床衝撃音等級判定ツール

スラブ厚・仕上げ材・天井仕様から重量衝撃音LH値・軽量衝撃音LL値を判定。JIS A 1419-2準拠の遮音等級を自動判定

スラブ厚と仕上げ材を入力すると、重量衝撃音(LH)・軽量衝撃音(LL)の等級を自動判定します

スラブ条件

一般: 150-200mm、タワー: 200-300mm

仕上げ・天井

軽量衝撃音を1ランク改善

軽量衝撃音を若干改善

床衝撃音等級

重量衝撃音LH-50
やや劣る
軽量衝撃音LL-45
標準

聞こえて気になることがある

聞こえるが気にならない(学会推奨値)

面密度

345 kg/m²

LH素地

50

LL素地

60

LH改善量

0

床0 + 天井0

LL改善量

-15

床-10 + 天井-5

本ツールは経験式と公表された改善量データに基づく概算です。実際の床衝撃音レベルはスラブの梁間面積・支持条件・施工精度などに影響されます。重要な判断にはJIS A 1418に基づく実測をお勧めします。

不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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上の階の足音、数値で見えたら安心できる

マンションの内覧会で「この物件、上の階の音はどうだろう」と不安になったことはないだろうか。不動産の営業担当に聞いても「スラブ厚200mmなので大丈夫ですよ」と返されるだけで、その数字が本当に静かなのか判断できない。子どもが走り回る音、スプーンを落とす音、椅子を引く音――入居してから「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースは驚くほど多い。

国土交通省の「マンション総合調査」では、居住者間トラブルの原因として騒音が常に上位に挙がる。なかでも床を伝わる衝撃音は、壁や窓で防げる空気伝搬音とは性質がまったく異なり、構造体そのものを振動させるため対策が難しい。

このツールは、スラブ厚・仕上げ材・天井仕様の3条件を入力するだけで、重量衝撃音LH値と軽量衝撃音LL値を瞬時に判定する。JIS A 1419-2に準拠した遮音等級で結果を表示するから、物件の比較検討やリフォーム計画の根拠として使える。

床衝撃音の判定ツール、なぜ作ったのか

建築の遮音計算ツールは世の中にいくつかあるが、その多くは「空気伝搬音」――つまり壁や床を透過する話し声やテレビの音――を対象にしたものだ。Sound Transmission Class(STC)やD値の計算ツールは見つかる。しかし「床衝撃音」に特化したWebツールはほとんど見当たらなかった。

自分がマンション購入を検討していたとき、パンフレットに「スラブ厚180mm、二重床」と書いてあっても、それが実際にどの程度の遮音等級になるのかわからなかった。不動産サイトの口コミには「上の階の子どもが走ると響く」「二重床なのにうるさい」といった声があふれている。スラブ厚が同じでも、仕上げ材や天井仕様の組み合わせで遮音性能は大きく変わる。その全体像を把握できるツールがほしかった。

既存の情報源は断片的だ。建材メーカーのカタログには個別の床材の遮音等級が書いてあるが、スラブの面密度から基準値を算出して仕上げ材の改善量を加算するという一連の計算フローを一括でやってくれるツールがない。設計者は手計算かExcelで対応しているし、一般の購入者にはそもそも計算方法がわからない。

そこで、RC系スラブの面密度から経験式でベースLH/LL値を算出し、床仕上げと天井仕様による改善量を加算して最終等級を判定する――このシンプルなフローをWebツール化した。設計者の概略検討にも、マンション購入者の物件比較にも使える。

床衝撃音等級(LH・LL)の基礎知識

床衝撃音 等級とは何か

マンションなどの集合住宅で、上階の床から下階に伝わる音を「床衝撃音」と呼ぶ。壁越しに聞こえるテレビの音(空気伝搬音)とは違い、建物の構造体そのものが振動して音を放射するのが特徴だ。

日常のたとえで考えてみよう。太鼓の面を叩くと、皮が振動して音が出る。マンションの床スラブはこの太鼓の皮と同じ役割を果たしている。上階で子どもが飛び跳ねると、コンクリートスラブが太鼓の皮のように振動し、下階の天井から音が放射される。この音の大きさを数値化したものが床衝撃音等級だ。

等級は「L値」で表され、数字が小さいほど遮音性能が高い。L-45なら「聞こえるが気にならない」水準、L-55なら「はっきり聞こえて気になる」水準。5刻みで評価され、L-30からL-65まで等級が定義されている。

重量衝撃音 LH と軽量衝撃音 LL の違い

床衝撃音は、衝撃源の性質によって2種類に分かれる。

重量衝撃音(LH) は、子どもの飛び跳ね・走り回り・重い物の落下など、柔らかく重い衝撃によって発生する低い周波数帯(63Hz中心)の音だ。「ドスン」「ドンドン」という鈍い音として聞こえる。JIS A 1418-2では「タイヤ衝撃源」で測定する。

軽量衝撃音(LL) は、スプーンの落下・スリッパの歩行・椅子の引きずりなど、硬く軽い衝撃によって発生する高い周波数帯(500Hz中心)の音だ。「コツコツ」「カチャン」という硬質な音として聞こえる。JIS A 1418-1では「タッピングマシン」で測定する。

ここが重要なポイントだが、LHとLLでは対策のアプローチがまったく異なる。重量衝撃音LHは主にスラブの質量(面密度)で決まり、床仕上げ材ではほとんど改善できない。一方、軽量衝撃音LLは弾性のある床仕上げ材(フローリングの緩衝層、畳、カーペット)で大幅に改善できる。

JIS A 1419-2 の等級評価体系

床衝撃音の遮音等級はJIS A 1419-2「建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法」で規定されている。測定された衝撃音レベルを周波数帯域ごとに基準曲線と照合し、等級値を決定する仕組みだ。

日本建築学会が推奨する集合住宅の遮音等級は以下の通り。

等級重量衝撃音LH軽量衝撃音LL体感の目安
L-30極めて優良極めて優良音がほとんど聞こえない
L-35優良優良注意すれば聞こえる
L-40良好良好小さく聞こえる
L-45標準(推奨値)標準(推奨値)聞こえるが気にならない
L-50やや劣るやや劣る聞こえて気になることがある
L-55劣る劣るはっきり聞こえて気になる
L-60問題あり問題ありうるさい

学会の推奨値はLH・LLともにL-45以下。これが物件選びの一つの基準になる。

マンション遮音設計で床衝撃音等級が重要な理由

遮音性能の軽視が招くトラブル

床衝撃音の問題は、入居後に発覚するケースがほとんどだ。内覧会の時点では上階に誰も住んでいないため、遮音性能を体感できない。購入者は図面上の「スラブ厚200mm」「二重床」という文字だけで判断することになる。

しかしスラブ厚200mmのRCスラブでも、直天井+モルタル仕上げならLLは60(問題あり)に達する。同じスラブ厚でも仕上げ材と天井の組み合わせでLL値は最大20ポイント変動する。この差を見落として物件を選ぶと、入居後にクレームや訴訟に発展するリスクがある。

実際、マンションの騒音トラブルが殺人事件にまで発展した例もあり、床衝撃音は住環境の根幹に関わる問題だ。

住宅品質確保促進法と等級表示

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく「住宅性能表示制度」では、遮音対策として床衝撃音等級の表示が規定されている。等級3(LH-55/LL-55以下相当)から等級5(LH-45/LL-40以下相当)まで区分されており、これが物件の資産価値にも直結する。

設計段階で床衝撃音等級を概算できれば、必要なスラブ厚や仕上げ材のグレードを早期に確定できる。逆に概算を怠ると、着工後に「等級が足りない」と判明して仕様変更が発生し、手戻りコストが膨大になる。特にタワーマンションではスラブ厚の変更は構造計算のやり直しを意味するため、設計初期段階での検討が不可欠だ。

床衝撃音等級判定ツールが活躍する場面

マンション購入時の物件比較

パンフレットに記載されたスラブ厚・床仕上げ・天井仕様を入力すれば、候補物件のLH/LL等級を横並びで比較できる。「スラブ厚は薄いが高遮音二重床の物件」と「スラブが厚いが標準仕上げの物件」、どちらが静かかを数値で判断できる。

リフォーム計画の効果検討

既存マンションの床をリフォームするとき、仕上げ材をモルタルからフローリングに変えたら、あるいは畳からカーペットに変えたらどれだけ改善するかをシミュレーションできる。工事前に改善量を把握しておけば、費用対効果の高い仕上げ材を選べる。

設計者の概略検討

一級建築士やマンション設計者が、基本設計段階でスラブ厚と仕上げの組み合わせを検討するときの概略計算に使える。詳細な解析(FEM等)に進む前のスクリーニングとして、複数案を素早く比較検討できる。

建築士試験の学習支援

一級建築士試験の「環境・設備」科目では、床衝撃音等級に関する問題が頻出する。面密度と等級の関係、LHとLLの違い、仕上げ材による改善量といった知識を、実際に数値を変えながら体験的に学習できる。

基本の使い方 ― 3ステップで判定

ステップ1: スラブ条件を入力

スラブ厚をmm単位で入力し、種類(RC/ボイドスラブ/SRC)を選択する。マンションのパンフレットや構造図に記載されている数値をそのまま入力すればよい。一般的なマンションは150-200mm、タワーマンションは200-300mmが目安だ。

ステップ2: 仕上げと天井を選択

床仕上げ(モルタル・直貼りフローリング・二重床・畳・カーペット)と、下階の天井仕様(直天井・吊り天井・吊り天井+吸音材)をプルダウンとボタンから選ぶ。プリセットシナリオ(一般マンション・高級マンション等)を選べば一括で入力できる。

ステップ3: 等級を確認

重量衝撃音LH・軽量衝撃音LLの等級がステータスカードで即表示される。日本建築学会の推奨値L-45以下かどうかが一目でわかり、面密度やスラブ素地のベース値、改善量の内訳も確認できる。

6つの条件で見る床衝撃音等級 ― 入力から判定まで

ケース1: 一般マンション(150mm RC + 直貼りフローリング + 吊り天井)

  • 入力: スラブ厚 150mm / RC / 直貼りフローリング / 吊り天井
  • 結果: 面密度 345 kg/m2 → LHベース 50 / LLベース 60 → LH-50(やや劣る)/ LL-45(標準)
  • 解釈: 一般的な分譲マンションの典型的な仕様。軽量衝撃音LLは吊り天井とフローリング緩衝層の合計で15ポイント改善されてL-45(学会推奨値)に到達しているが、重量衝撃音LHはL-50止まりで、子どもの飛び跳ねには注意が必要な水準だ。

ケース2: 高級マンション(200mm RC + 高遮音二重床 + 吊り天井+吸音材)

  • 入力: スラブ厚 200mm / RC / 二重床(高遮音仕様) / 吊り天井+吸音材
  • 結果: 面密度 460 kg/m2 → LHベース 45 / LLベース 55 → LH-35(優良)/ LL-35(優良)
  • 解釈: 高級仕様のフル装備構成。LH・LLともにL-35(優良)を達成しており、騒音クレームのリスクは極めて低い。スラブの面密度増加と高遮音二重床+吸音天井の組み合わせが、合計で20ポイントもの改善をもたらしている。

ケース3: タワーマンション(250mm RC + 標準二重床 + 吊り天井)

  • 入力: スラブ厚 250mm / RC / 二重床(標準) / 吊り天井
  • 結果: 面密度 575 kg/m2 → LHベース 40 / LLベース 50 → LH-40(良好)/ LL-35(優良)
  • 解釈: スラブ厚250mmの圧倒的な面密度でLHベースがL-40まで下がる。二重床と吊り天井によるLL改善も効いて、LLはL-35。タワマンの厚いスラブは重量衝撃音に対して抜群の効果を発揮する。

ケース4: 和室(200mm RC + 畳 + 吊り天井)

  • 入力: スラブ厚 200mm / RC / 畳(55mm) / 吊り天井
  • 結果: 面密度 460 kg/m2 → LHベース 45 / LLベース 55 → LH-45(標準)/ LL-35(優良)
  • 解釈: 畳の衝撃吸収性能は非常に高く、軽量衝撃音LLを15ポイント改善してL-35まで引き下げる。重量衝撃音LHは畳では改善できない(スラブ質量に依存)が、200mmスラブのおかげでL-45(学会推奨値)を確保している。和室が「静かな部屋」と言われる根拠がここにある。

ケース5: ボイドスラブ注意(200mm ボイド + 直貼りフローリング + 吊り天井)

  • 入力: スラブ厚 200mm / ボイドスラブ / 直貼りフローリング / 吊り天井
  • 結果: 面密度 345 kg/m2 → LHベース 50 / LLベース 60 → LH-50(やや劣る)/ LL-45(標準)
  • 解釈: 200mmボイドスラブの面密度は345 kg/m2で、150mm RCスラブと同じ値になる。厚さだけ見て「200mmだから安心」と判断すると落とし穴にはまる。ボイドスラブは密度係数0.75が適用されるため、同厚のRCスラブより遮音性能が一段落ちる。パンフレットでスラブ種類を必ず確認しよう。

ケース6: リフォーム効果の検証(150mm RC、仕上げ変更ビフォーアフター)

  • 改修前: スラブ厚 150mm / RC / モルタル / 直天井 → LH-50 / LL-60(問題あり)
  • 改修後: スラブ厚 150mm / RC / カーペット / 吊り天井 → LH-50 / LL-40(良好)
  • 解釈: スラブは変えられないのでLH-50は据え置きだが、モルタル直貼り→カーペット+吊り天井への改修でLLが60から40へと20ポイント改善。LL-60(問題あり)からLL-40(良好)へ3段階ジャンプする劇的な効果だ。軽量衝撃音に悩んでいるなら、まず床仕上げと天井の改修を検討する価値がある。

面密度から等級を導く計算アルゴリズム

候補手法の比較

床衝撃音の予測には大きく3つのアプローチがある。

  1. FEM(有限要素法)による振動解析 ― スラブ形状・支持条件・材料特性をモデル化して数値シミュレーション。最も精度が高いが、計算コストが高く専用ソフトが必要
  2. 音響伝達マトリックス法 ― 層構造の伝達特性を行列演算で求める。多層床の解析に適するが実装が複雑
  3. 面密度ベースの経験式 + ΔL加算法 ― スラブの面密度からベースの衝撃音レベルを経験式で算出し、仕上げ材の改善量を加算する簡易法。精度はFEMに劣るが、少ないパラメータで概算でき実務の初期検討に十分

本ツールは3番目の「面密度経験式 + ΔL加算法」を採用した。マンション購入者や設計者が手軽に使えることを最優先し、入力パラメータを「スラブ厚・種類・仕上げ・天井」の4つに絞った。改善量ΔLの値は建材メーカーの公表データと日本建築学会の資料に基づいている。

計算フローの詳細

Step 1: 面密度の算出
  m_s = (thickness [mm] / 1000) × 2300 [kg/m3] × densityFactor
  ※ RC: 1.0 / ボイド: 0.75 / SRC: 1.05

Step 2: 重量衝撃音ベース値
  LH_raw = 125 - 30 × log10(m_s)
  LH_base = round_to_nearest_5(LH_raw)

Step 3: 軽量衝撃音ベース値
  LL_base = LH_base + 10

Step 4: 仕上げ・天井による改善量を加算
  LH_final = LH_base + deltaLH_floor + deltaLH_ceiling
  LL_final = LL_base + deltaLL_floor + deltaLL_ceiling

Step 5: 有効範囲にクランプ
  LH_final = clamp(LH_final, 25, 70)
  LL_final = clamp(LL_final, 25, 70)

Step 2の経験式は、コンクリートスラブの質量則に基づく。面密度が大きいほど衝撃音レベルが下がり、面密度が2倍になるとLH値が約9ポイント(30 × log10(2) = 9.03)低下する。係数125と30は、実測データとの回帰で得られた経験的な値だ。

ΔL(改善量)は仕上げ材・天井の種類ごとに固定値として定義している。主な値は以下の通り。

仕上げ材ΔLHΔLL
モルタル・タイル直貼り00
直貼りフローリング(LL-45対応)0-10
二重床(標準)0-10
二重床(高遮音仕様)-5-15
畳(55mm)0-15
カーペット(厚手)0-15

重量衝撃音LHはほとんどの仕上げ材で改善量ゼロ。これはLHが低周波振動であり、床材の弾性層では吸収しきれないためだ。唯一、高遮音二重床は制振ゴム支持脚の効果でLHを5ポイント改善できる。

計算例: 200mm RC + 高遮音二重床 + 吊り天井+吸音材

m_s = (200/1000) × 2300 × 1.0 = 460 kg/m2
LH_raw = 125 - 30 × log10(460) = 125 - 30 × 2.663 = 125 - 79.88 = 45.12
LH_base = round_to_5(45.12) = 45
LL_base = 45 + 10 = 55

deltaLH = -5 (高遮音二重床) + -5 (吊り天井+吸音材) = -10
deltaLL = -15 (高遮音二重床) + -5 (吊り天井+吸音材) = -20

LH_final = 45 + (-10) = 35  → L_H-35(優良)
LL_final = 55 + (-20) = 35  → L_L-35(優良)

面密度460 kg/m2のスラブでベースLH-45、そこに高遮音二重床と吸音天井の合計改善量-10を加えてLH-35。軽量衝撃音もベースLL-55から改善量-20でLL-35に到達する。参考文献として日本建築学会の建築物の遮音性能基準と設計指針が詳しい。

空気伝搬音ツールとの棲み分け ── 床衝撃音特化の理由

音のトラブルには大きく2種類ある。テレビや話し声のように空気を伝わる空気伝搬音と、足音や物の落下のように躯体を振動させる**固体伝搬音(床衝撃音)**だ。

/sound-insulation(音響透過損失シミュレーター)は前者を扱うツールで、壁や床の面密度から透過損失TLを周波数ごとにグラフ化する。一方、本ツールが扱うのは後者 ── スラブ上で発生した衝撃がスラブ自体を振動させ、下階に放射される音だ。物理メカニズムがまったく異なるため、TLの値がいくら高くても子供の飛び跳ねには効かない。

/soundproofing(防音材選定ツール)は壁構成に対して防音材を提案するツールで、こちらも空気伝搬音が主な守備範囲。床衝撃音の等級判定には対応していない。

つまり3つのツールはこう使い分けるのがベストだ。

対象ツール主な指標
壁越しのテレビ音・話し声/sound-insulationTL (dB)
壁・天井の防音材選定/soundproofing遮音等級の目安
上階の足音・物の落下音本ツール(床衝撃音等級判定)LH / LL 等級

空気伝搬音と固体伝搬音、両方を押さえてはじめてマンションの遮音性能を総合評価できる。本ツールで床衝撃音の等級を確認した後に、隣戸間の壁についてはsound-insulationで透過損失を確認する ── この組み合わせが実務でも購入判断でも最も確実な方法だ。


床衝撃音にまつわる豆知識

太鼓現象 ── 二重床が裏目に出るケース

二重床は軽量衝撃音の改善に有効だが、施工条件によっては「太鼓現象」と呼ばれる共振が起きることがある。スラブと仕上げ床の間の空気層がバネのように作用し、特定の周波数帯で音がむしろ増幅されてしまう現象だ。特に63Hz帯で重量衝撃音が悪化する事例が報告されており、「二重床にしたのに前より響く」というクレームの原因になる。防止策は支持脚の防振ゴムの硬度選定と空気層への吸音材充填。二重床だから安心、と短絡しないことが肝心だ。

参考: 日本建築学会 - 建築物の遮音性能基準と設計指針

スラブ面積が大きいほど音は大きくなる

同じスラブ厚でも、梁で囲まれたスラブの面積が大きいほど重量衝撃音は悪化する。面積が2倍になるとLH値が約3〜5dB上がるとも言われる。タワーマンションでスラブ厚250mmを確保していても、ワイドスパン設計で梁間面積が広いと想定ほどの遮音性能が出ないことがある。逆に、小さく区切られた在来工法のスラブは同じ厚さでも有利だ。

参考: 国土交通省 - 住宅の品質確保の促進等に関する法律

軽量衝撃音は仕上げで劇的に変わる

重量衝撃音(LH)がスラブの質量でほぼ決まるのに対し、軽量衝撃音(LL)は床仕上げの弾性に大きく左右される。モルタル直貼りからカーペットや畳に変えるだけでLL値が15dB改善することも珍しくない。15dBの差は人間の聴感で「音量が半分以下」に感じるレベル。リフォームで床材を変えるだけで劇的に改善できるのが軽量衝撃音の特徴だ。

参考: Wikipedia - 床衝撃音


判定精度を上げるための5つのTips

  1. スラブ厚はパンフレットの「最大値」ではなく「最薄部」で入力する ── マンションの販売資料には最厚部の数字が記載されがち。水回り周辺や段差スラブ部分は薄くなるため、図面のスラブ符号リストから最薄部を確認すると実態に近い判定になる。

  2. ボイドスラブは同厚のRCより1ランク不利と考える ── ボイドスラブは中空部で25%ほど面密度が低下する。200mmのボイドスラブは150mmのRC中実スラブとほぼ同等の遮音性能しかない。軽量化メリットとのトレードオフだ。

  3. 天井裏の吸音材はLHに効く唯一の「後付け」手段 ── 重量衝撃音はスラブ質量で決まるため仕上げでは改善しにくい。唯一の例外が下階側の吊り天井+吸音材で、グラスウール50mm充填でLH値を約5dB改善できる。下階のリフォームで天井を触れるなら検討する価値がある。

  4. 直貼りフローリングの「LL-45対応」表記に注意 ── 製品パッケージの「LL-45」はJIS測定に基づく値ではなく、メーカー独自の推定値であることが多い。同じLL-45表記でも製品によって実際の改善量にばらつきがある。

  5. シナリオプリセットを起点にカスタマイズする ── 入力に迷ったら、まずプリセット(一般マンション・高級マンション・タワーマンション・和室)から近いものを選んで結果を確認。そこからスラブ厚や仕上げだけを変えて比較すると、どの要素がどれだけ効くか体感的にわかる。


よくある質問

LH-50とLL-50はどちらが深刻?

数値が同じでも体感の「うるささ」は異なる。LH-50(重量衝撃音)は子供の飛び跳ねや走り回りが「聞こえて気になることがある」レベルで、マンションでのクレームに直結しやすい。LL-50(軽量衝撃音)はスプーン落下やスリッパの歩行音が同程度に聞こえるレベルだが、発生頻度はLHより高い。日本建築学会の推奨値はどちらもL-45以下。どちらか一方でも50を超えるなら対策を検討すべきだ。

ボイドスラブの200mmとRC中実スラブの150mmではどちらが遮音性能が高い?

ほぼ同等、もしくはRC 150mmのほうがわずかに有利だ。ボイドスラブは密度係数0.75が適用されるため、200mm × 0.75 = 実質150mm相当の面密度になる。一方RC中実スラブの150mmは面密度345 kg/m²で、ボイドスラブ200mmの面密度345 kg/m²と同じ値。スラブ厚の数字だけで判断せず、面密度で比較するのが正確だ。

マンション購入前に床衝撃音の等級を確認する方法は?

新築マンションなら設計住宅性能評価書の「音環境に関すること」の項目を確認してみてほしい。住宅品質確保促進法に基づく性能表示制度で、重量衝撃音・軽量衝撃音それぞれの等級が記載されている。中古マンションの場合は竣工図面からスラブ厚と仕上げ仕様を読み取り、本ツールで概算するのが手軽な方法だ。管理組合に図面の閲覧を依頼すれば確認できる。

入力したデータが外部に送信されることはある?

一切ない。すべての計算はブラウザ内のJavaScriptで完結しており、サーバーへのデータ送信は行わない。スラブ厚や仕上げ条件がネットワーク経由で外部に出ることはないので、検討中の物件情報を安心して入力してほしい。

リフォームで重量衝撃音(LH)を改善する方法はある?

上階のスラブ自体を厚くすることは現実的でないため、重量衝撃音の改善手段は限られる。最も効果的なのは下階側の天井に吸音材(グラスウール等)を充填した吊り天井を設ける方法で、LH値を約5dB改善できる。また高遮音仕様の二重床(防振ゴム支持脚+高密度パーティクルボード)でもLHを5dB程度改善できるが、床高が上がるため天井高との兼ね合いが必要だ。


まとめ

床衝撃音等級判定ツールは、スラブ厚・仕上げ材・天井仕様の3条件からLH(重量衝撃音)とLL(軽量衝撃音)の等級を即座に判定するツールだ。マンション購入時の比較検討、リフォーム計画の効果予測、設計段階の概略チェックに活用してほしい。

空気伝搬音(テレビ音・話し声)の遮音性能は/sound-insulation(音響透過損失シミュレーター)で、壁の防音材選定は/soundproofing(防音材選定ツール)で確認できる。床衝撃音と空気伝搬音の両面からチェックすることで、住まいの遮音性能を総合的に把握できるはずだ。

不具合報告や機能リクエストはお問い合わせから気軽にどうぞ。

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Mahiro

Mahiro Appの開発者。マンション購入時にスラブ厚の数字だけでは遮音性能を判断できず、自分で面密度経験式をExcelに組んで物件を比較したのが開発の原点。

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