背の高い治具を載せた日から、前側のブロックがガタ付き始めた
搬送軸の組図にリニアガイドを2本引き、ブロックを4個載せる。カタログの寸法表で基本動定格荷重 C を確かめ、「搬送物は25kg、4で割れば1ブロックあたり6kg強。C は何百Nもあるから余裕だ」と決めて図面を出す。こういう決め方、一度はやったことがあるよね。
半年後、そのテーブルに背の高い治具が載る。さらにタクトを詰めるために加速時間を半分にした。すると動き出すたびにテーブルの先端がわずかに浮き、止まるたびにおじぎをして、前側のブロックがガタ付き始める。質量はほとんど変わっていないのに、何が起きたのか。
原因は「重さを4で割った」ところにある。重心が高く、加減速が鋭いほど、慣性力は重心と駆動の高さの差を腕にしたモーメントになって、前後のブロックの荷重を入れ替える。加速の瞬間には、前側のブロックがレールから引きはがされる向き(逆ラジアル)の荷重さえ受ける。
このツールは、2本のレールに2個ずつ載った4個のブロックについて、取付け姿勢(水平・壁掛け・立て軸)、重心の位置、駆動の位置、加減速を入れると、往路と復路の加速時・等速時・減速時の各ブロック荷重を出し、等価荷重・静的安全係数・平均荷重・定格寿命(km と時間)までを一度に返す。カタログの C と C0 を数値で入れる方式なので、メーカーは問わない。
なぜ作ったのか——慣性力の腕を測り違えていた
最初は THK の技術資料にある条件別の式で手計算していた。THK の「LMガイド 選定のポイント」の負荷荷重のページには、水平・オーバーハング・立軸・壁掛・慣性力が作用する水平軸など10の条件について、ブロックごとの荷重の式が図とともに載っている。ただ、式は画像で、条件の組合せまでは載っていない。「壁掛けで、しかも加減速がある」「立て軸で重心が横にずれている」といった現実の機構では、結局自分で式を立て直すことになる。立て直すたびに符号をどこかで間違え、気づかないまま Excel に残る。
いちばん痛かったのは慣性力の腕だ。加減速の慣性力は重心に働くので、腕は「ブロック上面から重心までの高さ」だと思い込んでいた。ところが THK の平均荷重のページの算出例の図を見直すと、慣性力の腕 ℓ2 はボールねじから重心までの高さとして描かれている。推力はボールねじの軸心からテーブルに入るので、テーブルを前後に傾けようとするモーメントの腕は、重心と駆動の高さの差になる。ボールねじはふつうブロック上面より下にあるから、重心の高さだけを腕にすると必ず小さく見積もる。
どのくらい違うか。使用例の高速搬送の条件(40kg・加速度13.3m/s²・重心はブロック上面から250mm・ボールねじは40mm下)で、腕を重心の高さ250mmだけにすると最大の等価荷重は431.3N、駆動との差290mmにすると484.7Nになる。前側ブロックの逆ラジアルも −235.3N から −288.7N へ深くなる。1割強の差だが、静的安全係数を下限ぎりぎりで決めていれば判定がひっくり返る量だ。
そこで、駆動の位置まで入力に入れ、姿勢は重力の向きだけで切り替える一般式を1本立てた。C と C0 を数値で入れればどのメーカーのカタログにも使える。駆動側の検討は別のツールに任せていて、ボールねじ選定計算で寿命・座屈・危険速度・DN値を、サーボモーター選定ツールで負荷慣性・慣性比・実効トルクを見る。このツールは案内側、つまりガイドが荷重に耐えるか、何年もつかに絞っている。
リニアガイド 寿命計算の基礎——4本脚のテーブルで考える
重心のずれがブロック荷重の差になる仕組み
脚が4本のテーブルの片隅に寄せて重い荷物を置くと、その隅の脚がいちばん重さを受け、対角の脚はほとんど受けなくなる。リニアガイドの4個のブロックも同じだ。テーブルに載ったものの重さはまず4等分され、そこに「重心がどれだけずれているか」によるモーメントが上乗せ・差し引きされる。
モーメントは「力×腕」で、それを受け止めるのはブロックどうしの間隔だ。進行方向にずれた分は同じレール上の2ブロックの間隔 ℓ0 で、レール間方向にずれた分はレール間隔 ℓ1 で受ける。
ブロック荷重 = 重さ / 4
± 重さ × 進行方向のずれ / (2 × ℓ0)
± 重さ × レール間方向のずれ / (2 × ℓ1)
たとえば100kg(980N)を ℓ0=300mm・ℓ1=400mm のテーブルに、重心を進行方向へ50mm・レール間方向へ80mm ずらして載せると、4等分なら245Nずつのはずが、No.1〜4 は 228.7・65.3・261.3・424.7N に分かれる。いちばん重いブロックは平均の1.7倍だ。ずれの方向に近いブロックほど重く、遠いブロックほど軽い。間隔 ℓ0・ℓ1 が分母にあるので、ブロックを離して置くほど差は縮む。
加減速があると、ここに慣性力のモーメントが加わる。慣性力は進行方向に働くので、重さとは向きが違う。腕は上で触れたとおり重心と駆動の高さの差で、重心が駆動より高ければ、加速時には後ろ側のブロックが押しつけられ、前側が持ち上げられる。減速時はその逆だ。
ラジアル・逆ラジアル・横方向——荷重の3つの向き
ブロックが受ける荷重には向きが3つある。
| 向き | 意味 | 典型的な場面 |
|---|---|---|
| ラジアル | ブロックをレールに押しつける | 水平に置いたテーブルの重さ |
| 逆ラジアル | ブロックをレールから引きはがす | 重心がブロックの外に出たとき、加速時の前側 |
| 横方向 | 取付面の中で、レールに直角 | 壁掛けにしたときの重さ |
壁掛けでは重さがそっくり横方向荷重になり、壁からの張り出しが上下のレールに押す・引くの偶力を作る。姿勢が変わると、同じ重さでも荷重の向きが入れ替わる。
等価荷重 とは
向きの違う荷重を、寿命や安全係数を計算するために1つの値へまとめたものが等価荷重 PE だ。THK の等価荷重のページでは次のように定義している。
PE = X × PR + Y × PT
PR: ラジアル(または逆ラジアル)荷重 PT: 横方向荷重
4方向等荷重形(各方向の定格が同じ形式)は X = Y = 1
→ PE = |PR| + |PT|
4方向等荷重形は、押しつけ・引きはがし・横のどの向きにも同じ定格を持つ形式だ。このツールはこの形式を前提にしている。
基本動定格荷重 とは——転がり疲れと定格寿命
ブロックの中ではボール(またはローラ)がレールの溝の上を転がり続ける。転がるたびに接触面には繰り返し応力がかかり、いつかは表面がうろこ状にはがれる。これをフレーキングと呼ぶ。転がり軸受の寿命を決めるのはほぼこの転がり疲れで、軸受一般の考え方は Wikipedia の転がり軸受の項が入口になる。
疲れ方にはばらつきがあるので、寿命は確率で定義する。THK の定格寿命のページによると、定格寿命は同じ条件で動かした一群のガイドのうち90%がフレーキングを起こさずに到達できる総走行距離だ。基本動定格荷重 C は、その荷重を受け続けたときに定格寿命がちょうど50km(ボール)・100km(ローラ)になる荷重にあたる。
ボール: L = (C / (fW × Pm))^3 × 50 [km]
ローラ: L = (C / (fW × Pm))^(10/3) × 100 [km]
寿命時間: Lh = L × 10^6 / (2 × ℓs × n1 × 60) [h]
fW: 荷重係数(振動・衝撃の見込み) ℓs: ストローク[mm] n1: 毎分往復数
荷重が3乗で効くので、荷重が2倍になると寿命は1/8になる。ローラなら10/3乗で約1/10だ。
平均荷重 とは
搬送軸の荷重は、加速時・等速時・減速時で刻々と変わる。そこで「同じ寿命を与える一定の荷重」に置き換える。それが平均荷重 Pm で、各区間の荷重を3乗(ローラは10/3乗)して走行距離で重み付けし、3乗根に戻す。
Pm = ( (P1^3 × L1 + P2^3 × L2 + ... ) / 総走行距離 )^(1/3)
ただの平均ではなく3乗平均なので、短い区間でも大きな荷重は効いてくる。
静的安全係数 とは
寿命とは別に、一瞬でも大きすぎる荷重がかかると転動面に永久的なくぼみが残る。基本静定格荷重 C0 は、転動体と転動面の永久変形量の和が転動体直径の0.0001倍になる静止荷重だ。静的安全係数は、この C0 が最大荷重の何倍あるかを示す。
fs = C0 / 最大の等価荷重
寿命が「長く使えるか」、静的安全係数は「一度で壊れないか」を見る指標で、どちらか片方だけでは判定にならない。
静的安全係数と3乗則が設計を左右する理由
下限を割ると転動面に圧痕が残る
THK の静的安全係数のページは、静的安全係数の下限の目安を表10にまとめている。
| 使用条件 | 静的安全係数の下限 |
|---|---|
| 振動・衝撃のない場合 | 2〜 |
| 振動・衝撃が作用する場合 | 5〜 |
見落としやすいのは注記のほうで、振動・衝撃の要因として「加減速、急激な稼動停止、外部からの振動・衝撃の伝達、加工力の時間的な変化」を挙げている。つまり加減速のある搬送軸は、静かに動いているように見えても「振動・衝撃あり」の側、下限5で見るのが筋だ。最大荷重が C0 を超えると、転動面に圧痕が残る。圧痕の上をボールが通るたびに走りが悪くなり、送りの滑らかさも位置決めの再現性も落ちる。一度残った圧痕は戻らないので、気づいたときにはガイドの交換になる。
荷重が2倍で寿命は1/8
上で見たとおり、寿命は荷重の3乗に反比例する。荷重を2割見落とすと寿命は約4割縮む、という効き方だ。荷重係数 fW も同じ3乗で効く。THK の定格寿命のページの表11は、速度に応じた fW の目安を示している。
| 速度 V | 荷重係数 fW の目安 |
|---|---|
| V ≦ 0.25m/s | 1〜1.2 |
| 0.25 < V ≦ 1m/s | 1.2〜1.5 |
| 1 < V ≦ 2m/s | 1.5〜2 |
| V > 2m/s | 2〜3.5 |
2m/s の搬送で fW を2ではなく1.2と置くと、寿命は (2/1.2)³ ≒ 4.6倍に伸びて見える。帯より小さい fW は、計算の上だけで寿命を水増しする。
重心が高い・加速が鋭いと前後が入れ替わる
使用例の高速搬送(40kg・加速0.15秒で13.3m/s²・重心はブロック上面から250mm・ボールねじは40mm下・ℓ0=200mm)では、等速時に98.0Nずつだった荷重が、加速時には後ろ側で484.7N、前側で −288.7N(逆ラジアル)になる。ここで手を打つ順番を比べると、
- ブロック間隔 ℓ0 を200→400mmに広げる: 最大の等価荷重 291.3N・逆ラジアル −95.3N、定格寿命は4倍強
- 重心を250→100mmに下げる: 最大の等価荷重 284.7N・逆ラジアル −88.7N
- 加速時間を0.15→0.3秒に延ばす: 最大の等価荷重 291.3N・逆ラジアル −95.3N
重心を下げられるならそれが最も効くが、ワークや治具の高さは製品で決まっていて動かせないことが多い。加速時間はタクトと引き換えになる。設計者の裁量でタクトを犠牲にせず変えられるのはブロック間隔で、モーメントを受ける腕そのものが長くなるので、逆ラジアルまでまとめて小さくできる。
逆ラジアルとラジアル形の落とし穴
逆ラジアルが出ること自体は、4方向等荷重形なら問題ない。危ないのはラジアル形(押しつけ方向を重視した形式)を選んでいるときだ。THK の等価荷重のページの表7では、ラジアル形の逆ラジアル方向の基本動定格荷重は SSR で C の0.50倍、SR(15〜70)で0.62倍しかない。カタログの C だけ見て選ぶと、逆ラジアルの側では定格が半分近くになっていることに気づかない。
このツールが出番になる4つの場面
型番を決める前の当たり付け。搬送軸の構想段階では、まだメーカーも型番も決まっていない。候補のサイズのカタログ値 C・C0 をいくつか入れ替えてみれば、どのサイズから静的安全係数と寿命時間が足りるかがすぐ分かる。メーカーの選定ツールに行く前に、サイズの桁を絞れる。
既設の軸にワークや治具を足すとき。冒頭の場面がまさにこれで、質量より重心の高さが変わることのほうが怖い。元の設計値と追加後の重心を入れて比べれば、どのブロックがどれだけ重くなるか、逆ラジアルが出るようになるかが見える。
タクトを詰めるために加速度を上げるとき。加速時間を短くすると、ブロック荷重は等速時から大きく離れる。最大荷重がどのブロックのどの局面で出るか、静的安全係数が下限を割らないかを、加速時間を変えながら確かめられる。復路まで含めて最大値を探すので、加速と減速の時間が違う設定でも取りこぼさない。
壁掛け・立て軸でメーカー資料に同じ条件が無いとき。壁掛けの横行軸に加減速がある、立て軸のリフタで重心が横にずれている、といった組合せは、条件別の式をそのまま当てはめられない。姿勢を切り替えるだけで同じ入力欄のまま計算できる。
基本の使い方(3ステップ)
ステップ1: 配置と質量を入れる。取付け姿勢(水平・壁掛け・立て軸)を選び、ブロック間隔 ℓ0、レール間隔 ℓ1、搬送質量、重心の位置 x・y・z、駆動の位置 y・z を入れる。位置はすべて4ブロックの中心・ブロック上面を原点にした符号付きの mm で、ボールねじがブロック上面より下なら駆動 z は負になる。x・y・z の向きは姿勢によって変わるので、姿勢の選択欄の下にその姿勢での向きが1行で表示される。
ステップ2: 運転条件を入れる。速度(m/s)、加速時間、減速時間、ストローク、毎分往復数を入れる。毎分往復数は停止時間込みの実際のペースで、寿命を時間に換算するのに使う。
ステップ3: 定格荷重と係数を入れて結果を読む。カタログの基本動定格荷重 C と基本静定格荷重 C0(kN・1ブロックあたり)、転動体、荷重係数 fW、振動・衝撃の有無を入れる。静的安全係数とその判定、寿命時間、最大の等価荷重とそれが出るブロック・局面、最大の平均荷重、定格寿命(km)が表示され、その下にブロック別の荷重表と、4ブロック・重心・駆動の位置を描いた平面図が出る。
プリセットは4件ある。日本ベアリングの計算例を再現したもの以外は、C・C0 が仮の値なので、型番を決めたらカタログ値に置き換えてほしい。
9ケースで見るリニアガイドの荷重と寿命
以下の結果は、すべてツールに同じ値を入れて得られる表示どおりの数値だ。
ケース1: 日本ベアリングの計算例1を再現する(既定値)
- 入力: 水平、ℓ0=150mm・ℓ1=150mm、25kg(15kg と10kg の2質量を合成)、重心 x120・y4・z132mm、駆動 y50・z−50mm、0.1m/s、加速・減速とも0.1秒、ストローク150mm、毎分17往復、C=0.882kN・C0=1.37kN(SM20)、ボール、fW 1.5、振動・衝撃あり
- 結果: 最大の等価荷重 181.5N(No.4・往路の減速時)、最大の平均荷重 162.9N(No.4)、静的安全係数 7.55(下限5以上)、定格寿命 2,352.6km、寿命時間 7,688時間。最小のラジアル荷重は −55.2N で、逆ラジアルの注記が出る
- 解釈: 資料の値(平均荷重162.87N・2,352.59km・7,688h・静的安全係数7.5)と一致する。重心 x=120mm はブロック間隔の半分75mm より前、つまりブロックの外にあるので、後ろ側の No.2・No.3 は等速時でも −40.0N・−33.5N の逆ラジアルになる。なお速度0.1m/s での fW の目安は1〜1.2で、資料の1.5は安全側に取った値だ
ケース2: 転動体と荷重係数を変える
- 入力: ケース1の転動体をローラにする/ケース1の fW を1.0にする
- 結果: ローラでは平均荷重 162.9N、定格寿命 7,215.4km、寿命時間 23,580時間。最大の等価荷重と静的安全係数は変わらない。fW 1.0 では定格寿命 7,940.0km、寿命時間 25,948時間
- 解釈: ローラは指数が10/3、基準が100km になるので、同じ C でも寿命が3倍ほどに伸びる。ただしこれは「C が同じなら」の話で、転動体の選択はカタログの C が何 km 基準で載っているかに合わせるためのものだ。fW を1.5→1.0にすると寿命は1.5³=3.375倍になる。目安の帯の中でも、どの値を取るかで寿命時間は3倍以上動く
ケース3: 毎分往復数を詰めすぎる
- 入力: ケース1の毎分往復数を40にする
- 結果: 定格寿命は2,352.6kmのまま、寿命時間は3,267時間。1往復に最低3.20秒かかるのに、毎分40往復では1往復1.50秒しかないという注意が出る
- 解釈: 速度0.1m/s・ストローク150mm では片道1.6秒かかるので、毎分40往復は物理的に回れない。寿命時間は入力どおりの往復数で換算しているので、この値をそのまま信じない。毎分往復数は寿命時間に直接効くので、実際のサイクルタイムから逆算した値を入れたい
ケース4: 減速だけゆっくりにすると最大が復路に出る
- 入力: ケース1の減速時間を0.4秒にする(加速0.1秒のまま)
- 結果: 減速度0.25m/s²、減速距離20.0mm・等速距離125.0mm。最大の等価荷重 181.5N は No.4・復路の加速時に出る。静的安全係数 7.55、平均荷重 162.8N、定格寿命 2,354.3km、寿命時間 7,694時間
- 解釈: 往路の減速を緩めたので往路の最大は減速時の167.3Nに下がるが、復路の加速は0.1秒のままで、往路とは逆向きの慣性力が No.4 を押しつける。往路だけ見ていると静的安全係数を8.19と見誤る(正しくは7.55)。往復の両方を見る意味がいちばん出るのがこの設定だ
ケース5: 壁掛けの横行軸
- 入力: 壁掛け、ℓ0=200mm・ℓ1=150mm、80kg、重心 x60・y0・z250mm(壁から250mm 張り出す)、駆動 y0・z−30mm、1m/s、加速・減速0.25秒、ストローク1,200mm、毎分10往復、C=15kN・C0=22kN(仮の値)、ボール、fW 1.5、振動・衝撃あり
- 結果: 加速度4.00m/s²。最大の等価荷重 1,190.9N(No.4・往路の加速時)、最大の平均荷重 977.6N(No.1・No.4)、静的安全係数 18.47、定格寿命 53,512km、寿命時間 37,161時間。上側のレール(No.3・No.4)に最小 −877.3N の逆ラジアル
- 解釈: 重さ784Nは横方向荷重として4ブロックが受け、張り出し250mm が上下のレールに等速時でも ±653.3N の押す・引くを作る。比べに、重心と駆動をどちらも取付面の高さ(z=0)、x も0にすると、全ブロックが横方向196N だけになり、ラジアル荷重は0、静的安全係数 112.24、定格寿命 6,640,515km と約124倍に伸びる。壁掛けで寿命を食っているのは重さそのものより張り出しだ
ケース6: 立て軸のリフタと、駆動の真上に重心を置いた場合
- 入力: 立て軸、ℓ0=200mm・ℓ1=150mm、100kg、重心 y20・z300mm、駆動 y0・z−40mm、0.5m/s、加速・減速0.2秒、ストローク600mm、毎分8往復、C=15kN・C0=22kN(仮の値)、ボール、fW 1.2
- 結果: 最大の等価荷重 1,107.0N(No.1・上昇の加速時)、平均荷重は4ブロックとも891.5N、静的安全係数 19.87、定格寿命 137,844km、寿命時間 239,313時間。最小のラジアル荷重 −1,045.5N
- 解釈: 立て軸では重さが進行方向に働くので、重心と駆動の高さの差340mm がそのまま腕になり、上下のブロックが押す側と引きはがされる側に分かれる。重心の進行方向の位置 x は荷重に効かない。重心を駆動の線上(z=−40mm・y=0)に置き直すと、重さも慣性力もすべてボールねじが受け、4ブロックの荷重は0になる。このとき静的安全係数と寿命は出さず、荷重0の注記だけが出る。実機では取付誤差で荷重が出るので、寿命が無限になるわけではない
ケース7: 高速搬送で前側が逆ラジアルになる
- 入力: 水平、ℓ0=200mm・ℓ1=250mm、40kg、重心 x0・y0・z250mm、駆動 y0・z−40mm、2m/s、加速・減速0.15秒、ストローク1,500mm、毎分15往復、C=15kN・C0=22kN(仮の値)、ボール、fW 2、振動・衝撃あり
- 結果: 加速度13.33m/s²。最大の等価荷重 484.7N(No.2・往路の加速時)、そのとき前側の No.1・No.4 は −288.7N の逆ラジアル。等速時は4ブロックとも98.0N。平均荷重 244.1N、静的安全係数 45.39、定格寿命 1,450,413km、寿命時間 537,190時間
- 解釈: 重心はブロックの真ん中にあるのに、加速時の荷重は等速時の5倍近い。fW を1.2にすると定格寿命 6,714,874km・寿命時間 2,486,990時間と表示されるが、2m/s の目安1.5〜2より小さいので、寿命を長めに見積もっているという注意が出る
ケース8: 静的安全係数の判定が分かれる
- 入力: ケース7の C0 を1.5kN にする(振動・衝撃あり/なし)、C0 を0.4kN にする
- 結果: C0=1.5kN では静的安全係数 3.09。振動・衝撃ありなら下限5未満、なしなら下限2以上で判定が分かれる。C0=0.4kN では0.83で、最大荷重が基本静定格荷重を超えるという警告になる
- 解釈: 同じ3.09でも、振動・衝撃の見込み次第で合否が変わる。加減速13.33m/s²の搬送軸を「振動・衝撃なし」で通すのは、THK の注記に照らすと甘い。寿命は145万km あっても、静的安全係数で落ちる。寿命と静的安全係数が別の指標であることがよく分かる組合せだ
ケース9: 等速区間がちょうど0になる境目
- 入力: ケース1の速度を0.5m/s、加速・減速を0.4秒、ストロークを200mm にする
- 結果: 加速距離100.0mm+減速距離100.0mm=ストローク200mm で、等速距離0。加速度1.25m/s²。最大の等価荷重 186.3N(No.4・往路の減速時)、平均荷重 169.4N、静的安全係数 7.36、定格寿命 2,089.9km、寿命時間 5,122時間
- 解釈: 走行のすべてが加速か減速なので、平均荷重がケース1の162.9N から169.4N に上がる。この条件からストロークを少しでも短くすると、速度が設定値まで上がらないというエラーになり、速度を下げるか加減速時間を短くするよう促される
仕組み・アルゴリズム——剛体のつり合い1本で全姿勢を解く
候補手法の比較
荷重の求め方には2つの候補があった。
- THK の条件別の式を姿勢ごとに書き分ける。資料と1対1で突き合わせやすいが、資料に無い組合せ(壁掛け+加減速、横にずれた立て軸)では式を自作することになり、そこが間違いの温床になる
- 剛体のつり合いから一般式を1本立て、姿勢は重力の向きだけで切り替える。組合せが自動で閉じ、(1) の全条件と数値が一致するかを機械的に確かめられる
(2) を採った。一般式に姿勢ごとの重力の向きを入れ、水平・オーバーハング・立軸・壁掛・慣性力が作用する水平軸の5条件について THK の式と乱数で2,000ケース比べ、差が出ないことを確かめている。上で例に出した100kg のテーブル(228.7・65.3・261.3・424.7N)は、THK の水平・静止の式と同じ値になる。
平均荷重の取り方も2つある。THK と日本ベアリングの算出例は往路のストローク ℓs だけで平均している。加速時間と減速時間が同じなら、復路の荷重の組は往路と入れ替わるだけで値は変わらない。違うと、往路だけでは復路の加速時の荷重を落とす(使用例のケース4)。そこで往路と復路の両方、総走行距離 2ℓs で平均する方を採った。
静的安全係数は、THK は荷重の方向ごとに見るよう求めているが、4方向等荷重形は C0 が方向によらず同じなので、合成した等価荷重の最大で割っている。方向ごとに割るより厳しめの値になる。
計算フロー
1. 運転パターン
a1 = V / t1, a3 = V / t3 [m/s²]
加速距離 L1 = V×1000×t1/2, 減速距離 L3 = V×1000×t3/2
等速距離 L2 = ℓs − L1 − L3(負なら台形にならないのでエラー)
2. 局面ごとの加速度 a(往路の向きが+)
往路加速 +a1 / 等速 0 / 往路減速 −a3 / 復路加速 −a1 / 復路減速 +a3
3. 重心に働く力 (Fx, Fy, Fz) G = 9.8
水平: (−m·a, 0, −m·G)
壁掛け: (−m·a, −m·G, 0) y は上が+
立て軸: (−m·G − m·a, 0, 0) x は上が+、往路=上昇
4. 3つのモーメントをブロック間隔で割る(重心 x,y,z・駆動 yd,zd)
ピッチ bp = ((z − zd)·Fx − x·Fz) / (2·ℓ0)
ロール br = (z·Fy − y·Fz) / (2·ℓ1)
ヨー by = ((y − yd)·Fx − x·Fy) / (2·ℓ0)
5. 4ブロックに振り分ける(No.1=(+,−) No.2=(−,−) No.3=(−,+) No.4=(+,+))
PR_i = −Fz/4 + sx·bp + sy·br 負なら逆ラジアル
PT_i = −Fy/4 + sx·by
PE_i = |PR_i| + |PT_i|
6. 平均荷重(距離: 加速 L1・等速 2·L2・減速 L3・復路加速 L1・復路減速 L3)
Pm_i = (Σ PE_i^p × 距離 / (2·ℓs))^(1/p) p = 3(ボール)/ 10/3(ローラ)
7. 判定と寿命
fs = C0×1000 / 全局面・全ブロックの最大 PE
L = (C×1000 / (fW × 最大の Pm))^p × 50km(ローラ 100km)
Lh = L × 10^6 / (2 × ℓs × n1 × 60)
進行方向の力はすべて駆動が受ける、と置いているのがポイントだ。だからピッチとヨーの腕が「重心と駆動の差」になる。
計算例: 日本ベアリングの計算例1を手で追う
使用例のケース1を、No.4・往路の減速時について追ってみる。資料の2質量(15kg が (100, −60, 120)、10kg が (150, 100, 150))は、質量で重み付けした平均で1点にまとめる。重さも慣性力も同じ加速度で両方に働くので、合成重心に置き換えても荷重は変わらない。
合成重心: x = (15×100 + 10×150) / 25 = 120
y = (15×(−60) + 10×100) / 25 = 4
z = (15×120 + 10×150) / 25 = 132
往路減速: a = −1.0m/s² → Fx = −25×(−1.0) = +25N, Fz = −25×9.8 = −245N
bp = ((132 − (−50))×25 − 120×(−245)) / 300 = (4,550 + 29,400) / 300 = 113.17
br = (132×0 − 4×(−245)) / 300 = 3.27
by = ((4 − 50)×25 − 120×0) / 300 = −3.83
No.4 (+,+): PR = 61.25 + 113.17 + 3.27 = 177.68N
PT = −3.83N
PE = 177.68 + 3.83 = 181.52N ← 資料の 181.52N
No.4 の PE は、往路加速151.18N・等速162.52N・往路減速181.52N で、加速と減速の時間が同じなので復路加速は181.52N、復路減速は151.18N になる。距離は加速5mm・等速280mm(往復ぶん)・減速5mm・復路加速5mm・復路減速5mm の計300mm だ。
Pm = ((151.18³×5 + 162.52³×280 + 181.52³×5 + 181.52³×5 + 151.18³×5) / 300)^(1/3)
= 162.87N
L = (882 / (1.5 × 162.87))³ × 50 = 3.610³ × 50 = 2,352.59km
Lh = 2,352.59 × 10^6 / (2 × 150 × 17 × 60) = 7,688.2h
fs = 1,370 / 181.52 = 7.548
資料の Pm 162.87N・L 2,352.59km・Lh 7,688h・fs 7.5 と一致する。資料の動等価荷重(加速時 22.15/151.18/28.68/144.65N、等速時 33.48/162.52/40.02/155.98N、減速時 52.48/181.52/59.02/174.98N)も全ブロックで一致した。ただし資料はブロックの番号の振り方が違うので、突き合わせるときは次の対応で読み替える。
| 日本ベアリング資料のブロック番号 | 1 | 2 | 3 | 4 |
|---|---|---|---|---|
| このツールの番号 | No.3 | No.4 | No.2 | No.1 |
このツールの番号は THK の図に合わせ、進行方向の前が No.1・No.4、y の+側のレールが No.3・No.4 になっている。
最大値の選び方と境界の扱い
最大の等価荷重は、局面を往路加速→等速→往路減速→復路加速→復路減速、各局面で No.1→No.4 の順に走査し、それまでの最大を超えたときだけ更新する。同じ値が並ぶときは先に来たほうが残るので、加速と減速の時間が同じケース1では「往路の減速時」と表示される。逆ラジアルの判定、静的安全係数の下限との比較、荷重0の判定には1e−9の許容誤差を入れ、浮動小数点の端数で判定が揺れないようにしている。
リニアガイドの選定ツール・技術資料との違い
メーカーの選定ツールと技術資料それぞれの事情は、冒頭の「なぜ作ったのか」で触れたとおりだ。ここでは、その2つと並べたときに何が違うのかを、できることとできないことの両方から書いておく。
型番ではなく C・C0 で入る。 入力はカタログ寸法表の基本動定格荷重 C と基本静定格荷重 C0 なので、メーカーもシリーズも問わない。A社のサイズ20とB社のサイズ25を同じ搬送条件で並べたいとき、条件を打ち直さずに C・C0 の2欄を差し替えるだけで比べられる。
姿勢と加減速の組合せを式に起こさなくていい。 姿勢は重力の向きとして扱っているので、「壁掛けで加減速もある」「立て軸で重心が横にずれている」のように技術資料に式の載っていない組合せも、同じ入力欄のまま結果が出る。駆動の位置(y・z)を入れる欄があるのも、資料の式を見ながらだと落としやすい部分を、最初から入力として求めるためだ。
復路を落とさない。 最大荷重と平均荷重は往路と復路の両方から取る。加速時間と減速時間が違う装置で、最大荷重が往路の表の外に出る理由は、上の「仕組み」の節で説明したとおりだ。
4ブロック×局面で見える。 結果は1個の寿命だけでなく、ブロック別・局面別の荷重の表として出る。逆ラジアル荷重が出たときの注記や、入れた毎分往復数が速度と加減速から見て本当に回れるペースかの確認も、同じ画面に並ぶ。
一方で、型番に固有の値が要るものは扱わない。予圧荷重、1本のレールで使うときのモーメント等価係数、ラジアル形の等価係数、加工反力のような外力は、メーカーの選定ツールか技術窓口の領分になる。本ツールは型番を決める前の当たり付けと、条件を変えたときの比較に向けた道具と考えてほしい。
関連ツールとの分担では、本ツールが見るのは案内側の荷重と寿命までだ。駆動側の検討、たとえばボールねじ選定計算に入れる軸方向荷重は、本ツールの搬送質量と、画面に出る加速度から m×a で当たりがつく(ガイドの転がり摩擦抵抗は別に足す)。
リニアガイドの名前と定格にまつわる読み物
「LMガイド」は登録商標で、一般名はリニアガイド
現場では「LMガイド」が直動案内の代名詞のように使われるが、これは THK の登録商標で、同社のサイトでは「LMガイド®」と記号付きで表記されている。THK は部品の呼び方もそろえていて、レールを「LMレール」、ブロックを「LMブロック」と呼ぶ。一般名としては「リニアガイド」「直動転がり案内」あたりが通りやすく、メーカーごとに製品の呼び名は違う。本ツールの名前を「リニアガイド」にしたのもそのためだ。
定格寿命の基準が 50km と 100km の2本立てになっている
回転する転がり軸受の基本動定格荷重は、100万回転の定格寿命を基準に決められている。ボールねじも同じく回転数の基準で、寿命を回転数で表す。ところがリニアガイドは、走った距離(km)を基準にする。しかもその距離が1つではない。THK はボールを使う形式を50km、ローラを使う形式を100km の基本動定格荷重で載せ、寿命の比較では C がどちらの距離で定義されているかに注意するよう書いている(THK『定格寿命』)。直動転がり軸受の動定格荷重と定格寿命を定めた国際規格 ISO 14728-1 も、両者の換算を示している。
ボールなら、換算の係数は3乗則から出てくる。同じ荷重 P で、50km 基準の C50 と100km 基準の C100 が同じ物を表すには
(C50 / P)^3 × 50 = (C100 / P)^3 × 100
C50 = 2^(1/3) × C100 ≒ 1.26 × C100
となる。同じガイドでも、50km 基準で載せた C は100km 基準より26%大きく見える。指数が10/3のローラで同じ計算をすると、2の0.3乗で約1.23倍になる。カタログを見比べて「こちらのほうが C が大きい」と感じたら、まず基準の距離を確かめたほうがいい。
予圧が効くのは、外力が予圧の2.8倍まで
THK は、予圧をかけたガイドについて、予圧の効果は作用する外力が予圧の2.8倍になるまでで、それを超えると予圧が開放されると書いている(THK『剛性の予測』)。この2.8は、ボールの弾性変形の性質から読むと筋が通る。ヘルツの接触理論では、球の接触力は接近量の1.5乗に比例する(ヘルツの接触応力)。向かい合う2組の転動面に同じ予圧をかけておき、外から押すと、片側は縮み、反対側はその分だけ戻る。戻る側の変形がゼロになったとき、押される側の変形は最初の2倍で、そのときの力は予圧の 2^1.5 = 約2.83倍になる。外力の全部をこの側だけで受けている状態で、ここから先は予圧の無いガイドと同じになる。
入力値を拾うときの目安と打ち切りどころ
重心は CAD の質量特性から拾う
テーブル・治具・ワークの組図に、4ブロックの中心、高さはブロック上面を原点にした座標系を1つ作っておき、CAD の質量特性(マスプロパティ)で質量と重心を読むと、そのまま入力欄の値になる。部品ごとに読んだ値をまとめる手順は「仕組み」の節の計算例のとおりだ。片道だけワークを載せる装置なら、ワーク込みと空の2通りを入れて、厳しいほうで判断する。
駆動の高さは「推力が通る線」で測る
ボールねじならねじ軸の軸心、タイミングベルトなら歯の付け根近くを通る心線(ピッチライン)が、推力の通る高さになる。ブロック上面より下にあれば負の値だ。ベルトの外周面やねじのナット上面で測ると、ベルトの厚みやナットの半径の分だけ高さがずれる。
加減速時間はサーボのパラメータから
加速時間と減速時間は、サーボアンプやコントローラに設定した加減速時定数から拾える。注意したいのは S字加減速で、同じ加速時間でもピーク加速度は台形より大きくなる。S字加減速プロファイルシミュレーターで出したピーク加速度(mm/s² 表示なので1000で割る)で速度を割った時間を入れれば、最大荷重と静的安全係数を安全側で見られる。
毎分往復数は停止込みのサイクルタイムから
毎分往復数は、移動の時間ではなく、停止や待ちを含めた1往復のサイクルタイムで60を割って出す。1往復6秒の装置なら毎分10往復だ。チャートの移動時間だけで出すと往復数を多く見込み、寿命時間を短く見積もることになる。
打ち切りどころは「必要な寿命時間」を先に決めておくこと
1日の稼働時間×年間の稼働日数×装置の想定年数で、必要な寿命時間を先に出しておく。静的安全係数が下限を上回り、寿命時間がその必要時間を余裕をもって超えたら、重心の数mmを詰め直すより、取付誤差や外力のような入力に乗らない要素に時間を回したほうがいい。
リニアガイドの寿命計算でよく聞かれること
メーカーの寿命計算ツールと値が合わないのはなぜ?
まず荷重係数 fW の入れ方を確かめたい。ボール形の寿命は fW の3乗で効くので、資料どおりの値か、速度の目安の帯から選んだ値かで大きく変わる。次に平均の取り方で、本ツールは往路と復路の両方で平均荷重を取る(理由は「仕組み」の節)。さらに、形番ごとの等価係数や予圧荷重はメーカー側が持っている値で、本ツールは4方向等荷重形として扱い、予圧・硬さ係数・温度係数・接触係数を入れていない。THK も、中予圧をかけるなら予圧荷重を考慮して寿命計算する必要があり、形番を選んだうえで問い合わせるよう書いている。
レール1本の構成や、ブロックを2個密着させて使う場合も計算できる?
対象外だ。本ツールは2本のレールに2個ずつ、計4個のブロックで、モーメントをブロックどうしの間隔で荷重に振り分ける前提で計算している。ブロックを1個や2個密着で使うと、荷重がブロックの両端に偏り、THK は形番ごとのモーメント等価係数を掛けて荷重を出すよう求めている(THK『負荷荷重』)。ブロック間隔をブロックの長さ程度まで縮めた入力でも数字は出るが、その条件ではメーカーの選定ツールで確かめてほしい。
加工反力や押付け力のような外力がある軸には使える?
いまは外力を入れる欄が無い。外力は大きさのほかに作用点と向きを持ち、重さや慣性力とは別の腕でブロックに効くので、質量に足し込んで代わりにすることもできない。本ツールの結果は「外力が無い場合」の荷重と寿命として読み、外力を含めた検討はメーカーの選定ツールか技術窓口で行ってほしい。押付けや加工の反力が大きい軸ほど、ここで出る寿命は実際より長めになりやすい。
ストロークが短い揺動運転でも寿命の数字は使える?
注意が要る。THK は、ストロークがブロック長さの2倍以下の場合、定格寿命の式が当てはまらない可能性があるとしている(THK『定格寿命』)。本ツールはブロック長さを入力に持たないので、この条件に当たるかどうかは判定していない。カタログの寸法表でブロック長さを確かめ、ストロークがその2倍以下なら、寿命時間は参考値にとどめてメーカーに相談したほうがいい。静的安全係数のほうはストロークに関係なく使える。
ボール形なのに、カタログの C が100km 基準で載っているときは?
転動体の選択は「ボール(50km)」のまま、C を50km 基準に換算してから入れる。換算は上の豆知識の節で出した1.26倍で、100km 基準の C に1.26を掛ければいい。「ローラ(100km)」を選んで済ませると、基準の距離は合っても寿命の指数が10/3に変わり、ボールの寿命としては正しくない値になる。C0 は定格寿命と関係のない値なので、換算せずにそのまま入れる。
入力した装置の条件はどこかに送られる?
送られない。荷重と寿命の計算はすべて開いているブラウザの中で完結していて、入力した質量・重心の位置・カタログの C・C0 をサーバーに送る処理は無い。結果のコピーも、クリップボードに文字を写すだけだ。社内で検討中の装置の寸法や、まだ決まっていない型番の定格をそのまま入れて構わない。残したい結果は、コピーした文字を検討書や設計メモに貼っておくと、あとで条件ごと見返せる。
まとめ
リニアガイドの寿命計算は、姿勢・重心・駆動の位置・加減速から4個のブロックの荷重を出し、等価荷重、静的安全係数、平均荷重、定格寿命の順に積み上げる作業だ。本ツールはカタログの C・C0 を入れるだけで、その一連をメーカーを問わず通す。
搬送軸の残りは関連ツールで埋めてほしい。駆動側はボールねじ選定計算とサーボモーター選定ツール、ベルト駆動ならタイミングベルト選定計算、ねじのサポートやプーリの軸受はベアリング寿命計算で確かめられる。入力する加速度の波形はS字加減速プロファイルシミュレーター、軸の先に載るアームの負荷はロボットアーム 必要トルク計算が受け持つ。
手元の型番で計算したらメーカーの値と食い違った、こういう姿勢も扱いたい、といった声があればお問い合わせページから知らせてほしい。