露出柱脚ベースプレート設計ツール

軸力・曲げモーメントからベースプレート寸法・アンカーボルト・支圧応力を自動算出

鉄骨柱の露出型柱脚を簡易設計。軸力・曲げモーメントからベースプレート寸法・アンカーボルト引張力・支圧応力を自動算出し、安全率を判定。

柱断面

設計荷重

圧縮を正で入力

ベースプレート

柱せい方向

柱幅方向

アンカーボルト

ボルト中心〜プレート端

基礎コンクリート

一般的にFc21〜Fc30

設計結果

応力パターン引張発生

支圧 安全率

0.61

NG

σc=11.52 / 許容7.00 N/mm²

ボルト 安全率

2.26

十分安全

T=191.2kN / 許容432.0kN

偏心距離 e
300.0 mm

Lp/6=83.3, Lp/2=250.0

支圧応力 σc
11.52 N/mm²

許容: 7.00 N/mm²

ボルト引張力 T
191.2 kN
必要ボルト本数(片側)
1 本

設定: 2本

必要プレート厚
66.4 mm

コンクリート支圧応力が許容値を超えています。プレート寸法を大きくするか、コンクリート強度を上げてください。

長期荷重で引張が発生しています。柱脚仕様・基礎設計を見直してください。

応力分布図(側面イメージ)

ベースプレート Lp=500mm × Bp=500mm柱 H=300×B=300σc=11.52x=240mm圧縮側引張側T=191.2kNN=500kNM=150kN·m引張発生
支圧応力分布柱断面引張ボルト

本ツールは簡易設計用です。実際の構造設計では、建築基準法施行令・鉄骨構造設計規準(AIJ)に基づく詳細計算と構造設計一級建築士による確認が必要です。計算結果の利用はすべて自己責任で行ってください。

不具合・ご要望はお気軽に@MahiroMemoまで

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鉄骨の足元、ちゃんと設計できてる?

鉄骨造の建物を設計していて、一番最後に回しがちなのが「柱脚」の設計だ。上部構造の断面が決まり、荷重の整理が終わったところで、ようやくベースプレートの寸法やアンカーボルトの仕様を決める。ところが、この柱脚設計がなかなか曲者で、偏心距離の判定から応力パターンの場合分け、板厚の算定まで手計算だとかなり煩雑になる。

このツールは、露出型柱脚のベースプレート設計を3つの応力パターンに自動分類し、支圧応力・アンカーボルト引張力・必要板厚を即座に算出する。SVG図で応力分布も見えるから、数値だけでなく「今どういう状態か」が直感的にわかる。

なぜこのツールを作ったのか

手計算の場合分けが面倒すぎる

露出柱脚の設計は、偏心距離eとプレート長さLpの関係で3つのパターンに分岐する。全面圧縮・部分圧縮・引張発生——それぞれ計算式が異なり、手計算で場合分けを正確にやろうとすると、表計算ソフトでもかなりのセルを使うことになる。特に引張パターンでは、モーメントアームjの設定やボルト引張力Tの算出が絡み合い、一つ間違えると全体が狂う。

開発者自身、構造計算の概算段階で柱脚の検定を何度も手戻りした経験がある。プレートを大きくしたら板厚が足りなくなり、板厚を上げたらコストが跳ね上がり……。このループを短縮したくて、パラメータを変えた瞬間に結果が変わるツールを作った。

既存Webツールの不在

Excel VBAマクロやRC柱脚の計算シートは出回っているが、「露出柱脚のベースプレート設計」に特化したWeb上の無料ツールはほぼ見当たらない。PDF電卓のような静的なものはあっても、パラメータを動かしてリアルタイムに安全率が変わるインタラクティブなツールが欲しかった。

露出柱脚設計の基礎知識——偏心距離と3つの応力パターン

露出柱脚 とは

露出型柱脚(exposed column base)は、鉄骨柱の下端をベースプレートを介して基礎コンクリートにアンカーボルトで固定する接合形式だ。根巻き柱脚や埋込み柱脚と比べて施工がシンプルで、小規模〜中規模の鉄骨造で最も多く採用されている。

構造的には「柱からの軸力Nと曲げモーメントMを、ベースプレートの支圧とアンカーボルトの引張で基礎に伝達する」のが役割。この「伝え方」が偏心距離によって3パターンに分かれる。

偏心距離 e とは

偏心距離は、軸力の合力作用点が断面中心からどれだけ偏っているかを示す値だ。

e = M / N  [mm]
  M: 曲げモーメント [kN·mm]
  N: 軸力(圧縮正)[kN]

Mが大きく(曲げが強く)Nが小さい(軸力が弱い)ほど偏心が大きくなり、プレートの片側に応力が集中する。

3つの応力パターン

パターン条件状態
全面圧縮e ≤ Lp/6プレート全面がコンクリートを押している。最も安定した状態
部分圧縮Lp/6 < e ≤ Lp/2プレートの一部のみが圧縮。反対側は浮き上がるがボルト引張はなし
引張発生e > Lp/2曲げが大きく、反対側のアンカーボルトに引張力が生じる

この判定基準は「鉄骨構造設計規準(AIJ)」に基づいている。日本建築学会の公式サイトで最新版を確認できる。

断面係数 と 支圧応力度

ベースプレートを長方形断面とみなし、全面圧縮の場合は通常の断面係数の式で最大・最小応力を求める。部分圧縮の場合は圧縮域の三角分布から最大応力を逆算する。いずれも許容支圧応力度(長期: Fc/3, 短期: 2Fc/3)と比較して安全率を出す。

柱脚設計を軽視するとどうなるか

地震時の柱脚損傷事例

1995年の兵庫県南部地震では、鉄骨造の柱脚部に多くの被害が報告された。アンカーボルトの破断、ベースプレートの曲げ変形、コンクリートの支圧破壊——いずれも柱脚の設計耐力不足が原因だった。柱脚が壊れると上部構造がどれだけ頑丈でも建物全体の耐震性が失われる。まさに「砂上の楼閣」になる。

保有耐力接合の重要性

建築基準法施行令第82条の4では、ルート3の耐震設計で「保有水平耐力」の確認が求められる。柱脚はこのとき「保有耐力接合」を満たす必要がある。つまり、柱本体が降伏するまで柱脚が壊れてはならない。ベースプレートやアンカーボルトの設計は、柱の全塑性モーメントを上回る耐力を確保することが前提になる。

これを怠ると確認申請で指摘を受けるだけでなく、適判(構造計算適合性判定)で差し戻しになるケースもある。手戻りのコストは設計料の数倍に膨れ上がることがある。

構造設計のこんな場面で頼りになる

概算段階のプレート寸法検討

構造計算の序盤で「H-300の柱脚にはどれくらいのプレートが必要か」を素早く把握できる。パラメータを動かしながら安全率の変化を見て、最適なプレート寸法とボルト仕様の当たりをつけるのに使える。

確認申請前の事前検討

本設計に入る前に、柱脚まわりの成立性をざっくり確認したい場面は多い。コンクリート強度を変えたとき、ボルト径を一段上げたときの影響が瞬時にわかるから、打ち合わせ中でも使える。

建築士試験・学生の演習

一級建築士試験の構造科目では露出柱脚の計算が頻出だ。このツールで自分の手計算結果を照合すれば、理解の確認と間違い探しが効率的にできる。

基本の使い方

3ステップで結果が出る。

Step 1: 柱断面を選ぶ

プリセットからJIS規格のH形鋼サイズを選択する。H-200〜H-400の5サイズを用意しているが、「カスタム」を選べば任意の柱せいH・柱幅Bを直接入力できる。

Step 2: 荷重とプレート・ボルトを入力

荷重種別(長期/短期)を選び、軸力N(kN)と曲げモーメントM(kN·m)を入力する。ベースプレートの寸法(Lp, Bp)、アンカーボルトの規格・本数・縁距離を設定する。

Step 3: 結果を確認

応力パターンが自動判定され、支圧安全率・ボルト安全率・必要プレート厚がリアルタイムで表示される。SVG図で応力分布の形も確認できる。NGが出たらプレートを大きくするかボルトを増やしてみて。

検証データ:6ケースで検定結果を比較

ケース1: H-200柱・軽荷重

入力値:

  • 柱: H-200×200, N=200kN, M=30kN·m(長期)
  • プレート: 400×400mm, Fc=21

計算結果:

  • e = 150mm, パターン: 部分圧縮
  • σc = 3.33 N/mm², 許容 = 7.0 → 安全率 2.10
  • T = 0kN(引張なし)
  • 必要板厚 = 18.0mm

解釈: 小規模な柱脚では400mm角のプレートで十分な安全率が得られる。

ケース2: H-300柱・中荷重

入力値:

  • 柱: H-300×300, N=500kN, M=80kN·m(長期)
  • プレート: 500×500mm, Fc=21

計算結果:

  • e = 160mm, パターン: 部分圧縮
  • σc = 7.41 N/mm², 許容 = 7.0 → 安全率 0.94
  • T = 0kN(引張なし)
  • 必要板厚 = 28.0mm

解釈: 安全率が1.0を下回っている。プレートを550mmに拡大するか、Fc24のコンクリートに変更すべき。

ケース3: H-300柱・大きな曲げ

入力値:

  • 柱: H-300×300, N=500kN, M=200kN·m(短期)
  • プレート: 600×600mm, ABR490 M24×2本, dt=80mm, Fc=21

計算結果:

  • e = 400mm, パターン: 引張発生
  • T = 193.2kN, σc = 9.62 N/mm², 許容 = 14.0 → 安全率 1.46
  • ボルト安全率 = 3.95(M24×2本で十分)
  • 必要板厚 = 37.4mm

解釈: 短期荷重では許容値が2倍になるため、σcは許容範囲内。ただし板厚は40mm程度必要。

ケース4: H-400柱・重荷重

入力値:

  • 柱: H-400×400, N=1200kN, M=120kN·m(長期)
  • プレート: 650×650mm, Fc=24

計算結果:

  • e = 100mm, パターン: 部分圧縮
  • σc = 9.23 N/mm², 許容 = 8.0 → 安全率 0.87
  • 必要板厚 = 29.8mm

解釈: H-400クラスではFc24でもプレート650mmでは不足。Fc27にするか700mm角に拡大が必要。

ケース5: 純圧縮(M=0)

入力値:

  • 柱: H-250×250, N=600kN, M=0kN·m(長期)
  • プレート: 450×450mm, Fc=21

計算結果:

  • e = 0mm, パターン: 全面圧縮
  • σc = 2.96 N/mm², 許容 = 7.0 → 安全率 2.36
  • 必要板厚 = 17.3mm

解釈: ブレース付き架構など曲げがほぼゼロの場合、プレートは比較的小さくて済む。

ケース6: 大偏心・長期引張

入力値:

  • 柱: H-350×350, N=300kN, M=250kN·m(長期)
  • プレート: 600×600mm, ABR490 M27×3本, dt=80mm, Fc=24

計算結果:

  • e = 833mm, パターン: 引張発生
  • T = 267.0kN, σc = 7.88 N/mm², 許容 = 8.0 → 安全率 1.02
  • ボルト安全率 = 3.74(M27×3本)
  • 必要板厚 = 30.7mm

解釈: 長期で引張が発生するのは好ましくない。柱脚仕様の根本的な見直しが推奨される。

計算アルゴリズムの全容

偏心距離判定

まず偏心距離 e = M×1000 / N [mm] を求める(Mの単位をkN·mからkN·mmに変換)。eとLp/6、Lp/2を比較して3パターンに振り分ける。

支圧応力の計算

パターンごとに計算式が異なる:

【全面圧縮】
  σc_max = N/(Lp×Bp) + 6M/(Bp×Lp²)
  σc_min = N/(Lp×Bp) - 6M/(Bp×Lp²)

【部分圧縮】
  x = 3×(Lp/2 - e)  ← 圧縮域の長さ
  σc_max = 2N/(Bp×x)

【引張発生】
  j = Lp - 2×dt  ← モーメントアーム
  T = (M×1000 - N×(Lp/2 - dt)) / j  ← ボルト引張力
  C = N + T  ← 圧縮合力
  σc_max = 2C×1000/(Bp × 3×dt)  ← 三角分布仮定

ボルト引張力と必要本数

引張パターンでのみボルト引張力Tが発生する。必要本数 = ceil(T / ft_per_bolt) で、ft_per_boltはABR490規格の許容引張耐力(長期/短期で異なる)。

ベースプレート板厚

キャンティレバー板の曲げから算定する:

m = max((Bp - B)/2, (Lp - H)/2)  ← 大きい方のオーバーハング
t = √(6 × σc_max × m² / fb)
  fb: SS400許容曲げ応力(長期 235/1.5 ≈ 156.7, 短期 235 N/mm²)

なぜこの方式を選んだかというと、AIJ「鉄骨構造設計規準」に準拠した最も標準的な方法だからだ。簡易法ながら実務の概算段階では十分な精度がある。詳細設計ではFEM解析で板の応力分布を検証することもあるが、初期検討にはこの手法が圧倒的に効率的だ。

既存ツールとの違い

3パターン自動判定

多くのExcelシートは特定のパターン(全面圧縮 or 引張)を前提に組まれている。このツールは偏心距離から自動で判定するので、パラメータを変えたときにパターンが切り替わっても計算が破綻しない。

SVG応力分布図

応力がどう分布しているか、数値だけでは把握しにくい。台形分布なのか三角分布なのか、ボルトに引張が作用しているのか——SVG図があるだけで設計の全体像がつかみやすくなる。

ブラウザだけで完結

Excelやアプリのインストール不要。スマホでも使えるから、現場打ち合わせ中にパラメータを変えて検討できる。結果はクリップボードにコピーして議事録にそのまま貼り付けられる。

アンカーボルトの変遷と技術トレンド

ABR400からABR490へ

かつての露出柱脚にはABR400(旧SNR400)のアンカーボルトが多用されていたが、現在はABR490が主流だ。引張強度が約2割向上しているため、同じ径でもより大きな引張力に耐えられる。国土交通省の技術基準でも最新の材料規格が反映されている。

定着方式の多様化

従来のJ型・L型フック定着に加え、ナット定着やヘッド付きアンカーが普及している。ヘッド付きアンカーは引き抜き耐力が明確で、コーン破壊の検定が容易になった。NCベースのようなメーカー工法では、定着板付きの認定品が使われることも多い。

設計を効率化する4つのコツ

プレート寸法はH+200mmを目安にスタート

柱せいH=300mmなら、プレートLp=500mmから検討を始めると効率がよい。あまり大きすぎるとプレート板厚や基礎サイズに影響するので、最小限で安全率1.2〜1.5を狙うのがバランスがよい。

ボルト縁距離dtは70〜100mm

ボルト中心からプレート端までの距離dtは、施工性とモーメントアームの確保を両立させるために70〜100mmが実務的な範囲。小さすぎるとコンクリートのかぶり不足、大きすぎるとモーメントアームが短くなり不利になる。

短期荷重は許容値が2倍

地震時(短期)の検定では許容支圧応力度・許容曲げ応力度とも長期の2倍になる。長期でNGでも短期ならOKということがあるので、荷重種別の切り替えを忘れずに。

引張パターンが出たら設計を見直す

特に長期荷重で引張が発生する場合は、プレート寸法やボルト仕様を変える前に、柱脚形式そのものの見直し(根巻き柱脚への変更など)を検討したほうがよい場合がある。

よくある質問

Q: 根巻き柱脚や埋込み柱脚にも対応してる?

本ツールは露出型柱脚専用だ。根巻き柱脚はモルタルの拘束効果、埋込み柱脚は基礎梁との一体化挙動があり、計算モデルが異なる。将来的に対応を検討中だが、現時点では露出柱脚に特化している。

Q: 短期と長期で何が変わる?

短期荷重(地震・暴風)では、許容支圧応力度が長期の2倍(Fc/3 → 2Fc/3)、SS400の許容曲げ応力度が長期の1.5倍(156.7 → 235 N/mm²)になる。アンカーボルトの許容引張耐力も短期値(長期の1.5倍)を使用する。結果として、短期のほうが安全率は出やすい。

Q: ボルト「片側」と「合計」の違いは?

このツールではアンカーボルト本数を「片側」で入力する。露出柱脚では通常、引張側・圧縮側に同数のボルトを配置する。引張力Tは片側ボルトの合計で負担するため、片側の本数で検定を行っている。

Q: 入力したデータはサーバーに送られる?

送られない。すべての計算はブラウザ内(クライアントサイド)で完結している。入力データはサーバーに送信されず、ローカルにも保存しない。安心して使ってほしい。

まとめ

露出柱脚のベースプレート設計は、偏心距離の判定と3パターンの場合分けが肝になる。このツールを使えば、パラメータを変えるたびに安全率と応力分布が即座に更新されるから、最適な寸法を効率よく探り当てられる。

鉄骨の断面性能が気になった人は鋼材断面のコンシェルジュ、ボルト強度を確認したい人はボルト強度・破断モード診断も試してみて。


不具合や要望があれば、X (@MahiroMemo)から気軽に教えて。

M

Mahiro

Mahiro Appの開発者。構造計算の手戻りを減らすために、柱脚設計の自動判定ツールを開発。偏心距離の場合分けで何度も計算をやり直した経験がこのツールの原点。

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