オリフィス板流量計設計

ISO 5167-2 × Reader-Harris/Gallagher × 差圧・永久圧損

ISO 5167-2 Reader-Harris/Gallagher 式で、配管径・オリフィス径・流量から差圧 ΔP、流出係数 C、永久圧損を自動算出。プリセットから典型的な配管条件を選べる。

配管とオリフィス形状

流体条件

計算結果

ISO 5167 適用判定0.500β / C = 0.6057
ISO 5167 適用内

絞り径比 β

0.500

レイノルズ数 ReD

127,070

流出係数 C

0.6057

差圧 ΔP

33.20

kPa

永久圧損

24.32

kPa

圧損率

73.2

%

※ ISO 5167-2 に基づく液体想定の概算です。気体では膨張係数 ε の補正が別途必要。実機設計では必ず原典規格と詳細条件を確認してください。
不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

PR

📘 流量計・計装設計の参考書籍・機材

プラントの流量計、まず決めるのは「穴の大きさ」だ

新設プラントの配管図を広げて、流量計の仕様を埋める段になると、必ずぶつかるのがオリフィス板の絞り径比β(ベータ)選定だ。DCSの画面に表示される流量値を信じられるかどうかは、この一枚の板に開けた穴径で決まる。配管径100A、流量10kg/s、差圧伝送器のレンジは何kPaにすればいいのか。Excelのマクロは先輩の遺産、ISO 5167の原典は英語のPDF、メーカーの選定ツールは商品選定が目的で計算過程が見えない――そんなモヤモヤを、ブラウザで完結する計算機に閉じ込めたのがこのツールだ。

入力は配管内径D、オリフィス径d、タップ方式、流体、質量流量の5つだけ。出力はβ、レイノルズ数ReD、流出係数C、差圧ΔP、永久圧損、そしてISO 5167-2適用判定。計装エンジニアが現場で一番欲しい情報を、1画面にまとめた。

なぜ作ったのか

プロセス計装の教科書を開くとオリフィス板の計算は必ず出てくるが、いざ実務で使おうとすると壁が高い。現場のExcelシートはVBAで組まれた社内資産で、誰も中身を触れないまま20年以上使い回されている。ISO 5167-2のReader-Harris/Gallagher式は項が多く、手計算ではミスが出やすい。ベータの目安を「経験で0.5〜0.6くらい」と覚えてはいても、タップ方式を変えたらCがどう動くかを即答できる人は少ない。

過去に一度、社内Excelのタップ方式の条件分岐が間違っているまま客先提出した事例を見た。フランジタップのL1=25.4/DがコーナータップのL1=0と取り違えられていて、流量換算が約0.5%ずれていた。取引用計量では致命的ではない誤差だが、プロセス制御のループゲインには確実に効いてくる。こういう「教科書の式を正しく打ち込んだだけ」の検算ツールが、ブラウザでサッと叩ける状態で欲しかった。

それに、計装を志す学生や転職直後の若手が、Excelを持っていなくても式の挙動を体感できる場所が要る。βを0.4から0.7まで動かしたときに差圧がどう変わるか、タップ方式で何kPa差が出るか。手元で数字を動かして初めて「規格が言いたいこと」が腑に落ちる。そういう学習ツールと検算ツールを兼ねた一枚板、それがこのアプリだ。

オリフィス板の基礎

オリフィス板 とは何か

オリフィス板は、配管の途中に穴の開いた円盤を挟むだけの絞り機構だ。流体が穴を通ると断面積が急激に縮小し、連続の式によって流速が上がる。流速が上がればベルヌーイの定理で圧力が下がる。この「穴の上流」と「穴の直下(または下流)」の圧力差を測れば、流量が逆算できる――これが差圧流量計の原理だ。JIS Z 8762およびその親規格であるISO 5167が、オリフィス板・ノズル・ベンチュリ管の寸法と計算式を規定している。

身近なたとえでいうと、ストローを指でつまんで細くするとジュースの勢いが増すのと同じだ。指で絞った分、ストロー内部の圧力は下がる。流体の世界ではこの圧力差をセンサーで測って「今どれだけ流れているか」を計算している。

絞り径比 β と流出係数 C

式の主役は2つ。絞り径比 β = d/D と、流出係数(discharge coefficient)C だ。βは穴径と配管径の比で、Cは「理論式どおりに流れてくれない分」の補正係数。理論流量は次のベルヌーイ式で書ける。

q_m = C · (π/4) · d² · √(2·ρ·ΔP) / √(1 − β⁴)

Cが0.6前後になるのは、穴の直後にできる縮流(vena contracta)と、渦による運動エネルギー損失の両方を含んでいるからだ。ISO 5167-2 では、このCをβ・ReD・タップ位置の関数として陽解的に与えるReader-Harris/Gallagher 式を採用している。

レイノルズ数と適用範囲

もう一つ見逃せないのがレイノルズ数 ReD = 4q/(πDμ)。流れが層流か乱流かを決める無次元数で、ISO 5167-2 は ReD ≥ 5000 かつ ReD ≥ 170·β²·D[mm] を要求する。これを満たさない層流寄りの領域ではCが変動し、規格式の不確かさ(約0.5〜1%)を保証できなくなる。低流量の補機系でオリフィスが使われないのは、このレイノルズ数条件が効いているからだ。

実務での重要性

オリフィス板は一見ただの鉄板だが、「取引用計量」「プロセス制御」「安全設計」の3領域で信頼性の核になっている。取引用計量――たとえば工場間の用水・蒸気の料金算定――では0.5%の誤差が年間数百万円に化ける。プロセス制御では流量ループの比例ゲインが流量計の線形性に直結するため、βが大きすぎてCが暴れる領域を選ぶと制御が発振する。

計算・選定を怠った場合の代表的な実害を3つ挙げる。第一に、差圧伝送器のレンジミスマッチ。βを0.3に選んだのに伝送器を0〜25kPaで発注すると、実際には差圧が80kPaを超えてフルスケールを振り切り、流量が読めなくなる。第二に、永久圧損の過小評価。圧損率はβ=0.3で約90%、β=0.7で約38%と大きく変わる。ポンプの揚程計算を誤ればプロセスが走らない。第三に、直管長不足による系統誤差。ISO 5167-2は上流20D・下流5D以上の直管を求めており、これを守らないとCの不確かさが数%単位で悪化する。

JIS Z 8762-2(ISO 5167-2と整合)は絞り機構による流量測定の国家規格で、計量法の特定計量器の校正基準としても引用される。規格外の条件でオリフィスを設置した場合、取引証明に使えない流量値になる可能性があり、工場間売買や環境報告書への計上で問題になる。「鉄板に穴を開けるだけ」のシンプルな機器だからこそ、規格準拠の計算で裏を取っておく価値がある。

活躍する場面

新設プラントの計装仕様決定: PID(配管計装図)の流量計位置にオリフィスが指定されたら、まずこのツールで差圧伝送器のレンジ候補を3つほど作る。βを0.4、0.5、0.6で振って、差圧と永久圧損のバランスから最終案を固める。

レンジ変更・増設時の再計算: 既設ラインの流量が設計より20%増える改造案件で、既存オリフィスを流用できるか即判定。βが0.75を超えそうならオリフィス板の取替が必要。

検定・校正更新: 年次校正の前にベースラインを手計算で押さえる。メーカー成績書の数値と手計算のCが0.5%以内で一致すれば、データシート側の疑義を排除できる。

後輩・新人教育: βとCの関係を体感させる教材として。「βを0.2変えるとCはどのくらい動く?」を口頭で教えるより、画面で1秒で見せたほうが早い。

基本の使い方

  1. 配管とオリフィスを入力 — 配管内径D[mm]、オリフィス径d[mm]、タップ方式(コーナー/D-D/2/フランジ)を選ぶ
  2. 流体を選択 — プリセット(水20℃・水60℃・空気・飽和蒸気)または「カスタム」で密度ρと粘度μを直接入力
  3. 質量流量を入力 — 設計点の流量[kg/s]を入れると、β・C・ΔP・永久圧損・適用判定が即座に表示される

結果は「結果をコピー」ボタンで箇条書きのテキストになる。そのままメールやSlackに貼って社内レビューにかけられる。リセットを押せば初期値に戻る。入力中の桁落ちや単位ミスがあれば、状態カードに赤枠で警告が出る。

具体的な使用例

ケース1: 標準的な水流量計(D=100mm, β=0.5)

  • 入力: D=100mm、d=50mm、フランジタップ、水20℃(ρ=998.2、μ=0.001002)、q=10kg/s
  • 結果: β=0.500、ReD≈127,092、C≈0.6057、ΔP≈33.21kPa、永久圧損≈24.32kPa(圧損率73.2%)
  • 解釈: 計装用水ラインの定番サイジング。差圧伝送器は0〜50kPaレンジで十分マージンが取れる。圧損率が70%超なのはβが小さめな影響で、ポンプ揚程に4m程度上乗せが必要

ケース2: 大径配管・大流量(D=200mm, β=0.6)

  • 入力: D=200mm、d=120mm、コーナータップ、水20℃、q=50kg/s
  • 結果: β=0.600、ReD≈317,651、C≈0.6072、ΔP≈23.11kPa、永久圧損≈14.52kPa(圧損率62.8%)
  • 解釈: 冷却水主管クラス。コーナータップ選定でタップ位置の誤差要因を排除。圧損率が下がるためポンプ負荷が軽くなり、同じ流量をより小さいΔPで測れる

ケース3: 温水プロセスライン(D=150mm, β=0.6, 60℃)

  • 入力: D=150mm、d=90mm、D-D/2タップ、水60℃(ρ=983.2、μ=0.000466)、q=30kg/s
  • 結果: β=0.600、ReD≈546,335、C≈0.6083、ΔP≈26.60kPa、永久圧損≈16.70kPa(圧損率62.8%)
  • 解釈: 粘度が下がりReDが約4倍に跳ね上がっても、Cは0.607→0.608とほぼ動かない。ISO 5167の陽解法が高レイノルズ域で安定する様子が確認できる

ケース4: 空気計測(D=80mm, β=0.5, 液体近似)

  • 入力: D=80mm、d=40mm、フランジタップ、空気20℃(ρ=1.204、μ=1.82e-5)、q=0.5kg/s
  • 結果: β=0.500、ReD≈437,195、C≈0.6038、ΔP≈169.0kPa、永久圧損≈123.9kPa(圧損率73.3%)
  • 解釈: 気体は密度が小さく差圧が桁違いに大きくなる。本ツールは膨張係数ε=1の液体近似なので、実際には圧縮性補正(ε≈0.95前後)を別途かける必要がある。気体ではあくまで一次見積として使う

ケース5: 飽和蒸気主管(D=300mm, β=0.6)

  • 入力: D=300mm、d=180mm、フランジタップ、飽和蒸気0.5MPa(ρ=2.669、μ=1.52e-5)、q=15kg/s
  • 結果: β=0.600、ReD≈4,188,790、C≈0.6045、ΔP≈155.0kPa、永久圧損≈97.6kPa(圧損率63.0%)
  • 解釈: 蒸気主管の典型サイジング。ReDが400万と非常に大きく、Reader-Harris/Gallagher式の高ReD領域の漸近値に接近する。蒸気は気体同様、実設計ではε補正が必要

ケース6: 高β境界領域(D=80mm, β=0.7)

  • 入力: D=80mm、d=56mm、フランジタップ、水20℃、q=8kg/s
  • 結果: β=0.700、ReD≈127,091、C≈0.6133、ΔP≈10.67kPa、永久圧損≈5.42kPa(圧損率50.8%)
  • 解釈: 適用限界β=0.75に近い境界領域。圧損率が50%台まで下がる代わりに、上流直管長を20D以上しっかり取らないとCの不確かさが跳ね上がる。省エネと精度のトレードオフを可視化できる

ケース7: 小径配管補正(D=60mm, β=0.4)

  • 入力: D=60mm、d=24mm、コーナータップ、水20℃、q=2kg/s
  • 結果: β=0.400、ReD≈42,355、C≈0.6065、ΔP≈25.93kPa、永久圧損≈21.31kPa(圧損率82.2%)
  • 解釈: D<71.12mmで小径補正項(+0.0017)が発動する領域。補正なしのC=0.6048と比べ、補正後は0.6065。小径では規格の不確かさが大きくなるため、重要計量には使わず補機系の目安として運用する

仕組み・アルゴリズム

候補手法の比較: Stolz vs Reader-Harris/Gallagher

オリフィスの流出係数Cを求める式は歴史的に複数ある。1988年以前はStolz式が広く使われていたが、βとReDの依存性が単純化されすぎており、特にβ>0.6や低ReDで精度が悪化する弱点があった。現在のISO 5167-2(2003年改訂)はReader-Harris/Gallagher式(RHG式)を採用している。RHG式は10,000点を超える世界中の実験データをフィッティングして作られ、β∈[0.10, 0.75]、ReD≥5000、D∈[50, 1000]mmの広範囲で不確かさ約0.5%を達成している。

本ツールはRHG式を採用。理由は3つ。第一に現行ISO/JIS準拠であること、第二にタップ方式(コーナー/D-D/2/フランジ)の条件分岐が式の中に組み込まれていること、第三に反復計算が不要で陽解的にCが求まるため、ブラウザで瞬時に結果を返せることだ。

実装詳細

計算フローは次の順序で走る。

`

  1. β = d / D
  2. ReD = 4q / (π·D·μ)
  3. タップ方式から L1, L2' を決定
    • corner: L1 = 0, L2' = 0
    • D-D/2: L1 = 1, L2' = 0.47
    • flange: L1 = 25.4/D, L2' = 25.4/D
  4. A = (19000·β / ReD)^0.8 M2' = 2·L2' / (1 − β)
  5. C = 0.5961
    • 0.0261·β² − 0.216·β⁸
    • 0.000521·(10⁶·β/ReD)^0.7
    • (0.0188 + 0.0063·A)·β^3.5·(10⁶/ReD)^0.3
    • (0.043 + 0.080·e^(−10·L1) − 0.123·e^(−7·L1)) ·(1 − 0.11·A)·β⁴/(1 − β⁴) − 0.031·(M2' − 0.8·M2'^1.1)·β^1.3
  6. D < 71.12mm なら小径補正: C += 0.011·(0.75 − β)·(2.8 − D/25.4)
  7. ΔP = (q·√(1−β⁴) / (C·π·d²/4))² / (2·ρ)
  8. 永久圧損率: r = (√(1 − β⁴(1−C²)) − C·β²) / (√(1 − β⁴(1−C²)) + C·β²) ΔP_perm = r · ΔP `

タップ位置L1, L2'がCに与える影響は、式中の中央項(0.043+0.080·e^(−10L1)−0.123·e^(−7L1))に集中している。コーナー(L1=0)ではこの項が係数0となり、フランジやD-D/2とは約0.5〜1%のC差が生じる。この差がプロセス制御のループゲインに効いてくる。

計算例(ケース1を手でたどる)

D=100mm, d=50mm, フランジ, 水20℃, q=10kg/s を入れる。β=0.5、ReD=4×10/(π×0.1×0.001002)≈127,092。L1=L2'=25.4/100=0.254、M2'=2×0.254/0.5=1.016、A=(19000×0.5/127092)^0.8=(0.0748)^0.8≈0.1254。Cの各項を足し合わせると、約0.6057。D>71.12mmなので小径補正なし。流出面積S=π×0.05²/4=0.001963、ΔP=(10×√(1−0.0625)/(0.6057×0.001963))²/(2×998.2)≈33,210 Pa≈33.21 kPa。永久圧損率は約0.732で、ΔP_perm≈24.32 kPa。この一連の計算が、ツール上では入力完了と同時に返ってくる。

他のオリフィス計算ツールとの違い

オリフィス板の計算は、計器メーカー各社の選定ソフトやExcelマクロが長年使われてきた領域だ。実際、現場の計装エンジニアは自社で継承されたExcelシートを改造しながら使っていることが多い。本ツールの立ち位置はそれらの代替ではなく、**「原典式を透明に、ブラウザ上で即座に確かめるための検算器」**と位置づけている。

メーカー選定ソフトはカタログ品番選定と紐付いており、入力値を変えてもどの係数がどう動いたかが見えにくい。手元のExcelは信頼できる一方、式の由来や適用範囲チェックが抜けていることもある。本ツールはReader-Harris/Gallagher式の項を愚直に実装し、β・ReD・タップ位置L1/L2の寄与が変わる様子を数値で即座に確認できる。規格適用範囲(β∈[0.10, 0.75]、D∈[50, 1000]mm、ReD≥5000、ReD≥170β²D)を自動判定し、境界領域と規格外を色分けで示す点も、社内Excelには無いことが多い。

またインストール不要・会員登録不要で、打ち合わせ中にスマホから叩ける手軽さは、計器メーカーのデスクトップソフトでは得にくい。学生・若手エンジニアが「式を触って感覚を掴む」用途にも使える。

豆知識・読み物

オリフィス板は17世紀のToricelliとBernoulliに遡る流体力学の古典だが、近代的な規格化は1929年のドイツVDI規則や米ASMEの研究に始まる。ISO 5167の前身はISO/R 541(1967年)で、Stolz式と呼ばれる流量係数式が長く使われてきた。1998年の大改訂で採用されたのが、英国NEL(National Engineering Laboratory)のMichael Reader-HarrisとJim Gallagherによる**Reader-Harris/Gallagher式(R-H/G式)**だ。EEC(当時のEU)とAPIが出資した大規模国際共同実験で水・油・天然ガスの10,000点を超える校正データを取得し、それを陽的な1本の式に押し込んだのが彼らの功績だ(参考: NEL公式ページ)。

R-H/G式はβ・ReD・タップ位置の多項式で書かれており、反復計算なしにCが求まる。ただし計算しやすい代わりに項数が多く、手計算では非現実的だ。原典のISO 5167-2:2003では、小径補正(D<71.12mmでのC補正)やタップ位置ごとのL1, L2の定義が細かく規定されている。

ちなみにベンチュリ管は圧力回復が良く永久圧損が小さい(ΔP_permは差圧の10-20%程度)のに対し、オリフィス板は50-80%を失う。その代わり製作コストは桁違いに安い。取引用大口径ガス計量ではベンチュリやウルトラソニックが選ばれ、プロセス計装の主力はオリフィスという棲み分けが今も続いている。日本のJIS Z 8762シリーズはISO 5167をほぼ整合して採用している。

実務Tips

  • 直管長を死守する: 上流20D・下流5Dは最低ライン。エルボやバルブの直後は流れが乱れ、Cの実効値が1-3%ずれる。β>0.65では上流40D以上が推奨される。
  • エッジの直角度がすべて: オリフィス板上流側エッジの角部半径が0.0004d以下でないと流量係数が崩れる。摩耗したら迷わず交換する。
  • 差圧伝送器レンジは1.5-2倍余裕を持つ: 設計差圧ぴったりのレンジにすると過大流量時にサチュレーションする。本ツールで算出したΔPの1.5倍程度を伝送器のフルスケールに選ぶ。
  • β=0.5前後を基本に: βが小さいと差圧は大きく取れるが永久圧損も大きい。βが大きいと圧損は減るが差圧が小さく計測精度が落ちる。実務ではβ=0.4-0.65のレンジで設計することが多い。
  • 板厚と面取り角を忘れない: ISO 5167-2はオリフィス板厚Eと絞り厚eを規定している。薄すぎれば変形、厚すぎれば流路が変わる。

FAQ

Q: βはどのくらいを狙えばよい?

実務では0.4-0.65のレンジが一般的だ。β<0.3では永久圧損が大きくポンプ動力の無駄になり、β>0.7では差圧が小さくなり上流直管長の要求も厳しくなる。迷ったらβ=0.5を初期値に、差圧伝送器のレンジと圧損許容値から調整するとよい。

Q: 気体・蒸気の場合はそのまま使える?

本ツールは膨張係数ε=1(液体前提)で計算しているため、圧縮性の無視が許容できる低流速域(マッハ数0.3以下かつΔP/P1<0.25程度)であれば概算には使える。高流速や高差圧の気体ではε<1となりΔPが数%過大に出る。厳密には別途εの計算(ISO 5167-2 §5.3.2.2)が必要だ。検証や初期スクリーニング用途と割り切って使ってほしい。

Q: 差圧伝送器のレンジはどう決めればよい?

設計流量で計算されたΔPの1.5倍程度をフルスケールに選ぶのが通例だ。例えば本ツールで33kPaが出たなら、レンジは0-50kPaの伝送器を選定する。流量は差圧の平方根で出てくるため、レンジが広すぎると低流量域の精度が落ちる点も要注意。レンジ比は3:1以内に抑えたい。

Q: タップ方式(コーナー/D-D/2/フランジ)はどう選ぶ?

フランジタップは板の前後25.4mmに測定孔を設けるため、配管径が変わっても金物が共通化しやすく、北米・日本で最も普及している。D-D/2タップ(上流1D・下流0.5D)は欧州で好まれ、ReDが低い領域で誤差が小さい。コーナータップは板の直前直後で測るため小径配管に向く。既存の差圧発信器インターフェースに合わせるのが第一で、新設ならフランジタップを基本にするとよい。

Q: 小径配管(50mm未満)では使えない?

ISO 5167-2の適用下限は50mmだ。それ未満はノズルやコリオリ式、熱式など別方式が推奨される。本ツールでも50mm未満を入力すると規格外判定になる。なお50-71.12mmの範囲では小径補正(C += 0.011(0.75-β)(2.8-D/25.4))が自動で適用される。

Q: 永久圧損が大きすぎる場合の対策は?

βを大きくする(差圧は減るが圧損も減る)のが第一手だ。それでも足りない場合は、オリフィスではなくベンチュリ管やフローノズルへの変更を検討する。ベンチュリ管は圧力回復が良く、永久圧損率が10-20%程度に抑えられる(オリフィスは50-80%)。運転コスト(ポンプ動力)が気になるプロセスでは初期費用差を十分回収できる。

まとめ

オリフィス板の設計はISO 5167-2の原典さえ押さえれば、β・C・差圧・永久圧損まで一貫して求められる。本ツールはReader-Harris/Gallagher式を陽に実装し、タップ方式と適用範囲判定を含めて即座に確かめられるようにした。計装レンジの見積り、既設ラインのレンジ変更検討、学習用の検算まで幅広く使ってほしい。

配管側の検討とセットで進めるなら、管摩擦損失を計算する配管流量・圧力損失計算、調節弁サイズを決めるバルブCv値計算、配管口径選定には配管サイズ選定が役立つ。気づいた点や機能要望があればお問い合わせから気軽に連絡してほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。現場のExcelマクロでCが取り違えられていた経験から、Reader-Harris/Gallagher 式の全項を素直に書き下して結果を即座に確かめられる検算器を作った。

運営者情報を見る

© 2026 オリフィス板流量計設計