電流センス抵抗選定ツール

シャント抵抗値・定格電力・オペアンプゲインを一括設計、Kelvin接続要否も判定

測定電流・センス電圧・出力フルスケールを入れると、シャント抵抗値/消費電力/推奨定格/オペアンプゲイン/Kelvin接続要否を一括で算出する。

シナリオプリセット

測定仕様

選定結果

シャント抵抗値 Rshunt

10.00 mΩ

オペアンプゲイン

33.0 V/V

消費電力 Pshunt

1.000 W

= Imax × Vsense

推奨定格(50%ディレーティング)

2.00 W 以上

Kelvin接続2端子でOKRshunt≧10mΩで配線抵抗の影響は小
標準

※ 理想条件での概算。温度係数・自己発熱・寄生インダクタンス・オペアンプオフセットは別途考慮すること。

不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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シャント抵抗の値、毎回アプリノートから写していないか

モータドライバの電流フィードバック、リチウムイオン電池のクーロン積算、DC-DC電源の過電流保護——基板に電流センス回路を載せるたび、シャント抵抗の値で手が止まる。「Vsenseを100mVに取るなら10Aで10mΩ、消費電力は1Wだから定格2W品、後段のゲインは33倍……」頭の中でオームの法則を回し、データシートの例を確認し、アプリノートの式をもう一度転記する。単純な計算なのに、毎回同じことを繰り返している感覚がある。

しかも怖いのは、値を間違えると配線の銅箔抵抗が誤差に乗ってくるゾーンがあることだ。10mΩを切ったあたりから、基板パターンの10mΩ/m級抵抗が無視できなくなる。Kelvin接続にしていなければ、測定値は常に数%ずれる。データシート通りに計算したつもりでも、実測すると合わない——電流センスの現場でよくある話だ。

このツールは、その「毎回の計算」と「Kelvin接続要否判定」を1画面にまとめた。Imax・Vsense・Vrefの3つを入れれば、Rshunt・消費電力・推奨定格・オペアンプゲイン・Kelvin接続要否が一気に出る。設計の最初の5分、データシートを開く前の一次検討に使ってほしい。

なぜ作ったのか

きっかけは、小型ロボットのBLDCドライバを設計していたときのことだ。FET下流にローサイドシャントを置き、オペアンプで増幅してマイコンADCに入れる、というよくある構成。ピーク電流20Aを3.3V ADCフルスケールに合わせたくて、Vsense=150mVを目標に7.5mΩを選んだ。計算上は問題ない。

ところが実装してみると、実測電流が想定より常に8%ほど低い。オシロで波形を見ても綺麗だし、オペアンプのオフセットでもない。原因を追い詰めていくと、シャント抵抗の両端を基板のGNDベタから拾っていたことだった。シャント付近のベタが数mΩあり、その電圧降下が測定ループに回り込んでいた。4端子(Kelvin)接続にやり直したら、誤差は0.5%以下に収まった。

この失敗以降、「Rshuntが10mΩを切ったら配線抵抗を疑え」は自分の中の鉄則になった。が、設計の初期段階ではつい忘れる。Vsenseを大きく取れば精度が出るから大きくしたい、でも消費電力が増える、定格を上げると物理サイズも増える——そんなトレードオフに気を取られている最中に、Kelvinの要否までは頭が回らない。

既存の電子設計ツールを探してみても、シャント抵抗だけに特化したものは意外と少ない。アプリノートのExcelファイルがあったり、メーカーのセレクションガイドがあったりはするが、「値・電力・ゲイン・Kelvin要否」を1画面で同時に示すものは見当たらなかった。それなら自分で作ろう、となったのがこのツールの出発点だ。ついでにオペアンプ側の必要ゲインも出して、後段回路の設計(オペアンプ回路計算)へスムーズにつなげられるようにした。

電流センスの基本原理

電流センス抵抗 とは

電流を測る最も素直な方法は、抵抗に流して電圧降下を読むことだ。オームの法則 V = I × R を逆に使い、既知のRと測定したVから I = V/R を得る。この「電流測定のための小さな抵抗」をシャント抵抗あるいはセンス抵抗と呼ぶ。ホールセンサやロゴスキーコイルのような非接触式に比べて安く・速く・直流も測れる一方、回路に直接挿入するので電力損失が発生する。

たとえば10Aを流す回路に10mΩのシャントを入れると、両端には100mVの電圧が出る。この100mVをオペアンプで増幅してマイコンのADCに入れれば、ソフトウェアから電流値を読み取れる。ただしシャント自身が I²R = 10² × 0.01 = 1W を熱として捨てる。ここが非接触式にはない制約になる。

ローサイドセンスとハイサイドセンスの違い

シャントを入れる位置によって、回路は2種類に分かれる。

  • ローサイドセンス: 負荷とGNDの間にシャントを挿入する。両端電圧がGND近傍なので、安価なシングル電源オペアンプ(LM358等)で増幅できる。反面、負荷のGNDが浮くため、短絡検出やモータ下流の過電流保護に使いにくい場面がある。
  • ハイサイドセンス: 電源とスイッチの間にシャントを挿入する。負荷GNDはシステムGNDに固定されるので、短絡や地絡を含めてあらゆる異常電流を検出できる。ただし同相電圧が電源電圧まで跳ね上がるため、専用のハイサイド電流センスアンプ(INA240, MAX4080等)が必要になる。

用途で選ぶとよい。過電流保護や短絡検出が主目的ならハイサイド、モータのFOC制御やDC負荷のモニタリングならローサイドが定番だ。

Kelvin接続(4端子測定)とは

シャント抵抗が10mΩを切るあたりから、基板配線やハンダ付けの接触抵抗が測定精度に直接影響するようになる。通常の銅箔パターン(35μm厚、1mm幅)は1mで約0.5mΩ、100mm長でも0.05mΩある。これが1mΩのシャントと直列になれば、5%もの系統誤差が生まれる。

これを避けるために、抵抗本体の両端から測定専用の別配線を引き出す。電流経路(Force)と電圧検出経路(Sense)を分離するこの技法がKelvin接続、別名4端子測定だ。センス側には電流がほとんど流れないため、配線抵抗による電圧降下が発生せず、抵抗本体の電圧だけを正確に拾える。Wikipedia: 四端子測定法に詳しい。

高精度用途では最初から4端子構造を持つ専用シャント(Vishay WSLP、Ohmite LVKシリーズ等)を使う。実装時もパッド設計を専用ライブラリで行い、センスパッドと電流経路を物理的に分離することが重要だ。

選定を誤ると何が起きるか

シャント抵抗選びを誤ったとき、現場で起きるトラブルは大きく3系統ある。

1) 測定精度の悪化。Vsenseを小さく取りすぎる(例: 10mV)と、オペアンプのオフセット電圧(数百μV〜数mV)が相対的に大きくなり、SNRが一桁悪化する。たとえば10mVフルスケールに対してオフセット1mVだと、10%の誤差が常時乗る。逆にVsenseを大きく取りすぎると消費電力が膨らむ。50〜200mVが実用上のスイートスポットで、このツールもその範囲を想定している。

2) シャント自身の焼損・抵抗値ドリフト。消費電力の50%ディレーティングを守らないと、自己発熱でシャントの温度が上がり、温度係数(典型50〜100ppm/℃)分だけ抵抗値が変動する。100℃上昇すれば最大1%の誤差だ。さらに定格いっぱいで使い続ければ、ハンダ接合部が劣化して最悪オープン故障に至る。モータ制御ではシャント焼損=フィードバック喪失=暴走、という最悪シナリオもありうる。

3) Kelvin接続忘れによる系統誤差。前述のとおり10mΩ未満のシャントで2端子実装すると、配線抵抗が直接加算される。キャリブレーションで吸収する手もあるが、温度で配線抵抗も変わるため根本解決にならない。JIS C 1102-2(電流計のJIS)でも、分流器の接続端子と電位端子を分離することが基本原則として示されている。

とくに車載・産業機器分野では、電流センスの誤差は保護回路の閾値誤差に直結する。IEC 61508機能安全の観点でも、電流測定チェーンの系統誤差分析は必須事項だ。設計初期に「この値で本当に精度が出るか」を見積もっておくと、後工程での手戻りを大幅に減らせる。

活躍する場面

BLDC・PMSMモータ制御。FOC制御ではU相・W相の下流にローサイドシャントを置き、2シャント式でdq軸電流を再構成する。Vsense=150mV、10〜50A級が定番レンジ。

バッテリ監視(BMS)。リチウムイオン電池の充放電をクーロン積算するため、パック最下流に数mΩのシャントをハイサイド実装する。1A以下から100A超まで電流レンジが広く、Kelvin接続はほぼ必須だ。

DC-DC電源の過電流保護。スイッチング素子下流に小さなシャントを入れ、ピーク電流リミット回路へフィードバックする。応答速度が重要で、巻線型より無誘導のメタルフィルム・メタルクラッドを選ぶ。

電子工作・自作テスタ。USB-PDのネゴシエーション検証、LiPoの放電カーブ測定、LED駆動電流の確認など。数十mA〜数A級なら0.1〜1Ω級の普通の抵抗で十分実用になる。

産業計装・データロガー。4-20mAループ電流の受信抵抗(250Ω固定)や、熱電対アンプの冷接点補償回路など、小電流を電圧化する場面でもシャント選定の考え方は同じだ。

基本の使い方

  1. 最大測定電流 Imax を入力する。モータ定格、バッテリ満充電電流、保護回路のトリップ閾値など、回路に流れうる最大値を入れる。過渡ピークも考慮する。
  2. 目標センス電圧 Vsense を入力する。50〜200mVが実用レンジ。オペアンプのオフセットが気になるなら大きめ、消費電力を抑えたいなら小さめに。
  3. 増幅出力フルスケール Vref を入力する。ADCが3.3V系なら3.3、5V系なら5、車載12V系のセンスアンプなら12など。後段ADCまたはオペアンプ出力の最大振幅だ。

結果として、シャント抵抗値・消費電力・推奨定格(50%ディレーティング)・オペアンプ必要ゲイン・Kelvin接続要否が同時に表示される。Rshuntが10mΩを切ると自動的にKelvin接続推奨の警告が出る。

具体的な使用例

ケース1: ローサイド 10A ADC入力(3.3V系)

入力: Imax=10A, Vsense=100mV, Vref=3.3V 結果: Rshunt=0.0100Ω, Pshunt=1.000W, 推奨定格=2.00W, ゲイン=33.0, Kelvin=不要(境界値)

小型DCモータや3.3Vマイコン直結のローサイドセンスで最もよく使う組み合わせ。10mΩ・2W定格のメタルクラッド抵抗がぴったりハマる。ゲイン33倍はLM358でも余裕で実現できる。Rshuntがちょうど10mΩなので、高精度を狙うなら念のためKelvin接続しておきたい。

ケース2: ハイサイド 2A センスアンプ(5V系)

入力: Imax=2A, Vsense=200mV, Vref=5V 結果: Rshunt=0.1000Ω, Pshunt=0.400W, 推奨定格=0.80W, ゲイン=25.0, Kelvin=不要

USB-PDや5V系DC-DCの出力電流モニタに典型的。100mΩなら1W定格の汎用チップ抵抗(2512サイズ)で十分。ハイサイドなのでINA180等の専用アンプを使う想定だ。Vsenseを200mVと大きめに取っているのでSNRが稼げる。

ケース3: 50A大電流モータ(3.3V ADC)

入力: Imax=50A, Vsense=75mV, Vref=3.3V 結果: Rshunt=0.00150Ω (1.5mΩ), Pshunt=3.75W, 推奨定格=7.50W, ゲイン=44.0, Kelvin=必須

産業用サーボや大型BLDCのフェーズ電流センス。1.5mΩは配線抵抗と同オーダーなのでKelvin接続が絶対条件。消費電力3.75Wは発熱が大きく、メタルクラッド10W定格品または専用シャントバーを推奨。ゲイン44倍は一般的なハイサイドセンスアンプ(INA240 A2: 50V/V)でほぼカバーできる。

ケース4: 0.1A低電流モニタ

入力: Imax=0.1A, Vsense=100mV, Vref=3.3V 結果: Rshunt=1.000Ω, Pshunt=0.0100W, 推奨定格=0.02W, ゲイン=33.0, Kelvin=不要

LED駆動電流やセンサー供給電流の監視。1Ωなら0603サイズの1/10W抵抗で余裕。Kelvin接続は不要、普通のパッドでOK。低消費電力用途ではVsenseを100mV取ってもほぼ熱にならないので、精度優先で大きめに設定できる。

ケース5: バッテリ1A クーロン積算

入力: Imax=1A, Vsense=50mV, Vref=2.5V 結果: Rshunt=0.0500Ω, Pshunt=0.0500W, 推奨定格=0.10W, ゲイン=50.0, Kelvin=不要

小型IoT機器のバッテリ残量管理。50mΩ・1/4W定格で余裕。Vsenseを50mVに抑えて常時損失を最小化する設計だ。ゲイン50倍はINA199やMAX9938等の専用低電流センスアンプで対応。長時間動作機器では、この数十mWの損失さえ積算すると電池寿命に効いてくる。

ケース6: 20Aモータ中電力(5V系)

入力: Imax=20A, Vsense=150mV, Vref=5V 結果: Rshunt=0.00750Ω (7.5mΩ), Pshunt=3.00W, 推奨定格=6.00W, ゲイン=33.3, Kelvin=必須

電動工具や小型EVのモータ電流センス。7.5mΩで10mΩを切るのでKelvin接続が必須。3Wは普通のチップ抵抗では厳しく、メタルクラッド5W〜10W品または4端子専用シャントを選ぶ。ゲイン33倍は5V系の汎用ハイサイドセンスアンプで問題なく実現できる。

6ケースを並べると、Vsenseが小さい→Rshuntが小さい→Kelvinが必要になるという一貫した傾向が見える。「小電流だから小さい抵抗」ではなく、「大電流でもVsenseを大きく取れば抵抗値は大きくなる(でも消費電力も大きい)」というトレードオフの構造が、数字で実感できるはずだ。

仕組み・アルゴリズム

採用した計算手法と代替案

シャント抵抗の設計式にはいくつかの流儀がある。

  • 方式A(本ツール採用): Vsense駆動。目標Vsenseを先に決め、Rshunt = Vsense / Imax で逆算する。後段アンプのダイナミックレンジから逆算するのに向く。
  • 方式B: 消費電力駆動。許容損失Pmaxを先に決め、Rshunt = Pmax / Imax² で算出する。熱設計主導の場合に有効だが、Vsenseが成り行きで決まりSNRが予測しにくい。
  • 方式C: 抵抗値固定。手持ちの在庫抵抗(10mΩ等)を先に決め、Vsenseとゲインをそれに合わせる。試作・ホビー用途。

本ツールでは方式Aを採用した。理由は、アプリノートやメーカーのセレクションガイドがほぼすべてこの流儀で書かれており、エンジニアの思考順序と一致するからだ。後段のADC・センスアンプの仕様(フルスケール電圧)と、オペアンプオフセットとのSNR(Vsenseの下限)から、自然にVsenseが決まる。そこからRshuntを逆算するのが最も素直な設計フローになる。

計算フローの実装詳細

5つの式だけで完結する。単位換算(mV→V)だけ注意すれば、あとはオームの法則そのものだ。

// 入力: imax [A], vsenseMv [mV], vref [V]
const vsense = vsenseMv / 1000;           // mV → V
const Rshunt = vsense / imax;             // [Ω]
const Pshunt = imax * vsense;             // [W] = I²·R = I·Vsense
const PratedMin = 2 * Pshunt;             // 50%ディレーティング
const gain = vref / vsense;               // オペアンプ必要ゲイン [V/V]
const kelvinRequired = Rshunt < 0.010;    // 10mΩ未満でKelvin推奨

消費電力は I²RI·Vsense の2つの書き方があるが、本ツールでは後者を採用している。Vsenseを先に決める設計フローと一致し、単位換算がひとつ減るからだ。両者は数学的に同値(I²·(V/I) = I·V)で、どちらでも結果は変わらない。

Kelvin接続閾値10mΩの根拠

閾値を10mΩに置いた理由は、一般的な基板配線抵抗と同オーダーになる境界だからだ。35μm厚銅箔・1mm幅パターンの抵抗率は約0.5mΩ/cm。シャント両端から5cm配線すれば2.5mΩ、往復で5mΩ。これは10mΩシャントの50%に達し、無視できない。一方100mΩシャントに対しては5%で、1%精度を狙わなければ許容範囲内だ。この「1桁違えば無視できる、同オーダーなら対策必須」という目安が10mΩという切れの良い数字につながっている。

計算例(ステップバイステップ)

ケース3(50A・75mV・3.3V)で実際にたどってみよう。

// Step 1: 単位換算
vsense = 75 / 1000 = 0.075 [V]

// Step 2: シャント抵抗値
Rshunt = 0.075 / 50 = 0.00150 [Ω] = 1.5 [mΩ]

// Step 3: 消費電力
Pshunt = 50 × 0.075 = 3.75 [W]
       = 50² × 0.00150 = 3.75 [W]  (検算, 一致)

// Step 4: 推奨定格
PratedMin = 3.75 × 2 = 7.50 [W]

// Step 5: 必要ゲイン
gain = 3.3 / 0.075 = 44.0 [V/V]

// Step 6: Kelvin判定
Rshunt = 0.00150 < 0.010 → kelvinRequired = true

手計算でも30秒もかからない。**このツールの価値は「計算が難しいから」ではなく「6つの数字を一瞬で揃え、トレードオフを並べて見せるから」**にある。設計の最初の5分を3秒に縮める——電子回路の数多ある設計判断のなかで、シャント抵抗選定の部分だけでも、そういう役目を果たしたい。

他ツールとの違い

「シャント抵抗 選定」で検索すると、海外ICメーカーのアプリノート(TI、Analog Devices、Maxim等)が上位に並ぶ。式自体はどれも R = Vsense / Imax の一行で終わるから、電卓を叩けば誰でも答えは出る。だが実際の設計では、抵抗値だけで仕事は終わらない。消費電力、定格ディレーティング、後段オペアンプのゲイン、そしてKelvin接続の要否まで、判断しなければならない項目がいくつもある。

本ツールの特徴は、これらを一画面にまとめたこと。Imax・Vsense・Vrefの3値を入れれば、Rshunt・Pshunt・推奨定格・ゲイン・Kelvin要否が同時に出る。式を暗記する必要はないし、アプリノートのPDFを毎回開く手間もない。

さらに、後段のオペアンプ回路設計には /opamp-circuit-calc が連携する。本ツールで出たゲインをそのまま非反転増幅回路のR1/R2比に落とし込めるので、センス抵抗→増幅回路→ADC の設計チェーンが途切れない。抵抗のカラーコード確認には /resistor-color-code を使うと、基板実装時の確認作業もワンストップで済む。

アプリノートは読みやすい反面、製品ラインナップへの誘導が目的なので、手元のE系列抵抗で済ませたい汎用設計には情報が重い。本ツールは「手元の部品箱から選ぶ」視点で作っている。

豆知識・読み物:マンガニンとコンスタンタンの歴史

シャント抵抗に使われる金属材料には、「マンガニン(Manganin)」と「コンスタンタン(Constantan)」という独特の名前がついている。どちらも19世紀末に開発された抵抗合金で、温度が変わっても抵抗値がほとんど変わらないという性質を持つ。

マンガニンは1892年、ドイツのエドワード・ヴェストン(Edward Weston、電流計で有名なウェストン電機の創業者)が発明した銅・マンガン・ニッケル合金だ。温度係数が ±15 ppm/℃ と極めて小さく、標準抵抗器や精密シャントの定番材料になった。名前は主成分のマンガン(Mangan)に由来する。100年以上経った今でも、国家標準級の標準抵抗器はマンガニン線を油浸した構造で作られている(参考: Wikipedia: Manganin)。

一方のコンスタンタンは銅55%・ニッケル45%の合金で、1887年にドイツの物理学者エドワード・ヴェストンがマンガニンより先に発明している。こちらは温度係数が ±40 ppm/℃ とマンガニンに劣るが、銅との組み合わせで大きな熱起電力を生むため、T型熱電対の材料として現代でも広く使われる。名前は「constant(一定)」の意味。電気の単位がまだ混沌としていた時代、抵抗が変わらない金属 は発電機や電流計の校正に不可欠な発明だった。

現代のチップシャント抵抗(1206、2512等のチップ型)や4端子メタルクラッド抵抗は、表面実装向けにこれらの合金を薄板・細線に加工したものだ。材料自体は100年変わっていない。電流を正確に測るという一見地味な仕事が、19世紀の冶金学者たちの執念の上に成り立っていると考えると、抵抗選定もちょっと楽しくなる。

Tips

  • センス電圧は50-200mVを狙え: Vsenseが小さすぎるとオペアンプのオフセット電圧(数mV級)が支配的になり、SNRが悪化する。逆に大きすぎると消費電力が増える。低消費狙いなら50mV、精度重視なら100-200mVが定番。
  • Kelvin(4端子)パターンは"抵抗の真下"で分岐: シャントのランドに太い電流パスと細いセンスパスを描くとき、センスパスはシャント抵抗体の直下からT字に分岐させる。電流ランド側で分岐するとランドの銅箔抵抗を拾い、せっかくのKelvin接続が意味をなさなくなる。
  • チップ1個でダメなら並列で放熱稼ぎ: 2W超のシャントは1個で済ませず、同じ値を2個並列にして1個あたりの発熱を半分にする手がある。抵抗値は半分になるのでVsenseを調整すること。
  • 逆極性・サージを忘れない: バッテリ回路のシャントは逆接続や突入電流で過電圧・過電流に晒される。定格電力だけでなく、パルス耐量(Peak Power Rating)もデータシートで確認する。
  • センスラインはツイスト&差動で引く: シャントからオペアンプまでのセンス信号は、隣接する大電流ラインのノイズを拾いやすい。平行に短く、できれば差動増幅器の+/-入力まで2本一緒に引く。

FAQ

ハイサイドとローサイド、どちらを選ぶべき?ローサイド(GND側)は回路がシンプルでコモンモード電圧0Vだから汎用オペアンプで済む反面、GNDが持ち上がる問題がある。ハイサイド(電源側)は負荷がGND直結でショート検出もできるが、高いコモンモード電圧に耐える専用センスアンプ(INA240、MAX4080等)が必要。モータ制御の相電流やバッテリ残量計測はハイサイド、DC-DCコンバータの出力電流監視や実験用計測ならローサイドが定番だ。
シャント抵抗の精度1%は実際どれくらいの誤差になる?1%品を使うと、測定電流にもそのまま1%誤差が乗る。10Aなら±100mAだ。これに温度係数(50 ppm/℃ × 50℃ = 0.25%)、オペアンプオフセット、ADC量子化誤差が加わるので、**実力値はトータル1.5-2%程度**と見込んでおくのが安全。バッテリ残量計測など積算誤差が効く用途では0.1%品+マンガニンを推奨する。
なぜ10mΩを境にKelvin接続が必要になる?プリント基板のランドや配線の抵抗は、1オンス銅でおおよそ1mΩ/mm²オーダー、はんだ付け部の接触抵抗も数mΩある。シャント本体が10mΩだと、配線抵抗が相対的に10-30%の誤差を作ってしまう。4端子(Kelvin)接続なら電流経路とセンス経路を分離できるので、**センス線には電流がほぼ流れず電圧降下も発生しない**。100mΩ以上なら2端子でも実用上問題ない。
推奨定格を"消費電力×2"にしているのはなぜ?抵抗器メーカーの多くは、**定格電力の50%以下で使えば温度係数・抵抗値ドリフト・長期信頼性が良好**とするデータシートを出している。50%ディレーティングは電子回路設計の業界慣習で、ミリタリー規格(MIL-HDBK-217)でも同様の考え方が採られている。発熱による抵抗値変化も抑えられるので、精度を要求する電流計測では特に重要だ。
E24系列に合わせて丸めたいが、どの値を選べば良い?計算値が例えば0.033Ωなら、E24系列で最も近いのは0.033Ω(存在する)だが、手元にないなら0.030Ωか0.036Ωを選ぶ。**抵抗を下げるとVsenseが下がる=SNR悪化、上げるとPshuntが増える**のでトレードオフ。本ツールは計算値を丸めず表示しているので、ユーザー側で近い値を選び、再度Vsenseを逆算してゲインを調整してほしい。E24/E96丸め機能は今後追加予定だ。

まとめ

シャント抵抗の選定は、抵抗値・定格電力・ゲイン・Kelvin要否という4つの判断を同時に行う作業だ。本ツールで一括設計を済ませたら、後段の増幅回路は オペアンプ回路計算 でR比を決め、基板実装時の抵抗確認には 抵抗カラーコード を使ってほしい。3つ組み合わせれば、電流計測回路の設計は一気通貫で片付く。気づいた点や要望があれば、お問い合わせ から知らせてもらえると嬉しい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。電流センスで配線抵抗に8%持っていかれた過去から生まれたツール。最初の5分を3秒に縮めたい。

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