ボアアップの排気量・圧縮比・車両区分計算

ボアアップ後の排気量から原付一種〜小型二輪の区分・免許・手続きを判定し、圧縮比と戻すガスケット厚さを出す

ノーマルとボアアップ後のボア・ストロークを入れると、排気量と車両区分(原付一種〜小型二輪)・免許・手続き、圧縮比の変化と元に戻すガスケットの厚さが出る。

ノーマルのエンジン(プリセット・ホンダ公表諸元)

ノーマルボアアップ後
ボア [mm]
ストローク [mm]

ボア・ストロークは30〜100mm。ボアアップ後のボアにはキットのピストン径を入れる(プリセットを押すとノーマルと同じ値に戻る)。ボアアップ後のストロークは空欄=ノーマルと同じ(クランクを替えるときだけ入れる)

圧縮比の出し方

6〜15。諸元表の「圧縮比」。空欄なら排気量と区分だけ出す

計算結果

ボアアップ後71.8 cc
原付二種(黄)

排気量(ノーマル)

49.5 cc

排気量(ボアアップ後)

71.8 cc

増加率

+45.2%

ボア/ストローク比 0.94 → 1.14

項目ノーマルボアアップ後
区分原付一種原付二種(乙)
ナンバー白黄
免許原付免許(普通免許・二輪免許でも可)小型限定普通二輪免許 以上
軽自動車税(標準税率)2,000円/年2,000円/年
法定最高速度30km/h・二段階右折の対象60km/h

手続き

市区町村の窓口で今のナンバーを廃車し、新しい排気量で登録し直してナンバー(標識)を交付し直す。自賠責保険・任意保険の登録内容も変更する。細かな手順は自治体・運輸支局で違うので、窓口で確認する

次の境界(黄ナンバーの上限): 90ccまであと 18.17 cc

圧縮比(ノーマル)

10.00

燃焼室側 5.50 cc

圧縮比(ボアアップ後)

14.07

見積もり(上限の目安)

上昇

+4.07

元の圧縮比に戻すのに足す容積

+2.49 cc

ディッシュ・燃焼室の加工・ガスケットのどれで足してもよい(負は減らす)

ガスケットで戻すなら

1.43 mm 厚く

ヘッド・ピストン頭部・ガスケットをノーマルのまま、ボアだけ広げたと仮定した上限の目安。キットのピストンが皿形(ディッシュ)なら実際はこれより低い。正確に出すには燃焼室容積を測って「燃焼室容積から計算」へ

50ccを超えると原付免許では運転できない(小型限定普通二輪免許以上が要る)。原付免許のまま乗ると無免許運転になる。法定最高速度30km/h・二段階右折(片側3車線以上の信号交差点など)の対象からも外れる

2025年4月から、125cc以下で最高出力4.0kW以下の二輪は「新基準原付」として原付一種(白ナンバー)に含まれる。ただし登録には型式認定番号か、国土交通省の最高出力確認(確認実施機関での試験と、出力を抑える装置)の確認済書が要る。ボアアップしただけの車両は原付二種として登録する

圧縮比が 4.07 上がる。純正の空冷原付エンジンは9〜10前後(プリセットの公表値)。キットの指定燃料(ハイオク指定か)と点火時期を確認し、指定の圧縮比になるようピストン・ガスケットを組む

区分の判定は法令の排気量の境界にもとづく目安で、登録や届出の可否は市区町村・運輸支局(軽自動車検査協会)の判断による。ボアアップした車両で公道を走るには、保安基準や排出ガス規制に適合し、排気量に合った登録と免許・自賠責保険が必要。圧縮比の見積もりはヘッドとピストンの形がノーマルのままと仮定した上限の目安で、キットの指定値を優先してほしい。

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モンキーに47mmのピストンを入れたら、ナンバーは何色になる?

ボアアップキットの商品ページを眺めていると、だいたい同じところで手が止まる。「これを組んだら何ccになるのか」「白ナンバーのままでいいのか、黄色に変えるのか」「圧縮比が上がると書いてあるけど、どれくらいなのか」。排気量はボアとストロークから出せる、とは聞く。でも、その排気量が法令のどの区分に入り、免許はどれが要り、税金はいくらで、手続きの窓口はどこになるのかまで、一度に教えてくれるものはなかなか見つからない。

たとえばモンキー(Z50J)。ボア39.0mm×ストローク41.4mmの49ccに、ボア47mmのピストンを入れると71.8ccになる。50ccを超えたので原付一種(白)から原付二種の乙(黄)に変わり、原付免許では乗れなくなる。軽自動車税は2,000円のまま。圧縮比は公表値の10から、ヘッドもピストンの形もそのままなら14.07まで上がる計算で、元の10に戻すにはガスケットを1.43mm厚くする必要がある。ここまでが、ボア径をひとつ入れ替えるだけで決まる数字だ。

このツールは、ノーマルとボアアップ後のボア・ストロークを並べて入れるだけで、排気量・車両区分・免許・軽自動車税・手続き・圧縮比をノーマルと横並びで出す。キットを注文する前、組み付ける前に、数字で一度確かめておきたい人のための計算機だ。

なぜ作ったのか — 排気量は出せても「その先」が出てこない

スプロケットの丁数を変えるシミュレーターを作ったあと、駆動系のカスタムをひと通り試した人が次に手を出すのはエンジンだ、と感じるようになった。足回りの次は心臓部。原付クラスなら、その入口はほぼ間違いなくボアアップになる。

ところが、調べてみると道具が足りない。「ボアアップ 排気量 計算」で探して出てくる計算機は、探した範囲ではどれも排気量の数字を出したところで終わっていた。知りたいのはその先だ。71.8ccになったら免許は何が要るのか。黄色ナンバーとピンクナンバーは何が違うのか。125ccを超えたら役所ではなく運輸支局に行くのか。これらは別々の解説を何本も読んで、自分で突き合わせるしかなかった。

圧縮比はもっと手薄だった。「ボアを広げると圧縮比が上がる」「ハイオク指定になることがある」とは書いてあるのに、どれだけ上がるかの数字がない。正確に出すには燃焼室の容積をビュレットで測る必要があり、それはエンジンを開けた人にしかできない。キットを選んでいる段階の人には、そもそも測りようがない。

行き詰まっていたとき、メーカーの諸元表には必ず「圧縮比」が載っていることに気づいた。圧縮比とボア・ストロークが分かれば、燃焼室側の容積は割り算一回で逆算できる。ヘッドとピストンの形がノーマルのままなら、ボアを広げてもその容積はほとんど変わらない。つまり燃焼室を測らなくても、「最大でここまで上がる」という上限の目安は出せる。

この気づきを軸に、排気量から区分・免許・手続きまでの一続きと、圧縮比の見積もり、元の圧縮比に戻すガスケットの厚さの逆算を一画面にまとめた。燃焼室を実際に測った人のためには、測った値から積み上げて計算する出し方も用意してある。キット選びの段階でも、組み付けの直前でも使える道具にしたかった。

排気量と圧縮比の仕組み — ボア・ストロークと燃焼室の容積

排気量 計算 ボア ストローク — 筒の体積を求めるだけ

エンジンの排気量は、ピストンが一番下(下死点)から一番上(上死点)まで動くあいだに押しのける体積のことだ。シリンダーは円筒なので、底面積×高さで求まる。底面積はボア(シリンダーの内径)を直径とする円、高さはストローク(ピストンが動く距離)になる。

1気筒の行程容積 Vs [cc] = π/4 × ボア² × ストローク ÷ 1000
総排気量 [cc]           = Vs × 気筒数

// ボア・ストロークは mm。mm³ を 1000 で割ると cm³(=cc)

モンキー(Z50J)のボア39.0mm×ストローク41.4mmを入れると49.46cc。諸元表の「総排気量 49cm³」と、小数点以下を切り捨てた形で一致する。スーパーカブ50(37.8×44.0mm)なら49.38cc、スーパーカブ110(50.0×55.6mm)なら109.17cc、モンキー125(52.4×57.9mm)なら124.86ccで、どれも公表値と同じ整数部になる。排気量という量の定義は 排気量 - Wikipedia にもまとまっている。

ボアは2乗、ストロークは1乗で効く

式を見ると、ボアは2乗、ストロークは1乗で入っている。この差が、ボアアップという改造の性格を決めている。

モンキーのボアを39.0mmから47.0mmに広げると、ボアの比は約1.21倍、その2乗で約1.45倍。排気量は49.46ccから71.83ccへ45.2%増える。一方、ボアは39.0mmのままクランクを替えてストロークを41.4mmから49.5mmへ伸ばすと、伸ばした量は8.1mmとボアの増分(8.0mm)とほぼ同じなのに、排気量は59.13cc、増加は19.6%にとどまる。シリンダーとピストンを替えるだけのボアアップが、クランクまで替えるストロークアップより手軽で、しかもよく効くのはこのためだ。

裏を返せば、ボアの0.1mmが無視できない。モンキーのボアを39.2mmにすると49.96cc、39.3mmにすると50.22cc。わずか0.1mmの差で50ccの線をまたぐ。区分の判定で端数を雑に扱えない理由はここにある。

圧縮比とは — 注射器の先に残る空間

圧縮比は、ピストンが一番下にあるときのシリンダー内の体積を、一番上まで上がったときに残る体積で割った値だ。上死点で残る空間を、ここでは燃焼室側の容積 Vc と呼ぶ。

圧縮比 ε = (Vs + Vc) ÷ Vc
// Vs: 1気筒の行程容積 Vc: 上死点で残る燃焼室側の容積

たとえるなら注射器だ。プランジャーを押し切っても、先端の細い部分にはわずかに空気が残る。この残った空間が燃焼室にあたる。筒を太くすると押しのける体積は増えるのに、先端に残る空間の大きさは変わらない。押し縮める前と後の比が大きくなる——これが、ボアアップで圧縮比が上がる理屈だ。

モンキーの場合、公表の圧縮比10と49.46ccから逆算すると、燃焼室側の容積は1気筒あたり約5.50cc。小さじ1杯ほどの空間に、50cc近い混合気を押し込んでいることになる(逆算の手順は仕組みの節で扱う)。式の形は 圧縮比 - Wikipedia の定義と同じだ。

圧縮比 計算 ガスケット — 燃焼室側の容積は4つの部分の合計

上死点で残る空間は、ヘッドのくぼみだけではない。次の4つを足したものになる。

Vc = 燃焼室容積(ヘッド側のくぼみ)
   + ガスケットの穴の容積  π/4 × ガスケット内径² × 厚さ ÷ 1000
   + デッキクリアランス分  π/4 × ボア² × デッキクリアランス ÷ 1000
   + ピストン頭部の容積    くぼみ(ディッシュ)は+、盛り上がり(ドーム)は−

ガスケットはシリンダーとヘッドの間に挟む薄い板で、その穴の部分も燃焼室の一部になる。デッキクリアランスは、上死点でピストンの頂面がシリンダーの上面からどれだけ下がっているか(突き出していれば負)。ピストンの頂面がくぼんでいればその分だけ空間が増え、盛り上がっていれば減る。

この4つのうち、組む人が後から選べるのはガスケットの厚さだけだ。燃焼室はヘッドの形で、ピストン頭部はピストンの形で、デッキクリアランスはシリンダーとクランクの寸法で決まる。ガスケットなら厚いものに替えるだけで空間が増え、圧縮比が下がる。ボアアップで上がった圧縮比を元に戻す手段として、ガスケットの厚さを逆算できるようにしてあるのはこのためだ。

実務での重要性 — 50cc・90cc・125cc・250ccで何が変わるか

50ccを超えると原付免許では乗れない

二輪の区分の境界は、道路運送車両法施行規則 第1条で決まっている。原動機付自転車は二輪なら総排気量0.125L以下、そのうち第一種は0.050L以下(二輪で最高出力4.0kW以下なら0.125L以下)で、それ以外が第二種だ。免許の側の 道路交通法施行規則 第1条の2も、一般原動機付自転車を同じ0.050L(二輪で最高出力4.0kW以下は0.125L)で区切っている。

境界は「以下」なので、50ccちょうどまでは原付一種、それを少しでも超えれば原付二種になる。原付二種を運転するには、小型限定普通二輪免許(0.125L以下の普通自動二輪車に限る免許)以上が要る。原付免許しか持っていない人が50ccを超えたバイクに乗れば、無免許運転だ。ボアアップした本人は「元は50ccの原付」という感覚のままなので、ここがいちばん怖い落とし穴になる。原付一種だけに掛かる決まり——一般道路での法定最高速度30km/h(道路交通法施行令 第11条)と、片側3車線以上の信号交差点などでの二段階右折(道路交通法 第34条第5項)——からも外れるので、乗り方そのものが変わる。

黄とピンク、軽二輪、小型二輪の分かれ目

原付二種のナンバーが黄(90cc以下)とピンク(90cc超)に分かれるのは、地方税法 第448条の税率区分(0.09L)に合わせて、市区町村が交付する標識の色を分けているからだ。軽自動車税の標準税率は50cc以下も50cc超90cc以下も2,000円、90cc超が2,400円で、差は400円。免許はどちらも小型限定普通二輪以上で変わらない。90ccの線は、税額と標識の色が変わるだけの境界だと言える。

125ccを超えると性質が変わる。原付ではなく軽二輪(道路運送車両法施行規則 別表第一で、軽自動車の二輪=0.250L以下)になり、手続きの窓口が市区町村から運輸支局に移る。免許は普通二輪以上、税は3,600円。250ccを超えると小型二輪になり、車検を受ける区分に入る(税は6,000円)。さらに400ccを超えると、区分は小型二輪のままでも免許が大型二輪に変わる。区分をまたぐボアアップは、登録・免許・保険をまとめて変える作業でもある。

ボアアップ車は新基準原付にはならない

2025年4月1日から、125cc以下で最高出力4.0kW以下の二輪は「新基準原付」として原付一種に含まれるようになった。ここで「排気量が増えても出力が低ければ白ナンバーのままでいいのでは」と考えたくなるが、そうはいかない。新基準原付として登録するには、型式認定番号か、国土交通省の最高出力確認の確認済書・シールが要る。最高出力確認は確認実施機関での試験を受けるもので、出力を抑える装置が容易に改変・取り外しできない構造であることが要件になっている(最高出力確認の申請に関する手引き)。ボアアップした車両は、出力を申告すれば白ナンバーになる、というものではない。もともと新基準原付として登録された車両でも、排気量を変えれば確認を受けた内容と一致しなくなる。

圧縮比が上がりすぎるとノッキングを招く

圧縮比は高いほど熱効率が上がる一方、混合気が正規の点火を待たずに自然着火する ノッキング を起こしやすくなる。ノッキングはピストンや燃焼室を局部的に過熱させ、放置すれば焼き付きやピストンの損傷につながる。

プリセットにしたホンダ4車種の公表圧縮比は9.0〜10.0の範囲に収まっている。ところが、ヘッドとピストンの形をそのままにボアだけ広げた見積もりでは、モンキー50のボア47mmで14.07、スーパーカブ50のボア50mmで16.75まで跳ね上がる。ボアアップキットが頂面のくぼんだディッシュピストンや厚めのガスケットで圧縮比を合わせているのは、この跳ね上がりを打ち消すためだ。どれだけ上がるかを先に数字で見ておくと、キットの部品構成や「ハイオク指定」の注記が、なぜそうなっているのか腑に落ちる。

このツールが活躍する場面

キットを選ぶ前に、区分と免許を確かめる。 候補のキットのピストン径を順に入れ替えれば、それぞれ何ccになり、今の免許で乗れるのか、ナンバーの色が変わるのかが並んで見える。原付免許しか持っていない人にとっては、50ccを超えるキットは免許の取得までセットで考える買い物だ。90ccの手前に収まるか、125ccの手前に収まるかも、次の境界まであと何ccかで分かる。

手続きの窓口を確かめる。 原付どうしの変更なら市区町村の窓口、125ccを超えるなら市区町村で廃車したうえで運輸支局に軽二輪の届出、250ccを超えるなら運輸支局での検査。区分が変わるときは、どこで何をするかの案内がノーマルとの比較と一緒に出るので、組み上がってから慌てずに済む。

組む前に圧縮比を見積もる。 燃焼室を測っていない段階でも、公表の圧縮比からボアアップ後の上限の目安が出る。上がり幅が大きければ、キットの指定燃料や点火時期の指定を確認するきっかけになる。

ガスケットの厚さを選ぶ。 ヘッドを外して燃焼室の容積を測ったら、測った値から圧縮比を計算し直せる。ノーマルの圧縮比に戻すにはガスケットを何mmにすればいいかが出るので、手持ちのガスケットや追加で買う厚さを決める根拠になる。

使い方は3ステップ

1. ノーマルの寸法を入れる。 プリセットのモンキー50・スーパーカブ50・スーパーカブ110・モンキー125から選ぶと、ボア・ストローク・気筒数・公表の圧縮比がまとめて入る。ほかの車種は、諸元表の「内径×行程」と「圧縮比」をそのまま入れればいい。気筒数は1〜4。ノーマルが50ccを超え125cc以下の車両なら、新基準原付として登録済みかどうかも指定できる。

2. ボアアップ後のボアを入れる。 キットのピストン径(シリンダーの内径)を入れる。クランクを替えるストロークアップならストロークも入れる。ボアアップ後のストロークが空欄なら、ノーマルと同じ値として計算する。

3. 結果を読む。 ノーマルとボアアップ後の排気量と増加率、区分・ナンバーの色・必要な免許・軽自動車税の標準税率・法定最高速度が並んで表示される。区分が変わるときは手続きの案内、ボアアップ後の排気量から次の境界まであと何ccかも出る。圧縮比は、ノーマル・ボアアップ後・上がり幅と、元に戻すのに足す容積・ガスケットで戻すなら何mm厚くするかが表示される。

燃焼室の容積を測ったら、圧縮比の出し方を「燃焼室容積から計算」に切り替え、燃焼室容積・ガスケットの厚さと内径・デッキクリアランス・ピストン頭部の容積を入れる。ボアアップ後の欄は、空欄ならノーマルと同じ値を使う(ガスケットの内径だけは、空欄ならそれぞれのボアと同じ)。圧縮比の入力が足りなかったり範囲外だったりしても、排気量と区分の結果はそのまま表示される。

ボアアップの排気量・圧縮比 計算例 — 9ケースで確かめる

ここからは、具体的な入力でどんな結果になるかを9ケース並べる。ケース1〜4はホンダの公表諸元をノーマルにした例、5は燃焼室を測った場合、6は50ccの境界、7〜9は区分や免許の変わり方が特殊な例だ。

ケース1: モンキー50にボア47mm — 白から黄へ

  • 入力: ノーマル 39.0×41.4mm・1気筒・公表の圧縮比10 → ボアアップ後のボア47.0mm(ストロークはそのまま)、圧縮比は見積もり
  • 結果: 49.5cc → 71.8cc(+45.2%)。原付一種(白)→ 原付二種の乙(黄)。免許は原付免許 → 小型限定普通二輪免許以上。軽自動車税は2,000円のまま。手続きは市区町村で廃車して登録し直し。90ccまであと18.17cc。圧縮比は10 → 14.07(+4.07)。元に戻すには2.49ccを足す必要があり、ガスケットなら1.43mm厚くする
  • 解釈: 税額は変わらないのに、免許だけが変わる典型だ。圧縮比の14.07はヘッドもピストンもノーマルの形のままとした上限の目安で、ガスケットだけで1.43mmも厚くするのは現実的ではない。ピストン頭部のくぼみで容積を稼ぐキット構成が前提になる、と読むのが正しい

ケース2: スーパーカブ50にボア50mm — 90ccの手前ぎりぎり

  • 入力: ノーマル 37.8×44.0mm・圧縮比10.0 → ボア50.0mm
  • 結果: 49.4cc → 86.4cc(+75.0%)。原付一種(白)→ 原付二種の乙(黄)。90ccまであと3.61cc。圧縮比は10 → 16.75(+6.75)。足す容積4.11cc、ガスケットなら2.09mm厚く
  • 解釈: 黄ナンバーの上限90ccまで3.61ccしか残っていない。排気量の増え方はケース1より大きく、そのぶん圧縮比の見積もりも16.75まで上がる。ノーマルのヘッドとフラットなピストンのままでは成立しない数字で、圧縮比を下げる部品の組み合わせがキットの肝になる

ケース3: スーパーカブ110にボア52.4mm — 区分が変わらない

  • 入力: ノーマル 50.0×55.6mm・圧縮比9.0 → ボア52.4mm
  • 結果: 109.2cc → 119.9cc(+9.8%)。原付二種の甲(ピンク)のまま、免許も税(2,400円)も同じで、登録の手続きは不要。125ccまであと5.10cc。圧縮比は9.0 → 9.79(+0.79)。足す容積1.34cc、ガスケットなら0.62mm厚く
  • 解釈: もともと原付二種の車両なら、125ccの手前に収まる限り区分は動かない。圧縮比の上がり幅も1を切り、ボアの増分が小さいぶん穏やかだ

ケース4: モンキー125にボア58.5mm — 軽二輪の届出へ

  • 入力: ノーマル 52.4×57.9mm・圧縮比9.3 → ボア58.5mm
  • 結果: 124.9cc → 155.6cc(+24.6%)。原付二種の甲(ピンク)→ 軽二輪。免許は小型限定普通二輪 → 普通二輪免許以上。税は2,400円 → 3,600円。手続きは市区町村で原付を廃車し、運輸支局で軽二輪の届出(車検は不要)。250ccまであと94.37cc。圧縮比は9.3 → 11.34(+2.04)、ガスケットなら1.38mm厚く
  • 解釈: ノーマルが124.86ccと125ccの線のすぐ下にあるので、ボアを少しでも広げれば軽二輪になる。窓口が市区町村から運輸支局に変わり、小型限定免許では乗れなくなる。部品代より手続きと免許のほうが重い改造だ

ケース5: 燃焼室を測ってからガスケットを選ぶ

  • 入力: ノーマル 39.0×41.4mm → ボア47.0mm。圧縮比の出し方は「燃焼室容積から計算」。ノーマル側は例として燃焼室容積5.1cc・ガスケット厚さ0.3mm(内径40.0mm)・デッキクリアランス0.2mm・ピストン頭部0cc。ボアアップ後はガスケット内径48.0mm・ピストン頭部+1.5cc(ディッシュ)で、燃焼室容積・ガスケット厚さ・デッキクリアランスはノーマルと同じ
  • 結果: 排気量と区分はケース1と同じ(71.8cc・黄)。圧縮比は9.65 → 10.59(+0.94)。元の9.65に戻すには0.81ccを足す必要があり、ガスケットは0.75mm(今より0.45mm厚く)
  • 解釈: 排気量は同じでも、ディッシュピストンを入れると圧縮比の上がり幅は1を切る。見積もりの14.07との差の内訳は仕組みの節で分解する。ケース1の見積もりが求めた1.43mmに比べれば、0.45mmはずっと現実的な調整幅だ

ケース6: ボア39.2mmと39.3mm — 0.1mmで免許が変わる

  • 入力: ノーマル 39.0×41.4mm → ボア39.2mm、または39.3mm
  • 結果: 39.2mmでは49.96cc(小数1桁の表示では50.0cc)で原付一種のまま、手続き不要、50ccまであと0.04cc。39.3mmでは50.22ccで原付二種の乙(黄)、免許は小型限定普通二輪以上
  • 解釈: 表示が「50.0cc」でも、判定は丸める前の49.96ccで行うので原付一種のままになる。ただし残りは0.04ccしかない。シリンダーを摺り合わせたりオーバーサイズのピストンを入れたりすると簡単に越える量なので、この境界の近くでは寸法の実測値で確かめたい

ケース7: 新基準原付で登録した110ccにボア52.4mm

  • 入力: スーパーカブ110の寸法(50.0×55.6mm・圧縮比9.0)を借りて、ノーマルが新基準原付として白ナンバーで登録されていると仮定 → ボア52.4mm
  • 結果: ノーマル 109.2cc は原付一種(新基準・白)・原付免許・2,000円 → ボアアップ後 119.9cc は原付二種の甲(ピンク)・小型限定普通二輪以上・2,400円。手続きは市区町村で登録し直し。圧縮比は9.0 → 9.79
  • 解釈: 寸法はケース3と同じなのに、ノーマル側の区分だけが違う。白ナンバーだったのは最高出力確認を受けた状態だからで、排気量を変えた時点でその前提が崩れる。ボアをノーマルのまま(50.0mm)にすれば、区分は新基準原付のまま変わらない

ケース8: 2気筒の250ccにボア64mm — 車検のある区分へ

  • 入力: 例として 62.0×41.2mm・2気筒・圧縮比11.6 → ボア64.0mm
  • 結果: 248.8cc → 265.1cc(+6.6%)。軽二輪 → 小型二輪。免許は普通二輪以上のまま。税は3,600円 → 6,000円。手続きは運輸支局で検査を受けて登録し直し。400ccまであと134.92cc。圧縮比は11.6 → 12.29(+0.69)、ガスケットなら0.24mm厚く
  • 解釈: 増加は6.6%と小さいが、250ccの線を越えたことで車検のある区分に入る。免許は変わらないので見落としやすい。気筒数を入れれば、多気筒でも同じ流れで判定できる

ケース9: 4気筒の400ccにボア58mm — 区分は同じでも免許が変わる

  • 入力: 例として 56.0×40.6mm・4気筒 → ボア58.0mm(圧縮比は空欄)
  • 結果: 400.0cc(丸める前は399.99cc)→ 429.1cc(+7.3%)。区分は小型二輪のままで登録の区分は変わらないが、免許は普通二輪 → 大型二輪に変わる。次の境界はない。圧縮比は空欄なので出さず、排気量と区分だけが出る
  • 解釈: 「区分が同じだから手続きは要らない」と安心していると、免許の境界400ccを見落とす。圧縮比を入れなくても区分と免許は判定できる

ケース1・2の見積もりの大きさと、ケース5の実測値の穏やかさを見比べると、ボアアップの圧縮比がピストンとガスケットの選び方で大きく変わることがよく分かる。

計算の仕組み — 圧縮比を「測らずに」見積もる方法と、その限界

圧縮比の出し方は2通り — 測るか、逆算するか

ボアアップ後の圧縮比を出す方法は、大きく2つある。

(a) 燃焼室側の容積を実測して足し上げる。 ヘッドを外し、燃焼室にビュレットで液体を入れて容積を測る。そこにガスケットの穴・デッキクリアランス分・ピストン頭部の容積を足して Vc を出し、ε = (Vs + Vc) ÷ Vc を計算する。部品の実物を反映するので正確だが、エンジンを開けて計量器具をそろえる必要がある。

(b) 公表の圧縮比から燃焼室側の容積を逆算する。 圧縮比の式を Vc について解くと Vc = Vs ÷ (ε − 1) になる。ノーマルの公表値からこの Vc を出し、ボアアップ後も同じ Vc のままとして圧縮比を計算する。何も測らずに出せる代わりに、「ヘッド・ピストン頭部・ガスケットはノーマルのまま」という仮定が入る。

キットを選んでいる段階では (b) しかできず、組み付ける段階では (a) が正しい。使う人の段階が違うので、どちらか一方に絞らず両方を載せた。既定は (b) で、燃焼室を測った人だけが (a) に切り替える。

計算フロー

// 1. 排気量(ノーマル・ボアアップ後のそれぞれ)
Vs = π/4 × B² × S ÷ 1000            // 1気筒 [cc]
総排気量 = Vs × 気筒数

// 2. 区分(丸める前の値で「値 ≦ 境界 + 1e-9」を判定)
≦50 原付一種 / ≦90 原付二種の乙 / ≦125 原付二種の甲 / ≦250 軽二輪 / それ以上 小型二輪
免許: 原付一種=原付 / 原付二種=小型限定普通二輪 / ≦400 普通二輪 / 400超 大型二輪

// 3. 燃焼室側の容積
見積もり: Vc_std = Vs_std ÷ (ε_std − 1)、Vc_up = Vc_std
実測:     Vc = 燃焼室 + π/4·Dg²·t/1000 + π/4·B²·d/1000 + ピストン頭部(列ごと)

// 4. 圧縮比
ε = (Vs + Vc) ÷ Vc

// 5. 元の圧縮比に戻す
ΔV = Vs_up ÷ (ε_std − 1) − Vc_up     // 足す容積 [cc]
Δt = ΔV × 1000 ÷ (π/4 × Dg_up²)      // ガスケットで足すなら何mm
// 見積もりの Dg_up はボアアップ後のボア、実測は入力したガスケット内径

5の考え方は、「ボアアップ後の行程容積で元の圧縮比を出すには、燃焼室側の容積がいくつあればいいか」を逆に解いて、今の Vc との差を求めるものだ。その差をガスケットの穴の面積で割れば、厚さの増分になる。

計算例1: モンキー50の見積もり(ボア47mm)

排気量は、上で出したとおりノーマル49.456cc、ボアアップ後71.827cc。

Vc_std = 49.456 ÷ (10 − 1)             = 5.4951 cc
Vc_up  = 5.4951 cc                     // 見積もりなので据え置き
ε_up   = (71.827 + 5.4951) ÷ 5.4951    = 14.071

ΔV = 71.827 ÷ (10 − 1) − 5.4951        = 2.4856 cc
ガスケットの面積 = π/4 × 47²           = 1734.94 mm²
Δt = 2485.6 ÷ 1734.94                  = 1.4327 mm

ε_up − ε_std で上がり幅は4.07。上がり幅が1.0以上になると注意が表示される。

計算例2: 燃焼室を測ったときのガスケットの逆算

使用例のケース5と同じ入力で、ガスケットを何mmにすればノーマルの圧縮比に戻るかを出す。

// ノーマル(ボア39.0・ガスケット内径40.0)
Vc_std = 5.1 + 0.3770(ガスケット 40²×0.3) + 0.2389(デッキ 39²×0.2)
       = 5.7159 cc
ε_std  = (49.456 + 5.7159) ÷ 5.7159     = 9.652

// ボアアップ後(ボア47.0・ガスケット内径48.0・ディッシュ1.5cc)
Vc_up  = 5.1 + 0.5429(ガスケット 48²×0.3) + 0.3470(デッキ 47²×0.2) + 1.5
       = 7.4899 cc
ε_up   = (71.827 + 7.4899) ÷ 7.4899     = 10.59

// 9.652 に戻すのに要る Vc と、足りない分
目標の Vc = 71.827 ÷ (9.652 − 1)         ≒ 8.3014 cc
ΔV = 8.3014 − 7.4899                    ≒ 0.8116 cc   // 丸める前の値で計算
ガスケットの面積 = π/4 × 48²            = 1809.56 mm²
Δt = 811.6 ÷ 1809.56                    = 0.4485 mm
必要な厚さ = 0.3 + 0.4485               = 0.7485 mm

(ガスケット・デッキの項は π/4 × 直径² × 厚さ ÷ 1000 を省略して書いている。)必要な厚さは「今の厚さ+増分」で出すので、元の厚さを入れた実測のときだけ表示する。見積もりでは今の厚さが分からないため、増分だけを出す。ボアダウンのように Δt が負になり、さらに必要な厚さまで負になる場合は「ガスケットを0にしても元の圧縮比まで上がらない」と読む。

見積もりが高めに出る向き

計算例2の数字を使うと、見積もりと実測の差がどこから来るかを分解できる。ノーマルの圧縮比9.652を「公表値」とみなして見積もりの出し方で計算すると、Vc_up = Vc_std = 5.7159cc のままなので、ボアアップ後の圧縮比は13.57になる。

ところが実際には、ボアを広げるとガスケットの穴とデッキクリアランスの断面も広がる。ガスケットの項は0.3770ccから0.5429ccへ、デッキの項は0.2389ccから0.3470ccへ増え、合わせて0.274cc。これだけでフラットピストンのままでも圧縮比は12.99に下がる。そこにディッシュの1.5ccが加わって10.59になる。

見積もり(Vc 据え置き)            13.57
+ガスケット・デッキの面積の広がり  12.99   // Vc +0.274cc
+ディッシュピストン 1.5cc          10.59   // ケース5の実測値

見積もりの出し方は、面積の広がりも、キットのピストン頭部やガスケットの違いも無視している。デッキクリアランスが正(ピストンが上面より下がる)で、キットのピストンがノーマルより盛り上がっていない限り、無視した分はどれも Vc を増やす向きに働くので、見積もりは実際より高く出る。見積もりを「上限の目安」と呼んでいるのはこのためだ。逆にキットがドームピストンなら、実際の圧縮比は見積もりを超えうる。その場合は実測の出し方に切り替えるしかない。

区分の判定は丸める前の値で行う

排気量は小数1桁で表示するが、区分の判定は丸める前の値で行う。ケース6のボア39.2mmは49.9646ccで、表示は50.0ccになる。表示値で判定すると「50cc以下」に入るかどうかが丸め方次第で揺れてしまうので、判定は必ず元の値で行い、境界の近さは次の境界までの残りを小数2桁で見せる形にした。比較には 値 ≦ 境界 + 1e-9 という小さな許容誤差を入れてある。πを含む計算は浮動小数点の端数を持つので、ちょうど50.000ccになる寸法を入れたときに、計算機の誤差だけで原付二種に判定されるのを防ぐためだ。

新基準原付の指定はノーマル側だけに効かせる

新基準原付かどうかは排気量だけでは決まらず、型式認定か最高出力確認を受けているかで決まる。計算機には判別のしようがないので、ノーマルが50ccを超え125cc以下のときだけ「新基準原付として登録済み」を指定できるようにし、その指定はノーマル側の区分にだけ効かせる。ボアアップ後は、排気量がノーマルから変わった時点で確認を受けた内容と一致しなくなるので、通常の区分で判定する。ボアを変えずに入れたとき(排気量の差が実質ゼロのとき)だけ、ボアアップ後も新基準原付のまま扱う。ノーマルが範囲外の排気量になったときは、指定が残っていても無視する。

圧縮比の入力不備で、排気量と区分を消さない

圧縮比の入力が足りない・範囲外・燃焼室側の容積が0以下になる、といった不備があっても、排気量・区分・免許・手続きの結果はそのまま出し、圧縮比の欄にだけ理由を表示する。たとえばピストン頭部に−6cc(燃焼室より大きなドーム)を入れると、燃焼室側の容積が負になって圧縮比は計算できない。それでも区分の判定には何の影響もない。いちばん知りたい「何ccになって、免許は足りるのか」を、使わない欄の入力ミスで隠さないための作りだ。

排気量計算ツールとの違いと、ギヤ比・タイヤ・熱効率ツールとの役割分担

既存の計算機が排気量で止まっている事情は「なぜ作ったのか」の節で書いたとおりなので、ここでは何がどこまで一続きに出るかだけを並べる。

確かめたいこと排気量だけの汎用計算機このツール
総排気量出るノーマルとボアアップ後を並べ、増加率と1気筒あたりの行程容積も出す
車両区分・ナンバーの色出ない原付一種から小型二輪までを判定し、ノーマルと並べる
免許・軽自動車税・法定最高速度出ない区分の比較表にノーマルとボアアップ後を並べて出す
手続きの窓口出ない区分が変わるときだけ、市区町村か運輸支局かを案内する
次の境界まで出ない50・90・125・250・400ccのうち、次の境界まであと何ccか
圧縮比出ない公表の圧縮比からの見積もりと、燃焼室容積からの計算の2通り
元の圧縮比に戻す手当て出ない足りない容積と、それをガスケットで足すなら何mm厚くするか

ボアを1つ入れ替えるだけで表の下まで全部が更新されるので、ピストン径の違うキットどうしを、区分と圧縮比の両方で比べながら選べる。

逆に、出さないと決めたものもある。ボアアップ後の最高出力やトルクは吸排気やカムで大きく変わり、排気量の比からは出せない。それらしい推定値を並べると数字だけが独り歩きするので、載せていない。

エンジンの外側は、別のツールに任せている。

  • ギヤ比: ボアアップ後に二次減速比を見直すなら、スプロケット丁数変更シミュレーターの担当。前後の丁数から減速比の変化率と、同じ回転数での速度・同じ速度での回転数を出す。このツールはギヤ比には触れない
  • タイヤ: サイズを替えたときの外径の差と速度メーターの誤差は、タイヤサイズ変更シミュレーターで見る
  • 圧縮比の効き目: 圧縮比が上がると理屈の上で効率がどれだけ伸びるかは、熱機関サイクルの理論熱効率 計算・比較の受け持ち。ここで出た圧縮比をオットーサイクルに入れれば理論熱効率の差が分かる。ただし理論値なので、実機でノッキングが出るかどうかまでは分からない。そこはキットの指定燃料と点火時期で確かめる

豆知識:cc と cm³、ボアストローク比の向き、ナンバーの色は税の色

「cc」は国際単位系では使わない記号

ボアアップの話は「50cc」「125cc」と cc で進むが、国際単位系(SI)の国際文書は cc を使わず cm³ と書くよう求めている。日本の計量法でも、取引や証明に cc を使うこと自体はできるものの、標準の記号は cm³ と定められていて、そちらが望ましいとされる。ホンダの主要諸元がモンキーの総排気量を「49cm³」と書いているのも cm³ の表記だ。

さらに法令は、そのどちらでもなくリットルで書く。道路運送車両法施行規則の原付の範囲は「0.125L以下」、第一種は「0.050L以下」、軽二輪の上限は「0.250L以下」。1cc=1cm³=0.001L なので、店頭の cc、カタログの cm³、条文の L はどれも同じ量を指している。このツールの表示は、いちばん耳になじんだ cc に揃えた。

ボアストローク比は「どちらで割るか」が流儀で逆になる

ボアとストロークの比は、エンジンの性格を分けるのに使われる。ボアがストロークより大きいとショートストローク(オーバースクエア)、小さいとロングストローク(アンダースクエア)。ショートストロークは1回転あたりのピストンの移動距離が短く、平均ピストンスピード(2×ストローク×回転数)を抑えられるので高回転向き。ロングストロークは燃焼室をコンパクトにしやすく、低回転でトルクが出やすい傾向がある、と説明される。

ややこしいのは割り算の向きだ。日本語版 Wikipedia のボアストローク比は「ストローク÷ボア」と定義して、1より大きいものをロングストロークと呼ぶ。一方で英語の bore/stroke ratio は「ボア÷ストローク」で、分子と分母が逆になる。このツールが出すのは後者のボア÷ストロークで、1未満がロングストロークだ。

プリセットの4車種は0.86〜0.94で、そろってロングストローク側にある。ボアアップはストロークを変えずにボアだけ広げるので比は1に近づき、モンキーのボアを47mmまで広げると1.1を超えてショートストローク側に回る。排気量だけでなく、エンジンの分類まで動くわけだ。

同じ項によれば、20世紀前半のイギリスの馬力税はボア径と気筒数だけで決まっていたため、ボアを小さくしたロングストロークが税制上有利だったという。税の決め方がエンジンの形を左右した例で、総排気量で区分と税が決まる日本の原付とは、測る場所が違う。

ナンバーの色は「税の区分」の色

原付のナンバーは、市区町村が交付する軽自動車税の課税標識だ。色分けが税率の区分に沿っていることは実務の節で触れたとおりで、125ccを超えるとナンバーは運輸支局で受け取るものに変わる。

市区町村のものだから、デザインも市区町村が決められる。Wikipedia の原動機付自転車の項には、課税標識のデザインは市町村が条例で定めることができ、2007年以降は独自デザインのナンバーを導入する市町村が増えていること、色も市区町村によって異なる場合があることが書かれている。ご当地デザインの原付ナンバーは、この仕組みから生まれている。

ボアアップ前の段取りTips:暗算・燃焼室容積の測り方・ガスケット厚さ

1. ボア1mmの効き目は「2÷ボア」で暗算する

排気量はボアの2乗に比例するので、ボアを1mm広げたときの増え方はおよそ「2÷ボア×100%」になる。ボア39mmなら約5.1%(正確には5.19%)、ボア50mmなら約4%(同4.04%)。ストロークは1乗で効くので、1mm伸ばすと「1÷ストローク×100%」で、ストローク41.4mmなら約2.4%。キットのピストン径が1mm違う2つで迷ったとき、電卓なしで当たりがつく。数mm以上離れると近似がずれていくので、そのときは「新しいボア÷元のボア」の2乗で見るか、ツールに入れる。

2. 燃焼室容積はアクリル板とビュレットで量る

ヘッドを外し、バルブとスパークプラグを組んだまま、合わせ面を水平に置く。小さな穴をあけた透明のアクリル板を、薄くグリスを塗った合わせ面に密着させる。穴からビュレット(目盛り付きのガラス管)で灯油のような粘りの少ない液を注ぎ、気泡が抜けて満ちるまでに入った量を読む。バルブやプラグの座から漏れると注いだ量が多めに出るので、板越しに縁と液面を見ながら注ぎ、2〜3回量って平均をとる。

3. ピストン頭部の容積は「下げて量り、円柱を引く」

ピストンを上死点から決めた深さだけ下げ、シリンダーの上面にアクリル板を載せて同じように液を入れる。量った量から、ボアの円柱の体積(π/4×ボア²×下げた深さ÷1000でcc)を引いた残りがピストン頭部の容積で、皿形(ディッシュ)ならプラス、ドームならマイナスになる。この符号のまま、実測モードのピストン頭部の欄に入れればよい。リングの合口から液が逃げないよう、ピストンの外周に薄くグリスを塗っておく。

4. ガスケットの厚さは締め付け後の値で入れる

ヘッドガスケットは締め付けで潰れる。燃焼室側の容積に効くのは潰れたあとの厚さなので、新品の自由状態の厚さを入れると容積を大きく見積もり、圧縮比が低めに出る。使用済みのガスケットをマイクロメーターで測るか、メーカーの表記が締め付け後の厚さかどうかを確かめてから入れる。内径もボアと同じとは限らないので、実物を測って内径の欄に入れておくと誤差の元が1つ減る。

よくある質問(ボアアップの登録・新基準原付・圧縮比の見積もり)

ボアアップしたら、登録はどこで変える?

区分の境界ごとの窓口は、実務の節と「活躍する場面」の節にまとめたとおりだ。結果にも、ノーマルとボアアップ後の区分の組み合わせに応じた手続きが1段落で出て、区分が変わらなければ「手続きは不要」と出る。どの組み合わせでも、自賠責保険と任意保険の登録内容の変更を忘れやすい。必要な書類は自治体で細部が違うので、出かける前に窓口に確かめておくと二度手間がない。

ボアアップした車を「新基準原付」として白ナンバーにできないのはなぜ?

実務の節で触れたとおり、新基準原付の登録には型式認定番号か最高出力確認の確認済書・シールが要り、最高出力の数字を申告するだけでは足りない。だからこのツールには最高出力の入力欄を置いていない(数字を入れても判定が変わらない)。すでに新基準原付として白ナンバーで登録している車なら、ノーマルの寸法を入れて新基準原付のチェックを付けると、ノーマル側が原付一種(新基準)になる。チェックはノーマルが50ccを超え125cc以下のときだけ出る。ボアアップ後の扱いの理由は、計算の仕組みの節に書いた。

見積もりモードの圧縮比が、キットの説明書の値より高いのはなぜ?

見積もりは、ヘッドもピストン頭部もガスケットもノーマルのままボアだけ広げたと仮定した、上限の目安だからだ(高めに出る向きの理由は計算の仕組みの節を参照)。キットがピストンやガスケットで圧縮比を合わせていることは実務の節で触れたとおりで、説明書の値はその結果を書いている。説明書と照らし合わせたいときは、燃焼室容積を測って実測モードに切り替え、ボアアップ後の列のピストン頭部にキットのピストンの容積を、ガスケットの厚さに付属ガスケットの値を入れる。説明書の値に近づけば、組み方の前提が揃っていると確かめられる。

2ストロークのエンジンにも使える?

排気量と区分の判定はそのまま使える。総排気量はボア・ストローク・気筒数で決まり、区分の境界も総排気量で書かれているからだ。圧縮比は注意が要る。2ストロークのメーカー公表値は、全行程で数えたものと、排気ポートが閉じてからの行程で数えた「有効圧縮比」とで定義が揃っていない。このツールは圧縮比を全行程の比(下死点と上死点の容積の比)として扱うので、定義の分からない公表値で見積もった数字は参考程度にとどめたい。燃焼室容積を測って実測モードで出すほうが確実だが、その値も全行程の比で、有効圧縮比とは別物として読む。

プリセットの排気量が、カタログの数字と少し違うのはなぜ?

カタログの総排気量は整数の cm³ で書かれているのに対し、ツールはボア×ストロークから計算した値を小数1桁で出すからだ。プリセットの4車種は、どれも計算値の小数点以下を切り捨てるとホンダの公表値と一致する。ずれは計算の誤りではなく、公表値が整数に丸めた表記だということ。境界の近くでどれだけ余裕があるかを見たいときは、整数のカタログ値ではなく、結果の「次の境界まで」の行を見てほしい。そこは小数2桁で出る。

入力したボアや燃焼室容積は、どこかに送られる?

送られない。計算はすべて開いているブラウザの中で行い、入力したボア・ストローク・圧縮比・燃焼室容積などをサーバーへ送る処理は持っていない。測った値を残しておきたいときは「結果をコピー」でメモに貼っておくとよい。コピーされるのは、ノーマルとボアアップ後の寸法・排気量・区分、手続き、圧縮比、戻すガスケットの厚さをまとめた数行の文字だ。キットを比べるときは、1つずつコピーして並べておくと見比べやすい。

まとめ:ボアアップの排気量・圧縮比・車両区分を一画面で

ボアとストロークを入れれば、排気量・ナンバーの色・免許・税・手続きがノーマルと並んで出る。公表の圧縮比があれば、圧縮比の上がり幅と、元に戻すガスケットの厚さまで見当がつく。キットを買う前と組む前に、一度ずつ通しておきたい。

エンジンのあとはギヤ比をスプロケット丁数変更シミュレーターで、足まわりを替えるなら外径とメーターの誤差をタイヤサイズ変更シミュレーターで確かめられる。圧縮比が理屈の上で効率をどれだけ動かすかは熱機関サイクルの理論熱効率 計算・比較で見られる。

載せてほしい車種のプリセットや、実測した燃焼室容積とキットの説明書の値を照らし合わせた結果は、お問い合わせページから気軽に送ってほしい。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。モンキーの39mmを39.2mmと39.3mmで入れ替えて試したら、たった0.1mmで免許が変わる。この境界の近さを数字で見せたくて、表示は丸めても判定は丸める前の値で行う作りにした。

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