エアシリンダの推力が出ない、その原因の大半はFRLにある
装置の立ち上げ試運転でシリンダの動きが鈍い。電磁弁を叩いても直らない。エア配管の元栓は開いている。圧力計を見ると、無負荷時は0.5 MPaあるのに動作の瞬間だけガクッと0.3 MPaまで落ちている――こういう現象、現場でよく見かけるよね。
原因の多くはエアシリンダ本体ではなく、その手前にいる「FRL(フィルタ・レギュレータ・ルブリケータ)」のサイズ不足にある。Rc1/4のFRLで済むだろうと見積もったら、実は多軸動作時にRc1/2が必要だった。必要Cv値を出さずに口径表だけで選ぶと、この罠に必ず落ちる。
このツールは、使用空気流量Q・一次圧P1・二次圧P2・許容圧力降下ΔPの4つを入れるだけで、SMC公開式に基づく必要Cv値と推奨Rcポートサイズを即座に出す。Cv使用率まで可視化するので、「ギリギリだから1サイズ上げたほうがいいな」といった判断がその場でつく。設計段階でも、既設ラインの増設検討でも、保全のトラブルシュートでも同じ式が使える。
なぜ作ったのか
空気消費量は計算できた。エアレシーバタンクの容量も出せた。じゃあその間に入るFRLはどうやって選ぶ?――ここで手が止まる設計者は多いはずだ。自分もそうだった。
メーカーのカタログを開くと「定格流量1500 L/min」と書いてある。ところがその横には小さく「P1=0.7 MPa、P2=0.5 MPa、ΔP=0.03 MPa時」と条件が添えられている。条件が違えば流せる流量はまったく変わる。Cv値の表もあるが、自分のラインの流量からCv値を逆算する計算はカタログには載っていない。結局メーカー営業の選定ソフトを借りてくるか、旧い設計指示書をそのままコピペするかになりがちだ。
Web上を探しても、FRL選定に特化した中立なツールは見つからなかった。海外サイトには英単位(SCFM・psi)の計算機はあるが、日本で使う L/min ANR と MPa に対応していない。メーカーのサイトにはあるが、その会社の型番に誘導する前提で作られていて、Cv値だけ出して比較したい場面では使いにくい。
だったら作ろう、というのがきっかけだった。同じ空圧まわりの空気消費量計算、エアレシーバ容量、エアドライヤ選定と並べて、設計フローの中でボタン1つで行き来できるようにしたかった。式はSMCが公開しているので車輪の再発明ではない。ただ、それを日本の設計現場で使いやすい形に整えること、使用率ゲージやチョーク流れ判定まで一枚の画面で完結させること、ここに意味があると考えた。
FRLとCv値の基礎
FRL とは何か
FRLは Filter(フィルタ)・Regulator(レギュレータ)・Lubricator(ルブリケータ)の3点セットの頭文字だ。エアコンプレッサから送られてくる圧縮空気を「使える状態」に整える装置で、空圧回路の入口には必ず置かれる。
- フィルタ: ドレン(水分)や油分、ダスト(5μm以上のごみ)を除去する。網戸とティーカップのように、気体は通すが液体と固形物は落とす
- レギュレータ: コンプレッサ吐出圧(0.7〜1.0 MPa)を機器ごとの最適圧(0.3〜0.6 MPa)に減圧する。蛇口の横にある減圧弁と同じ発想
- ルブリケータ: 通過する空気に霧状の潤滑油を混ぜ、下流のシリンダ・バルブの摺動部を保護する(ただし近年は無給油機器が主流で省かれるケースも多い)
ISO 4414やJIS B 8370(空気圧システム通則)では、空気圧システムの上流には清浄化・調圧装置を設けることが基本設計要件とされている。FRLはその具現化だ。
Cv値 とは
Cv値(Flow Coefficient、流量係数)は、バルブやオリフィスが「どれだけ流体を通しやすいか」を表す無次元指標だ。もともとは米国で水用バルブの評価指標として定義され、「差圧1 psi、温度60°Fの水を1分間に何US ガロン通せるか」を表していた。Cv=1なら1 psi差圧で約3.78 L/minの水が流れる。
空気のような圧縮性流体にも流用され、SMC・CKD・SMCなど国内主要メーカーのカタログは Cv値または有効断面積S(mm²)で流量特性を示している。Cv値が大きいほど同じ圧損でたくさん流せる、と理解しておけば実務では足りる。
SMC式:Cv → 流量への翻訳
空気圧のCv値と実流量の関係は、亜音速流れ領域で次の形に近似される。
Q = 2930 · Cv · √(ΔP · P2_abs)
Q : 流量 [L/min ANR]
Cv : 流量係数 [-]
ΔP : 一次側と二次側の圧力差 [MPa]
P2_abs : 二次側絶対圧 = P2(G) + 0.1013 [MPa]
これを Cv について解けば、必要Cv値を逆算できる。大気圧0.1013 MPaを足して絶対圧にするのを忘れがちだが、これを抜くと2〜3割ずれるので要注意だ。
Cv値とKv値の違い
欧州規格では Kv値(m³/h・bar基準)が使われる。換算は Cv ≈ 1.17 × Kv。ドイツ・イタリア製のレギュレータはKv表示なので、混在するラインではこの換算を頭に入れておく。(Wikipedia: Flow coefficient)
実務での重要性:足りないとどうなる、過剰だと何がまずい
過少選定の実害
FRLのCv値が必要値に届かないと、機器が動作する瞬間に許容以上の圧力降下が起きる。例えばΔPを0.03 MPaで設計したのに実際は0.08 MPa落ちているとしよう。P2=0.5 MPaで動くはずだったシリンダに届くのは0.42 MPa。エアシリンダの推力は圧力に比例するので、推力は 0.42/0.5 = 0.84、つまり設計値の84%しか出ない。
この15%の不足は、ワーク把持が滑る・プレスが最後まで押し切れない・ピストン戻り速度が遅れてタクトが崩れる、といった形で表面化する。最悪は電磁弁が正圧域を下回って誤動作する。過去に実際にあった例では、多軸ロボットの同時動作時のみFRLがボトルネックになり、週1回だけアラーム停止する――原因特定に半月かかった。
過大選定の副作用
逆に、余裕を見すぎてRc1のFRLをRc3/8の系統に付けると、今度はレギュレーション精度が悪化する。レギュレータは流量がある程度流れている領域で一次圧変動を吸収する設計になっていて、定格の10%以下の流量域では制御が不安定になりやすい。設定0.5 MPaのはずが実測0.52〜0.48の範囲でうねる、といった挙動が出る。
さらに、大口径FRLは本体サイズ・重量・価格が2〜3倍になり、配管スペースと初期投資を圧迫する。一次側の配管径(Rc1/4)に対してFRLだけRc1というアンバランスも配管施工側から嫌われる。
80%ルールの根拠
実務ではCv使用率80%が1つの目安だ。これは定格近くで使うと以下のリスクがあるため。
- 動的流量変動(バルブ切替瞬間、複数シリンダ同時動作)でピーク時に一瞬定格を超える
- フィルタエレメントの目詰まり進行により実質Cv値が初期の80〜90%まで低下する
- 冬季のドレン凍結・夏季の高温膨張でカタログ値から乖離する
メーカーの保全マニュアルやJIS B 8392-1(圧縮空気品質)でも、定期的なエレメント交換と余裕率を前提とした選定が推奨されている。
活躍する場面
- 新規ライン設計: 機器点数と消費量から合計流量を出したあと、本ツールでFRL口径を即決。Rc1/4 か 1/2 かで配管ルート設計が変わるので、早い段階で確定したい
- 既存ライン増設: 既存FRLに新機器を追加接続する前に、合算流量で再計算。Cv使用率が80%を超えるなら親FRLを交換、もしくは系統を分岐する判断ができる
- エア機器入替: 旧型シリンダから高速タイプへの交換でピーク流量が1.5倍になるケース。元のFRLで足りるか、数値で答えが出る
- トラブルシュート: 「シリンダの力が弱い」「タクトが安定しない」の一次切り分け。圧力計の数値と計算結果を突き合わせて、FRL起因か下流機器起因かを判定する
基本の使い方(3ステップ)
- 使用空気流量Q を入力 — L/min ANR(標準状態)。複数機器がある場合はピーク同時動作時の合計値を使う。空気消費量計算ツールで先に算出しておくと早い
- 圧力条件を入力 — 一次圧P1はコンプレッサ吐出(通常0.7〜0.9 MPa)、二次圧P2は下流機器の要求値、許容圧力降下ΔPは一般に0.03 MPa
- 推奨ポートとCv使用率を確認 — 使用率が80%を超えていたら1サイズ上を選定、チョーク流れ警告が出ていたらP1とP2の差を見直す
具体的な使用例
ケース1: 一般機械(中規模自動化装置)
- 入力: Q=1000 L/min, P1=0.7 MPa, P2=0.5 MPa, ΔP=0.03 MPa
- 結果: 必要Cv=2.54 → 推奨 Rc1/2(Cv=3.2)、使用率 79.4%、圧力比0.75
- 解釈: 使用率79%は80%ラインぎりぎり。機器の同時動作パターンに余裕がなければRc3/4(Cv=5.5)への1サイズアップを推奨。圧力比は亜音速域で問題なし
ケース2: 小型シリンダ専用ユニット
- 入力: Q=500 L/min, P1=0.7 MPa, P2=0.4 MPa, ΔP=0.03 MPa
- 結果: 必要Cv=1.39 → 推奨 Rc3/8(Cv=1.8)、使用率 77.3%、圧力比0.63
- 解釈: 小型装置だがΔP=0.03で計算するとRc3/8がベスト。Rc1/4(Cv=0.8)では全く足りない点がポイント。カタログの口径表だけ見て選ぶと必ず外す例
ケース3: 多軸ロボット(6軸同時)
- 入力: Q=2000 L/min, P1=0.9 MPa, P2=0.7 MPa, ΔP=0.05 MPa
- 結果: 必要Cv=3.41 → 推奨 Rc3/4(Cv=5.5)、使用率 62.0%、圧力比0.80
- 解釈: P1=0.9、P2=0.7と高圧条件。ΔPを0.05まで許容して計算するとRc3/4で十分。使用率62%なので増設余地もある。圧力比0.80は亜音速域の上側、安定動作領域
ケース4: 計装用(小流量レギュレータ)
- 入力: Q=100 L/min, P1=0.7 MPa, P2=0.5 MPa, ΔP=0.02 MPa
- 結果: 必要Cv=0.31 → 推奨 Rc1/4(Cv=0.8)、使用率 38.9%、圧力比0.75
- 解釈: 流量が少ないのでRc1/8(Cv=0.3)でぎりぎり足りるが、使用率100%超えになるためRc1/4が選ばれる。計装用途はレギュレーション精度優先で、使用率30〜50%の余裕あり選定が定石
ケース5: エアブロー用(連続消費)
- 入力: Q=1500 L/min, P1=0.6 MPa, P2=0.4 MPa, ΔP=0.04 MPa
- 結果: 必要Cv=3.62 → 推奨 Rc3/4(Cv=5.5)、使用率 65.7%、圧力比0.71
- 解釈: エアブローは連続流れなのでΔPを0.04とやや広めに取る。P1=0.6と低めの条件でもRc3/4で収まる。連続負荷ではフィルタ目詰まり進行が早いので、使用率は低めが安心
ケース6: 大型組立ライン(主幹FRL)
- 入力: Q=3500 L/min, P1=0.9 MPa, P2=0.6 MPa, ΔP=0.05 MPa
- 結果: 必要Cv=6.38 → 推奨 Rc1(Cv=8.5)、使用率 75.0%、圧力比0.70
- 解釈: 大型ラインの主幹選定。Rc1でも使用率75%、これ以上の流量になると複数系統分岐か大口径モジュラーFRLが必要になるライン。Rc1の上限を意識した設計判断ができる
仕組み・アルゴリズム
候補手法の比較
必要Cv値を求める方法は主に3つある。
- 有効断面積S式(ISO 6358):
Q = 226·S·P1·√(293/(273+T))。音速コンダクタンスCと臨界圧力比bを使う精密式で、チョーク領域も扱える。反面、メーカーカタログではSとCvが併記されていない型番も多く、ユーザー入力項目が増える - SMC簡易式:
Q = 2930·Cv·√(ΔP·P2_abs)。亜音速領域専用だがCv値だけで扱える。実務の設計初期段階ではこれで十分な精度が出ると、SMC・CKDが公開している - ノモグラム読取: カタログ巻末の流量線図から目視で読む。紙時代からの手法で、いまでも現場で使われている。ただし主観誤差が大きい
本ツールはSMC簡易式を採用した。理由は(a)ユーザー入力が4パラメータで済む、(b)国内主要メーカーがこの式をカタログ記載の前提式として採用している、(c)設計初期段階の概算精度としては±5%以内に収まる、の3点。チョーク領域に入る場合だけ警告を出して、精密式への切り替えを促す運用にしている。
実装フロー
// 1. 絶対圧への変換
const p2Abs = p2 + 0.1013; // MPa(a)
const p1Abs = p1 + 0.1013;
// 2. 必要Cv値の逆算(SMC式)
const cvReq = flow / (2930 * Math.sqrt(dP * p2Abs));
// 3. ポートテーブルから最小の Cv_port ≥ cvReq を選定
const PORTS = [
{ label: "Rc1/8", cv: 0.3 }, { label: "Rc1/4", cv: 0.8 },
{ label: "Rc3/8", cv: 1.8 }, { label: "Rc1/2", cv: 3.2 },
{ label: "Rc3/4", cv: 5.5 }, { label: "Rc1", cv: 8.5 },
];
const selected = PORTS.find(p => p.cv >= cvReq) ?? PORTS[PORTS.length - 1];
// 4. 使用率とチョーク流れ判定
const utilization = (cvReq / selected.cv) * 100;
const chokeRatio = p2Abs / p1Abs;
const isChoke = chokeRatio <= 0.528; // 臨界圧力比
臨界圧力比 0.528 の意味
空気(比熱比 γ=1.4)では、(2/(γ+1))^(γ/(γ-1)) ≈ 0.528。これより下に二次圧が落ちると、流れが音速に達して流量が一次圧だけで決まる「チョーク流れ」になる。この領域では亜音速式は過小評価側に外れることが知られている。(Wikipedia: Choked flow)
レギュレータはそもそも一次圧から一定比率以上落とさない前提で使うため、通常の設計ではチョーク領域には入らない。ただし元圧が1.0 MPaで下流に真空近いブローノズルがある、といった特殊ケースでは入り得るので、警告バナーを用意している。
ステップ計算例(ケース1の再現)
Q = 1000 L/min
P1 = 0.7 MPa(G)
P2 = 0.5 MPa(G)
ΔP = 0.03 MPa
p2Abs = 0.5 + 0.1013 = 0.6013
√(ΔP · p2Abs) = √(0.03 · 0.6013) = √0.018039 = 0.13431
cvReq = 1000 / (2930 · 0.13431) = 1000 / 393.52 = 2.541
選定 = Cv ≥ 2.541 を満たす最小 → Rc1/2 (Cv=3.2)
util = 2.541 / 3.2 · 100 = 79.4 %
choke = 0.6013 / (0.7 + 0.1013) = 0.6013 / 0.8013 = 0.750 (>0.528 → 亜音速OK)
この一連の計算を手でやると電卓で2〜3分、Excelシートなら関数組んで30秒、本ツールなら入力から表示まで瞬時だ。重要なのは「どの式で」「どの前提で」計算したかが明示されていること。ブラックボックスの選定ソフトではなく、式と定数が記事に書いてあるから、数値の妥当性を自分で検証できる。
他ツールとの違い
FRL選定の世界は長らく「メーカー公式の選定ソフト」か「紙のカタログ早見表」の二択だった。SMCもCKDもコガネイも、それぞれ自社製品前提の選定ツールを提供している。精度は高いが、型番を決める前の概算フェーズでは使いにくい。登録が必要だったり、ブラウザで動かなかったり、1製品ずつ選んでいく設計で「流量だけ入れてざっくり口径を知りたい」という用途には過剰だ。
このツールはメーカー中立で、SMC公開式 Cv = Q / (2930·√(ΔP·P2a)) をそのまま使っている。Rcポート別の代表Cv値もSMC/CKDカタログの中央値を採用しており、どのメーカーで最終選定しても桁ズレは起きない。ブラウザだけで完結し、入力はL/min ANRとMPaの4項目だけ。結果はCv値・推奨ポート・使用率ゲージ・チョーク比が同時に出る。
紙の早見表との違いも明確だ。早見表は「Q=1000、P2=0.5、ΔP=0.03」のような固定条件しか読めないが、実務では「P2=0.55、ΔP=0.025」みたいな半端な条件が普通に出てくる。そのたびに補間するのは面倒だし、計算間違いの温床になる。このツールなら任意の条件で瞬時に再計算され、Cv使用率80%警告も自動で出るので、1サイズアップ判断の属人性も消える。もちろん最終的な型番決定はメーカーカタログの圧力降下曲線で確認してほしいが、概算フェーズの9割はこれで済む。
豆知識・読み物
Cv値の起源は米ガロン/分
Cv値の「Cv」は Flow Coefficient(流量係数)の略で、定義は「華氏60度の水を、差圧1 psi(約6.89 kPa)で流したときに通過する米ガロン/分(GPM)」。1940年代に米国Masoneilan社が制御弁の流量表記として提唱したのが始まりと言われている。単位系が完全にヤードポンド法なので、SI単位で生きる我々には直感がわきにくいが、業界標準としてあまりに深く根付いてしまい、今さらメートル系に統一できない。
欧州ではSI系のKv値(差圧1 barで流れる水の m³/h)が使われることが多く、換算は Kv ≒ 0.857·Cv。日本は両方混在しており、空圧機器はCv、バルブ業界はKvが優勢、という住み分けになっている。詳しくはFlow coefficient - Wikipediaに詳しい。
L/min ANRとNm³/hの換算
空気流量の単位は混乱の温床だ。日本の空圧業界では L/min ANR(Atmosphere Normale de Reference、ISO 8778準拠の基準大気状態 20°C, 0.1 MPa, 相対湿度65%)が主流。一方、ガス業界や欧州系メーカーは Nm³/h(Normal m³/h、0°C, 0.1013 MPa, 乾燥)を使う。
単純な体積換算では 1 Nm³/h ≒ 16.67 L/min になるが、ANRとNormalは基準温度が違う(20°C vs 0°C)ので、厳密には 1 Nm³/h ≒ 17.9 L/min ANR(温度補正 293/273)。1割近い差が出るので、カタログの単位表記は必ず確認したい。空圧FRLのスペックシートはほぼ全社がANR表記だが、輸入品や計装用途だとNormalが混ざることがある。
ドレンと湿度の意外な関係
FRLのFはフィルタで、主な役割はドレン(水滴)と固形異物の除去だ。このドレンがどこから来るかというと、コンプレッサーで空気を圧縮した瞬間に発生する。大気中の水蒸気は圧縮されると温度が上がる一方、配管を流れるうちに冷却されて飽和水蒸気量を超え、液化する。夏場の湿度80%の空気を0.7 MPaまで圧縮すると、理論上は1 Nm³あたり10〜15 gの水が析出する計算になる。
FRLのドレン機構がないと、この水がシリンダやバルブに流れ込んで錆・作動不良の原因になる。エアドライヤーと組み合わせる設計が基本だが、詳しくは/air-dryer-selectのツールで露点基準の選定ができる。
Tips
- 一次側配管径との整合を確認する: Rc1/2のFRLを選んだのに、配管が呼び径8Aの細管だと、配管側で圧損が出てFRLの計算前提が崩れる。FRLのポート径以上の配管径を確保するのが原則。1サイズ上でもOK
- 静置時のエア抜け量を無視しない: 夜間や休日にコンプレッサーを止めると、配管内のエアが数時間で抜ける装置がある。原因の多くはFRL一次側の継手・フィルタケース・ドレンコックの微小リーク。FRL選定とは別問題だが、月曜朝の立ち上げ時間に直結するので点検リストに入れたい
- Cv使用率の目安は70〜80%: 80%を超えると圧損余裕がなくなり、パルス的な大流量(シリンダ同時作動等)で二次圧が落ち込む。逆に30%未満だと過剰投資なので、狙いは70%前後
- パルス負荷は平均流量で計算しない: 1秒だけ3000 L/min流れる用途を「平均500 L/min」で計算するとFRLが追従しない。ピーク流量で選定し、必要なら二次側にエアタンクを追加する
- ΔPは上流の配管込みで考える: 計算上の0.03 MPaはFRL単体の圧損だが、実機では配管・継手・ソレノイドバルブの圧損も二次側機器の作動圧に影響する。全体で0.05〜0.08 MPa程度の余裕を見ておくと安心
FAQ
Cv値とKv値の違いは?相互換算できる?
Cv値は米国系の単位(華氏60°F・1 psi・米ガロン/分基準)、Kv値は欧州系のSI単位(1 bar・m³/h基準)。換算式は Kv ≒ 0.857·Cv(逆は Cv ≒ 1.17·Kv)。このツールはCv値ベースで計算しているが、欧州メーカーのカタログを参照するときはKvに変換して比較すれば良い。空圧機器の和製カタログはほぼCv表記なので、このツールの出力をそのまま使って問題ない。
なぜL/min ANRで入力させるのか。Nm³/hしか知らない
日本の空圧機器カタログがL/min ANR表記で統一されているため、ツールも同じ単位系に揃えている。Nm³/hからの換算は 1 Nm³/h ≒ 17.9 L/min ANR(基準温度の違いを考慮した値)。例えば120 Nm³/hなら約2148 L/min ANRと入力すればよい。なお、エアコンプレッサーの吐出量が「m³/min (ANR)」で表記されることもあり、これは単純に1000倍するだけでL/min ANRになる。
チョーク流れ警告が出たらどうすればいい?
チョーク流れは P2_abs / P1_abs ≤ 0.528 の領域で発生し、音速に達した流れが下流圧に依存しなくなる現象。このツールの亜音速式(SMC式)は厳密にはこの領域で過小評価になる可能性があり、警告を出している。対策は3つ。(1) 一次圧P1を下げるか二次圧P2を上げてこの比を超える、(2) 実機ではメーカーの流量特性曲線を直接参照する、(3) チョーク領域専用の式 Q_max = 113·Cv·P1_abs·√(293/T) を使う。一般的な空圧FRL用途ではP1=0.7、P2=0.5付近で使うので、この比は0.7前後になりチョークには入らない。
レギュレータを直列に2段使う場合のCv値はどう計算する?
二段レギュレーションは高精度な二次圧が必要な場合(計装・塗装・半導体装置等)に使われる。各段の必要Cvは、それぞれの段での P1・P2・ΔP を基準に個別計算する。例えば 0.9 MPa → 0.5 MPa → 0.2 MPa と二段で落とす場合、1段目は P1=0.9, P2=0.5, 2段目は P1=0.5, P2=0.2 で独立に計算。直列なので流量Qは両段で同じだが、二次圧が低い2段目ほど必要Cvが大きくなる点に注意。このツールは1段ずつ計算を回す運用がおすすめ。
フィルタが目詰まりしてきたらどのくらい流量が落ちる?
FRLのフィルタエレメントは使用時間とともに差圧が上昇する。一般に新品で ΔP ≒ 0.01 MPa、交換推奨時期で ΔP ≒ 0.05〜0.1 MPa 程度になるメーカーが多い。このツールのΔP入力を0.03 MPaで計算しておけば、新品から中期までは問題なく、交換時期が近づいたら差圧計で検知する運用になる。厳密な目詰まり補正を計算したい場合はMVPの対象外だが、ΔP値を想定寿命末期の値に上げて再計算すれば過渡的な余裕度を確認できる。
Cv使用率が100%を超えたら必ず故障するのか?
100%を超えても即座に壊れるわけではなく、「設計上の許容圧損ΔPを守れなくなる」という意味。例えばΔP=0.03 MPaで計算した結果Cv使用率が120%になった場合、実際の圧損は約0.043 MPa程度に増え、二次圧が狙いより0.013 MPaほど低く推移する。シリンダ推力に直結するので作動不良や速度低下を招く。機械は動くが性能が出ない、という状況が一番タチが悪いので、1サイズアップで余裕を持たせる判断が正解だ。
まとめ
空圧FRLの選定は「流量・二次圧・許容圧損」の3点から必要Cv値を逆算するだけのシンプルな作業だが、メーカー中立で瞬時に結果が出るWebツールは意外と少なかった。このツールを使えば概算選定が秒で終わり、Cv使用率ゲージで1サイズアップ判断の迷いも消える。
空圧システムの設計は単品では完結しない。消費空気量の積算は/air-consumption-calc、レシーバタンク容量は/air-receiver-sizing、ドレン対策のドライヤー選定は/air-dryer-select、シリンダ推力計算は/pneumatic-cylinderでそれぞれ扱っている。上流から下流まで串刺しで確認すれば、装置立ち上げ後の「エアが足りない」トラブルはかなり減らせるはず。
不具合や要望があればお問い合わせから気軽に連絡してほしい。現場の声が次のアップデートにつながる。
Mahiro
Mahiro Appの開発者。装置立ち上げ試運転でシリンダ推力不足に悩まされ、原因を辿ったらFRLのRc1/4が足りていなかった経験から作ったツール。SMC式だけで概算はほぼ完結するので、カタログ検索の前段として使ってほしい。
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