぎりぎり、連泊なら途中充電が必須。ちなみに500Whクラスだと18.9hで丸1日持たない。「冷蔵庫を持ち出すなら1000Whから」の根拠がこの数字だ。
ケース4: 電気ケトル1200W×定格出力1000W — 出力の壁で使用不可
- 入力: 稼働時間モード、1000Wh・85%・電気ケトル1200W・運転率100%・定格出力欄に1000W
- 結果: 稼働時間 約43分、ただし赤警告「機器の消費電力が定格出力を超えています」
- 解釈: 容量上は43分動く計算でも、1200W > 定格1000W なのでインバーターが止まる。容量ではなく出力の壁。ケトルやドライヤーを使いたいなら、容量より先に定格出力1500W級の機種を探すのが正解だ。
ケース5: 電気毛布を3晩使う必要容量 — 678Wh → 1000Whクラス
- 入力: 必要容量モード、電気毛布プリセット(40W・運転率60%)・使いたい時間24h(8h×3晩)・実効率85%
- 結果: 必要定格容量677.6Wh、推奨クラス1000Wh、スマホ換算38回
- 解釈: 実効必要量は
40 × 0.6 × 24 = 576Wh、実効率で割り戻して678Wh。500Whクラスでは足りず、市販クラスの直近上位は1000Wh。「2泊3日の冬キャンプ=1000Whクラス」という売り場の定番推奨と計算が一致する。
ケース6: ドライヤー1200Wを2時間 — 2824Whでクラス超過
- 入力: 必要容量モード、ドライヤープリセット(1200W・運転率100%)・使いたい時間2h・実効率85%
- 結果: 必要定格容量2823.5Wh、2000Wh超の警告
- 解釈: 高出力機器を時間単位で使うと必要容量は一気に膨らむ。単体機の主要クラス上限2000Whを超えるので、拡張バッテリー対応機か複数台、あるいは「使用時間を見直す」判断になる。ドライヤーは風量弱で時短、が現実解だ。
ケース7: 1000WhをAC500Wで充電 — 2.4時間
- 入力: 充電時間モード、1000Wh・AC・充電入力500W
- 結果: 充電時間2.4h
- 解釈:
1000 ÷ (500 × 0.85) = 2.35h。定格入力の単純割り算(2.0h)より2割ほど長いのは、充電回路の損失と満充電間際の減速(CC-CV制御)のためだ。キャンプ出発前夜の「寝る前に挿せば朝満タンか」の判断に使える。
ケース8: 1000Whをソーラー100Wで充電 — 晴天3.1日で警告
- 入力: 充電時間モード、1000Wh・ソーラー・パネル100W
- 結果: 充電時間15.4h、晴天換算3.1日、黄警告(パネル増設・AC併用を検討)
- 解釈:
1000 ÷ (100 × 0.65) = 15.4h。晴天の有効日照は1日5時間程度なので3日以上かかり、曇れば発電は1/3〜1/10に落ちる。100Wパネル1枚での1000Wh運用は現実的でない。パネルを200Wにすれば7.7h・晴天1.5日まで縮み、ようやく「連泊で回す」計画が立つ。
仕組み・アルゴリズム — 定数の根拠と計算フロー
機種DB方式 vs 汎用パラメータ方式
この種の計算には2つのアプローチがある。ひとつはメーカーツールに多い機種DB方式。機種名を選べば正確な仕様で計算してくれる反面、対象は自社製品のみで、新機種が出るたびDBの更新が要る。もうひとつが本ツールの汎用パラメータ方式。容量・実効率・消費電力・運転率という物理量だけで計算するから、どのメーカーのどの機種でも、まだ存在しない未来の機種でも使える。精度の要である実効率と運転率をユーザーが調整できるようにすることで、DBなしでも実態に寄せられる。機種非依存で古びないことを取った設計だ。
5つの定数の根拠
| 定数 | 値 | 根拠 |
|---|---|---|
| 実効率(デフォルト) | 85% | 放電深度×インバーター効率。AC出力での実測系レビューが85%前後に集まる慣用値 |
| AC充電係数 | 0.85 | 充電回路の変換損失+満充電間際のCC-CV減速。各社公称充電時間(例: 1000Wh級・入力800Wで約1.5h)からの逆算と整合 |
| ソーラー充電係数 | 0.65 | 晴天でもパネル定格の6〜7割しか出ない。入射角・パネル温度上昇・MPPT変換損失の合算 |
| 晴天有効日照 | 5h/日 | 正午前後を中心に定格近くで発電できる時間の概算値 |
| スマホ1回充電 | 15Wh | 4000〜4500mAh級×3.85V ≒ 15.4〜17Whに充電損失を含めて丸めた体感換算値 |
リチウムイオン電池の放電特性やインバーターの原理は Wikipedia: リチウムイオン二次電池、ソーラーの変換制御は Wikipedia: 最大電力点追従制御 を参照。
3モードの計算フロー
// 稼働時間モード
実効容量Wh = 定格容量Wh × 実効率 / 100
実効消費W = 機器W × 間欠運転率 / 100
稼働時間h = 実効容量Wh ÷ 実効消費W
防災日数 = 稼働時間h ÷ 1日の使用時間h
スマホ換算 = 実効容量Wh ÷ 15
// 必要容量モード
必要実効Wh = 機器W × 間欠運転率 / 100 × 使いたい時間h
必要定格容量Wh = 必要実効Wh ÷ (実効率 / 100)
推奨クラス = [240, 500, 1000, 1500, 2000] のうち直近上位(2000超は超過警告)
// 充電時間モード
充電時間h = 定格容量Wh ÷ (充電入力W × 係数) // AC 0.85 / ソーラー 0.65
ソーラー日数 = 充電時間h ÷ 5 // 晴天日中5h/日換算
定格出力チェックは容量計算とは独立で、定格出力欄に入力があるときだけ 機器W > 定格出力W を判定する(ちょうど等しい場合は使用可)。稼働時間が1000hを超えるLEDランタンのようなケースでは、自然放電やBMSの待機電力が無視できなくなるため「計算上の目安」である旨の注記を出す。
計算例 — 電気毛布35.4時間を式で追う
ケース2を手計算でなぞってみる。
- 実効容量:
1000Wh × 85/100 = 850Wh - 実効消費電力:
40W × 60/100 = 24W - 稼働時間:
850 ÷ 24 = 35.4h - 防災日数:
35.4 ÷ 8 = 4.4日分 - スマホ換算:
850 ÷ 15 = 56.7 → 56回(切り捨て表示・過大評価防止)
電卓でも追える単純な式だ。だからこそ、実効率と間欠運転率という「入れ忘れる2つの補正」をデフォルト値とプリセットで自動的に効かせることに、このツールの価値を置いている。1Whの体感がつかみにくければ、「スマホ1回充電が15Wh」「LEDランタンなら5Wで1時間」を物差しにするといい。
メーカーの稼働時間表とどう違うのか
メーカーの稼働時間表が自社製品×代表機器の固定リストである話は冒頭で触れた。もう一つの実務的な難点は、他社機との横並び比較に使えないことだ。JackeryとEcoFlowとAnkerを比較検討している段階では、どの表も自社機種の枠内でしか答えてくれない。つまり買う機種を決めた後にしか役に立たない。
本ツールはメーカー非依存。機器の消費電力を1〜3000Wの範囲で直接入力でき、電気毛布や車載冷蔵庫のようなサーモスタット機器は間欠運転率で補正できる。さらに稼働時間・必要容量・充電時間の3モードを1画面で切り替えられ、防災日数換算とスマホ充電回数の体感値まで出す。「購入前の容量クラス選び → 購入後の運用計画 → ソーラー充電の現実性チェック」を一つの画面で往復できるのが違いだ。
サイト内の関連ツールとの住み分けも整理しておく。キャンプの持ち物全体を組み立てるのは /camp-checklist、電源を使わない保冷力の計画は /cooler-sim、水・食料の備蓄日数は /emergency-stock の担当だ。本ツールが出す「防災日数換算」を備蓄日数と揃えると、電源だけ3日で食料は7日、のようなアンバランスに気づける。なお住宅に据え置く kWh クラスの蓄電池は守備範囲が別で、そちらは /home-battery-select、屋根上太陽光の採算は /solar-payback が受け持つ。
豆知識: mAh表記のカラクリ・リン酸鉄・冬に弱る理由
mAh表記のカラクリ — ゼロが多いほど大容量に見える
ポータブル電源の一部やモバイルバッテリーは「278,400mAh」のような mAh 表記を前面に出す。mAh は電流×時間であって、電圧を掛けないとエネルギー量にならない。リチウムイオンセルの公称電圧3.6Vで換算すると Wh = mAh × 3.6 ÷ 1000。278,400mAh は約1002Wh、つまりごく普通の1000Wh級だ。逆に「大容量100,000mAh」のモバイルバッテリーも360Whで、ポータブル電源の最小クラスにも届かない。ゼロの数に惑わされず、Whに直して比べるのが鉄則だ。
リン酸鉄リチウムと三元系 — サイクル寿命が数倍違う
近年の主流はリン酸鉄リチウム(LiFePO4)電池だ。容量80%を維持できるサイクル数が3000回以上とされ、従来の三元系(NMC)の500〜800回に対して数倍長い。毎日1回充放電しても8年以上の計算になる。重量とエネルギー密度では三元系に劣るが、持ち歩き回数の少ないポータブル電源では寿命と熱安定性のメリットが勝つ。仕組みは リン酸鉄リチウムイオン電池 - Wikipedia が詳しい。
冬にポタ電が「弱る」理由
低温ではリチウムイオンの動きが鈍る。電解液の粘度が上がり反応速度が落ちるためで、氷点下では取り出せる容量が2〜3割減ることもある。さらに0°C以下では充電を受け付けない機種が多い(電池保護のためのBMS制御)。冬キャンプや寒冷地の防災用途では、実効率を85%から75%程度に下げて計算し、就寝時は寝袋に入れて保温するといった運用でカバーしたい。
パススルー充電と「満タン待機」のコスト
充電しながら機器に給電するパススルー運用は、停電対策のUPS的な使い方として便利だ。ただし機種によっては充放電が同時進行して電池の劣化を早めるという注意書きがあり、入力から直接給電するバイパス設計かどうかは取説で確認したい。ちなみに1000Wh級を家庭のコンセントで空から満充電しても、充電損失込みで電気代は約37円(31円/kWh換算)。常時満タンで待機させる備えのコストは意外なほど小さい。電気代の計算は /electricity-cost で確かめられる。
Tips
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電気毛布は「中」+寝袋の併用で倍持つ: 同じ40Wの毛布でも、「強」で運転率80%なら実効32Wで約26.6時間、「中」+寝袋で運転率40%まで下がれば実効16Wで約53.1時間(1000Wh・実効率85%)。設定ひとつで稼働時間がちょうど倍変わる。
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冷蔵庫系は家で一晩実測してから持ち出す: コンプレッサーの間欠運転率は外気温と設定温度で大きく振れる。ワットチェッカーを挟んで一晩の消費Whを測り、時間で割った平均Wを入力すると精度が一気に上がる。
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防災用途は計算値の7掛けで見積もる: 停電時は気温・経年劣化・想定外の機器追加が重なる。計算上28時間なら20時間と読んでおく。余った分は保険になる。
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ソーラーは真夏より春秋が良く発電する: パネルは温度が上がると効率が落ちる(目安 -0.3〜-0.4%/°C)。炎天下でパネル温度が60°Cを超える真夏より、気温が低く日射のある春秋の晴天のほうが定格に近い出力が出る。
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mAh 表記は ×3.6÷1000 で Wh に直す: 本ツールの容量入力は Wh。仕様表に mAh しか無い機種は
mAh × 3.6 ÷ 1000で換算してから入力する。
よくある質問(FAQ)
Q: メーカーカタログの稼働時間表と結果が違うのはなぜか
前提条件が違うためだ。カタログの「電気毛布○時間」は、実測ベースだったり単純割り算だったり、間欠運転を織り込むかどうかも各社バラバラで、基準が明示されないことが多い。本ツールは実効率(デフォルト85%)と間欠運転率という前提を数値で明示し、ユーザーが自分で調整できる。カタログ値と合わせたい場合は、カタログの機器W数を入力し、実効率と運転率を動かしてみると、そのメーカーがどんな前提で計算しているかが逆に見えてくる。
Q: 仕様表に mAh しか書いていない機種はどう入力すればいいか
リチウムイオンセルの公称電圧3.6Vを掛けて Wh に換算する。式は Wh = mAh × 3.6 ÷ 1000。たとえば278,400mAhなら約1002Wh、100,000mAhなら360Whだ。メーカーによっては3.7Vで換算していることもあるが、差は3%程度なので目安としては3.6Vで十分。Whと mAh が両方書いてある機種は Wh 表記をそのまま使えばよい。
Q: ソーラー充電の計算が晴天前提なのはなぜか
曇天の発電量は雲の厚さ次第で晴天の1/3から1/10まで振れ、事前予測がほぼ不可能だからだ。予測できない値を計算に入れても目安にならないため、本ツールは晴天を基準に、入射角・パネル温度・MPPT変換損失を織り込んだ実効係数0.65(パネル定格の65%)で計算している。晴天換算で3日を超える構成には警告を出しているが、実際の天候では晴天日だけを数えて日数を読む、曇天が続く想定なら最初からAC併用を計画する、という使い方が現実的だ。
Q: 容量は足りているのに電気ケトルが動かないのはなぜか
容量(Wh)ではなく定格出力(W)の壁に当たっている。1000Wh級でも定格出力1000Wの機種なら、1200Wの電気ケトルは保護回路が働いて出力停止する。カタログの「瞬間最大出力」はモーター起動時のサージ(突入電力)用の短時間定格で、連続運転の保証ではない。本ツールでは定格出力欄に値を入れると消費電力との超過チェックを行い、超過時は赤警告を出す。購入前の容量選びでは、使いたい機器の最大W数が定格出力に収まるかを容量と同時に確認したい。
Q: 入力した容量や機器のデータはどこに保存されるのか
どこにも保存されない。入力値も計算結果もすべてブラウザ内(端末上)だけで処理され、サーバーには一切送信されない。ページを閉じたりリロードすれば消える。手元に残したい結果は「結果をコピー」ボタンでテキスト化して、メモアプリや家族への共有メッセージに貼り付けてほしい。
まとめ
ポータブル電源選びは、容量Wh × 実効率 ÷(機器W × 運転率)という一本の式で見通せる。カタログの稼働時間表を眺めるより、手持ちの機器のW数で計算するほうが早くて確実だ。キャンプの持ち物全体は /camp-checklist、クーラーボックスの保冷計画は /cooler-sim、水・食料の備蓄日数は /emergency-stock と組み合わせれば、電源・食料・装備をまとめて設計できる。気づいた点や要望があれば お問い合わせページ から聞かせてほしい。