「2×4」は寸法ではなく名前だった — 図面を描き直した日の話
棚を1台組もうと思い立って、方眼紙に図面を描いた。材料はホームセンターの定番、2×4材。「2インチ×4インチ」なのだから断面は 50.8×101.6mm、ざっくり 50×100mm で線を引いた。側板の間隔も、天板の奥行きも、その寸法で決めた。
売り場で1本手に取って、メジャーを当てて固まった。厚さ 38mm、幅 89mm。呼び寸法との差は厚さで −12.8mm、幅で −12.6mm。どちらも1cm以上細い。図面の数字はほぼ全部が使えなくなり、その場でスマホの電卓を叩き直すことになった。
同じことは和室の角材でも起きる。105角は「3寸5分角」とも呼ばれるが、3寸5分を mm にすると 106.06mm で、売り場の 105mm より約1mm太い。合板の「サブロク」は3尺×6尺の名前で、910×1820mm。どの材も、呼びと実寸がぴったり一致しない。
ここで押さえたいのは、木材の呼びは寸法ではなく名前だということ。「2×4」は「田中さん」と同じ類の呼び名で、身長を表しているわけではない。このツールは、その名前と実寸の対応を引き当てたうえで、断面積・材積・重さ・定尺から何本取れるかまで一気に出す。寸で指定された材を市販材に置き換えたり、ノギスで測った古材の寸法から規格を逆引きしたりもできる。
なぜ作ったのか — 実寸表の「その先」が無かった
「2x4 実寸」で検索すれば、対応表はすぐ見つかる。1×4 は 19×89、2×6 は 38×140。表そのものに不満は無い。困ったのは、表を見たあとに次の一歩へ進めないことだった。
実寸が分かった次に知りたいのは、たいてい次の3つになる。
- 何本買えばいいか — 棚板を 900mm で6本切り出したい。6フィート(1820mm)材なら何本要るのか
- どれくらい重いか — 軽自動車の荷室に積めるか、マンションのエレベーターと廊下を1人で運べるか。これは重さで決まる
- 切りしろでどう変わるか — 丸ノコの刃にも厚みがあり、1回切るごとに約3mmが粉になって消える
3つ目は侮れない。2尺にあたる 606mm を 1820mm 材から切り出す場合、刃の厚みを無視すれば3本取れる計算になる。ところが切りしろ3mmを入れると2本しか取れない。6本欲しいなら、買う本数が2本から3本に増える。この1本の違いに、ホームセンターから帰ってから気づくのは本当にもったいない。
もう1つの動機が逆引きだった。築年数の古い家の根太や柱をノギスで測ると、40×90mm のように、表のどこにも載っていない数字が出てくることがある。これは規格外の特注材なのか、それとも知っている規格材が別の状態で入っているだけなのか。対応表は呼びから実寸を引く一方向の作りなので、実寸から呼びへは戻れない。
呼び・寸・実測のどこから入っても、実寸→材積→重さ→本数まで同じ画面で出る道具が欲しかった。既存の情報が悪いわけではない。ただ、どれも対応表で止まっている。
木材の呼び寸法とは何か — 名前と実寸がずれる仕組み
木材 呼び寸法 実寸 — 呼びは「製材直後の寸法」の名残
木材は、丸太から挽いた直後がいちばん大きい。伐ったばかりの木は水をたっぷり含んでいて、乾くにつれて縮む。さらに表面のざらつきを落とすためにかんな(プレーナー)をかけるので、そのぶんも細くなる。
呼び寸法は、この乾かす前・削る前の寸法に由来する名前だ。たとえるなら、洗濯で縮むことを見込んで大きめに仕立てたシャツ。タグには「L」と書いてあっても、何度か洗ったあとの実際の身幅は仕立てた直後より小さい。タグの「L」はサイズの名前であって、いまの身幅そのものではない。
2x4 実寸 サイズ — JAS が定める「乾燥材」と「未乾燥材」
2×4 はもともと北米の規格だが、日本では農林水産省「枠組壁工法構造用製材の日本農林規格」(JAS)が寸法型式として定めている。2×4 は型式「204」で、乾燥材は 38×89mm、未乾燥材は 40×90mm。両者は含水率19%を境に区別される。実際に売り場に並ぶ SPF などは乾燥材なので、38×89mm が「2×4 の実寸」になる。
| 呼び | JAS 寸法型式 | 乾燥材(mm) | 未乾燥材(mm) |
|---|---|---|---|
| 1×4 | 104 | 19×89 | 20×90 |
| 1×6 | 106 | 19×140 | 20×143 |
| 2×4 | 204 | 38×89 | 40×90 |
| 2×6 | 206 | 38×140 | 40×143 |
| 2×8 | 208 | 38×184 | 40×190 |
| 2×10 | 210 | 38×235 | 40×241 |
| 2×12 | 212 | 38×286 | 40×292 |
| 4×4 | 404 | 89×89 | 90×90 |
呼び寸法をインチから mm に直すと 2×4 は 50.8×101.6mm になるが、この数字は実寸のどこにも出てこない。呼びから実寸を式で出す方法は無く、表を引くしかない。なお、ホームセンターでよく見る 1×8 と 2×2 は JAS の寸法型式に含まれておらず、市販の慣用寸法(1×8 = 19×184、2×2 = 38×38)として流通している。
背景にある工法そのものについては Wikipedia「枠組壁工法」 が詳しい。
尺 寸 mm 変換 — 角材の呼びは尺貫法から来ている
国産の角材や垂木は、呼びが「寸」で付いている。現在の曲尺(かねじゃく)の1尺は 10/33m と定められていて、そこから次の換算になる(Wikipedia「尺貫法」)。
1寸 = 1000/33 mm ≒ 30.303 mm
1尺 = 10寸 = 10000/33 mm ≒ 303.03 mm
1分 = 0.1寸 ≒ 3.03 mm
3寸5分 = 3.5 × 30.303 ≒ 106.06 mm → 市販の「105角」
4寸 = 4.0 × 30.303 ≒ 121.21 mm → 市販の「120角」
市販の角材は、寸を換算した値より 1mm 前後細い。ここでも呼びは名前で、「3寸5分角」と言われたら 105mm を思い浮かべるのが現場の読み方になる。
合板の定尺には、尺系とフィート系の2系統がある。サブロク(910×1820)は3尺×6尺で、換算値は 909.1×1818.2mm。4×8(1220×2440)は4フィート×8フィートで、換算値は 1219.2×2438.4mm。合板は角材とは逆に、実寸のほうが換算値よりわずかに大きい。
木材 重さ 計算 — 材積と気乾密度の掛け算
実寸が決まれば、あとは体積と密度の話になる。木材の体積は「材積」と呼ばれる。
断面積 A [mm²] = 厚さ t × 幅 w
材積 V [m³] = t × w × 長さ L × 10⁻⁹ (t・w・L はすべて mm)
重さ W [kg] = V × 気乾密度 ρ [kg/m³]
1石(こく)= 10立方尺 = 10 × (10/33)³ m³ ≒ 0.278264 m³
気乾密度は、屋内で自然に乾いた状態(含水率15%前後)の密度だ。スギならおよそ 380kg/m³、SPF はおよそ 430kg/m³ と、樹種によって違う。合板は独立した密度を持たず、張り合わせた単板の樹種の密度で考えてよい(日本合板検査会 よくある質問)。
「石」は国産材の取引でいまも使われる単位で、材積を石で言われたときは 0.278m³ で割り戻せばよい。
実寸を知らないと何が起きるか
1本12.6mm のずれが、4本並べると5cm になる
2×4 を 50×100mm のつもりで設計すると、幅方向だけで1本あたり 12.6mm ずつ実物が足りなくなる。1本なら「少し細いな」で済むが、4本並べた枠組みでは 12.6×4 = 50.4mm、約5cm も内寸と外寸が狂う。棚の天板が奥で浮く、扉が枠に届かない、並べた板の間に隙間が空く。どれも組み立ての最後になって表面化するので、切った材は元に戻せない。
厚さ方向も同じで、2×4 を2枚重ねて柱にするつもりなら、101.6mm ではなく 76mm になる。呼びで描いた図面は、ほぼすべての寸法線が作り直しになる。
部品は実寸で作られている
2×4 用の突っ張り金具は、実寸 38×89mm の材に被せる前提で作られている。呼びの 50.8×101.6mm で考えるとアジャスターの受け口と合わず、天井までの長さの計算もずれる。突っ張り式の柱は材を天井高さから決まった長さだけ短く切る必要があるので、材の寸法と部品の寸法を同じ前提で揃えておくのが大切だ。部品側の条件はディアウォール・ラブリコ設計ツールで確かめられる。
重さを見誤ると運べない
1本ずつならどの木材も軽いが、本数が増えると話が変わる。2×6 のウッドデッキ床板を 1800mm で20本、ウエスタンレッドシダーで揃えると合計 70.9kg になる。大人1人で何往復もするか、台車が必要な重さだ。ベランダまで階段で運ぶ、軽自動車に積む、配送を頼むか持ち帰るかを決める——その判断材料は重さしかない。デッキ全体の材料の量はウッドデッキ材料計算で出せる。
切りしろを忘れると1本足りない
丸ノコで切ると、刃の厚み分の約3mmが1回ごとに消える。長さを定尺の整数分の1ぎりぎりに設定すると、この3mmの積み重ねで最後の1本が取れなくなる。店で「2本あれば6本取れる」と思って買って帰り、最後の1本だけ数mm短い、という失敗は珍しくない。短い材はもう継げないので、買い直すしかない。
活躍する場面
図面を描く前に、実寸で線を引く
棚・ベンチ・プランターカバーなど、2×4 や 1×4 で組む家具は、寸法の起点がすべて材の実寸になる。図面に線を引く前に、使う材を選んで実寸を確かめる。棚板の強さまで詰めたいときは、同じ寸法を棚板たわみ計算シミュレーターに渡せる。
ホームセンターへ行く前に、本数と重さを出す
必要な長さと本数、定尺を入れれば、何本買えばいいか、合計で何kgになるかが出る。車に積めるか、1回で運べるかを出発前に判断できる。
古い家の柱や根太を、ノギスで測って規格を当てる
リフォームや補修で既存の材に合わせて部材を買い足すとき、実測値を入れると近い規格材が出る。厚さと幅を逆に入れても照合できる。昔の材は未乾燥のまま使われていることもあり、その場合も規格名に行き着ける。
和室の造作で、寸の指定を市販材に置き換える
大工さんの図面や古い資料に「1寸角」「1寸5分」と書かれていたら、寸のまま入力すると対応する市販材の実寸が出る。該当する市販材が無ければ、近い候補が2つ示される。
基本の使い方(3ステップ)
① 引き方を選ぶ
「規格材から」「寸・尺から」「実測から逆引き」の3つから選ぶ。売り場の名前で考えるなら規格材、図面が寸で書かれているなら寸・尺、手元の材を測ったなら逆引き。用途のプリセット(2×4で棚を組む、サブロクの構造用合板など5件)を選ぶと、入力欄がまとめて埋まる。
② 材・長さ・樹種・本数を入れる
規格材なら、2×4材・角材・垂木胴縁・合板の群から絞って材を選ぶ。寸・尺なら厚さと幅を寸で、逆引きならノギスで測った厚さと幅を mm で入れる。長さの横には 6/8/10/12ft のボタンがあり、押すと 1820/2440/3050/3650mm が入る。樹種は8種から選ぶ。合板を選んだ場合は厚さ(4〜28mm の9種)を選び、長さの欄と定尺の欄は消える。合板は定尺の寸法そのもので計算するためで、板から部材を取る計算は木材カット最適化に任せる形になる。
③ 定尺を選ぶ
定尺(1820〜4000mm の6種)を選ぶと、1本から何本取れるか・端材の長さ・必要な定尺の本数が出る。切りしろ3mmを引くかどうかも切り替えられる。結果には実寸と呼びとの差、寸換算、断面積、材積(m³と石)、重さが並び、断面の図には呼び寸法と実寸が重ねて描かれる。
具体的な使用例 — 8ケースを実際に入れてみる
どれもツールに同じ値を入れて出した計算値で、材積などは画面では桁を丸めて表示される。重さは気乾状態の代表密度による目安だ。
ケース1|2×4で棚を組む — 900mm×6本を6フィート材から
- 入力: 規格材・2×4・長さ 900mm・SPF・6本・定尺 1820mm・切りしろあり
- 結果: 実寸 38×89mm(呼びとの差 −12.8 / −12.6mm)、断面積 3,382mm²。1本の材積 0.0030438m³、合計 0.0182628m³(0.066石)。1本 1.31kg、合計 7.85kg。定尺1本から 2本取れて端材 14mm、必要な定尺は 3本
- 解釈: 900mm は 1820mm のほぼ半分なので2本取りになる。端材が 14mm しか残らないので、棚板の長さを伸ばす余地はほとんど無い。設計を変えるなら、取り本数が2本のままかを先に確かめたい。6本で 7.85kg なので、持ち帰りは片手でいける
ケース2|切りしろ3mmで1本の差がつく — 606mm を1820mm 材から
- 入力: 規格材・2×4・長さ 606mm・SPF・6本・定尺 1820mm。切りしろの有無だけ変える
- 結果(切りしろあり): 定尺1本から 2本、端材 602mm、必要な定尺 3本
- 結果(切りしろなし): 定尺1本から 3本、端材 2mm、必要な定尺 2本
- 解釈: 606mm は2尺にあたる、和室まわりでよく出る長さだ。3本分とその間の切りしろ2回で 1824mm になり、1820mm をわずか 4mm 超える。刃の厚みを無視して「3本取れる」と思うと、買う本数を1本少なく見積もる。長さを 604mm 以下に詰められるなら、3本取りに戻せる
ケース3|サブロクの構造用合板12mm を5枚
- 入力: 規格材・合板・サブロク 910×1820・厚さ 12mm・カラマツ・5枚
- 結果: 1枚の面積 1.6562m²、1枚の材積 0.0198744m³、合計 0.099372m³(0.357石)。1枚 9.94kg、5枚で 49.7kg。呼びとの差は幅 +0.91mm、長さ +1.82mm
- 解釈: 3尺×6尺を mm にすると 909.1×1818.2 で、実物はそれより1〜2mm大きい。角材とは逆向きのずれだ。1枚約10kg は、市販品の表示(9kg前後〜10kg強)とも合う。5枚をまとめて持つのは無理があり、台車か複数回の運搬が要る
ケース4|寸で「4寸角」と言われたら — 120角に置き換わる
- 入力: 寸・尺から・厚さ 4寸・幅 4寸・長さ 3000mm・ヒノキ・1本
- 結果: 一致した規格材は 120角(4寸角)。実寸 120×120mm、呼び 121.21mm との差 −1.21mm。断面積 14,400mm²、材積 0.0432m³(0.155石)、重さ 17.7kg
- 解釈: 4寸をそのまま mm にすると 121.21mm だが、市販の4寸角は 120mm。約1.2mmの差は、ほぞや仕口を刻むときには無視できない。3mのヒノキ柱1本が 17.7kg あるので、2本担ぐのは相当きつい
ケース5|5寸角は市販の規格材に無い
- 入力: 寸・尺から・厚さ 5寸・幅 5寸・長さ 3000mm・スギ・1本
- 結果: 規格材に該当なし。寸の換算値 151.515×151.515mm のまま計算して、断面積 22,956.8mm²、材積 0.0688705m³(0.2475石)、重さ 26.2kg。近い規格材として 120角 と 105角 が示される
- 解釈: 5寸角はこのツールの市販材リストには入っていない(120角までの6種)。社寺や古民家の大黒柱級の太さなので、材木店に特注で頼むことになる。換算値のまま材積と重さを出しておけば、見積もりや運搬の相談に使える
ケース6|実測 40×292mm の古材 — 未乾燥の 2×12 だった
- 入力: 実測から逆引き・厚さ 40mm・幅 292mm・長さ 1820mm・SPF・1本
- 結果: 一致した規格材は 2×12。未乾燥材の寸法に近いと判定される。材積と重さは実測値で計算し、断面積 11,680mm²、重さ 9.14kg
- 解釈: 2×12 の乾燥材は 38×286mm なので、実測値とは厚さで2mm、幅で6mm違う。乾燥材の寸法だけと照合すると「該当なし」になるところだが、JAS の未乾燥材寸法 40×292mm とはぴったり一致する。グリーン材(含水率が高い状態)で入っていれば、乾くにつれて縮んで乾燥材の寸法に近づいていく
ケース7|2×6のウッドデッキ床板20本 — 12フィート材から
- 入力: 規格材・2×6・長さ 1800mm・ウエスタンレッドシダー・20本・定尺 3650mm・切りしろあり
- 結果: 実寸 38×140mm(呼びとの差 −12.8 / −12.4mm)、断面積 5,320mm²。合計材積 0.19152m³(0.688石)。1本 3.54kg、合計 70.9kg。定尺1本から 2本、端材 44mm、必要な定尺 10本
- 解釈: 12ft 材から 1800mm を2本取ると、端材は 44mm しか残らない。床板をさらに伸ばして定尺の半分を超えると、1本から1本しか取れなくなり、必要本数が一気に倍になる。70.9kg は何往復かに分けて運ぶ重さだ
ケース8|4000mm が欲しいのに定尺は3650mm
- 入力: 規格材・2×4・長さ 4000mm・SPF・3本・定尺 3650mm
- 結果: 長さが定尺を超えるので取り本数は出ず、1本あたり定尺を 2本継ぐ必要があると表示される。1本の重さは 5.82kg、3本で 17.5kg
- 解釈: SPF の定尺は12ft(3650mm)までが一般的で、それより長い材はホームセンターでは手に入りにくい。継ぐ前提で設計するか、4m材がある国産材(スギの垂木など)に切り替えるかの判断が要る。継ぎ手の位置と金物は別途検討が必要だ
8ケースを並べると、呼びと実寸のずれは材の種類で向きも大きさも違うことが分かる。2×4材は1cm以上細く、角材は1mm前後細く、合板はわずかに大きい。
仕組み・アルゴリズム — 表を引き、並べ替えて照合し、割り算で本数を出す
手法の選定 — 呼びから実寸を「計算する」方法は無い
最初に考えたのは、呼び寸法から実寸を式で出す方法だった。インチを mm にして、乾燥と切削で何mm減るかを引く。しかし 2×4 の厚さの差は −12.8mm、幅は −12.6mm、2×12 の幅は −18.8mm と、減り方は一定ではない。減る量は製材工程の都合で決まったもので、物理の式からは出てこない。角材では差が −1mm 前後、合板ではむしろプラスになる。
そこで表の引き当てを本体にした。2×4 系は、農林水産省の JAS PDF の第3条の表から乾燥材・未乾燥材の寸法をそのまま取っている。1×8 と 2×2 は JAS の寸法型式に無いので、市販の慣用寸法を「市販慣用」と明記して載せた。角材(30〜120角の6種)・垂木2種・胴縁2種・合板の定尺4種を合わせて、計25種を持っている。
逆引きの照合 — 並べ替えてから、乾燥と未乾燥の両方と比べる
実測値からの逆引きは、次の手順で行う。
// 入力の2値を小さい順に並べ替える(厚さと幅の入れ違いを吸収)
[a, b] = sort([measuredThick, measuredWidth])
// 合板以外の21件それぞれについて
dDry = |a − 乾燥の短辺| + |b − 乾燥の長辺|
dGreen = |a − 未乾燥の短辺| + |b − 未乾燥の長辺| // JAS の型式のみ
採用 = 小さいほう(同じなら乾燥)
// 一致条件: 採用した側で短辺・長辺とも差 ≦ 2mm
// 一致0件なら、d の小さい順に2件を「近い規格材」として出す
並べ替えを入れたのは、ノギスで測ったあとに厚さと幅を逆に入力することがよくあるからだ。89×38 と入れても 2×4 に行き着く。
未乾燥寸法とも照合する理由は、ケース6の 40×292mm にある。乾燥寸法 38×286 と比べると幅の差が6mmで、±2mm の許容から外れる。乾燥寸法だけで照合すれば「該当なし」になるが、JAS が定める未乾燥寸法とは完全に一致する。古い家の材や屋外に置かれていた材は、この未乾燥側に寄っていることがある。
逆引きで一致しても、材積と重さは実測値で計算する。ノギスで測った値が、手元の材についていちばん正しい数字だからだ。一方、寸・尺からのモードは入力が「名前」なので、市販材に一致すればその実寸で計算する。
取り本数の式 — 素直に書くと「ちょうどの長さ」で0本になる
定尺 S から長さ L を切りしろ k で切り出すとき、最初に思いつく式は floor(S / (L + k)) だ。1本ごとに L と切りしろ1回分を消費する、という発想になる。
ところがこの式は、長さが定尺ちょうどのとき0本を返す。S = L = 1820mm、k = 3mm なら floor(1820/1823) = 0。実際には切る必要すら無く、そのまま1本使える。n 本取るのに要る切断は、間の n−1 回だけで、最後の1本のあとに切りしろは要らない。そこで次の形にした。
n = floor((S + k) / (L + k)) // 取り本数
rem = S − n·L − (n − 1)·k // 間の切りしろを引いた残り
offcut = rem > k ? rem − k : 0 // 端材を切り離す1回分を引く
stocks = ceil(本数 / n) // 必要な定尺の本数
// L > S のときは取り本数を出さず、ceil(L / S) 本継ぎと表示
分子に k を足すのは、「最後の1本のあとの切りしろは不要」を式に織り込むためだ。L = S なら (S + k)/(L + k) = 1 で、ちゃんと1本になる。浮動小数点の比較には 1e-9 の許容誤差を入れ、境界ちょうどの長さが丸め誤差で1本減らないようにしている。
重さを代表値1点にした判断と、密度の出典
重さは「材積 × 気乾密度」の1点推定にした。密度の幅(SPF なら気乾比重 0.41〜0.47)を出して、重さも幅で見せる案も検討した。しかし同じ樹種でも、個体や部位によって密度は2〜3割動く。幅の端点を出しても、その端点自体に根拠が乏しいので、精度を装うことになる。代表値1点を出したうえで「±2〜3割は動く」と注記する形にした。含水率による補正はしていない。
樹種8種の密度は、木材の比重を載せた2つの一覧(toishi.info・木材博物館)を照合して決めた。スギ 0.38、ヒノキ 0.41、ウエスタンレッドシダー 0.37 は両者で一致している。SPF はエンゲルマンスプルース・バルサムファー・ロッジポールマツの混合グレードなので、3樹種の気乾比重 0.41・0.42・0.47 を平均して 430kg/m³ とした。ホワイトウッドとベイマツは2つの一覧の中間値を取った。
合板については、構造用合板やコンパネを独立した「樹種」として持つことはしていない。日本合板検査会の FAQ が「合板の密度は構成単板の樹種の密度としてよい。JAS に合板の密度の規定は無い」としているためだ。代わりに、針葉樹構造用合板の主材であるカラマツ(500kg/m³)と、コンパネに使われるラワン(550kg/m³)を樹種の選択肢に入れた。
計算例 — ケース1をステップで追う
2×4・900mm・SPF・6本・定尺 1820mm・切りしろ3mm の場合。材積と重さの式は前半の解説で示したものをそのまま当てはめる。
① 表引き 2×4 → 乾燥材 38 × 89 mm(呼び 50.8 × 101.6 mm、差 −12.8 / −12.6 mm)
② 断面積 38 × 89 = 3,382 mm²
③ 材積 38 × 89 × 900 × 10⁻⁹ = 0.0030438 m³(1本)
× 6本 = 0.0182628 m³ = 0.065631 石
④ 重さ 0.0030438 × 430 = 1.30883 kg(1本)、合計 7.853 kg
⑤ 取り本数 n = floor((1820 + 3) / (900 + 3)) = 2
⑥ 端材 1820 − 2×900 − 1×3(間の切り)− 3(端材を切り離す1回)= 14.0 mm
⑦ 必要定尺 ceil(6 / 2) = 3 本
⑥で最後に3mmを引いているのは、端材を切り離すときの1回分の切りしろだ。残りが切りしろ以下なら、切り離す必要が無いので端材は0とする。ケース2のように取り本数が切りしろで変わる長さでは、この一連の計算がそのまま買う本数の差になる。
実寸表・換算サイトとの違いと、木材カット最適化との分担
呼び⇔実寸の対応表で止まっている既存の資料の話は前半で触れたとおりなので、ここでは「何ができて、何をしないか」を並べておく。
入口が3つある。 検索で見つかる道具は、たいてい「2×4 → 38×89」のように一方向の引き当てか、インチとmm・寸とmmの単機能の換算だ。このツールは、規格材の名前から引く・寸や尺の指定から引く・ノギスで測った実寸から逆に規格を当てる、の3方向から同じ結果にたどり着く。逆引きは乾燥材の寸法だけでなくJASの未乾燥材の寸法とも照合するので、古い家から外した材や屋外に置かれていた材でも規格を取りこぼしにくい。
換算で終わらず、材積・重さ・本数まで進む。 断面が決まったら、長さと本数から材積をm³と石の両方で、樹種の代表密度から重さを出す。定尺を選べば、1本から何本取れるか・端材がどれだけ残るか・定尺を何本買えばいいかまで一続きで出る。「実寸は分かったが、結局何本買って車に何キロ積むのか」を別の電卓でやり直さなくていい。
木材カット最適化とは役割が違う。 木材カット最適化は、長さの違う部材を何種類も混ぜて定尺にどう詰めるか、板から矩形を2次元でどう取るかを解く道具だ。こちらは1種類の断面・1種類の長さに絞って、「この材をこの長さで何本」を素早く出すことに徹している。棚の側板と棚板と背桟のように長さがばらばらな部材表なら、ここで断面と実寸を確かめてから、部材表を木材カット最適化へ持っていくのが速い。
強度は見ない。 梁や棚板が荷重に耐えるかは、木造 梁せい・スパン選定ツールや棚板たわみ計算シミュレーターの担当だ。このツールは寸法の読み替えと数量の見積もりに範囲を絞り、その代わり入力を最小限にしている。
木材の寸法にまつわる豆知識
「6フィート=1820mm」は、実は6フィートではない
ホームセンターの値札に並ぶ「6フィート 1820mm」。1フィートは304.8mmなので、厳密な6フィートは1828.8mmで、表記より9mm近く長い。では1820mmはどこから来たのか。尺の世界では6尺=1間(けん)で、1尺を10/33mで計算すると1間は約1818mm。日本の住宅は長らくこの1間(いわゆるサブロクの長辺)を基準に組まれてきたので、北米から来たフィート材も、流通の過程で尺の1間に寄せた「1820」という丸めた数字で呼ばれるようになった。フィートの名前をしていながら、中身の数字は尺寄りという、二つの単位系の折衷だ。
シハチは「4尺×8尺」なのに幅はフィート
合板のサブロクは3尺×6尺で、幅910・長さ1820と素直に尺の数字になっている。ところが一回り大きいシハチは、名前こそ4尺×8尺なのに、幅は1220mm。4尺なら約1212mmのはずで、1220はむしろ4フィート(1219.2mm)の丸めだ。大判の合板は北米のパネル規格(4ft×8ft)と一緒に広まった経緯があり、名前だけ尺に翻訳されて、寸法の実体はフィートのまま残った。1枚の板の中で、幅はフィート・名前は尺という状態になっている。
木材の「石(こく)」は、米の石と別物
石はもともと米の量を測る容積の単位で、「加賀百万石」の石だ。ところが木材の材積に使う石は**10立方尺(約0.278m³)**と決め打ちされていて、升から積み上げた米の石(約6.5立方尺)とは値そのものが違う。1尺角で長さ10尺の角材1本がちょうど1石、というわかりやすい定義で、船の積載量にもこの10立方尺の石が使われた。1951年の計量法で尺貫法は公式には使えなくなったが、材木の取引には今も石が残り、国産材の市場では単価を「石あたり」で言う人がいる(石 (単位) - Wikipedia)。
ツーバイフォーは1974年に「一般の工法」になった
2×4材は輸入DIY材の印象が強いが、工法としての歴史は意外に古い。明治初期の札幌の時計台や豊平館は、枠組壁工法で建てられた建物として今も残っている。それでも長く特殊な工法の扱いで、1974年(昭和49年)に技術基準が告示されてオープン化され、そこから住宅として一気に広まった(枠組壁工法 - Wikipedia)。ホームセンターに2×4材が山積みになっているのは、この住宅向けの流通がDIYにこぼれてきた結果でもある。
測る・買う・残すときの小技
- ノギスは材の中央で、角を外して当てる。 2×材は四隅が丸く面取りされているので、端に寄せて挟むと面取りの分だけ小さく読める。反った材は木口の近くで測ると反りの分だけ厚く出るので、長さの中ほどで、面の平らなところを挟む。厚さと幅を2か所ずつ測って大きい方を採ると、未乾燥か乾燥かの見分けがぶれにくい。
- コンベックスで厚さを測らない。 先端の爪は外寸と内寸を兼ねるために遊びがあり、数十mmの厚さでは1〜2mmの差が簡単に出る。規格の境目を当てたいときほど、ノギスか差し金を使う。
- 買う前に床に置いて転がす。 売り場の平らな床に材を寝かせ、転がしたり片端を持ち上げて覗いたりすると、反り・ねじれ・曲がりがすぐ分かる。木口を見て年輪の中心(芯)が入っている材は、乾くにつれて割れやすい。
- カットサービスの刃厚を聞いておく。 店のパネルソーや丸ノコの刃厚は機械によって違う。ツールの切りしろは一般的な丸ノコの刃厚を前提にしているので、端材がぎりぎりの取り方になったときは、店の刃厚を確かめてから本数を決める。
- 端材には長さを書いておく。 切り終えた端材の木口に鉛筆で長さと樹種を書いておくと、次の工作で「あの切れ端で足りるか」をツールに入れ直すだけで判断できる。
よくある質問
ノギスで測ったら2×4が40×90mmあった。不良品なのか?
不良品とは限らない。JASには乾燥材の寸法とは別に未乾燥材(グリーン材)の寸法があり、40×90mmはそちらにほぼ一致する(前半の呼び寸法の解説を参照)。このツールの逆引きは、実測値を乾燥材の寸法と未乾燥材の寸法の両方と照合し、未乾燥側に近いときは「乾くと縮んで乾燥材の寸法に近づく」旨の注意を出す。材積と重さは規格表の値ではなく入力した実測値のまま計算するので、今手元にある材の量として使える。組み立て後に縮むと隙間が出るので、屋内の造作に使うなら数週間寝かせてから加工したほうがいい。
重さが店の表示や体重計で量った値と合わない
ツールの重さは、樹種ごとに1点に決めた気乾状態の代表密度から出している。代表値の出典と、幅のある文献値からどう1点を選んだかは前半の仕組みの節で説明したとおりだ。同じ樹種でも個体差で2〜3割は動くし、雨に濡れた材や未乾燥材はそれより重い。手元の材に合わせたいなら、1本だけ体重計で量ってツールの1本あたりの重さと比べ、その比を合計重量に掛ければいい。車の積載やベランダへの搬入の判断には、上振れする側を見込んでおくのが安全だ。
1×8や2×2はJASの寸法型式に無いのに、なぜ選べるのか
ホームセンターで普通に売られていて、DIYで使う機会が多いからだ。JAS(枠組壁工法構造用製材)の寸法型式に載っているのは構造材として使う断面で、1×8や2×2はその外にある。ただし流通している実寸はほぼ揃っているので、市販品の慣用寸法として表に入れている。内部の表では、JASに根拠がある材と市販慣用の材を区別して持っているので、規格として厳密な寸法が必要な用途では、JASに載っている材を選ぶか、実物を測って逆引きで確かめてほしい。
集成材やOSB、MDFの重さも出せる?
集成材は、構成しているラミナ(ひき板)の樹種を選べば目安になる。ホワイトウッドの集成材ならホワイトウッド、スギの集成材ならスギを選ぶ。接着剤の分だけわずかに重くなるが、代表密度の個体差の範囲に収まる程度だ。一方、OSBやMDFは木片や繊維を固め直した材料で、密度が元の樹種とは別物になる。厚さと面積を合板として入れれば材積はそのまま使えるが、表の樹種はどれも当てはまらないので、重さは参考にしないでほしい。製品の包装に1枚あたりの重さが書いてあることが多い。
逆引きで、厚さと幅のどちらを先に入れればいい?
どちらでもいい。逆引きでは、入力された2つの寸法を小さい方・大きい方に並べ替えてから規格表と照合するので、幅を厚さ欄に入れても同じ規格に当たる。照合の許容差は厚さ・幅それぞれ±2mmで、どの規格にも入らないときは近い候補を挙げたうえで、実測値のまま材積と重さを計算する。古い材で削れや痩せが大きいと候補から外れることがあるので、そのときは面取りや傷を避けた場所で測り直してみてほしい。
入力した寸法や本数はどこかに送られる?
送られない。規格表の引き当て、材積・重さ・取り本数の計算はすべてブラウザの中で完結していて、入力した寸法・樹種・本数をサーバーに送る処理は無い。ページを閉じれば入力は残らないので、買い出し前のメモとして使い捨てにして構わない。結果を残したいときは、結果のコピー機能でメモ帳やチャットに貼っておくといい。
まとめ|呼びを実寸に直してから、線を引く・買う
木材の呼び寸法は名前で、寸法ではない。実寸を確かめ、材積・重さ・本数まで出してから図面と買い出しに進めば、売り場で描き直す手間はなくなる。
棚板の強度は棚板たわみ計算シミュレーター、床板や根太の数量はウッドデッキ材料計算、長さの違う部材の詰め合わせは木材カット最適化へ。梁の断面は木造 梁せい・スパン選定ツール、2×4の突っ張り柱はディアウォール・ラブリコ設計ツール、目隠し塀はウッドフェンス材料計算、継ぎ手の加工はほぞサイズ計算ツールで詰められる。
扱ってほしい材や規格があれば、お問い合わせページから気軽に知らせてほしい。
Mahiro
Mahiro Appの開発者。2×4で棚を組もうとして、図面を「2インチ×4インチ=50×100mm」で描いてからホームセンターに行き、売り場で38×89mmを手に取って図面を全部描き直したことがある。以来、木材の呼びを見たら実寸を先に確かめてから線を引く。
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